特別支援教育推進体制モデル事業の実践                (指導課)

特別支援教育推進体制モデル事業の実践

 −山口県立萩養護学校−

学校紹介2 具体的な活動内容3 成果と課題4 実践に当たってのポイント

1 学校紹介

 山口県立萩養護学校は小学部12名、中学部22名、高等部35名、計69名の児童生徒が在籍する知的障害養護学校である。山と海に囲まれた自然が豊かで静かな場所に、平成4年に山口県立宇部養護学校の分校から、独立して開校した。
 萩市を中心とした萩地域においては、平成11・12年度には文部科学省の委嘱事業「早期教育相談等の在り方に関する実践研究」、平成13・14・15年度には「障害のある子どものための教育相談体系化推進事業」の指定を受け、教育、福祉、労働等の関係機関が連携した支援について研究を進めてきており、教育相談体制の整備が充実してきている地域である。
 本校は、現在、教育相談部を中心として、北浦地区の幼・保育園、小・中学校、高等学校等に在籍する障害のある幼児児童生徒に対する教育相談活動を行っている。

教育相談活動について
 主に北浦地区の障害のある幼児児童生徒を対象に教育相談を実施している。
 その相談の多くは「訪問相談」という形をとっており、相談依頼者の指定する場所に相談員が赴き、関係者同席の上で相談を行うようにしている。

相談件数の内訳(単位:件)

幼稚園
保育園

小学校

中学校

高等学校

その他

合計

相談件数

65

148

49

272

                              平成17年1月末現在


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2 具体的な活動内容(地域のセンター的役割を果たすための重点的取組み)

(1)教育相談活動

 教育相談部の業務として、相談の依頼のあった学校等を訪問し、発達検査等を行い、それを基に関係者へのアドバイスを行う。
 内容によっては電話や電子メールによる相談も受け付けている。

(2)小・中学校における授業等への支援

ア 地域の小学校特殊学級において担任との合同研究授業
イ 教材の開発と貸し出し
ウ 通常の学級に在籍する軽度発達障害のある児童生徒への支援についての助言
エ 小・中学校での校内研修会への講師の派遣

(3)校内での取組み

 校内の教育相談活動の充実を図るために「教育相談月間」を年に2回実施し、児童生徒の実態把握を行い、発達に応じた課題の設定を行っている。
 また、特別支援教育についての理解啓発のための校内研修会を行った。

(4)他の機関との連携

ア 地域特別支援連携協議会
 萩地域特別支援連携協議会を開催し、障害のある幼児児童生徒を、教育、福祉、医療、労働等の関係機関が連携して支援するための協力体制をつくった。
 また、本校において、小・中学校の「特別支援教育コーディネーター」を対象とした研修会を、年間6回実施した。
 研修内容としては、「校内委員会の持ち方」、「発達に応じた子どもへのかかわり方」、「コーディネーターとしての心構え」等であり、講師は、本校教諭や地域特別支援教育コーディネーターが担当した。

実施月

内         容

講師等

6月

第1回萩地域特別支援連携協議会

9月

第1回特別支援教育コーディネーター研修会
「ガイドラインについて」

山口県立萩養護学校
坂井直樹 教諭

10月

第2回特別支援教育コーディネーター研修会
「校内委員会もち方について1」

萩市立明倫小学校
三輪敏彦 教諭

10月

第3回特別支援教育コーディネーター研修会
「校内委員会のもち方について2」

山口県立萩養護学校
石橋 剛 教諭

12月

第4回特別支援教育コーディネーター研修会
「教育行政と特別支援教育」

萩市教育委員会
尾羽根公介 指導主事

12月

第5回特別支援教育コーディネーター研修会
「コーディネーターの在り方を改めて考える」

山口県立萩養護学校
川ア滿穗 校長

1月

第2回萩地域特別支援連携協議会

2月

第6回特別支援教育コーディネーター研修会
「特別支援教育推進体制モデル事業の取組みのまとめ」

萩教育事務所
松本智昭 指導主事

<第2回地域特別支援連絡協議会>

<特別支援教育コーディネーター研修会>

イ 具体的な連携
 萩地域では、日ごろから、学校と医療機関、児童相談所等の関係機関の間での情報交換が十分になされており、また、萩市教育委員会の主催の「はばたき教育相談会」等の相談活動にも、積極的に関わるなど、関係機関との連携に努めている。また、萩市内の福祉施設や療育機関のコーディネーターとの連携も進めており、合同の研修会等も開催した。

(5)その他

 北浦地区の市町村の就学指導委員会に委員として参加し、教育相談活動で得た情報を、保護者の了解の基に、幼児児童生徒に関する情報の提供や適正就学についての審議を行っている。
 また、障害のある幼児児童生徒が気軽に相談しやすい学校にするための試みとして、公開授業研究および学校開放事業を行った。地域の方々や特殊学級担当者を対象に公開授業研究を開催し、「音あそびの授業」においては児童と地域の方々が共に手をつないでダンスをした。
 このことがきっかけで特殊学級担任からの授業支援の依頼が増加した。


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3 成果と課題

(1)成果

特別支援教育コーディネーターを校務分掌に位置付けたことで、小・中学校に対する支援が大変行いやすくなり、かなり柔軟に対応ができるようになった。
今年度は「利用しやすい特別支援教育のセンター」としての取組みに重点を置いてきた。
 誰もが相談しやすい学校とするための取組みとして、「公開研究授業」などを実施したが、支援依頼の増加のきっかけにもなったことから、今後も継続していく必要があると考えられる。
関係機関との連携で大切なのは、人と人とのつながりである。地域特別支援連携協議会の存在は、連携の幅を広げていると感じている。連携協議会は、関係機関の担当者の連携において、今後も不可欠なものである。

(2)課題

相談の依頼や授業支援の依頼件数が増加してくると、やはり特別支援教育コーディネーターだけで対応することは難しい。校内の組織を整えるなどして、本校の教育活動に支障のない範囲で、授業支援等にあたることができるシステムを検討していくことが必要である。
通常の学級に支援に入る際、養護学校の教員も各学年で扱う教材に精通しておく必要があり、また軽度発達障害に関する基礎的な知識、児童生徒への対応の仕方など熟知しておくべきである。
 そういった意味では、養護学校の教職員に対する研修が、今後さらに必要になってくる。


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4 実践に当たってのポイント

(1)担当者から

 養護学校における特別支援教育コーディネーターという役割は、小・中学校のコーディネーターの役割と少し違う面がある。今年度は養護学校が地域の特別支援教育のセンター校として存在するために養護学校のコーディネーターが何をなすべきなのかを模索した1年間であった。今年度行った支援により、小・中学校にとって少しでも役に立つことができていたとすれば、コーディネーターの存在理由を示し、また、センター校としての役割を果たせたと思われる。
 現場で一人で悩んでいる教師がいる。集団に入れなくて困っている児童生徒がいる。そんな方々に精神的にも少しでも楽になってもらえるようにするのが、地域の特別支援教育のセンター校としての養護学校の今後の役割ではないだろうか。そのためにも養護学校は入り口をもっと広くしていきたいと考える。

(2)校長から

萩地域においては、既に、関係機関とのネットワークがかなり構築されているので、連携協議会の委員の選定に当たっては、可能な限り、これまでの人的資源を活用することとした。
モデル事業に関係する会合はできるだけ本校で開催し、養護学校の実情も見ていただくようにして、特別支援教育への理解を図るとともに、小・中学校との連携に努めた。
小・中学校と養護学校との連携は、教育相談活動の面では十分に行われていたが、他の面では不十分な部分があったので、授業支援など新たな取組みの導入を図った。
センター的機能の充実強化を図るため、特別支援教育コーディネーター研修会を開催し、特別支援教育や個別の教育支援計画などについて学習した。その際、モデル校5校だけでなく、対象を広げて、教育事務所管内の小・中学校にも案内をしたところ、多くの参加者があった。
この機会を捉えて、授業研究など校内での研修体制の強化を図るとともに、小・中学校の教員と地域の人を対象にした公開授業を実施し、養護学校への理解を図りながら、開かれた学校づくりに努めていきたい。


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