学力向上フロンティアスクールの取組み                〔指導課〕
自ら課題を見つけ主体的に活動する生徒の育成
           〜確かな学力の向上をめざして〜
                    
 −岩国市立平田中学校−

1 学校の紹介2 2年次の反省と3年次の課題3 数学科の実践例4 3年間のまとめ
実  践  の  ポ  イ  ン  ト
 全学年の数学科の授業で少人数指導を実施する。
 全教科で生徒による授業評価を実施し、授業改善を行う。
 全教科で生徒の伸ばしたい力を設定して授業を工夫する。
 

1 学校の紹介
 本校は山口県の東端、錦帯橋や白へびなどで知られる岩国市の郊外にある。
 校区内には小学校が1校あり、本校生徒はほとんどが、その小学校の出身者である。年々生徒数も減少してきているが、平成16年度は生徒数424名で市内4番目の規模である。
 生徒は明るく活発で、特に体育祭や文化祭では生徒会が中心となって練習計画を立て、自主的に練習している。教師はアドバイスを与えるだけである。決してベストとは言えないが生徒自らの手でベターで心に残る行事を作り上げている。
         http://www.sky.icn-tv.ne.jp/~hiratajh/


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2 2年次の反省と3年次の課題

 2年次は全教科で学力向上への努力点を設定し、全職員で研究を進めた。その中でも、生徒による授業評価を実施し、授業改善を行ったこと、さらにそれを全体で協議し、全職員で共有したことは、学力向上への全職員の意識を高めるとともに今後の課題を見いだすきっかけとなった。
 少人数指導については、生徒や保護者のアンケートから、いくつかの不安な点や改善点があげられたあるものの、その効果を期待し、9割以上が今後も少人数指導を希望すると答えていた。
 また、生徒にとった「魅力ある授業に必要なもの」のアンケートでは、学年によって多少の差はあるものの、「考える時間が十分ある。」「解ける問題があり、分かったと感じる。」などの達成感や充実感に関する内容や「先生が興味がわくような話し方をする。」「先生が明るく、元気。」「先生の話がはっきり分かる。」などの教師の話術に関する内容、さらに「友達とグループ活動ができる。」「ゲーム感覚の内容がある。」「実験や体験学習がある。」などの学習方法に関する内容の回答が多かった。保護者からも今後の授業づくりのヒントとなるような意見や反省すべき点など、貴重な意見を多数いただいた。
 このような生徒や保護者からの意見、アンケートの結果などを真摯に受け止め、最終年度も生徒による授業評価を生かしながら、ただ単に知識を身に付けさせるだけでなく、学ぶ意欲を育て、思考力、判断力、表現力が身に付くような魅力ある授業の創造に努力していくこととした。
 具体的には次の2つのことに取り組んだ。
@ 魅力ある授業となるよう工夫していく。(生徒による授業評価)
A 各教科で伸ばしたい力(観点)をしぼる。(CRTの実施)



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3 数学科の実践例
〜プレゼンテーションソフトを使った授業〜
1年生CRT結果(H16,4月実施)
数学的な見方や考え方
得点率 男子 女子 全体
60.4 55.4 58.1
数学的な表現・処理
得点率 男子 女子 全体
79.1 77.8 78.5
数量、図形などについての知識、理解
得点率 男子 女子 全体
71.4 71.7 71.6
 どの学年でも文章問題を苦手とする生徒が多いことや3観点のうち得点率が一番低いことから数学的な見方や考え方の得点率を上げたいと考えた。
 文章問題では、問題の内容を理解させたり、考え方を理解させたりする場面で図を必要とすることが多い。そして、その図が問題をイメージさせるように動くと理解しやすくなると思われる。
 そこでプレゼンテーションソフトを活用することを考えた。
(1) プレゼンテーションソフトを使う利点
@ 教師の板書時間を省くことができ、時間を確保できる。
A 文字や図の色、現れ方や動きを工夫することができ、興味を引くことができる。
B 図に動きを加えることができ、ただ単に図で示すよりイメージが作り易くなる。
(2) 実践1(正の数・負の数の乗法)
@ 文字や図の動きはあまりなく、ただ単に黒板がわりに使用した。
A 生徒による授業評価より
1 パソコンの画面をスクリーンで見ながら授業を進めることで興味が持てた。
2 パソコンの画面をスクリーンで見ながら授業を進めることで日頃より学習内容が理解できた。
3 授業の進む速さはよかった。
4 自分の考えをまとめる時間が十分にあった。
5 問題を解く時間が十分あった。
6 ノートを取ったり、プリントを整理する時間が十分あった。
7 何をどうすればよいか、指示されたことがよく分かった。
B 考察
ア 興味をひくことはできたかもしれないが、そのことが理解の深まりにつながっているとは言えない。
イ 板書をした時と同じで、スクリーンを見る時、考える時、ノートに写す時のめりはりがついていなかったことが考えられる。
ウ 自由記述の欄にも「書き終わるまで待ったほうがよい」「前の内容を確認したくてもできないことがある」などの記述があり、いろいろと考えなくてはならないことが発見できた。
(3) 実践2(方程式)
ア 等式の性質
 等式というのは、てんびんがつりあっている状態と同じと考える。そして、てんびんのつり合いを保つために、両方の皿に同じものを乗せたり、下ろしたりなどの操作をしながら等式の性質を理解させるのである。教科書にも同様な絵が掲載されており、それを使って説明することもできるし、やろうと思えば本物を持ってくることもできる。
 しかし、止まった絵よりは動きがあるほうが理解しやすいし、本物を持ってきても小さくて見にくいよりは大きな図で全体によく見えるほうが良いと考えて作成した。
イ 移項を使った方程式の解き方
 移項は方程式を解くうえでたいへん重要となる。移項とは一方の辺から他方の辺に項を移すことであり、その時間違ってはならないのが、符号が変わるということである。今までは例を板書しながら説明することがほとんどであった。それを解く手順に従って、文字や式が現れるようにし、説明をした後に、ノートに写させるようにした。
ウ 方程式の利用(文章問題)
 例年、文章問題は生徒が苦手としている内容である。それは問題を理解し、自分で式を作らなければいけないからだ。しかし、問題と同様の体験をすることは少なく、読解力が低くなっている昨今の生徒にとっては、問題の内容をイメージ化し、問題を理解して式を作ることはたいへん難しいことと言える。
 そこで、それを容易にさせるために動きのあるプレゼンテーションを作成した。
エ 授業評価結果
 どの項目もプラス評価が80%を越えている。自由記述の欄にもパソコンを使った授業は文字や絵が動き楽しくわかりやすかったなどの高評価が多かった。
 一方、方程式の理解度に関するアンケート結果は以下のようであった。プレゼンテーションソフトを使った授業の内容に関連する質問項目は2、5、9、10である。移項を使った方程式の解き方については理解度が高いが等式の性質、文章問題については「とてもそう思う」の割合が低くなっている。
 このことから、プレゼンテーションソフトを使い楽しく、わかりやすかったと感じていても、確かな学力が身についているとはいえないのではなかろうか。
まとめと今後の課題
(1) 理解度を高め、学力を定着させる工夫
 プレゼンテーションソフトを使った授業によって理解度を高めるためには、より効果的な提示の仕方など、ソフトを使いこなす技能を修得する必要がある。そのためにも多種多様な場面で使ってみて試行錯誤していく必要がある。
 また、聞く、写す、考えるのめりはりをつけると同時に、学習内容を身につけるための時間を確保するための授業の流れも含めたソフトの使い方も考える必要もあると考える。
(2) 教師と生徒との距離
 プレゼンテーションソフトを使うことによりスクリーンを見せながら説明をする場面が多くなり生徒の活動が少なくなったように思う。また、パソコン操作のため教師も同じ場所にいることが多く、生徒の声を聞きやすいという少人数指導の利点が十分生かされていなかったように感じた。
 パソコンで生徒を引きつけるだけでなく、教師としての技量で生徒を引きつけ、生徒と共に魅力ある授業を作れるよう努力していきたい。そのためにも生徒による授業評価は今後も実施し生徒の声を聞くことがたいへん重要だと考えている。


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4 3年間のまとめ
(1) 少人数指導について
 2年次(15年度末)に生徒、保護者に対して少人数指導についてのアンケートを実施した。(アンケート結果は2年次報告書に掲載済み)アンケートより、生徒は、学習のペースが自分にあっていることや少人数のため先生とのコミュニケーションが取りやすいなどの理由から少人数クラスのほうが学習しやすいと感じていることがわかった。
 また、保護者も一人一人に目が行き届き学力向上に効果があると感じ、今後も少人数指導を期待するという回答が多かった。
 この期待に応えるためにも、ただ単に少人数にすればよいという考えでなく、少人数の良さを生かした授業展開や指導内容や指導時期によってはTTも取り入れるなど、柔軟な指導ができるとよいのではなかろうか。そのためにも担当教師の連携が必要不可欠と言える。
(2) 生徒による授業評価について
 2年次、3年次と生徒による授業評価を実施したが、それについて本校教員にアンケートをとった。結果は以下の通りとなった。
@授業評価アンケート(質問項目の決定等)は容易に作成できた。
(とてもそう思う2人 すこしそう思う17人 あまり思わない3人 思わない0人)
A授業評価アンケートの実施時間は容易に確保できた。
(とてもそう思う3人 すこしそう思う9人 あまり思わない8人 思わない2人)
B生徒による授業評価は授業改善に役立った。
(とてもそう思う8人 すこしそう思う14人 あまり思わない0人 思わない0人)
C今後、授業評価アンケートをどれぐらいの回数で実施したいと思われますか。
 学期に1回7人 中間時、期末時に1回ずつ5人 単元終了時10人  特別に授業を仕組んだ時2人 毎時間0人 実施しない0人 その他1人
Dフロンティア事業を受けて、どんな点が変わりましたか。(複数回答可)
  教材を工夫した8人 授業の流れ(速さ)を考慮した14人 発問の工夫をした7人 板書を工夫した9人 個別指導を多くした10人 その他2人
 何度か実施すると、アンケート作成については難しく感じる人は少なくなったが、実施については時間確保が難しいと感じる人が半数近くいた。その理由は、しっかり書かそうと思えば意外と時間を取るので、50分間の授業中では実施が難しいという内容が多かった。授業時数も少なくなり、余裕の無さを感じるような気がする。ただ、全教員が授業評価を実施することは授業改善に役立つと考えている。特に、授業の流れや進める速さを考慮するようになったという回答が多かった。次に多かったのは個別指導を多くしたという回答であった。これらは個を大切にするという少人数指導の影響もあるのではなかろうか。
 集計については、表計算ソフトを利用すれば素早く集計できるので学期に1回程度は実施するのがよいと考える。
(3) 身につけさせたい力について
 21世紀の教育改革では、自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力の育成を目標としている。
 しかし、学習意欲がわくようになる前に、あるいは主体的に対応できるようになる前に、学び方やものの考え方、そして、その基礎となる知識を獲得しておくことが必要不可欠である。小中学校段階では、その基礎・基本を確実に身につけさせることがたいへん重要だと考える。子どもたちも以前よりは変化しているため、今まで通りの指導で基礎・基本が定着するとは言い難い。そこで授業評価等を利用し、教師自身も生徒の変化に対応していかなくてはならないだろう。
 さらに、指導を効果的にするためにも、小学校での指導内容を知ったり、中学校での指導内容を知ってもらうなど小中の連携を密にすることが大切だと考える。
校長から見た指導のポイント
生徒による授業評価に取り組み、授業改善を図ること。
研究の成果が生徒に生きるとともに、他校の先生に役に立つよう工夫すること。


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