学力向上フロンティアスクールの取組み                            〔指導課〕
「生徒一人ひとりの生きる力を育む実践的研究」
        〜確かな学力の向上をめざして〜
−山陽町立厚狭中学校−

1 学校の紹介2 数学科の指導体制の工夫3 数学科の実践事例4 英語科のねらいと指導体制5 英語科の実践事例6 成果と課題7 指導に当たってのポイント
実 践 の ポ イ ン ト
数学科と英語科で少人数授業を習熟度別グループで実施する。
数学科は、第1学年で1学級を習熟度による2グループに分けて実施し、第2学年で2学級を合併して習熟度により3グループに分けて実施する。
英語科は、第2学年で2学級を合併して習熟度により3グループに分けて実施し、第3学年で1学級を習熟度による2グループに分けて実施する。
1 学校の紹介
 本校は、厚狭郡山陽町の中心部に位置しており、学級数は、通常学級13学級、特別支援教育学級2学級で、全校生徒数407名である。
 また、本校生徒は,明るく元気なあいさつができ,素直で純朴な面をもち合わせているなど親しみを感じさせる生徒が多い。特に,体育的行事,文化的行事を問わず生徒一丸となってお互いに高め合い,活動を通じて楽しむことが好きであり,明るい学校生活を送り,全体に活気がみられる。


〈校舎全景〉

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2 数学科の指導体制の工夫
(1) コースの特徴
(ア) 1年生
  「発展的学習コース」=標準的な授業展開で,教科書の内容をすべて行う。
                時間的な余裕があれば,発展的な問題に取り組む。
  「基礎充実コース」=教科書の内容はすべておさえるが,特に基礎的内容(知識や表現方法)を確実                に学習することに重点を置く。
(イ) 2年生
 昨年度の基礎充実コースの中で,”できる生徒”と”できない生徒”との学力差が大きかったことと,発展的学習コースの中で,より発展的内容を要求する生徒がいたことから,中間層として『標準的学習コース』を設けた。
  「発展的学習コース」=教科書の内容に加え,発展的な内容(課題学習も含む)もおさえる。
  「標準的学習コース」=教科書の内容を確実に学習する。
  「基礎充実コース」=教科書の内容の中でも特に,基礎・基本的な内容を充実させる。

(2) コース分け方法
(ア) 各領域(数式・数量関係・図形)ごとのコース編成で,最初の時間にテストを行う。テストの内容については,既習内容から基礎的な知識と表現方法を問うもので,発展的なものはここでは扱わない。
(イ) 解答・解説を行い,自己採点し,コースを選択する。その際に,テストの点数だけで選択するのではなく,それぞれのコースの特徴(進め方)を熟知した上で選択させる。迷っている生徒については「どちらでもかまわない」を選択させ,後に担当教師が相談に乗る。
(ウ) 人数配分について
 学級の実状にもよるが,「1年生 発展:基礎=2:1」,「2年生 発展:標準:基礎=2:3:1」に近づくようにした。生徒の自己選択をそのまま受容すると人数配分が思うようにいかず,生徒によっては教師主導で各コースに配属させた(学力が高い生徒が基礎充実コースを選択した場合など)。
(エ) 途中でのコース変更は,担当教師の了解のもと認めた。
(オ) 2年生では,図形領域後に再び数量関係領域(確率)に戻るが,これは一次関数の時と同じクラス分けとした。

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3 数学科の実践事例
(1) 指導計画例

 コースによって重点の置き方が異なるため,授業中の説明方法(ポイントの置き方)や進度等の違いが必然的に生じる。そこで,一つの単元に使う時間は各コースともに合わせ,その中で配分する時数を工夫することによって個に応じた指導を行った。

(2) 数学科コース分けレディネステスト(図形領域)の例
 各領域でコース分けをする前に,下記のようなレディネステストを行って,生徒のコース選択の参考としている。
Acrobatデータ<レディネステスト> Acrobatデータ<レディネステスト>

(2) 平成15年度との比較
 学力の向上の度合いを測るために,平成15年度と同一のテストを平成16年度の第2学年を対象として行った。その結果として,50%以上の達成度の生徒が,平成15年度は74%であったのに対して平成16年度は82%に増加しており,3コース制の少人数授業を行った成果がある程度あがっているものと思われる。


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4 英語科のねらいと指導体制
(1) コースの特徴
(ア) 2年生
  「基礎復習コース」=基本文型の暗唱というような基本的内容の理解や簡単な練習問題などにじっくりと時間をかけている。
  「基礎充実コース」=基本的内容をおさえつつ,作文や応用問題などに取り組ませている。
  「基礎発展コース」=基礎学力を応用したゲームや,応用問題などに取り組ませている。
(イ) 3年生
  「基礎復習コース」=基本文型の暗唱というような基本的内容の理解や簡単な練習問題などにじっくりと時間をかけている。
  「基礎充実コース」=基礎学力を応用したゲームや,応用問題などに取り組ませている。
 どのコース名にも「基礎」という言葉があるように,「基本を重視し,基礎学力をしっかり固める」という点でどれも共通している。確かな基礎学力という土台があってこそ,生徒の自信とやる気が育まれると考えたからである。
 各コースの進度は,1時間ごとにほぼそろえている。「基礎復習コース」で基本文型の暗唱というような基本的内容の理解や簡単な練習問題などにじっくりと時間をかけている間に,「基礎充実または発展コース」では基礎学力を応用したゲームや,応用問題などに取り組ませている。
 2年生,3年生の基礎復習コースでは,最低限習得させたい内容として,基礎単語および基本文を理解し,読み書きできることを目標としている。人数を他コースよりも少なくし,授業の中で個別指導をしながら,生徒一人ひとりにその目標を達成させることに重点を置いている。
 2年生の基礎充実コースは,1教室に30人程度と人数も最も多く,少人数授業とは言い難い面も否めない。しかし,同程度の習熟度の生徒によって編制されたコースであるので,同じ一つの説明だけで教室内のほぼ全員が理解し,次の内容に進むことができるという利点もある。生徒は,1時間の授業の終わりには学習した内容を習得したように見えるが,次時に行う前時の復習で,忘れていたり,あまり身に付いていなかったことが明らかになるなど,家庭学習不足による定着の不十分さが目立つ。
 2年生の基礎発展コース・3年生の基礎充実コースの生徒は,英語を学ぶことに喜びを感じ,予習・復習を確実に行う生徒が多く,新しい学習内容の理解も比較的速い。
3年基礎復習コース授業風景
(2) コース分け方法
 研究1年目は,1・2年生において1クラスを「基礎復習コース」と「基礎充実コース」の2コースに分け,それぞれに1人ずつ教師がついて授業を行った。少人数のため学級内の生徒全員にきめ細かな指導ができるという利点はあるが,初めて英語を学習する1年生時においては,2・3年生時に比べて,生徒の授業に対する理解度の差が小さい。
 このことを考慮し,研究2年目は,1年生は一斉授業,2年生は2学級を合わせた上で「基礎復習コース」「基礎充実コース」「基礎発展コース」の3つに分けた習熟度別授業,3年生は1学級を「基礎復習コース」「基礎充実コース」の2つに分けた習熟度別少人数授業を行った。
 コースは生徒が自分で選択するようにし,年度初めと2学期半ばの計2回コース選択のためのアンケートをとった。生徒は「英語が得意な者は『基礎充実または発展コース』,そうでない者は『基礎復習コース』」という意識がややあるようで,「基礎復習コース」に人数が集中する傾向がある。コース選択アンケートの結果で人数差が極端な場合は,教師の個人的な働きかけにより人数調整を行った。

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5 英語科の実践事例
(1) コース別学習プリント
 2,3年生ともに,少人数の授業では一人ひとりに目が行き届き,個に応じた指導ができた。2年生については昨年よりも1コースの人数は増えたが,3コースに別れているので,より自分の力にあったコースを選択できたといえる。そのため基礎発展コースではレベルの高い学習プリントに取り組めたり,基礎復習コースではかなり基礎的な内容に絞った指導をするなど,授業内容の精選という昨年度の課題をおおむね達成できたのではないかと思われる。
Acrobatデータ〈基礎発展コース用〉 Acrobatデータ〈基礎充実コース用〉 Acrobatデータ〈基礎復習コース用〉

(2) 家庭学習について,全体的に不足しているということが分かったため,英語科では「毎日勉強ノート」を準備させ,自主学習に取り組ませている。しかし,積極的に提出する生徒としない生徒がはっきりとしてきている。そこで,期間を決めて下記の例のように「毎勉コンクール」を設け,自主勉強を促す活動をした。その結果をみて,自主勉強をより意欲的に取り組むようになった生徒や,毎日提出することを楽しみにしている生徒も出てきた。また,自主勉強で単語練習をして,毎時間行っている単語テストで満点が取れるなど,目に見えた結果につなげていくことで,達成感や自主学習の必要性をより一層感得させたい。

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6 成果と課題
(1)成果
@ 数学科
ア 少人数授業による学習内容の習熟の程度に応じた指導で,個々の生徒に目が行き届きやすく,より個に応じたきめ細かい指導を行うことができ,また,進度の差が少なく授業がやりやすいので,生徒の基礎学力が向上した。
イ 各コース内で,生徒の理解の状況や興味・関心,成績などに応じたグループ分けも可能になるため,生徒たちのやる気を引き出す「分かりやすい授業」につなげることができ,生徒の主体的な学習を促し,自ら学び自ら考える力を身に付けさせることができた。
A 英語科
ア 2,3年生ともに,少人数の授業によって一人ひとりに目が行き届き,個に応じた指導ができた。また,一斉授業ではあまり発言しない生徒も少人数で行うと,意欲的に発言する生徒が多くみられ,「人数が少ないのであまり緊張しない」や「人が少ないので発表しやすい」などの意見があり,意欲的に授業に取り組んでいる。
イ コース設定を工夫し,3コースに別れているので,より自分の力にあったコースを選択できたといえる。そのため基礎発展コースではレベルの高い学習プリントに取り組めたし,基礎復習コースにおいてはかなり基礎的な内容に絞った指導ができるなど,授業内容の精選という昨年度の課題については,おおむね達成できた。
(2)課題
ア 理解の程度に応じた授業を仕組んでいくためには,さらに個に応じた教材開発や指導方法の工夫を考えていくことが大切である。このことについては,習熟度別の少人数集団であるからこそ実現できる授業のあり方を模索しつつ,今後の課題として指導内容や指導方法の工夫改善を図っていかなければならない。
イ 数学や英語を苦手とする生徒ほど,家庭学習の習慣が身に付いておらず,家庭での学習量が不足し,学習に対する意識の低下が伺える。確かな学力の構築に向けて,少人数授業を実施する教科に限らず,学習に対する習慣化が必要である。

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7 実践に当たってのポイント
学校全体で研究に取り組む体制をつくり,共通理解のもとに各研究部の活動を進める。
PTA総会や学校一般公開日などの機会に,保護者や生徒に取組みの理解を求める。

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