へき地・複式教育の充実                         〔指導課〕
 学ぶ楽しさをみつけ、生き生きと活動する
               波野っ子の育成

                      −
本郷村立波野小学校−

   T 学校紹介U 研究の概要
     V 研究の実際 1 基礎学力の定着のために
             2 一人一人が主体的に取り組むために
             3 一人一人が輝くためにW 成果と課題
実  践  の  ポ  イ  ン  ト
 基礎学力の確実な定着を図る指導法の追究
 一人一人が主体的に取り組む指導法の追究
 一人一人が輝く場の設定の工夫

T 学校の紹介
 県東部にある本郷村の南部に位置する全校11名の学校である。保護者・地域の全面的なバックアップのもと、「主体的に未来社会に対応できる子どもの育成」を教育目標に掲げ、人や自然とのかかわりを重視した教育活動を展開している。
     (運動場から見た波野小学校)


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U 研究の概要
 本校では、「生き生きと活動している子どもの姿」は、まさに「自分を豊かに表現している姿そのもの」であるととらえることから研究のスタ−トをきった。子どもが様々な事象と出会う中で、他者とかかわりながら、自分の思いを何らかの形で表出している姿を、より豊かなものに高めていきたいと考えた。そこで、子ども一人一人が自分の内にもっているよさや可能性を高めていける教師でありたいと願ったのである。子どもの自己実現の過程を支援するという立場から、今あるその姿から、より豊かな姿へと導きたいと考えた次第である。そのために、一人一人の資質(豊かに表現する力)を今以上に高めていくための支援の在り方を探ることにした。主題に迫るために次の3点を研究の柱とした。
1 基礎学力の定着を図る指導法の追究
2 一人一人が主体的に取り組む指導法の追究
3 個が輝く場の設定の工夫



 
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V 研究の実際 1 基礎学力の定着のために
 読むこと、書くこと、計算することは学習をする時の土台となるものである。基礎学力の定着を図るためにも、まずは、読み、書き、計算の力をしっかりと身に付けさせることから始めることにした。

(1)漢字・計算の反復練習の徹底
 漢字練習:正しく覚え、正しく書くことに力を入れている。そのために、授業時間内に小テストや練習時間を設けた。
 計算練習:百ます計算(十ます)を中心にしながら、計算ドリルやプリントを活用した。

(2) 話す、聞く、書く、読むことの指導の充実
 特に力を注いでいる取組みは、以下の通りである。

 低学年   中学年  高学年
話す
聞く
スピ−チ
全校集会
お話の部屋
本の読み聞かせ
スピ−チ
全校集会
お話の部屋
サイコロト−キング
全校集会
お話の部屋
書く 日記
学習日記
行事日記
日記
学習日記
行事日記
交流新聞
テーマ日記
学習日記
行事日記
読む 全校読書
音読練習
全校読書
音読練習
全校読書
朗読練習

○行事日記について
 平成15年度より行事写真を掲示し、その活動を振り返る取組みを始めた。全児童が、活動の思い出や友だちのよさなどを書くようにしている。日記の内容も、当初の「楽しかった」「おもしろかった」から、広がりのある内容へと変わってきた。


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2 一人一人が主体的に取り組むために 

 複式学級における学習指導については、これまでにも数多くの実践が見受けられる。本校も先進校や各研究大会等に学びながら、学習指導について次のようなよさがあると考えて指導に努めている。
○ 少人数のために大きな集団での社会的経験が不足がちではあるけれども、個に応じた指導が展開しやすい。
○ 学年別指導の場合、教師の直接指導を受ける時間が少ないけれども、その時間帯で自学自習の経験を多く積むことができる。
○ 2学年で編制されていることから、上学年と下学年という二つの立場を経験できる。
 複式学級では、自分で学習を進めなくてはならない状況が生じる。この機会を、一人で学ぶ力や友だちと共に学び合う力を育む絶好のチャンスとして捉えて、次のような取組みを行っている。

(1)学習過程の設定
1単位時間の学習過程を「つかむ」「さぐる」「ねりあう」「たかめる」の4段階とした。


つかむ
課題設定 ・本時の課題がわかる。

さぐる
課題追究 ・自分なりに解決の見通しをもつ。
・自分なりの考えをもつ。
・自分の力で課題解決に取り組む。

ねりあう
追究・解決
交流
・自分の考えを出し合う、分かち合う。
・話し合いを通して、考えを広げたり、深めたりして、本質に迫る。
・課題を解決する。
集団

たかめる
解決・定着
発展
・自分の学びを振り返る。
・学習の確かめをする。
・新たな課題を見いだす。

(2)「ずらし」「わたり」の工夫
 1単位時間の学習過程を組み合わせて「ずらし」「わたり」を工夫した。

(3)同時間接指導(間・間指導)の時間帯の設定
 同時間接指導の時間を設定して、一人一人の学習状況に応じた支援を行った。

(4)すいすいカードの提示
 一人学びや共に学び合う力をはぐくむことをねらいとして「すいすいカード」を作成した。
 一人一人の実態に応じて、学習内容、学習の進め方等を記述している。子どもたちが、自分のペース、自分なりのやり方で課題解解決に取り組むことができるような支援として活用している。


(5)学習リーダーを立てた指導の充実

 
主体的な学びやリーダー性をはぐくむことをねらいとして、学習リーダーを立てた学習指導を行っている。
【学習リーダーの役割】
 低学年  中学年   高学年
○学習の流れ(すいすいカード)に従って進行する。
○主として「ねりあう」段階における話し合い活動の進行をする。
 ・答えの確かめ
○学習の流れに従って進行する。
○「ねりあう」段階における話し合い活動の進行をする。
 ・考えの発表、質問、意  見交換
○学習の流れに従って進行することや、自ら課題を作り、解決の見通しを立てて進める。
○話し合い活動の進行をする。
 ・考えの比較検討、整理

(6)他者や学習素材とのかかわりを重視した指導の充実
 子ども一人一人の表現がより豊かなものへ高まっていくためには、他者の存在が不可欠である。表現内容の豊かさや表現方法の豊かさにとどまらず、一人一人の内面を磨き高めることを中心に据えて取り組んだ。一人より二人、二人より三人といった具合に、一緒に学ぶ楽しさやできた喜び・わかる喜びを、友だちと分かち合う関係づくりに努めた。自信や学習意欲を、より向上させるために、また、二人だけでは、かかかわりにくい面があるので、教師を媒介として二人のかかわり合いを支援することにも努めた。さらに、地域やその道の専門家を指導者として招き、指導者のものの見方や考え方にふれる機会をつくることにも努めている。

(7)ノ−ト指導の充実

 
一人一人の考える力を高めるために、ノ−ト指導の充実に努めている。書くことによって、自分の考えを深めたり、まとめたり、広げたりするとともに、内面を豊かにする(自分をつくる)ことにつながると考える。そこで、各学年に応じたノ−ト指導に努めながら、思考の軌跡が残るノ−トづくりをめざしている。

(8)発表ボードの活用

 
自分の考えをしっかりもって、相手にわかりやすく伝えるための手段として、発表用のホワイトボ−ドを活用している。その際、自分の考えを図や数字あるいは文字などを使って、自分なりに工夫させてまとめたうえで発表させる。自分の言葉で相手にわかりやすく伝えようとする気持ちや相手にわかってもらおうとする気持ちをもって話すことにより、その結果として、自分の考えが相手に正しく伝わったと実感できた時、次の学習活動への意欲づけにもなると考える。

(9)学習日記の活用
 終末段階において、自分の学習や友だちとのかかわりについて振り返らせるとともに、次時への学習の意欲づけを図ることにした。しかし、なかなか長続きしない。子どもが書かされているようで進んで書こうとしない。マンネリになる。次時へ生かしにくいなどの難しさがある。一方で教師は、直接子どもとかかわれなかった時(間接指導の時間)の、子どもたちの学習の様子も知りたい。また、本時の感想を今後の授業改善に努めたい思いもある。現在、以下の内容の中からいくつかを取り上げて書かせることにしている。
 内容
・今日の学習でわかったこと
・今日の学習でわからなかったこと
・授業で気をつけたところ
・次の時間にしたいこと
・自分なりに工夫したこと
・話し合いについて
・友だちの考えのいいところ
・友だちについて発見したこと

(10)一人一人を見つめる学習指導案の作成
 個に応じた指導の充実を図るための一方法として、一人一人の実態を踏まえながら、○○さん指導案、□□君指導案づくりをめざした試みを行っている。指導案の様式は、これまでの指導案をベースにしながら、「さぐる」「たかめる」段階における学習活動及び教師の働きかけに重点をおいて作成している。


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3 一人一人が輝くために
 子どもは本来、「よくなりたい」「できるようになりたい」という願いをもっている。また、他者や集団とかかわりながら自分を高めていく存在でもある。そこで、一人一人が輝ける場の設定の在り方を模索し、よりよい人間関係づくりの構築をめざして、次のような取組みを行っている。

(1)相手のよさを認め、共に高め合う場の充実
 共に高め合う場の充実のために、朝の会、帰りの会、全校集会、俳句教室をはじめとして、様々な場で児童のよさを、互いに見つけあうことに努めている。また、昨年度から研修を積んできた「構成的グループエンカウンター」を全校体制で取り組んでいる。

(2)合同学習、交流学習、縦割り班活動の充実

@ 合同学習
 合同学習は、学級の枠をこえて2学級以上の児童が一緒に学習する学習方法をいう。これまで本校でも行ってきたが、さらにより良い合同学習をめざして、再度、合同学習の在り方を見直すことにした。
 指導内容を精選するための基本的な視点
○ 経験、交流、視野の拡大が図られ、子どものもつ可能性をより引き出し、活動意欲が高められる内容であること。
○ 少人数でも指導は可能であるが、集団の拡大を図ることで、より効果的な指導が展開できる内容であること。
○ 集団の拡大を図ることで、目標がより確実に達成できる内容であること。
 現在、本校では体育、音楽、国語、学級活動で取り組んでいる。その際、話し合う活動を効果的に取り入れて、児童同士の練り合いを大切にしている。

A 交流学習
 交流学習は、近隣の2校以上の同学年児童や各校の全校児童を1カ所に集めて、各校の教師の協力によって学習指導を行う方法のことで、一般には集合学習といっている。しかし、本校では、子ども同士のかかわりあいを、より一層深めたいという思いを強くもっているので、あえて交流学習といっている。実施にあたっては、他校の子どもたちと一緒に行う学習活動を「全習」とし、交流の前や後に各学校で行う学習活動を「分習」として位置付けている。よりよい交流学習にしていくために、他校の先生方との連絡を密にして事前に授業内容の検討を行っている。

B 縦割り班(せせらぎ班)活動
 全校で活動する際には、可能な限り縦割り班(せせらぎ班)での活動を主体にしている。全校を2班で構成した縦割り班の活動を通して、子ども同士の交流をより一層深め、他者を思いやる心、感謝の心を育むと共に、連帯感、責任感、成就感を深め、自発性を培いたいと考えている。少人数ではあるが、縦のつながりと横のつながりのバランスをとりながら、教育活動に取り入れている。

(3)地域と連携・協力した教育活動の充実
 地域と連携・協力した教育活動は、どの学校も重視されていることと考える。本校も同様に、地域をあげた運動会、米づくり、和紙づくり、ふれあいキャンプ、ふれあい交流会やスキー学習などの教育活動を、地域と連携して取り組んでいる。


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W 成果と課題

1)成果として
・互いに励まし合い協力し合う姿や、自信がついてきたことにより、目標の実現に向けて前向きに取り組む姿が見受けられるようになってきた。
・集中力がついてきたことや、視野の拡大により、ものの見方や考え方に広がりが見受けられるようになってきた。

(2)課題として
・一人一人の力が十分に発揮できるよう、子ども同士で互いに高め合える関係づくりに、より一層努めていきたい。
・子どもが自主的・主体的に取り組むことができるような教師の働きかけの在り方、なかでも、一人一人に応じた支援として、教師の立つ位置やかかわるタイミングやそのかかわり方を見極め、子どもの学ぶ意欲や学び続けていこうとする意志をはぐくむ働きかけの在り方について、さらに研究を深めていきたい。
・指導と評価の一体化という点では、まだまだ研究不足なので、先進校の取り組みを参考にしていきたい。


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◎実践に当たってのポイント(担当者)

 基礎学力の定着のために
  ・ 授業時間内に可能な限り、練習の場を設けること。
  ・ 継続して取り組むこと。
  ・ 過去の自分と比較させること。
 一人一人が主体的に取り組むために
  ・ 間接指導につなげる直接指導の充実を図ること。
  ・ 間接指導における自主的・主体的な学習の充実を図ること。
  ・ 段階的に間・間指導の時間帯を設定すること。
 一人一人が輝くために
  ・ 一人一人の学びが保障される場の充実を図ること。
  ・ 一人一人の考えを集団で高めていくことができる場の充実を図ること。
  ・ 自分自身が集団の機能によって育っていると自覚できる場の充実を図ること。
  ・ 「わかる」「できる」喜びを感じる場の充実を図ること。


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