総合的な学習の時間(小学校)                    〔指導課〕

伝えたい!すてきなふるさと萩                        
 −萩市立明倫小学校−

 1 学校紹介2 本校の生活科・総合的な学習の時間の研究テーマ及び研究の重点/        3 年間指導計画について4 実践例5 評価方法評価規準
        6 子どもたちの感想から7 実践を通して
実  践  の  ポ  イ  ン  ト
 テーマを地域の課題として取り入れた問題解決的な学習過程を仕組む。
 テーマを明確化し,「意思ある学び」を促す。
 随時,計画の見直しをする時間をとり,活動の実態を見取りながら,柔軟に計画の変更を認める。
 活動と活動の間に,振り返りの時間をとり,子どもたちの成長につながる「評価」をする。
 専門家や地域からの支援・協力による質の高い活動をする。基礎的な学び方を身に付けさせる。

1 学校紹介
 本校は,全校児童数870名(平成15年5月1日現在)で松本川と橋本川に囲まれたデルタ上に城下町として発達した萩市のほぼ中央にある。成徳達材を目標に多くの人材を養成した藩校明倫館跡に開校され,「伝統ある明倫館の学風および松陰精神に学び,さらに格調高き明倫教育の創造に努め,もって国家社会の形成者となる有能な人間の育成を図る。」を学校教育目標に掲げ,自ら学ぶ子・心豊かな子・力強く生きる子の育成に努めている。


(明倫小学校玄関)

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2  本校の生活科・総合的な学習の時間の研究テーマ及び研究の重点
 研究テーマ
「見たい・聞きたい・知りたい・伝えたい 明倫ワールド」について
「どうしても見たい。」「どうしても聞きたい。」「どうしても知りたい。」「どうしても伝えたい。」という思いや願いを引き出す活動を仕組み,認め合う温かい雰囲気の中で,子どもたちがドキドキしながら,「学びの主人公」となる喜びに満ちた明倫ワールドを実現する。
 
研究の重点
 @ 「生きて働く力を育てる学習過程の工夫」
今求められている学力は,自分の将来や社会生活にいきていくための知恵として実際に生かし,活用していく実践的な力である。そこで,それぞれの単元にふさわしい視点,つまり子どもに身につけさせたい力を明らかにし,より明確な目標に基づく指導が必要となると考えた。
 A 「一人一人のよさや可能性を引き出す評価のあり方」
評価は,自らの学習の過程を振り返り,達成感や成就感を味わわせるとともに,指導のあり方について工夫改善を加えるために,評価の役割や重要性を見直し,指導と評価,学習と評価の一体化を図り,子どもへのかかわり方を工夫することが大切だと考えた。


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3 年間指導計画について
 総合的な学習の年間指導計画については,学年ごとに下記のように活動重点を決めて,計画立案し,4年間で「生きる力」のもととなる力をトータル的に育成するように計画している。


3年・・・発見

4年・・・調査

5年・・・発信

6年・・・創造


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4 実践例
単元展開と評価〔全94時間〕
単元名  第6学年 「創造しよう〜こころネットワークを広げよう!〜」
青少年の凶悪事件が多発している昨今,「こころの時代」「感動に飢えた時代」と言われている。本単元は,変化の時代においても大切にしておきたい「ふるさとのこころ」「豊かなこころ」を追究し,写真に収めていく活動を通して,これまで気が付かなかった「身近なふるさと」や「そこに生きる人のこころ」と出会い,最終的には,「自分自身のこころ」を見つめ自己創造していくことをねらいとした実践である。

1次 学年のテーマのもと,クラスの活動内容やグループのテーマを決めよう。 ・・・ 8時間 
○写真家と連携して
(1)平和学習の一環として,写真家の話を聴き,世界各国の人々の様子を知る。
一枚の写真に込められたメッセージを受け取る。
(2)クラスの活動内容やグループのテーマを決める。

2次 1回目の「こころふれあい写真館」を開こう。〜中間発表をしよう〜 ・・・18時間
○卒業生・博物館・写真家・専科の先生・元校長先生・保護者と連携して
(1)グループごとに活動計画を立てる。
(2)伝えたいテーマに沿って追究活動をし,様々なこころを写真に収める。
(3)「こころふれあい写真館」の準備をする。
(4)「こころふれあい写真館」を開く。〜中間発表〜
   (他のクラスの友達,ゲストティーチャーを招いて)

すてきな萩を伝えるために,
「手のぬくもり」をテーマに写真を撮った

グループの作品より

3次 中間発表をもとに,活動を振り返ろう。・・・3時間+主体的な活動
○博物館・美術館・写真家・専科の先生・元校長先生・保護者と連携して
(1)中間発表をもとに活動を振り返り,主体的な追究活動をする。

4次 創造しながらさまざまな場所で「こころふれあい写真館」を開き,多くの人とこころの交流をしよう。                  
2学期・・・40時間 3学期・・・15時間

○博物館・ケーブルテレビ・写真家・卒業生・専科の先生・元校長先生・保護者と連携して
(1)主体的な追究活動をもとに,2回目の「こころふれあい写真館」の準備をする。
(2)わくわく明倫ランド(明倫小学校・有備館)で2回目の「こころふれあい写真館」を開く。
(学校の友達・先生・お世話になった方・地域の方を招いて)

(有備館で行われた「こころふれあい写真館」の様子より)

(3)活動を振り返り,休日などを使って,自主的な追究活動をする。
(4)主体的な追究活動をもとに,3回目の「こころふれあい写真館」の準備をする。
(5)田町商店街で3回目の「こころふれあい写真館」を開く。
(保護者・地域の人・観光客を招いて)

5次  一人一人の思いを文集やCD−ROMに収めよう。・・・10時間


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5 評価方法
 一人一人のよさや可能性を引き出すことができるように,次のような評価方法を考えた。

(1) 総合ノート・振り返りカードの活用(自己評価)
自分の学びを自覚できるように,活動後に活動を振り返って記録をした。その記録をもとに,一人一人の学習を見取り,活動の方向を定めたり,軌道修正をしたりした。

総合ノートの項目
 @ 今日(前回の総合ノートに書いたときから今日まで)実際に活動したこと
 A 活動を通して感じ取ったこと・ゲットしたこと・成長したこと
 B 感心した友達。その理由
 C 次の活動
 D 自分から自分へのメッセージ
(2) 学級通信の活用
成長しつつある子どもたちの姿を具体的に紹介することによって,子どもたちの意欲の継続化を図り,学習を支援した。また保護者に対して,多角的・多面的に,子どもたちの成長が実感できるような発信の場とした。
(3) ゲストティーチャーからの評価・保護者からの評価・友達からの評価(相互評価)
ゲストティーチャー,保護者,友達からの評価により,子どもたちの細かな学びの様子や成長を見取ることができるようにした。
(4) 評価規準
一次ごとに,「学ぶ意欲・態度」「学ぶ力」「創る力」「生きぬく力」の四観点において,評価規準を設けた。


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評価規準


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6 子どもたちの感想から
学年のはじめ,ぼくは「総合」って何だろう?とずっと思っていた。しかし,写真館を重ねていくうち,「総合」のよさが心からわかってきた。3回目の写真館を終えて,クラスみんなの前で今までの思いをふくめ,感想を伝えた。ぼくは,正直涙があふれた。
 思いも,感じたことも,何もなかったぼくが,なぜ今日本当にこころから泣けたのだろうか。
 白紙のままで地域の人と出会い,白紙のままのぼくに,いろいろなことを教えてくださった。思えばある日の夕方,ある方の家に取材に行くと,
「よく来たねえ,寒かったろうに。まあ入りなさい。」といつもやさしく,あたたかい笑顔で迎えてくださった。
 ある家では,
「ぼく柿食べるかね」
とたくさんの柿をくれた方もいた。
 白紙のままで出会い,いろいろなことを教えてくださった人が,気軽に柿をくださるまで,こころが近くなっていたのだ。そのとき,初めて「こころの距離」を実感した。そして,改めて総合の楽しさを知った。もちろん楽しい分,いろいろなかべにぶち当たり,たくさん大変なこともあった。だけど,先生はこう言った。「『大変』とは大きく変わること」と教えてくださった。だから,ぼくは大きく変わったんじゃないかと,自分でこころから思った。大きく変わったからこそ,本当にこころから泣けたんだと思う。これからも,地域の人たちに支えられながら,感謝しな がら,自分をみがいていきたい。


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7 実践を通して

(1)成果として
○1年間を通して,ふるさと萩をじっくりと見つめ,近づいていった。
 初めは,相手やもの・景色など,対象物を写真に収めていた子どもたちであったが,少しずつ,自分自身を振り返るようになり,自分の「こころの風景」を見つめてきたように思う。そして,「ふるさと萩」に生きる者として,多くの人たちに支えられていることを実感し,感謝し始めるようになってきたようであった。
○時間が経つにつれて,だんだん「話し合い活動」を大切にし始め,テーマを練ったり,活動計画を立てたりと,きちんと自分たちで手順を追うことができるようになってきた。それに合わせて,みんなが協力することの大切さを実感してきたように思う。
○子どもたちに総合的な学習の時間について聞くと,
 ・ 息を吸ったり,はいたり,まるで呼吸をしている生き物のよう。
 ・ 自信がついてきた。
 ・ 大変って「大変さを乗り越えて自分が『大きく変わる』ことだなあ。
 ・ こころの力が言葉や行動に表れるのだな。
 ・ 楽じゃないけど楽しい。
 ・ 「学習」って行ったり来たりする階段のようだ。
という答えが返ってきた。納得するまで追究していくことの「学ぶ楽しさ」を,子どもたちは大変な中で実感してきたように思う。保護者からも,子どもたちの学びの様子から,総合の意義を十分に理解していただいた。
子どもたちから,豊かな表現力を支えるものは「豊かな経験に支えられた伝えたいものの大きさ」「伝えたい気持ち」であることを私自身が教えられたような気がする。
○子どもたちの学びを確かにし,地域や社会へと広げていくためにはゲストティーチャーは大変重要である。今回,授業の意図を十分に説明し,共に授業をつくり上げていくようなかたちができ,効果的なサポートをしていただいたことに感謝している。子どもたちも,ゲストティーチャーから多くのことを学んでいたようである。

(2)課題として
○コンピュータをうまく活用して,情報を発信できるようにしたい。
○必要なときに,専門的な知識を得たり,支援したりしていただくための効果的な方法を考えたい。
○校種間連携のある総合的な学習の時間を考えてみたい。
   

○ 校長から見た指導のポイント
 追究活動が学校外に広がり,地域の自然や社会とのかかわりを広げ深める。
 より主体的な活動になるよう,学習の様子をその都度学級だより等で保護者に伝え,理解と協力を得ながら学習を進める。
 どのような場面でも堂々と発表ができる強い心をもち,優しいおもてなしのできる子どもを育てる。

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