児童生徒の心に響く道徳教育推進事業                 〔指導課〕

 豊かな心をもち、たくましく生きる力を育む道徳教育の推進
   
〜体験活動等を生かした道徳的実践力の育成〜
宇部市立楠中学校

1 研究主題設定の理由2 研究の概要3 実践例4 今後の課題5 心のノート活用例6 市町村の取組み(宇部市)
研  究  主  題
豊かな心をもち、たくましく生きる力を育む道徳教育の推進
〜体験活動等を生かした道徳的実践力の育成〜

1 研究主題設定の理由
(1) 前年度の成果と課題に基づいて、上記の研修主題を設定した。
(2) 旧3中学校が統合してできた本校にとっては、家庭や地域社会との連携による道徳教育の推進はとりわけ重要である。そこで、道徳の時間や体験活動に地域の人々の参加や協力を得るなどの取組みを工夫し、生徒の道徳的実践力を育むため、上記の研修主題を設定した。

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2 研究の概要    
(1)研究授業と研究協議
 生徒の道徳的実践力の育成、教員の指導力の向上をめざして「道徳の時間」の研究授業を行う。研究授業を充実させるため、研究授業前に学年で、研究授業後は研修職員会議で協議する。 
(2)道徳実践案とその実施
 道徳実践案とは、既存の行事や体験活動について道徳的実践力の育成の視点から作成したものである。 
(3)道徳推進地域協議会との連携
 協議会との連携とは、協議会への参加、アンケート調査の協力、協議会を通しての3校区内小学校との連携を図ることである。

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3 実践例
(1)研究授業による「道徳の時間」の改善への取組み
@ 学級担任による研究授業
実施日 学級 内容項目 教  材  ・  資  料
6.22 2−3 2-(5) 「みんなちがって、みんないい」大橋幹雄、「金子みすゞ童話集」
7.12 3−1 4-(3) 中学生作文「きまずい時間」(全国作文コンクール)
10.22 3−3 4-(1) 合唱練習のビデオ、TV特集「ウオーターボーイズ2,最終回スペシャル」のビデオ
11.17 1−2 2-(2) 「少年とかえる」(イソップ寓話より)
12.1 2−3 2-(2) 「犬」(金子みすゞ童謡集より)
 ◎ 研究授業の前には、1〜2週間かけて学年研修会で教材・資料や指導案の検討、授業を行った。
A 養護教諭の参加による研究授業
日時等  10月8日(金)、体育館、3校時・3学年全員
内 容 一次、保健体育科(思春期の心と体の変化、生命誕生)
     二次、道徳の時間(男女交際)
     三次、保健指導「男女交際を考えよう。」
B 公開授業
日 時 9月29日(水)、13:30〜14:20
参加者 楠町教育委員(4)、道徳推進協議会委員(10)、近郷小・中学校教員(10)、指導者(4)、本校職員(14)、計42名
授 業
内容項目 学級 教  材・資  料
4-(1) 1−1 「あいさつ ライオンの物語」(羽仁 進/あべ弘士著)
4-(1) 2−1 「フレデリック ちょっとかわったねずみのはなし」レオ=レオニ作
4-(6) 3−2 家族に関するアンケート、「NEVER CHANGE](長渕 剛)
「最愛の人への最期の手紙」(西日本新聞社2001.9.15掲載記事)
授業例(第2学年の指導案より) 授業後の研究協議録から
A ねらい
 自己が所属する様々な集団の中で一人ひとりがのびのびと、自らよさを発揮できる喜びとそれを支える集団の在り方を考えさせる。
B 資料・教材の生かし方
アニメーションビデオで資料提示、黒板に各場面の絵を提示する。
資料の中から、個性を生かして集団の向上のために協力することや自分の役割を果たすことができた達成感や仲間に認められる喜びを感じ取らせる。
発問を工夫し、個性を発揮できる集団の在り方について考えさせる。
学校生活の中での役割を果たしたときの達成感・仲間に認められた喜びを想起させ、内面化を図る。
C 評価
集団の中で自分の責任と役割を見い出し、個性を生かして集団の向上のために協力することの大切さを理解することができたか。
集団の中で一人ひとりがのびのびと自らのよさや個性を発揮するためには、互いの個性を認め合い、支え合う集団であることが必要であることに気付くことができたか。
生徒の運動会でよかったこと、がんばったことを生かしたことは授業の主題とぴったり当てはまっていた。
日頃の授業や指導の様子もよく分かる授業であった。
「もしも、主人公フレデリックが腹を立てていたらどうなっていただろう?」という発問はどうだろうか。
導入がすばらしい、本時の目標は達成した。
VTRと絵の提示の仕方がよかった。
学習の成果をこれからの学校生活にどのように生かしていくのか?集団の輪づくりに生かしていけないか。
授業を終えて(生徒の感想から)
自分だけにしかできないことはだれでもあるんだなと思った。
自分には自分のよいところがあるし、人には人のよいところがあるということが分かった。
みんなが頑張っていると自分も頑張れると思いました。
自分の気付いていないところを友達はちゃんと見ていてくれているんだなと思った。
 考察  
ア 絵本を教材化することで授業の導入をスムーズに行い、学習内容・課題への接近が的確にできた。
イ 視聴覚機器の利用、板書の工夫、発問の工夫は、生徒に話し合いをさせたり、意見を求めたりするときに大切であると考える。
ウ 授業の終末においては、日々の学校生活とかかわらせて考えることで、道徳的価値の自覚をより深めることができるもの考える。
(2)道徳教育重点目標からの体験活動等の改善への取組み
@通年実践(年間を通して学校全体で取り組める体験活動等)
 A 朝の読書 B 黙想
Aポイント実践(従来の学校行事等)
 A 校外スケッチ B 運動会 C 修学旅行、学習発表会など
B新規実践(道徳重点目標を達成するのに新しく必要と思われる活動等)
 A 整美活動 B 全校クラスマッチ
(3)アンケートによる調査・分析の取組み
@1・2年生は4月に道徳性の検査(教研式NEW HUMAN)を実施した。検査結果を学年研修会で分析・検討し、道徳の内容項目で不十分な部分や学年として伸ばしたい内容項目を「学年重点目標項目」として設定した。
 また、3年生は前年度行った保護者へのアンケートを参考資料にした。
A全学年に実施した「道徳の時間」についてのアンケート結果(一部)から
                             (10月19日実施)
A 「道徳の時間は楽しいと思いますか。」
楽しくない 18.1% あまり楽しくない 30.5% やや楽しい 45.1% 大変楽しい 6.2%
B 「やや楽しい、大変楽しいと答えた人は、理由を2つ選びななさい。
 ア 資料や話に感動するから              20.0%
 イ 友達の意見や考え方を聞けて自分のためになるから  16.4%
 ウ 自分の生き方や考え方を見つめ直すことができるから 22.0%
 エ 新しい考え方や行動の仕方に気付くことができるから 34.4%
 オ 道徳の時間で自分の心が成長していると感じるから 5.1%

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4 今後の課題
(1) 研究授業の取組みによる成果
 校内研修とのリンクにより、確実に成果が上がっている。学年の成果が全校に広まり、生徒のために「道徳の時間」の授業改善をしていこう、教師が変わっていこうという雰囲気が感じられた。
(2) アンケートから浮かび上がったこと
 教師側の考えと生徒側の気持ち、保護者側の思いがうまくかみ合っていないことが分かった。道徳教育が教師側からの一方通行にならないように、アンケートの結果を真摯に受け止め、授業改善・体験活動等に活用していきたい。
(3) 道徳実践案の取組みと体験活動等の生かし方
 今年度は「道徳の時間」に重きを置いたが、次年度は体験活動等を生かした道徳的実践力の育成を追究したい。
(4) 校区内3小学校との連携を進めること
 小学校との連携を深め、機能的な道徳教育の諸計画の検討や道徳授業の相互参観などを通して、生徒の道徳的実践力を育成する手立てを探りたい。

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5 心のノート活用例学級活動での「心のノート」の活用例)
1 活用の趣旨
(1) 「心のノート」が果たす役割から考える。
@生徒一人ひとりが自主的に学習するために作られていること。
A生徒の心の記録をするために作られていること。
B学校と家庭との心の架け橋となるように作られていること。
(2) 「心のノート」の活用場面から考える。
@学校での道徳の時間をはじめ、各教科、特別活動及び総合的な学習の時間や家庭での話し合いの場面など、幅広い場面で活用ができること。
A指導過程での事前・導入・展開・終末・事後のあらゆる場面での活用ができること。
2 活用例
 ある生徒が友人関係を崩し、学級に入室しづらい状況がある。この生徒を学級に迎え入れるために、学級活動を行い、「心のノート」を活用した。
(1) 指導過程その1
 学級活動「人間であるこのすばらしさを確かめる。1・2・3」において
@ 導入として
「心のノート」p70〜71より、『かみしめたい人間として生きるすばらしさ』
A 発展として
「心のノート」p20〜21より、『努力することはすばらしい』
「心のノート」p30〜31より、『自分をまるごと好きになる』
(2) 指導過程その2
 学級活動「道徳の時間とは何かを再確認し、集団生活に役立てよう」
◎導 入:「道徳の時間に関するアンケート」を行う。
◎展開1:アンケート結果を皆で確認(板書)する。
◎展開2:「心のノート」p24〜25より、『中学生だもの自分がすることは結果まで深く考える』を活用する。
◎終 末:まとめ
3 今後の課題
(1) 「心のノート」の活用について、年間計画の中に具体的に位置付ける。
(2) 「心のノート」の活用例を収集、全校体制で活用を検討、実施する。
(3) 「心のノート」の校区内3小学校の「道徳の時間」以外での活用実践を参考にして、中学校版の活用について研修を進める。 

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6 市町村の取組み(宇部市)
1 研究主題
 地域の教育資源等の活用による小・中連携の道徳教育の充実 
2 研究主題の設定理由
(1) 推進地域の概要
 楠町(平成16年11月1日合併し宇部市となる)教育委員会では、平成10年度から6年間、町指定「道徳教育推進校」を設け道徳教育の推進を図った。
 平成16年度は3中学校統合の2年目に当たり、この機にこれまでの成果を発展させるべく「児童生徒の心に響く道徳教育推進事業」の指定を受けた。
(2) 研究主題の趣旨      
 平成16年11月1日の宇部市との合併で推進地域が広域化したが、年度内は「楠地域」の教育資源の活用と3小学校との連携による楠中学校の「心に響く道徳教育」を推進するための全面的な支援と地域の道徳教育の推進、啓発を図ることとした。
3 事業の概要
(1) 平成16年度研究計画         
 @1学期・第1回楠町道徳教育推進地域協議会(平成16年7月1日(木))
 ・道徳教育「心のせんせい」募集  
 A2学期・推進校の公開授業への参加(平成16年9月29日(水))
 ・道徳教育意識調査(4校保護者)(平成17年1月末、結果集約)
B3学期・第2回宇部市道徳教育推進地域協議会(平成17年2月15日(火))
(2) 研究の概要と成果
 @第1回地域協議会の「これからの道徳教育―学校・地域の連携を踏まえて」山口大学 西村 正登教授の講話は、地域協議会の研究主題に沿うものであり研究推進へ多くの示唆を得た。
 A楠中学校の道徳公開授業を参観した。「道徳の時間」の実態を知るとともに、学校教育全体で取り組む道徳教育について、地域の 教育資源を如何に活用するかを考えるよい契機となった。
 B道徳教育人材バンク「心のせんせい」の募集については、3小学校区からそれぞれ応募があ り4名に依頼した。その活用を図る。
 C楠中学校区の保護者を対象に道徳教育意識調査を実施し、その結果を集約し考察することと しており、中学校はもとより、小学校の道徳教育の計画に反映させる。
 D第2回宇部市道徳教育推進地域協議会で主題に係る講話を聞くとともに、今年度の総括を行う。
4 今後の課題
 道徳教育の推進のために、家庭や地域社会との連携・協力の重要性が推進委員に認識された。
 推進委員が、楠中学校の公開授業に参加するとともに、公開授業についての研究協議にも出  席し意見交換が実施できたので、学校と保護者、地域の連携による道徳教育推進の第一歩となった。
 平成17年度は、小学校24校、中学校13校の全校区が「地域指定」となることに伴い、14名の推進委員に、宇部市小学校、中学校研究会道徳部会の各理事長を加え、宇部市全域を視野に入れた研究体制となり研究の深まりが期待できる。
〜担当課〜
 宇部市教育委員会 学校教育課
 〒755-8601
 山口県宇部市常盤町1-7-1
 電話 0836-34-8609
 HP:school@city.ube.yamaguchi.jp

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