不登校への取組み                       〔指導課〕

不登校の未然防止と対策                        
 −下松市立下松中学校−

   1 学校紹介2 活動計画及び具体的な活動内容3 成果と課題

実  践  の  ポ  イ  ン  ト
 校内外の連携・協力を重視して、個々の生徒に応じたきめ細かな支援を行う。
 ・ 問題を一人で抱え込まないチーム支援の体制を構築する。
 ・ 生徒や保護者の相談窓口を増やす努力をする。
 生徒一人一人の社会的自立をめざした進路指導や学習支援を充実させる。
 生徒理解に関する研修を充実させ、教職員の資質向上を図る。
 何でも相談し合える、温かな人間関係を構築する具体的な活動を工夫し、実践する。

1 学校紹介
 本校は昭和22年に開校以来、下松市教育推進のために「三層四段階方式授業」の教育実践等を継続してきた。部活動も盛んで、ハンドボール部や吹奏楽部は、特に活躍している。下松市の中心市街地に位置するが、校区は駅前商業地や製造業関係の大企業が立地する地域から、自然環境に恵まれた笠戸島まで広域に渡っている。地域の学校教育への期待・関心は大変高いものがある。
 生徒は、明るく素直で、「自らなせ 協力せよ 気魄をもて」を校訓として落ち着いた学校生活を送っている。
 平成15年に新校舎改築事業が完了し、新しい施設・設備を備えた校舎での教育実践が進んでいる。



 TOPへ戻る


2 活動計画及び具体的な活動内容    
 本校では、教育相談活動を充実させ、温かな人間関係を構築することが不登校の未然 防止につながるという視点から、次のような活動を行っている。
@ 生徒理解に関する啓発活動
 生徒の心を共感的に理解し、生徒の成長に対して、適切な支援を行うためには、教職員のカウンセリングマインドを向上させ、様々な支援の方法を習得することが必要である。また、保護者に対しては、思春期の子育てに関する情報を提供することも有効である。そこで、次のように様々な形で教職員及び保護者への啓発活動を行っている。
ア 教職員への啓発
(ア) 「教育相談ミニ研修」の発行
 多忙な教職員が、わずかな時間で生徒理解に関する情報を得られるように、内容や伝達方法を工夫している。
 ○内容  教育相談関連図書の紹介
      校外研修の復伝
      新聞や雑誌の記事
      生徒の声
【教育相談ミニ研修】

(イ) 教育相談関連図書コーナー設置
 職員室に図書コーナーを設け、学校教育相談関連図書を誰もが自由に使えるようにしている。

イ 保護者への啓発
(ア) 教育講話会の開催
 カウンセリングの専門的知識をもつ講師を招いて、「思春期の子どもをもつ親の在り方」の講話会を、年1回実施している。また、同様な講話会を、新入生徒の保護者を対象として行うことも企画中である。
(イ) 学校新聞の利用
 学年の初めや定期教育相談の前後に教育相談の記事を掲載する。学校での教育相談の取組みを理解してもらうとともに、家庭の子どもと保護者の会話を促すことを目的としている。
【学校新聞】
A 校内外の連携推進の取組み
ア 校内の連携
(ア)生徒指導委員会の実施
 学校全体の動きを把握し、教育活動のスムーズな運営を図るとともに、生徒の問題の早期発見・早期対応を図るために、本校の経営組織の中に位置付けられている委員会である。

 日 時 毎週1回 1時間
 参加者 校長、教頭、教務、生徒指導主任、学年主任、「女生徒指導」担当、教育相談担当、養護教諭
 内 容 学校行事等の確認
      生徒指導に関する情報提供及び起案
      各学年の情報交換
      保健室及び相談室からの情報提供
(イ)教育相談組織の見直し
 生徒の問題を担任が一人で抱え込まず、その生徒にかかわる全ての者が連携・協力して支援できる全校体制を作るために、教育相談の組織を見直した。
 教育相談担当がコーディネーターとなり、担任と生徒のかかわりを中心にした支援の輪を広げている。生徒に関する情報交換を、休み時間や放課後に頻繁に行う。また、不定期ではあるが、担任、学年主任、養護教諭、教育相談担当、カウンセラー等が支援対策会議を開いて、支援の方向性を話し合うこともある。

イ 校外との連携
(ア)カウンセラーとの連携
 カウンセラーが、週一回、適応指導教室から派遣される。カウンセラーは生徒へのカウンセリングを行うとともに、教職員へのコンサルテーションも行う。カウンセラーと教職員が連携しやすいように、教育相談担当が話し合いの場を設定したり、情報を双方に伝達したりしている。また、カウンセラーと教職員の茶話会を企画して、雑談の中で相互理解を深め、コンサルテーションが行いやすい人間関係をつくる努力をしている。
(イ)小学校との連携
 小学校期と中学校期は生徒の成長過程の中では一連の時期である。したがって、小学校と中学校が別々に模索した支援よりも、連携・協力して行う支援の方が、深い生徒理解に基づいており、有効である。そこで、小・中連携事例検討会を行うことにした。

 日 時  各学期に1〜2回 2時間程度
 参加者  教育相談担当、養護教諭、カウンセラー
 内 容  事例検討及び児童・生徒支援に関する情報交換
 成 果
(小学校)
 卒業した児童の中学校での状況を知ることで、現在在学している児童への支援を改善する視点が得られた。
(中学校)
 個々の不登校及び不登校傾向生徒への支援を改善するヒントが得られた。
(ウ)保護者との連携
 担任や部活動顧問や養護教諭等によって、日常的に、保護者との意志疎通が行われている。さらに、学校側から積極的に保護者との連携を図ろうと、茶話会を企画している。小さな試みであるが、毎回、数名の参加者がある。
 日 時  各学期の期末保護者懇談会(個人懇談型式)の待ち時間
 参加者  希望する保護者(入退室自由)
       養護教諭、教育相談担当、カウンセラー
 場 所  保健室または、特別教室
 成 果  
 ・保護者の考えや生徒の校外での姿を知るよい機会になった。
 ・学校と保護者の信頼関係が深まり、保護者にとって相談窓口が増えた。
B 生徒への相談活動
ア 定期教育相談
  定期教育相談を年間指導計画に位置付け、実施している。

学 期 対  象 実  施  方  法
全校生徒 学級担任による個別相談
11 1・2年生全員 生徒の希望した教職員による個別相談
3年生全員 学級担任による個別懇談
1・2年生全員
3年生希望者
生徒の希望する教職員による個別相談
 生徒が希望した教職員と相談することが、生徒にとって相談窓口を増やすことに繋がる。そこで、全校体制での生徒に対するチーム支援が可能となる。

イ 相談室の開放
 定期教育相談だけでなく、日常的に相談活動ができるように、相談室を生徒に開放している。利用のルールを定めて、教育相談担当が対応している。
【相談室の利用のルール】 【相談室内】

ウ カウンセラーによる相談活動
 カウンセラーと相談したい生徒は予約をして、相談室や保健室内のカウンセリングルームで話すようにしている。また、問題を抱えている生徒に対して、担任からの要請で相談活動を行うこともある。その場合、教育相談担当が窓口となり、カウンセラーが機能しやすい環境を作っている。
C 生徒の人間関係づくり支援
ア 人間関係づくりトレーニング
 学校生活の集団基盤である学級の人間関係を向上させる目的で、宿泊を有効に活用して、グループエンカウンターを取り入れた研修を企画した。
 また、道徳でもグループエンカウンターやアサーショントレーニングを取り入れた授業を行っている。
イ 感動レポート
 生徒や教職員が実際に出会い感動した場面や人物を紹介するレポートである。学校新聞に取り上げて、生徒・保護者に紹介される。周囲の人のよさを認め合うよい機会となっている。

D 別室登校生徒への対応
 不登校及び不登校傾向生徒には、その状態に応じて、適応指導教室等の外部の諸機関 を紹介したり、別室登校を考慮したりしている。別室(学習室と呼んでいる)では、教 育相談担当、担任、学年主任、副担任、養護教諭等がチームを組み、生徒の自学自習を 見守りながら、教室復帰をめざして、個に応じた支援を行っている。


 TOPへ戻る


3 成果と課題
○ 成果として
教育相談の組織を明確にし、教育相談担当がコーディネーターとなることで、生徒に関する情報の共有化が進み、様々な立場の者が連携・協力して、生徒の自己実現を支援することができるようになった。
組織で問題に取り組むことにより、不登校及び不登校傾向生徒にかかわる教職員一人一人の負担が軽減した。
様々な連携の取組みによって、校内外の温かい人間関係が醸成されつつある。
問題の早期発見・早期対応が可能になった。
● 課題として
生徒同士の人間関係構築能力を向上させる取組みを推進して、温かい人間関係づくりを支援する。
生徒一人一人の社会的自立をめざした進路指導や学習支援を、更に積極的に行う。
様々な立場の者が連携・協力して生徒への支援を行う学校体制を、更に強化する。


 TOPへ戻る                実践編へ戻る