学力向上フロンティアスクールの取組み               (指導課)

「主体的に学習に取り組む生徒の育成」
   〜個が生きる指導方法、指導体制の構築〜                        
 −下関市立豊洋中学校−

   1 学校紹介2 全体構想図3 委員会活動4 少人数指導
   5/授業評価・学校評価6 その他
実  践  の  ポ  イ  ン  ト
 生活の安定を基盤として学習意欲の向上を目標とする。
 数学科・英語科における少人数指導を中心として、基礎・基本の徹底を行う。
 授業評価を実施し、積極的な授業改善を行う。

1 学校の紹介
 本校は本州最西端に位置する下関市豊浦町にあり、東に鬼ヶ城(619.6m)、狩音山(577m)を仰ぎ、黒井川、吉永川を中心に平野が開けている。西は響灘に面し、温暖で豊かな自然の中で古くから農漁業を主な産業としてきたが、最近は観光果樹園や栽培漁業にも取り組んでいる。
 校区は室津、黒井、吉永、涌田、厚母、豊洋台の6地区からなり、人口は平成16年4月末現在で8,216人、世帯数は3,000である。教育尊重の風土と伝統が受け継がれ、地域住民の教育への関心は高い。青少年が健やかに成長することを願い、学校・家庭・地域の関係団体が連携を密にした活動が積極的に行われている。
 また、自然環境に恵まれ、最古の磯上遺跡をはじめ、多くの歴史的遺産が点在している。
生徒数は218人(平成17年1月11日現在)で学級数は10クラス(通常学級8クラス+特別支援学級2クラス)の規模である。



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2 全体構想図
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3 委員会活動
 学力の根幹を支えているのは学習意欲である。本校では生徒が安定した生活を送り、落ち着いて学習に取り組める環境作りを学力向上の最優先課題とし、日々の生活指導を行っている。その中でも生徒の委員会活動の1つである生活チェック表の活用を取り上げここに示したい。
(1) 目的
 @ 学級内の1日の生活態度を1週間記録し、振りかえらせることにより学習習慣を確立する
 A 活用の仕方において、学級内の自己管理意識を高める。
(2) 実施方法
 @ 各教科担任が授業態度・チャイム着席・机上整理・忘れ物・教室内の整理整頓の各項目を毎時間チェックし、記入する。
 A 昼休み時間の過ごし方・その日の善行生徒を総務委員が記録する。
 B 身だしなみの項目を総務委員がチェックし、記録する。
 C 1日の反省を総務委員が記録する。
(3) 成果
 @ 学級内の学校生活の様子を省みる指針表となっている。
 A この表をもとに、帰りの会等で話し合い活動を活発にさせる場面が設定できる。
(4) 今後の課題
 生活チェック表は、生活の様子をただ単にチェックするだけのものではない。この表の活用の仕方によっては十分に学級経営の規範となりうるものである。生徒の自治意識や学級の所属意識を高揚させることができうるものであるが、現状においては活用方法が担任に一任されているため、調査票をおおいに活用している学級とそうでない学級の差が出てくることは否めない。各項目のチェック基準や活用方法の研究が、今後の学習意欲向上のために有効になってくると考える。
(生活チェック表)


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4 少人数指導
 学力向上のためには、各教科の基礎・基本の学習内容の指導徹底は避けられない課題である。中でも数学科と英語科においては学力差も激しく、少人数指導の活用が求められている。本校では平成13年度より数学科が平成14年度からは英語科が少人数指導を取り入れている。
(1)数学科での取組み
 現在、数学科では1年生と3年生の授業を習熟度別の少人数授業で行っている。両学年ともに、生徒自身の選択により、1学級をAコース(基礎的内容)とBコース(発展的内容)の二つに分けている。1単元が終了するごとにアンケートを取り、自分の理解度に合わせて選択できるようにしている。教師も単元ごとにコースを入れ替わり、なるべく多くの生徒の様子を把握するよう努めている。
@ 各コースの概要
 両コースとも、教科書の内容を中心に展開している。しかし、新しい学習指導要領になって以降、数学の学習内容も精選され、減少してきた。それに伴って、教科書の問題数も減ってきている。よって、教科書の問題だけでは、理解が早い生徒は物足りなさを感じ、理解が不十分な生徒は、演習量が少ないため、しっかりと定着させることができない。そこで、問題演習が必要な場面では、自作プリントを作成し、使用している。
 Aコース(基礎的内容)は、教科書の問題と同程度か、より平易な問題を中心にしている。これは、前述のように、演習量を増やし、基礎・基本を定着させることをねらいとしている。特に、1年生では重視している。
 Bコース(発展的内容)は、やや難易度をあげた問題を準備している。1年生では、分数を扱うような計算、3年生では過去の入試問題などに取り組んでいる。
 両コースとも、教科書の内容を学習していくが、どうしても、Aコースが遅く、Bコースが早くなるといったように、進度に差が生じてしまう。基本的に、進度の遅い方(Aコース)にあわせて、その単元を同時に終了するようにしている。そのために、進度の早い方のコース(Bコース)は、1〜2時間のゆとりが生まれることとなる。その時間を使って、問題演習や、発展的な課題学習にあてている。
A 評価について
 単元ごとにAコースの担当教員と、Bコースの担当教員が入れ替わり、なるべく多くの生徒と接することができるようにしている。小テストなども、共通のものを使用している。
 学期末の評価は、各学年に主担当となる教員を1名おき、主担当が中心になって、二人の担当教員が話し合いながら行っている。
 この評価方法は、少人数授業に本格的に取り組むようになってから、3年間継続して行っている。
(2)英語科における取組み
 現在、英語科では1年生と2年生の授業を少人数授業で行い、3年生の授業を一斉授業で行っている。また、少人数授業のクラス分けについては、1年生は各学級を出席番号により機械的に2クラスに分けている。2年生については、各学級を基礎・応用の2つのクラスに分け、どちらを選択するかは本人の希望にまかせている。1つのレッスンが終了するごとに、1年生は少人数クラスの教師が入れ替わり、2年生では生徒自身が次のクラスを選択する。
(3)まとめ
3年間の研究の成果として、以下のことが挙げられる。
@ 個に応じたきめ細かな指導を行う上で、少人数指導は大変有効な手段である。
 実施学年・教科、クラスの分け方等、様々な方法が考えられるが、少人数指導を行うことで、教師一人が受け持つ人数が減り様々な効果が生まれる。生徒一人ひとりの反応をしっかりとつかみ、それを授業の中に生かしていくことが可能である。
 生徒にとっても、わからないことを気軽に質問できたり、自分の意見が生かされる喜びを感じたりすることができる。
A 生徒の習熟の程度や、学習のねらいに応じて、クラス分けの方法を使い分けると有 効である。 
 クラス分けの方法については、習熟度別に分ける方法(以下習熟度別)と、出席番号順などにより機械的に分ける方法(以下機械的)の二通りが考えられる。
 習熟度別では、教師主導にならず、生徒の意志が十分に反映されたものでなくてはならない。しかし、生徒の自由意志だけでは、「友だちがいるから」「こっちのコースの方が楽だから」と、自分の力にあっていないと思われる選択をする生徒もいる。それを防ぐためには、事前にしっかりと、コース内容の説明や個別相談の時間をとることが必要である。また、それら事前の指導だけではなく、授業の内容をそのコースにふさわしいものにしていかなければならない。
 機械的は、1年生の入学直後の英語の授業など、習熟の程度に差がついていない段階や、少人数授業を初めて体験する場合などで有効であろう。このような状況で習熟度別を実施すると、苦手意識をもっている生徒は、より後ろ向きになったり、上記のような不適切な選択をすることも考えられる。
 よって、生徒の実態やねらいに応じて、この二つを使い分けることが重要であり、実施の際にはよく確認しておかなければならない部分である。
B 少人数指導だけでなく、活動内容によっては、TTを利用した一斉授業も有効な手 だてとなりうる。
 英語科のコミュニケーション活動など、多くの人数と関わることで効果を発揮するような場面や、生徒の多様な発想を引き出し、生かしていくような場面では少人数授業ではなく、TTによる一斉授業の方が効果を発揮することもある。
 英語科では、両コースの進度を日々確認しながら、ALTが来校した時間には一斉授業を行い、効果的にコミュニケーション活動を取り入れている。


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5 授業評価・学校評価
 学力向上の場はもちろん授業である。言い換えれば授業の改善なくして学力向上はあり得ないとも言える。授業の改善は教職員各自の使命ではあるが、日常の業務に追われ、授業を振り返る機会は意外に少ない、また生徒を評価することはあれども、生徒から評価されることは意外に少ないとも言える。生徒や保護者からの学校教育についての意見を吸い上げることで、教育の質的な転換を図るきっかけになればと考え、15年度より授業評価・学校評価を行っている。
(1) 評価項目
 授業評価を実施するにあたってまず評価項目について考えた。今回は全教科一斉の実施であるため教科の枠を越えた、授業に関する根幹部分についての質問に終始することとした。詳しい質問内容とその目的は以下のとおりである。
質 問 の 目 的 質 問 内 容
自己の取組みを振り返る 授業に意欲的に取り組めましたか
学習内容の理解を確認する 授業内容は理解できましたか
指導法について意見を出す 説明はわかりやすかったですか
授業における参加満足度について 自分の思いや意見は大事にされましたか
(2)考察
 (3)のアンケート結果は生徒の評価の合計を平均化したものである
 (各項目5段階評価、1点〜5点に換算し平均等を算出)、
 全体を通して教科・質問内容により評価に若干のばらつきがあるが、数値はおおむね3.5〜4.4の範囲に収まっており、生徒の授業に関する満足度は良好であるということがわかる。
 その反面、全教科の平均化された数値を見てもわかるように、
 「説明はわかりやすく(4.03)」
 「意欲的にも取り組んだが(3.92)」
 「内容はなかなか充分に理解できない(3.88)」という傾向が見られる。
 この背景には生徒の授業への参加が依然として受け身であり、説明を真剣に聞く、言われたとおりに作業をするというスタイルに終始し、授業中や、日常の担当者との関係の中で思いや意見を積極的に表現し、授業に主体的に取り組む状況がまだ構築されていないことが原因としてあるのではないかと考えられる。
 それを表しているのが「自分の思いは生かされた」(3.59)という数値である。この質問項目の3は他とは違い、「そういう場面は無かった」という回答であり、この3.59の裏には「そういう場面は無かった」と答える生徒が多数存在していることが見て取れる。こういったことからも生徒の思いが生かされる授業への挑戦が今後も必要になってくるのではないかと考えられる。教科ごとの考察は研究紀要に詳細を掲載しているのでそちらを参照していただきたい。
(3)アンケート結果
全学年合計 国語 社会 数学 理科 英語 音楽 美術 保体 技術 家庭
意欲的に取り組めたか 3.69 3.87 3.94 3.89 3.96 3.89 3.71 4.15 4.32 3.79
内容は理解できたか 3.73 3.75 3.83 3.79 3.92 3.96 3.77 4.09 4.06 3.90
説明はわかりやすかったか 3.87 3.86 3.97 4.11 4.18 4.04 3.88 4.22 4.18 3.98
自分の思いは生かされたか 3.79 3.51 3.75 3.66 3.83 3.59 3.40 3.44 3.51 3.45
意欲的に取り組めた 平均 3.92
内容は理解できた 平均 3.88
説明はわかりやすかった 平均 4.03
自分の思いは生かされた 平均 3.59


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6 その他
 紙面の関係で割愛させていただいているが、本校では上記以外の活動として選択教科を補充・発展にそれぞれ明確に分類して実施し、基礎・基本の内容の徹底や発展的学習方法の習得を図ること、委員会活動において自学コンクールを実施し、学習の雰囲気作りを進めることなどの活動を行っている。他にも総合的な学習の時間の一部を利用して3学年を通した進路学習を行い学習意欲の向上に努めるなどの方策も実施している。詳細は本校発行の研究紀要をご参照頂きたい。


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