放課後学習チューターの配置等に係る調査研究事業の実践          〔指導課〕
 学びのよろこびを味わう子どもの育成
                       
−山口市立平川小学校―

     1 学校紹介2 全体構想図3 調査研究の方法
                    4 調査研究の実際5 成果と課題 
実  践  の  ポ  イ  ン  ト
 「学力向上フロンティア」と「放課後学習チューター」の2つの事業により、児童の学力の向上を図る。
 チュ−ター学習の担当者は少人数指導の担当者が中心となり、児童一人ひとりの実態にあった学習材を用意することで、きめ細かな指導をめざす。
 チューターとのふれあいの中で、児童の学習意欲の向上・学ぶ習慣の定着を図り、主体的な学びの確立をめざす。

1 学校の紹介
 本校は、山口盆地を北東から南西に流れる椹野川の東側、平川地区の中央部にある学級数29、児童数970人を超える大規模校である。平川地区は、幼稚園から大学まである文教地区である。
 教育目標に、「夢をもち、瞳かがやく平川っ子の育成」を掲げ、「自ら進んで学ぶ子」「一生懸命がんばる子」「思いやりのあるやさしい子」「たくましい元気な子」をめざし、個々の児童の成長への願いに応えるために、日々の授業や生活を大切にし、心と体の健康づくりを図っている。
 その一環として、平成15年度から、文部科学省の「放課後学習チュ−ターの配置等に係る調査研究事業」「学力向上フロンティア事業」実践研究校の指定を受け、児童の理解や習熟の程度に応じた指導や児童の実態に応じたきめ細かな指導を行い、確かな学力の定着に努めている。


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2 全体構想図






























































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3 調査研究の方法 

(1) 対象学年・児童(平成16年度)

学年 第3学年 第4学年 第5学年 第6学年 合計
人数 29人 25人 28人 8人 90人
 ・希望者の児童

(2) 開設期間
 ・平成15年5月〜平成17年2月

(3) 開設曜日・時間・場所
 ・毎週月曜日
 ・15:20〜16:40(冬期 15:10〜16:30)
 ・少人数教室、各学年教室

(4) 放課後学習チューター派遣人数
 ・36人(来校回数1回以上)・・大学1年生〜大学院2年生


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4 調査研究の実際

(1) 放課後学習相談の在り方

@ 1時間の学習相談の流れ












A 個別学習指導の内容

ア グループ分け
   チューターの来校人数や児童の実態によって、グループ分けを行う。
(ア) 習熟度別型グループ分け(基本的には、児童が選択する)
 ○基礎的・基本的内容の定着度の差によって分ける。
 ○学習の速度の差によって分ける。
(イ) 課題選択別型グループ分け
 ○いくつかの学習材を用意しておき、自分の苦手な分野を学習する。
  (例)わり算と図形(三角形)
(ウ) 小集団グループ分け
 ○小集団に分けて、復習をする。学習速度に差が生じるので、速い児童には別の補充的な問題に取り組ませる。

イ 学習材

  プリント、ドリルが中心、チュ−ターの自作プリント

ウ 学習内容
  復習が中心、ゲーム的要素を取り入れた学習、体験的な学習

エ 活動の記録


【児童との交流会】 5月24日
 昨年度参加したチューターからの提案で、最初に交流会があったほうが児童の名前を 覚えたり、親しくなったりして学習もやりや すいということで、第1回目に交流会を設定した。体育館で、算数のゲームや自己紹介をして楽しんだ。 














    (自己紹介や算数ゲーム)

【ふだんの活動の様子】
―学習風景―


(2) 放課後学習相談以外の取組み

 本校では、月曜日の放課後学習はチューターが中心である。チューターには、月曜日の5時間目の授業を参観してもよいと伝えていたが、なかなか時間の調整が難しく、参観は難しかったようだ。何度か参観に来たチューターには、授業の補助をしてもらう等、取組みを進めた。













(プリントの採点)


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5 成果と課題

1)成果として
 本校は、昨年度から文部科学省の「学力向上フロンティア事業」の指定を受けている。本事業の「放課後学習チューター」と合わせて、学力の向上を図るために、算数科を中心に、きめ細かな指導を心がけてきた。
 チューター学習に参加している児童はどちらかと言えば、授業の時には、わからないところがあってもなかなか質問できず、受身的な児童が多い。そういう児童にとって、支援してくれる指導者(チューター)がいることは大変心強いことである。同時にチューター学習に参加し、理解できないことをその場で解決できるよさを経験したことで、授業に対しても、さらに意欲的に取り組むようになり、自信をもった姿が見られるようになった。チューターのきめ細かな指導と、温かい励ましで、児童のつまずきの解消や学習意欲の向上を図ることができた。

◇ アンケートの結果より















 ほとんどの児童、保護者、学校関係者、チューターがチューター学習は役立ったと答えている。児童と保護者のアンケートの記述から、家に帰って、ほとんどいつもチューター学習の話をする家庭は半数以上を超え、子どもたちがチューター学習の様子を楽しく話している姿が想像できる。また、役立ったことの表れとして、「わからないと言わなくなった」とか、「成績も伸びてきているように思う」などの感想があり、チューター学習に参加したことにより、よい効果が生まれている。

◇ チューターの感想より
 実際に子どもと触れ合わなければわからないことがたくさんあり、その場の状況や子どもの実態に応じた関係づくりを意識して行えた。教育実習しか経験のない教育学部生にとっては、子どもとの人間関係づくりや子どもとの接し方などを経験できできる貴重な場である。子どもを見る目が豊富になった。多様な視点をもつことができ、自分自身が成長できた。(大学院生Aさんの感想より)
−他のチューターの記述−
テキスト ボックス: 子どもの実態把握
・どの子も人なつっこいこ
とがわかった。
・性格や行動などを知った。
・どんなことを考えている
 のかがわかった。
・問題解決場面において、
どこでつまずいているかがわかった。
・子ども同士の人間関係が
見えてきた。
右矢印: 子どもの実態を把握し、子どもとの接し方を考える場となる。 テキスト ボックス: 子どもとの接し方
・ほめるタイミング、注意するタイミングなどがわかった。
・正解したらできるだけ多くほめるようにした。
・子どもへの声のかけ方や教え方がわかった。
・個に応じた接し方がわかった。(一人ひとりに対応)
・どうすれば理解できるのか考えることができた。

 実際の教育現場を体験することにより、教員志望のチューターは、子どもの実態・教育の実態・子どもとのかかわり方などを考える場になったようだ。また、チューター学習を通して、算数の指導方法について研究をしていたチューターもいた。本事業のねらいである教員志望者の資質・能力の向上にも役立った。

(2)課題として
 チューター、教員、児童すべてが、チューター一人にかかわる児童の人数が少ない方が、より個に応じたきめ細かな指導が成り立つと考えている。現状は、日によって来校人数が違い、また、担当学年によっても来校人数に差が生じてしまった。2年間の実践を通して、児童数に対するチューターの割合は4:1程度が望ましいと考える。児童数に対するチューターの人数確保が一番の課題であると考える。


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◎校長から見た指導のポイント

【チューター学習を通して】
 自ら進んで学習の機会を得て、きめ細かな指導を受けることを通して、学習が楽しくかつわかるようになる。
 児童が多くの指導者と関わることができ、興味を持って主体的に学習する場がもてるようになる。
 教員志望の学生が、それぞれの課題に応じて主体的に参加し、教員の指導の姿を見て、子どもと接することを実際に経験してみることで、将来の進路、夢をより確かなものにすることができる。

【今後について】
 山口大学は本校校区に立地している。このメリットを生かし、大学や教員志望の学生と連携を強めていくことが、児童はもちろん、すべての関係者にとって望ましいことである。大学も地域の一つ、今求められている「地域に開かれ、連携する学校」の一実践として、これからも各方面と協議し、よりよい方法を工夫しながら継続していきたい。


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