放課後学習チューターの配置等に係る調査研究事業の実践          〔指導課〕
 確かな学力の向上を図る放課後学習相談
 豊かな心を育む放課後学習相談

                       
−宇部市立吉部小学校―

      1 学校紹介2 研究内容3 研究の方法
                4 研究の実践5 成果と課題
          
実  践  の  ポ  イ  ン  ト
 基礎・基本を中心としたドリル学習や補充的な学習など個に応じた学習に取り組むことにより、児童のより確かな学力の向上を図る。放課後学習相談に取り組むことにより、児童に進んで学ぶ意欲をもたせるとともに、少人数で変化の少ない学習活動を活気のあるものにする。
 体育や生活などの活動を通して児童の体験活動の充実を図り、チューターとのふれあいを通して心豊かな児童を育てる。
 行事の運営や学習準備の参加、ティーム・ティーチング(TT)における学習の補助により、よりよい学習活動の場を設定する。
 チューターの実施記録の記入や放課後の話し合いを通して、課題や問題解決のための指導や助言をする場を設ける。

1 学校の紹介
 平成16年11月1日に楠町が宇部市と合併したことにより、市内では最も小規模校で唯一の複式学級を有する学校である。全校児童30名。
 平成15年度から文部科学省より指定を受け「放課後学習チューター配置等に係る調査研究事業」に2年間取り組んできた。
  


 TOPへ戻る



2 研究内容

(1)確かな学力の向上を図る放課後学習相談

 少人数学級のため、全員の児童に配慮したきめ細かな指導がしやすく、授業においては個別指導が徹底している。しかし、少人数の学習では、活動に変化が乏しく学習がマンネリ化しがちである。放課後学習チューターによる学習相談は、指導者もかわり、児童にとって新鮮なものとなり、放課後の時間を有効に使うことができる。児童に確かな学力を付ける方途の一つとして、学習ドリルの反復練習に取り組んできた。児童は解答を見て自分で丸付けしたり、チューターのサインをもらったりすることで意欲的に取り組んだ。

(2)豊かな心を育む放課後学習相談

 確かな学びを保障するためには、穏やかで落ち着いた人間関係づくりが必要である。児童同士は、同学年・異学年を問わず仲がよく、お互いに助け合っていこうとする気持ちをもっている。しかし、人間関係が固定しがちな面もあり、交友範囲も限られている。体育や生活などの体験活動を通して児童の心を育むことにとても有効である。

(3)小規模校における放課後学習チューターの活用 
 放課後以外の学習時間や特別活動や行事などに参加を呼びかけた。将来教員をめざすチューターにとってその活動は新鮮であり、違った一面から児童を見ることができた。また、TTとして学級担任の補助をすることは、学習中の児童の姿を観察することができ、放課後学習相談の参考となった。

(4)将来教員をめざす放課後学習チューターの資質・能力の育成
 チューターは毎時間、訪問実施記録に反省等を記録し振り返りをしている。疑問に感じたことや問題点等を教職員と話し合うことにより、児童理解や子どもを観察する力が付いてきた。また、本校で行われた初任者研修会の授業公開や本校を会場校としたへき地・複式教育研修会への積極的な参加は、チューターの力量を高めている。



  TOPへ戻る


3 研究の方法
(1)対象学年・児童
   平成15年度 1・2年生  平成16年度1〜6年 全児童

(2)開設期間
   平成15年6月27日(金)〜平成17年3月22(金)

(3)開設曜日・時間
   月・木・金曜日 15:30〜16:20

(4)場  所
   チャレンジタイム・・低学年(図書室)
             中・高学年(多目的スペース)
   ふれあいタイム・・・運動場、体育館、各教室
   TT学習・・・・・・各教室

(5)指導教科・主な内容

@ 指導教科
   算数・国語を中心とした全教科

A 主な内容
 ア 国語・算数(チャレンジタイム)
    基礎基本を中心としたドリル学習
    補充的な学習など個に応じた内容
 イ 算数・国語・生活・図画工作・その他の教科(TT学習)
    学習の指導補助
 ウ 生活・体育・音楽(ふれあいタイム)
    どんぐりゴマ、数珠作りなど遊び道具の製作や遊び
    ドッジボール、サッカー、リレー、縄跳び、おにごっこ
    楽器の演奏練習
 エ 学校行事への参加



 TOPへ戻る


4 研究の実践
(1)放課後学習相談の在り方

@ 
チャレンジタイム
   (15:30〜16:00)

ア 学習内容
・算数・国語の基礎基本を中心としたドリル学習
・補充的な学習など個に応じた内容


イ 児童の活動の流れ

(ア) ドリル学習
・各自の課題に沿ってプリントを選び、問題を解く。
・解答を見ながら自分で答え合わせをする。
・チューターに見てもらい、サインをしてもらう。
・ファイルに綴る。
・チューターのアドバイスを受けながら、結果によってはフィードバックするか、次のステップに進む。


(イ) 補充的な学習など個に応じた学習
・チューターに自分の課題について質問する。
・ 問題点を解決した場合は、その課題に沿ったプリント学習に進む。

ウ チャレンジタイムの流れ
15:25〜15:30 担当と大学生との打ち合わせ
15:30〜16:00 個別学習指導


エ 参加学年
1・2年生は放課後、15:30から参加している。
3〜6年生は6校時の学習が終了次第参加する。



(算数プリント)


(プリント選び)
 (学習プリントによる個別指導)
低学年(図書室)
A ふれあいタイム
   (16:00〜16:25)
ア 活動内容  
 体育や生活、音楽、遊びなどの体験活動をとおしてのふれあい

体育(ドッジボール)

生活(七夕飾り作り)
B その他の放課後学習相談

ア しおり作り

チューターの提案によるもので、牛乳パックから紙すきをし、しおりやはがきを作った。

イ スーパーボール作り
洗濯のりと塩から作り、子どもたちは実験の不思議さに感動した。


チューターの実施記録より
・ 紙すきを子どもたちと一緒にできてよかったです。うまくできるか不安でしたが、子どもたちも自分たちで考えながらやっていて頼もしく思いました。最後のあたりになってくると、助け合いもできるようになっていて、また、普段と違った一面を見ることができてよかったです。さあ、今度は何がいいかなと楽しみですが、卒業が近くなって残念です。
・ 今日は、5時間目からの参加でした。生活の授業で紙すきをしました。意外にうまくでき一安心でした。この人数でも、見きれない部分もあり小学校低学年の難しさ、楽しさを再認識させられました。授業に補助でも見学でも参加すればすごく勉強になると思います。
・ 『牛乳パックで紙作り』が完成に近づきました。みんなかわいらしいものができあがりました。私たちが手を出さなくても、子どもたちは自分で考えてやれるんだなということを実感する日々です。

(2)放課後学習相談以外の取組み

@ 放課後学習チューターと児童との対面式および交流会 平成16年5月27日(木)
  

A 荒滝山登山参加
 平成16年4月15日(木)
  

B 吉部っ子まつりへの参加  平成15年11月23日(日)
  

C 吉部地区の幼・小合同秋季大運動会への参加
 平成15年9月28日(日)
 

D 6年生を送る会への参加
 平成15年3月5日(金)
 

E チューターとのお別れ会
 平成15年3月5日(金)

F 卒業式への参加 平成15年3月19日(金)

 


 TOPへ戻る


5 成果と課題

(1)成果として
@ 児童






















・全員の児童が放課後学習相談を「楽しい」「役立っている」と思っており、全校児童が参加することにより活動が活気にあふれている。また、「やる気が高まった」等の感想もあり、意欲的に取り組み学ぼうとする気持ちが育ってきている。
・「分からないところが分かるようになった」「学習の仕方が分かった」と答えている児童が多く、教科の補充ができ、基礎学力が定着してきている。
・<ふれあいタイム>の実施は、他の人とのふれあいの少ない児童にとって人間関係を学ぶよい機会となっている。
・少人数のため体育や生活などの活動が固定化していたが、変化や広がりが見られ充実したものとなっている。
・少人数指導は日常から徹底しているが、TTとして活用することにより、さらにきめ細かな学習活動が成立した。また、放課後学習相談以外や、学校行事へのチューターの参加は、子どもたちに教室では培えない力を育てている。


A チューター
・学習相談活動をほとんどのチューターが
「とても有意義」と答えている。特に<ふれあいタイム>の活動は「子どもとの人 間関係づくり」や「児童理解」にとても有効と考えている。また、「教員への志望が高まった」と考えていることは、この活動の意義を肯定するものである。
・児童とのかかわりの中で感心したり、疑問に感じたりすることを記録として書いたり話したりすることにより、児童理解が深まってきている。
・1〜2年間という長期間にわたり子どもを見ることにより、児童の変化を観察することができている。(教育実習は短期間である)
・学校行事に参加し活動することにより、学校現場の姿を実際に見て感動し、学ぶことができている。また、放課後学習相談の時間とは異なった児童の様子を観察することができ、児童理解が深まっている。
・チューターのリーダーが全員のチューターとよく連携をとり、日程の調整がスムーズにできた。リーダーが育つよい機会であった。
・チューター自身が学習相談チューターのよさを自覚し、まだ経験していない学生に輪を広げていき、学習相談チューターの参加者が増えていった。


(2)課題として
・児童にとってあまりにも身近な存在であるため、慣れ合いになってしまうことも多々あった。学習相談チューターの立場を児童に継続的に指導する必要がある。
・地域が遠いため、時間の調整が難しく参加しにくい学生もあった。
・児童からだけでなく、保護者からもこの事業の継続を望まれているが、今後どのように取り組んでいくかが課題である。学力支援ボランティアを地域に呼びかけるなどの取組みを検討していきたい。また、大学との連携協力体制も考えていくことができればよいと思う。


 TOPへ戻る


◎校長から見た指導のポイント

 学校教員と放課後学習チューターとが連携した指導体制の確立を図る。
 学校のニーズと放課後学習チューターのニーズが融合した活動計画の作成と実践を通し、研究意欲・実践意欲の高揚を図る。
 放課後学習チューターに指導者としての意識の高揚を図る。


 TOPへ戻る                     実践編へ戻る