小学校英会話学習の取組み                      〔指導課〕
 小学校英会話学習の実践を通して
                        
周南市立戸田小学校

   1 学校紹介2 具体的な活動内容3 成果と課題
実  践  の  ポ  イ  ン  ト
 耳から英会話に親しませる
 身近なことばから英会話に親しませる
 
楽しい体験活動を通して英会話に親しませる
 
授業をパターン化して英会話に親しませる

1 学校の紹介
 本校は、周南工業地域の中心地である旧徳山市(現、周南市徳山地区)の西端に位置する、全校児童199名(平成16年5月1日現在)の学校である。南は瀬戸内海に面した地域から北は夜市川流域の山に囲まれた農村地域までの広い校区を有している。
 5,6年生による総合学習「米づくり」や4年生の「菊作り」など、地域の方々の指導や協力も得ながら、「地域と共に歩む地域の中の学校」をめざして、感動体験を核とした特色ある教育活動を進めている。
 また、平成14年度より3年間の「小学校英会話学習普及事業」の指定を受け、3年生以上の総合的な学習の時間で継続的な英会話学習に取り組んできた。

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2 具体的な活動内容
(1)年間指導計画
3年 4年 5、6年
4月 あいさつ
児童からの質問
去年の復習
彼は、彼女は〜だ。
職業
自己紹介
何になりたい?
ぼくは〜になりたい(職業)
5月 あいさつ
あなたの名前は?
どこに行った?
〜できる
いくつある?
色と形
一番好きなのは〜
6月 おなかがすいた、眠たい
1〜20までの数
月の名前
これ何?〜と思うよ。
体の部分の名前
どっちが好き?
食べ物
好きな物、嫌いな物
7月 誕生日は?
これは何?
動物・食べ物の名前
何ができる?
どうしたの?
頭が痛い、おなかが痛い
何の映画が見たい?
9月 1学期の復習 1学期の復習 どこに行った?
体の部分の名前
いろいろな疑問文
10月 電話番号
気持ちを表す言葉
あなたは〜ですか?
いろいろな疑問文
これは、あれは〜だ。
これは何?(単数の場合、複数の場合の言い方)
買い物、これいくら?
11月 今日は何日?
日付の言い方
疑問詞(どこ、何、いつ)
どこに住んでいるの?
天気はどう?
何してるの?
動詞
12月 クリスマス クリスマス 何時に〜をするの?
月日の言い方
クリスマス
1月 これは〜ですか?
はい、いいえ
動物、食べ物の名前

私は〜が見たい(TV番組)
疑問詞(どこ、何、いつ)
場所
イギリスの写真
2月 復習 どっちが好き?
復習
〜はどこ?
あなたの好きな〜は何?
3月 ゲーム ゲーム 復習
ゲーム
 入門期の3年生では、自己紹介や自分の気持ちや状態など、主に自分に関する表現を中心に指導している。その他に、身近な動物や食べ物の名前、数などの語彙を習得することもねらっている。
 4年生になると、友達や先生など他人についての表現や、様々な疑問文の形式やその答え方等を指導することで、表現内容をさらに深めている。語彙としては、体の部分の名称、職業などが新しく追加される。
 5,6年生では、さらに表現の内容を広げていく。将来の夢や買い物など、どれも児童の日常生活でよく使われる場面の会話である。5,6年と同じ内容を2年間繰り返して指導することで、児童への定着を図ることができる。
 
学習内容については講師が主に考え、担任との簡単な打ち合わせをしながら講師を中心にして、担任が補助する形のTTで進めている。
(2)実践の内容
@ 耳から英会話に親しませる
 講師の発音をまねる、実際に友達と会話する、何度も口に出す、といった活動を通して、耳から英語を取り入れ、使える英会話、通じる英会話が身に付けられるようにする。

   話型練習 Where did you go? (4年以上)
 講師の発音を聞いてまねさせる。初めはゆっくり、後はテンポよく、指を折りながら5回程度繰り返しながら反復練習を行う。
 一度学んだら、後の授業でも折にふれて話題を出し、定着を図っている。その結果、授業の始めに講師が”Where did you go?”と問いかけると、すぐに答えが返ってくるようになってきている。
 
ただ、高学年になってくると一文が長くなってくるため、短く区切りながら練習するがなかなか覚えきれなくて大変だ、と感じる児童もいる。しかし、同じ活動を繰り返すことによって、徐々にスムーズに口に出せるようになってきている。

A 身近なことばから英会話に親しむ
 あいさつや自己紹介など日常生活でよく使う英語を取り上げていくことで英会話に親しめるようにする。
 
ア 気持ちや状態を表す表現  I’m〜. (3年)

 新しく英会話を学習するにあたって最初に学ぶのはあいさつであり、「おはよう」、「こんにちは」、とともに学ぶのは、”How are you?”である。これにはだいたい、”I’m fine, thank you. And you?” と答えるのが通常であるが、いつも元気であるとは限らない。そうしたときに、上のような自分の気持ちや状態を表す言葉というものは児童にとって身近なものであり、必要な語彙であると考えられる。
 それとともに、自分の状態を”I’m 〜.” で表わすことや、質問の仕方は”Are you ?”となること、またその答え方についても学ぶことができる。
 “Are you〜?”の質問は最も多く聞かれる質問であるが、児童は進んでよく答えている。

 イ どこに行った?  Where did you go? (4年以上)
 連休となる週末にどこかに出かける児童が多いため、”Where did you go?”は児童にとって身近な表現である。場所によっては、日本語でしか表現できないものもあるので、”I went to 〜.”と答えられれば、場所は日本語でも構わないとしている。図書館、博物館、映画館などは固有名詞ではないので、出てきた場合には英語の表現も教えるようにしている。
 
何度も使う表現については、答え方も身に付いてきていると感じられる。

B 楽しい体験活動で英会話に親しむ
 ゲーム的な活動を多く盛り込むことで、楽しみながら自然に英語が身に付くようにする。
 
ア 〜できる? Can you 〜?   Yes, I can. / No, I can’t. (4年以上)

 これは、カードを用いた活動の例である。児童一人ひとりに配られた動詞の絵カードを用いて会話練習をする。@〜Bまでが1セットで、それが済むと互いにカードを交換し、別の相手を探す。通常は相手を変えながら5回ほど行っている。児童は次々にカードが入れ替わっていくので飽きずに練習でき、また必要な話型を繰り返し練習できる。
 同じようなパターンで、他にも職業、食べ物の絵カードを用いての活動もある。

 イ 買い物 : How much is it?  8 thousand five hundred yen.(5,6年生)
 これは、すごろくを用いたゲームの例である。すごろく型のゲームは、主に4〜5人組のグループで活動する。さいころを振る順番を決め、さいころを振る人と次の順番の人とで会話練習をする。すごろく自体のおもしろさと、何度も順番が回ってくることで、口に出す回数が増える。また、友達が対話をしている間は友達の会話を聞いて覚えたり、教え合ったりすることもできる。これがグループ学習のよい点である。
 一つのゲームは一回で終わらず、次回あるいは学年が上がっても行う。その際は初回よりも表現内容を広げていく。回数を重ねるごとに、英語を口にする回数も増えてきている。

C 授業をパターン化して英会話に親しませる
 授業の組立てを復習、話形練習、活動という決まった形でパターン化して仕組むことによって、活動の見通しが立てやすくなる。

 どっちが好き? : Which do you like better, A or B? (5,6年生)

 活動@では、今までに習った話型を使って会話する。既習内容なので児童も進んで話そうとしている。
 活動Aは新しく習う話型を主に練習する。講師のまねをして文を反復したり、講師と児童全員とで会話練習をしたりしている。
 活動Bで体験活動に入る。毎回いろいろなゲームが用意されていて児童も楽しみにしている部分である。
 毎回同じパターンなので、児童もすんなりと活動に取り組むことができる。

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3 成果と課題
(1)アンケートの結果から

番号

質問内容

英語を聞いたり話したりすることに慣れてきたと思う

英語を勉強することは楽しい、おもしろいと思う

外国の人とおそれずふれあうことができるようになっていると思う

英会話の授業以外や家で英語を口にすることがある

外国の人と英語で話をしてみたいと思う

英語をもっと勉強したいと思う

 (質問番号1〜3については平成14年度はアンケートの項目になし)

 グラフからも分かるように、本校の児童は英会話の学習を楽しい、おもしろいと思い、英語を話すことにも慣れてきたと感じており、その割合は平成16年度には7割から8割を越えている。
 それ以外の項目も年々「はい」と答える児童の割合が高くなってきているので、3年間の英会話学習は児童にとってかなりの効果があったといえる。
 一方で、「外国の人と恐れずふれあうことができる」の項目は向上が見られるものの3割台にとどまり、他の項目に比べて割合が低い。これは、児童の「英会話で学習したことを話してみたい」という願いとは裏腹に、この地域では外国の方に出会う機会が少ないためではないかと思われる。

(2)講師のとらえた成果
 3年間特別非常勤講師が授業をしてきたこともあり、講師の目から見た英会話学習の成果を以下に述べる。

小学校のうちから英語に親しむのは効果がある。
 ・抵抗が少なく、意欲的に話そうとしている。
 ・失敗を恐れず、何度も話そうとしている。
 ・教科書がないので、会話自体を楽しむことができる。
 
・テストもないので、のびのびと活動できている。

 これらのことは、講師が実践のポイント@〜Cを常に意識して授業を行ってきたことの成果であると考えられる。会話の中で多少日本語が多くなっても、会話が楽しい、と感じられる雰囲気を大切にされてきたおかげで、アンケートの結果に見られるように、児童の意識は年々高くなってきている。

(3)今後の課題
新たな年間計画の作成
 小学校英会話学習普及事業は平成16年度で終了するが、英会話学習は今後も継続していきたいと考えている。ただ、次年度からは講師がつかなくなり、担任一人で指導しなくてはならないため、今までの成果を踏まえながら新たな年間計画を練り直していく必要がある。

教材・教具の整備・開発
 講師から様々な体験活動の方法を教えていただいたが、それに用いた教材には講師独自の物も多くあった。今後もこれらの活動を維持し、充実させていくためにはなお一層の教材・教具の整備や開発に努める必要がある。

教員の研修
 平成17年度からは担任が英会話学習を行うようになるため、誰が担当しても今までと同じように 授業ができるようにするために、研修の時間をとり、指導法の共通理解を図るようにする必要がある。


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