特別支援教育推進体制モデル事業の実践                (指導課)

特別支援教育推進体制モデル事業の実践                             

 −下松市立久保中学校−

学校紹介2 具体的な活動内容3 成果と課題4 実践に当たってのポイント

実  践  の  ポ  イ  ン  ト

校内支援体制の整備のための連絡調整や連携
保護者への啓発活動

1 学校紹介

 下松市立久保中学校は、全校生徒376名(平成17年1月現在)、学級数14学級(うち通常の学級13学級、情緒障害特殊学級1学級)の中規模校である。校区は、古くからある街並みと新興住宅地からなり、豊かな自然に恵まれている。
 生徒は、明るく素直で、落ち着いた環境の中で学習や運動に取り組んでいる。特別な教育的支援の必要な生徒については、軽度発達障害と診断された生徒を含め特別な教育的支援が必要な生徒が数名いる。平成16年度から「特別支援教育推進体制モデル事業」の推進校の指定を受け、通常の学級(3年)の学級担任が特別支援教育コーディネーターを担当し、校内支援体制づくりを進めている。


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2 具体的な活動内容

(1)校内支援体制づくりの推進

@    校内支援体制づくりの中核を担う会として、校内委員会(久保中ほほえみ委員会)を設置した。本校には、生徒指導委員会や就学指導委員会などの関連する委員会があるが、これまでとは違う新しい視点で進めていくことを全教職員に意識してもらうため、新しく設置した。

A    会のメンバーは、校長・教頭・教務主任・生徒指導主任・特別支援教育コーディネーター・サブコーディネーター(各学年主任・情緒障害特殊学級担任)・教育相談担当教諭・養護教諭・該当生徒の学級担任とした。特に、特別支援教育コーディネーターとサブコーディネーターが連携しながら、体制づくりを推進している。また、時間の許すかぎり、「心の教室」相談員や下松市教育支援センターカウンセラーの方にも加わっていただき、強力な推進体制づくりをめざしている。


(久保中ほほえみ委員会)

(2)研修の推進

@教職員の校内研修の推進
 校内支援体制を整備し、特別な教育的支援が必要な生徒に対応していくためには、全教職員が特別支援教育について共通理解をし、研修を充実していくことが必要不可欠であるが、とりわけ中学校においては、適切な支援がないと不登校などの不適応が起こったりする場合もあるという認識を教職員に知らせ、中学校こそ特別支援教育の研修が必要であることを確認することが重要である。そこで、校内研修を以下のように計画的・継続的に実施した。

4月 校内研修会 特別支援教育推進体制モデル事業調査研究運営会議作成の「校内委員会等対応マニュアル(第一次試案)」を使用して共通基本研修

5月 校内研修会 文部科学省の作成した「小・中学校におけるLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥/多動性障害)、高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)」を使用して支援体制整備について研修
 6月 校内研修会 軽度発達障害の理解とチェックリスト等を利用した実態把握について研修
   第1回久保中ほほえみ委員会開催
 7月 校内研修会 山口県教育研修所ふれあい教育センター研究指導主事を招聘し、生徒の実態を把握
   第2回久保中ほほえみ委員会開催
 8月 校内研修会 軽度発達障害への対応について
 9月 校内研修会 個別の指導計画についての研修、夏季休業中に特別支援教育コーディネーターが参加した研修会の復伝
10月 学年部研修会 特別な教育的支援の必要な生徒への対応の検討
11月 事例検討会 専門家チームのメンバーである周南児童相談所児童判定員と山口県立徳山養護学校特別支援教育コーディネーターを招聘し、事例検討
12月 学年部研修会 個別の指導計画の検討
 1月 個別の指導計画の完成、実践
 2月 事例検討会 山口大学教育学部木谷秀勝助教授を招聘し、事例検討
 3月 校内研修会 個別の教育支援計画と今後の課題について
   第3回久保中ほほえみ委員会開催

 また、職員会議や職員朝礼において、特別支援教育コーディネーターが参加した研修会の復伝や最新情報、研修会の紹介などを随時実施した。

A 特別支援教育コーディネーターの研修
 校内体制整備の中核となる特別支援教育コーディネーター自身が、専門性を高めることは、体制整備を円滑に進めていく上でとても重要である。特別支援教育コーディネーター研修会として開催された会は多くはなかったが、関連する研修内容で参加できる会には極力参加し、資質向上に努めた。
・公的な研修会への参加
・私的な勉強会への参加(大学教官との会、周辺地域の小・中学校教員による会、精神科医による会、臨床心理士資格をもつ教員との会など)
・研修視察(東京都杉並区立中瀬中学校を視察)

(3)保護者や関係機関との連携の推進

@ 保護者との連携
ア 啓発活動
 4月保護者会全体会、1学期学校保健委員会、7月保護者会全体会、2学期学校保健委員会、3学期学校保健委員会など、複数の保護者が集まるすべての会において、特別支援教育や軽度発達障害についてのプレゼンテーションを実施し、啓発を図った。
イ 相談活動
 6月に全校生徒に趣旨を説明したうえで、全家庭に案内文書を配布し、保護者・生徒との相談を実施した。相談のあった家庭とは、その後も随時連絡をとり合っている。保育士として勤務されている保護者の方から、職場の幼児への対応に関する相談もあった。また、教職員との特別な教育的支援に関する相談も随時実施した。

A 関係機関との連携
 下松市教育支援センター、周南児童相談所、山口県立徳山養護学校、山口県教育研修所ふれあい教育センター、山口大学教育学部附属心理教育相談室などの関係機関と連携を図った。それぞれの機関が主催される研修会などにできるだけ参加するなど、お互いに顔の見える連携を心がけた。また、同じ校区の小学校・市内の他中学校の特別支援教育コーディネーターとも、随時連携を図った。

(4)個別支援

 軽度発達障害と診断された生徒を含め特別な教育的支援が必要な生徒が数名いる。授業と並行しての個別支援を希望している生徒はいないが、授業以外の時間に指導してほしいという希望があった。そこで、長期休業中や放課後などを利用して個別支援を実施した。中学生への支援を進めるうえで考慮しなければならないことに、指導を受けたいが個別指導を受けることを級友がどう思うかといった心理的不安があることを考慮して、より本人や保護者のニーズにあった支援が求められる。


(個別支援風景)


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3 成果と課題

(1)成果

特別支援教育コーディネーター・サブコーディネーターを中核に据えることで、校内特別支援教育体制を構築することができた。

研修職員会や職員会議を計画的に利用することで、充実した特別支援教育に関する教員研修を進めることができた。

様々な観点から研修を実施することで、各教職員の生徒を見る視点を充実させることができた。

 これらのことは、子ども一人ひとりの顔の見える教育へと改善していくことにつながってきているものと考える。その一方で、様々な課題も見えてきた。

(2)課題

特別な教育的支援が必要な生徒に関する、教員間の共通理解をはかる時間の確保
特別な教育的支援が必要な生徒へ個別支援をするための時間、場所の確保
軽度発達障害に関して教員と保護者の間に意識のずれがある際の対応の検討
特別な教育的支援が必要な生徒のための教材開発


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4 実践に当たってのポイント

(1)担当者として

 校内の支援体制の整備には、連絡調整能力や連携が必要不可欠である。教職員間での情報交換については、会議を設定することが難しい場合は井戸端会議なども利用し、特別支援教育コーディネーターが「繋いでいく」必要がある。保護者に対しては、あらゆる機会をとらえ啓発活動を行うべきである。また、専門家と直接つながることが難しい場合は、「ある専門家と懇意にしている隣の中学校の先生を知っている」といったような繋がりを利用したい。

(2)校長として

 特別支援教育コーディネーターの仕事は多岐にわたるため、校内事情が許せば、校務や授業数などを考慮すべきである。また、特別支援教育に関することは、特別支援教育コーディネーターが担当するのが理想であるが、校内の教員配置の事情から1人のコーディネーターにすべてのことを担当させるのは難しいことも予想される。その場合は、関係機関との連絡調整は教頭、研修は特殊教育経験者、相談は教育相談担当などと、役割をチームで分担させるようにしたい。


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