児童生徒人間関係づくり実践モデル事業                                〔指導課〕
「児童生徒人間関係づくり実践モデル事業」の実践
    
宇部市立原小学校−
  1 学校紹介2 具体的な研修内容3 実践事例4 成果と課題
1 学校紹介
 宇部市立原小学校(児童数約400名)は、宇部市西端に位置し、山陽小野田市に隣接している。明治34年に厚南小学校の分校として発足し、平成15年度に創立60周年を迎えた伝統ある学校である。地区民の教育に対する思いは強く、市民センターをはじめとする各種団体の協力体制が整っている。地域には古くから住んでいる三世代家族が多く、温かい家族愛に育まれた純朴な児童が多い。 

<校舎写真>

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2 具体的な研修内容
(1)研修主題「お互いを認め合い高め合う学級づくりの研究」
 〜構成的グループエンカウンターの手法を中心にして〜
 学級という集団の中で、一人ひとりが自分の居場所を見付け、相手を受け入れ、自己主張をしながらも交流の有る温かな人間関係を育むことで、子ども達の個性を伸ばし、生きる力を養うことをねらいとする。

(2)研究の経過
講師 森 洋介 先生(鈴ケ峯女子短期大学助教授)
 平成16年度 (三年次計画の第一次)
月 日 研修内容
6/21 宇部市立黒石中と合同研修 指導講話とエクササイズ
7/5 2年授業研究(授業者・講 師)  研究協議
10/29 2年授業研究(授業者・2年担任) 研究協議
11/29 1年授業研究(授業者・1年担任) 研究協議
2/14 反省と次年度の方向性について協議

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3 実践事例
(1) 2年
@ 本時案
 「サッカージャンケン」をしよう
ア ねらい
 身体接触やジャンケン等の集団遊びを通して、友達の輪を広げたり、深めたりして、友達との温かい関係をつくる。
イ これまでに体験したエクササイズ
勝ち残りジャンケン・・・・・・・・・・・・・・・・負けた人はのいていく
あいこジャンケン・・・・・・・・・・・・・・・・・あいこの人だけのこる
進化ジャンケン・・・・・・・・・・・・・勝つたびに進化して姿勢が変わる
ジャンケン列車・・・・・・・・・・・・・ジャンケンで負けたら後ろにつく
アウチでよろしく・・・・・・・・・人差し指1本を触れ合ってあいさつする
いろいろ握手・・・・・・・歩き回ってより多くの人といろいろな握手をする
フルーツバスケット・・・・・・・・・円になり好きな果物を言って動く
なんでもバスケット・・・・・・・・・鬼が言った言葉に当てはまる者が動く
夏休み中の体験話・・・・・・・・グループごとに夏休み中のことを語り合う
ウ 準 備
 赤白帽子、筆記用具、探検ボード、ふりかえりシート、コーン、説明図、得点表、磁石、ゼッケン、ストップウォッチ
エ 展 開
場  面 学  習  活  動 留 意 点
ねらい





ウォーミングアップ


軽いフィードバック


エクササイズについてのインストラクション












エクササイズ実施


シェアリングとまとめ
1.ねらいを知る

 「みんなともっと仲良くなるゲームをする」


2.ウォーミングアップのゲームをする 
・ ジャンケンゲーム
・ アウチでよろしく

  ウォーミングアップのフィードバックをする


3.初めてのゲーム「サッカージャンケン」の説明を聞く
・ 赤白2チームで作戦を立てる

【内容】
・学級を2チームに分ける。
・キーパーのジャンケンで先攻、後攻を決め、守りのチームは、ポジションにつく。攻めのチームは、スタートラインに並ぶ。
・攻めのチームは、一番目の守りとジャンケンをし、勝ったら二番目の守りとジャンケン、という具合に次々に進んでいく。
・ゴールキーパーに勝ったら、得点になる。
一度でもジャンケンに負けたら、スタートラインに戻って最初からやり直す。

4.「サッカージャンケン」をする
・ キーパーに勝ったら得点を入れる

5.新しいゲーム「サッカージャンケン」についてふりかえる ・きょうのめあてをつかませる
・きょうのめあてをつかませる




・立ちジャンケンをさせる
(勝ち残り・あいこジャンケン)
・目と目を見て、恥ずかしがらずにさせる



・説明図などを使って分かりやすいようにする
キーパー 1名
守り   3列


     ○
    ○○○
   ○○○○○
 ○○○○○○○○○
     ↑
●●●●●●●●●●●●

・前半・後半5分ずつを実施する




・自由に感想を発表させる
・ふりかえりシートに記入させる
・指導者からのフィードバックを行う
オ 評価
・サッカージャンケンのルールを守って楽しくゲームをすることができたか。
・たくさんの友だちとジャンケンをすることができたか。
A授業後の考察
ウォーミングアップのエクササイズは、学級の中でかなり定着しているものなので、子どもたちは楽しく活動することができた。メインのサッカージャンケンにつながるエクササイズをウォーミングアップで仕組むことが効果的であり、ジャンケンを取り入れた「あいこジャンケン」や「勝ち残りジャンケン」などのエクササイズは適当であった。
メインエクササイズの「サッカージャンケン」では、キーパーや守りなどの役割分担が必要になってくるが、ウォーミングアップのエクササイズの結果がその役割分担にうまくつながっていく展開も考えていきたい。
役割分担を相談する作戦タイムでは、サポートの必要なチームもあったが、それぞれのチームで子どもたちがお互いを認め合いチームで協力しようとする姿勢が見られた。
身体接触をする活動を多く取り入れたいという意図で、ルールの一つに「握手をしてからジャンケンをする」ということを加えたが、ジャンケンを楽しみながら、ゲームを盛り上げるスピード感、リズム感には欠ける面があり工夫が必要である。握手のかわりに「両手をタッチしてからジャンケンをする」という方法も考えられる。
メインエクササイズのサッカージャンケンは、初めてのエクササイズであり、ルールも簡単であることから、子どもたちは大変楽しく取り組み、「たくさんの友だちとジャンケンをして、友だちがふえた気がした」という感想が多く見られた。
一列目の守りの子どもの中であまり相手が来なかったと残念がる反省もあったことから、守りの人数配分など学級の実態に応じてルールを考えていくことが必要である。
エンカウンターでは、シェアリングの段階が重要かつ困難な場面であり、今後も研修をすすめていく上での大きな課題である。
今後の研修では、まずシェアリング方法と時間を確保して、エクササイズの展開を考えていきたい。また、リーダーである教師が、一個人として自己開示をして、モデルを示すこともシェアリングが円滑に実施できる要素の一つである。エクササイズのリーダーとしての研修を積んでいくことが大切である。
<授業風景>

(2)1年
@ 本時案
ア ねらい
 ありがとうジャンケンを通して、あたたかい言葉をすすんでつかう肯定的な人間関係を育てる。
イ これまでに体験したエクササイズ
あいこジャンケン・・・・・・・教師(相手)とおなじものを出すジャンケン
握手でさよなら・・・・・・・・帰りに教師が一人ひとりと握手する。
ウキッ・・・・・・・・・・・・シェイムアタッキング。一人が「ウキッ。」と言ってポーズをとり次の人がまねをする。次々伝えていく。
曲「ぞうさんのさんぽ」・・・・「仲間を見つけてこんにちは」の所で握手・自己紹介
曲「さんぽ」・・・・・・・・・曲に合わせて歩きながら出会った人と手でタッチ
ジャンケン列車・・・・・・・・ジャンケンで負けたら勝った人の後ろにつながる。
鏡よかがみ・・・・・・・・・・鏡になったつもりで教師のまねをする。
同じ動物集まれ・・・・・・・・教師が5種類の動物のシールを児童全員の背中に貼り、児童は黙って同じ動物のグループに集まる。
2つの部屋・・・・・・・・・・教師の質問に対して「はい」「いいえ」のコーナーに分かれて理由を言う。または、2つの項目のどちらが好きか選んで理由をいう。例「給食が好き?」「自分が好き?」「夏と冬のどちらが好き?」
手つなぎ伝信ゲーム・・・・・・輪になって手をつなぎ、ぎゅっと握り、伝えていく。
ありがとうジャンケン・・・・・二人組でジャンケンをし、負けたほうが勝ったほうに「〜してくれてありがとう」と言う。
ウ 準備物   カード・音楽CD
エ 展 開
場 面 学 習 活 動 留 意 点
ねらい



ウォーミングアップ




エクササイズ実施














メインエクササイズを実施





シェアリングとまとめ
1ねらい
 「1年生のみんなと仲良くなるゲームをしよう」

2ウォーミングアップのゲームをする。
・ ジャンケンゲーム
・ 鏡よかがみ


3「ふわふわことば」と「ちくちくことば」について考える。

・ ばか    ・ありがとう
・ デブ    ・がんばってね
・ ぶす    ・いっしょにあ
・ チビ     そぼう
        ・どうしたの

○ 出た言葉を声に出していってみて、どんな気持ちがしたかを発表する。
・ ふわふわことばは気持ちがいい
・ ちくちくことばはいやな気持ち


4ありがとうジャンケンをする。

・ 「ともだちになってくれてありがとう」
・ 「やさしくしてくれてありがとう」

5ありがとうジャンケンをしてどんな気持ちになったかふりかえる。
○ きょうのめあてをつかませる。



○ 「ジャンケンホイホイ」のかけ声に合わせて、じゃんけんをする。
○ 教師の動きに合わせて鏡になったつもりで体を動かす。


○ 言われてうれしかったり、元気が出たりする「ふわふわことば」と言われると悲しくなったりイライラする「ちくちくことば」について出させる。
○ 先に「ちくちくことば」について考えさせる。
○ 生活の中で体験したことを思い出させる。
○ わき起こってくる自分の気持ちに注目させ、2つの言葉の違いに気付かせる。

○ 言われてうれしい「ありがとう」をジャンケンで負けた方が言う。


○ 感想を発表させる。
・どんなことでありがとうと言われたか。
・どんなことでありがとうと言ったか。
・ 言われてどんな気持ちがしたか。

○ 指導者からフィードバックを行う。

オ 評 価
・すすんでありがとうジャンケンをし、相手に「ありがとう。」と言うことができたか。
・ 「ありがとう。」と言われて、ふわふわことばのあたたかさを体験することができたか。
A授業後の考察
ウォーミングアップもエクササイズも体を動かす活動は、楽しく行うことができた。2クラス合同で行ったが、自分のクラスだけでなく隣のクラスの児童とも積極的にジャンケンをして仲良くしようという気持ちが見られた。
「ふわふわことば・ちくちくことば」について考えた後で「ありがとうジャンケン」をすることにより、人と人をつなぐ「ありがとう」ということばの良さをより感じながら「ありがとうジャンケン」をすることができたように思う。
「ふわふわことば・ちくちくことば」について考えるのに思った以上に時間がかかった。2クラス合同であることや月曜の5校時であることなどから、なかなか集中して取り組めなかったことも要因である。このことから、「ふわふわことば・ちくちくことば」について考える活動は、前段階として各クラスでやっておいた方がよかったのではないかと思う。1時間の授業の中にエクササイズを2つ入れたのは少し欲張りすぎたと思う。
「ありがとうジャンケン」では、ジャンケンをして負けた方が勝った方に「○○してくれてありがとう。」などと言うようにしていたが、負けた方が言うことにより罰ゲームというような意識が働くので、教育的意図からは、勝った方が言うようにした方がいいのではないかと言う意見が出た。次回「ありがとうじゃんけん」をするときは、勝った方が「ありがとう」を言うルールでやりたいと思う。
「ありがとうジャンケン」で負けた児童は「友達になってくれてありがとう。」、「けしゴムをかしてくれてありがとう。」「ジャンケンをしてくれてありがとう。」などの言葉を言っていたが、相手のことをよく知って表現する力がないと、なかなか相手に応じた言葉は言えない。今の段階では、みんなが相手に応じて表現することは期待していない。ありがとうジャンケンの回数を重ねて友達関係も深まると共に、相手に応じてありがとうを言えるようになればいいという考えであるが、低学年の児童にとっては少し高度である。いきなり自由に相手のいいところを言うのでなく、段階を追ってジャンケンのルールを変えてもよかった。
(例)☆勝った方が、「勝たせてくれてありがとう。」と言う。
    ☆勝った方が、書いてある「ふわふわことば」の中からひとつ選んで言う。
「ふわふわことば・ちくちくことば」学習した後、「○○さんが、ちくちくことばを言ってきました。」などと言いにくることがある。子どもたちにとって「ふわふわことば・ちくちくことば」は分かりやすく表現しやすいので、生活の中に定着しつつある。
「ありがとうジャンケン」は、帰りの会や、ちょっとした時間でも取り入れることができ、和やかな気持ちになれるので、日頃の生活でも行うとよい。
<授業風景>

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4 成果と課題
 本校は、研究を始めてまだ日が浅く、エクササイズの仕組み方や児童へどのような指示を出すかを学び始めたばかりである。しかし、授業を行なうごとに、エクササイズそのものよりも実施後に行うシェアリングの重要性に気付くことができたのは、研究の成果である。エクササイズの後、児童がどんな気付きや感想を持ったか、お互いの思いを伝え合い、感想を共有化させることが必要だと感じている。
 リーダーは、自己開示しやすい場をつくることが大切な役目になるが、児童の否定的な感想や気づきに、どのように反応し全体に問い返していくかが大きな課題となっている。また、ものおじしない児童が何度も発言するような事態が発生したり、エクササイズやシェアリングとかけ離れた発言をしたりする児童に対して、どのように対応すればよいのかも難しい課題となっている。
 学級の児童が親しくなり、お互いを理解していくには心を開き合う必要がある。相手を親しく理解するにつれて、素直に自分を表現できるようになり、信頼関係はますます強まっていく。そうした意味では、児童の学校生活は毎日がエンカウンターだといってよい。しかし、意図的にエンカウンターを仕組む場合には、児童に必要性や意義を説明し、普段のけんかやいじめを解消する学習と結びつけて考えさせることも大切であると考えている。『人間関係を切り口に、自らの教育活動を分析して学級経営のビジョンをつくろう。エンカウンターを学ぶことで学級経営が変わり、学級経営が変わるから「学級」も変わるのだ。』これはエンカウンターを紹介したある参考書に書かれていた一行であり、エンカウンターを研究する本校にとって、大変に勇気づけられる一節であった。

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