みんなの専門高校プロジェクト                           〔指導課〕
地域社会と連携した生きる力を育むビジネス教育の創造
      〜新たな可能性を求めて〜
−山口県立防府商業高等学校−

  1 学校の紹介2 具体的な活動内容3 成果と課題
実  践  の  ポ  イ  ン  ト
地域と連携した活動と協力体制の重視
地元を理解する態度育成の重視
地域活性化のための、プランナー・コーディネーターとしての役割重視
専門高校で学習した内容の実践と、実践活動を検証する態度育成の重視

1 学校の紹介
 本校は、昭和4年に創立され、14,000余名の卒業生が、社会の各方面で活躍している。
古い伝統を生かし、明るい未来を創造する専門高校
社会人として必要な教養と商業・ビジネスについての専門的な知識・技術とその応用力を身に付け、社会で活躍できる人材の育成

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2 具体的な活動内容
(1)組織
研究部門委員会
  空き店舗活用部門 − 防商ホットショップの継続活動および研究
  生涯学習支援部門 − 中国語講座(校内で実施)パソコン教室(商店街で実施)
  観光提案部門  − 地元観光資源を活用した、観光ビジネスモデルの提案
  地域連携組織部門 − NPO法人の研究

イベント部門委員会
  地域活性化イベント部門 − 地元商店街における防商文化祭、「天神まちかどフェスタ」の実施

※研究部門およびイベント部門は、「地域連携推進事業実行委員会」によって統括され運営委員会が兼ねる。
※この組織は全教職員によって構成する。

 また、地域連携という視点から、地域の外部関係団体も交えた次のような運営組織(実行委員会)を結成し、各活動に取り組んだ。
(2)活動状況
研究部門委員会
○空き店舗活用部門
 3年「課題研究」の授業の一環として実施している。1学期は商店経営や取扱商品などについてのマーケティング調査や準備、2学期に7回の「防商ホットショップ」を実施した。3学期はアンケート調査とまとめである。

○生涯教育支援部門
(ア)中国語講座
 本校では、国際経済科が設置され、外国語教育が盛んである。
 特に中国語は教育課程にも以前から取り入れ、生徒は勿論のこと、外部にも受講希望者が多い。このような事情から、週2回午後7時から2時間、本校教員のボランティアで実施している。
(イ)パソコン教室
 3年「課題研究」の授業の一環として実施している。地元商店街の施設を借用し、計画から実施まで、すべて生徒主体で行っている。

○観光提案部門
 地元観光資源の有効活用・見直しによる、ビジネスモデルの提案を目的とし、オリジナル商品の開発を中心に取り組んだ。

○地域連携組織部門
 商工会議所や地元商店組合などの外部組織と連携し、より有効に本校教育活動を進めるための組織づくりの研究を中心とする。具体的には、NPO法人の研究に取り組んでいる。先進校である広島県立広島商業高等学校を視察した。
○オリジナル商品開発
(ア)基本方針
 オリジナル商品の開発にあたっては、次の3点を基本方針として商品開発を行った。
 (a)地元防府をアピールする商品であること。
 (b)商品開発にあたっては、本校生徒が発案したアイデアを中心に、本校教職員、生徒会、PTAなどの本校関係者の他に、地元商店街、商工会議所、市観光課、商工課、観光協会などの関係団体も交えて「地域連携活動推進委員会」を組織し、(a)の観点を踏まえ、さらに、新しい街づくりに貢献できるような商品開発にあたる。
 (c)製品製造は地元業者に依頼し、地産地消の方針で商品開発にあたる。
(イ) 平成15年度開発商品
(a)「芋ういろう田舎もん」
 この商品の発案の趣旨は、防府ののんびりした、よい意味でのおおらかな田舎のイメージをアピールすることにある。さらに"田舎といえばやっぱり芋かな"という発案した生徒の考えから、山口県を代表するお菓子である外郎にサツマイモを混ぜ込むことを考え、ネーミングもずばり「芋ういろう田舎もん」とした。
 パッケージデザインは、全体的に黄色を基調とし、防府市内向島の天然記念物である豆狸にサツマイモを持たせたものにした。黄色を基調としたのは、サツマイモと田舎のイメージに合うからである。このパッケージデザインは美術部や美術の担当教員、印刷業者の方々がいろいろな視点から知恵を出し合い完成したものである。
 「芋ういろう田舎もん」は現在、一般の流通経路に乗り、防府を中心に市内の小売店やサービスエリアなどで販売されている。

(芋ういろう田舎もん)
(b)「元祖合格かまぼこ」
 この商品は、三大天満宮の1つであり、学問の神様「菅原道真公」ゆかりの、防府天満宮にちなんで発案されたものである。パッケージデザインは、かまぼこの原料である活きのいい「タラ」と、天神様ゆかりの梅の花で構成されている。
このパッケージラベルは発案から印刷まで、すべて防府商業高校が行っている。防府のシンボル的存在である、天満宮の観光資源としての再認識を目的として発案された。

(元祖合格かまぼこ)
(ウ) 平成16年度の商品開発の経過
(a)2・3年生は春休み、1年生は夏休みの課題として、一人一点以上のオリジナル商品のアイデアを募集(募集作品約450点)
(b)研究部門担当教員、生徒会で第一次選考(約50点選考)
(c)外部の関係者も交えた「地域連携事推進委員会」で第2次選考(5点選考)
(d)商工会議所において、選考された生徒の、自分のアイデアに対する以下の観点でプレゼンテーションを実施、製品化への可能性を検討(発案生徒、担当教員、商工会議所担当者、市観光課、製造業者の代表者が参加)
 ・アイデアの趣旨説明
 ・商品の形態やパッケージなどの説明
 ・製造コスト、販売価格についての説明
 ・販売形態の説明
(e)候補作品5点のうち、「フルーツケーキ実甘ちゃん」の製品化が可能となり、業者と打ち合わせに入る。
(f)10月2日の地元商店街で実施された本校文化祭「天神まちかどフェスタ」で「フルーツケーキ実甘ちゃん」100本を販売

(フルーツケーキ実甘ちゃん)
〜オリジナル商品〜

イベント部門委員会
 イベント部門委員会は地元商店街でのストリート文化祭、いわゆる「天神まちかどフェスタ」を、地元の関係機関も交えて効果的に実施、地元商店街の活性化と新しい街づくりに貢献することを目的に活動を行ってきた。イベント部門委員会の組織を簡単に示しておく。

天神まちかどフェスタ実行委員会
 学科会
  ○専門性の提案
  ○クラス・生徒会催し物支援・補強
  ○マナー指導
  ○予算の立案とコスト管理
 学年会
  ○クラス・学年企画
 生徒会
  ○開閉会式・生徒会企画
 PTA・各種団体
  ○防府商工会議所
  ○天神銀座商店街振興組合
  ○市商工課
  ○市観光課
  ○市観光協会
  ○TMO

(商店街での会議の様子)

(天神まちかどフェスタの様子)

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3 成果と課題
 オリジナル商品の開発ならびに商品化に当たっては、「芋ういろう田舎もん」や「元祖合格かまぼこ」というネーミングをそのまま使用して問題はないか、他の業者がすでに同じ製品を販売していないかなど、いわゆる商標権や特許権といった法律上いろいろな難しい問題もあった。この点については、商工会議所の紹介で、法律の専門家からのアドバイスを受けた。高校生がアイデアを出し、地域の企業や商工会議所など、多くの人たちが関わり、防府の商品として育てていく中で、地域が一体化できる可能性を発見できたことは、大きな成果の一つとして評価できる。これらのオリジナル商品が、新しい街づくりに貢献できる商品となるよう今後も育てて行きたい。オリジナル商品を中心に、マーケティング的側面から、街づくりを考えるヒントになればと考えている。また、今回2回目となった「天神まちかどフェスタ」を含めた、一連の地域連携活動を推進する中で、商業高校が地域活性化のためのコーディーネータとしての役割をどこまで担い、そして実行することができるかが、これからの商業高校の大きな課題であることを明確に認識できた。

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