1 学校の紹介/2 総合的な学習の時間の流れ/3 活動内容
4 評価の観点と評価方法/5 生徒の感想から/
6 成果と課題/7 指導上の工夫点/8 校長から見た指導のポイント
実 践 の ポ イ ン ト |
基礎的な学び方を身に付けさせる。
身近な環境とのふれあいや、地域の方と一緒に活動する機会を多く設定する。
生徒の学習の状況に応じて、適切な指導を行う。
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本校のある美川町は岩国市の北部に位置し、山に囲まれ錦川が町内を縦断している。人口は約1800人で、高齢化が進み、児童・生徒の数も減少しつつある。
本校は、全校生徒33名(昨年度36名)という小規模校である。生徒は純朴で、仲がよく、お互いに協力し合って学校生活を送っている。しかし、幼い頃から少人数集団の中で生活しているため、切磋琢磨する力が弱く、自己決定力や自己表現力が乏しいことなどが課題である。
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活動内容を考えるために、生徒に身に付けさせたい力として、本校の実態から次の3点に整理した。
表現力
自主性
社会性
そこで、第1学年においては、『ふるさと学習』という単元を設定し、
地域を知り、大切にする気持ちを育てる
学び方の基本を身に付ける
協力して物事を成し遂げることや話し合い活動を通して、協調性や発想力を育てる
ことをねらいに定め、体験活動を重視した学習に取り組むことにした。
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5月 −オリエンテーション−
○総合的な学習の時間とは?
○美川町についての意識調査 |
6月 −町花「川ツツジ」を育てよう−
○川ツツジについての調べ学習・発表
○川ツツジの挿し木実習・今後の対策 |
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ここでは、以後の学習に必要な「調べ方」「まとめ方」「発表の仕方」「質問の仕方」などの基礎的な学習方法を学ぶことを目的とした。グループごとに活動したことで、調べ方の特徴を感じたり、他のグループのまとめ方や発表の仕方のよさを学び合ったりすることにつながった。 |
7月 −課題の決定・計画作成−
○「地域に学ぶ」ことを前提に、自分たちでできる活動を検討・決定 |
”美川町といえば、○○○”という課題で、一人一人が思いついたことや、感じていることを書き出し、それらを自然環境・産業・観光・伝統文化・生活などの観点から分類し、さらにプラスのイメージであるかマイナスのイメージであるかによって整理させた。生徒は、今までよく知らなかった自分たちの町にもよいところがたくさんあることや、町全体にもっと活力が必要であることに気付いた。そこで、ふるさとを学ぶだけでなく、ふるさとの一員である自分たちが、町のために役立つには何ができるだろうかという課題意識をもち始め、その解決方法を考えていく学習へと発展していった。その結果、ふるさとをもっとPRしたいという意見にまとまり、決定した活動内容が次の2つである。
美川町イメージソングの作成
イメージキャラクターつき炭入りクッションの製作・販売 |
本校には、4年前にグラウンドに設置したドラム缶を利用しての炭焼き釜が2つある。林業の町であることから、以前からその釜で「炭焼き体験」を行っていた。その活動を総合的な学習に取り入れ、さらに発展させていこうと考えた。
9月〜1月 −活動実施−
○活動別に2つのグループに分かれて平行して実施 |
イメージソングには、当初学級で整理した美川町のよさを折り込むことにし、クッションと歌をタイアップさせることで町のPRを促進しようと考えた。また、話し合いにより歌詞を決定していく中で、意見の取り上げ方や人の話の聞き方などといった話し合いのルールが身に付いていった。
クッションには、町に生息している国の天然記念物であるカジカガエルをアレンジしたキャラクターを用いることになった。美川町のよさをアピールしたいということが生徒の中に浸透し、それが形になっていったのである。また、炭を入れた際に期待できる効果や効能などを調べたり、どのような状態で炭を入れるのがよいのかなどを検討したりすることで、より美川町をPRするクッションへの愛着が増していった。
◎ 炭焼き体験学習
地域の方に協力していただき、山に入って木の話を聞いたり、山を管理するための雑木伐採の体験をしたりすることができた。山や木が身近にあるとはいえ、日頃は直に接することも少なく、実際の活動を通して、ふるさとについてより強く関心を抱くようになった。また、山の大切さ、美川町の自然のすばらしさを学ぶことができた。
空き缶を利用して簡易炭焼きができることを提示することによって導入した。そのやり方については、川ツツジについての学習のときに身に付けた調べ学習の方法を思い起こし、自分たちで取捨選択して調べさせた。導入は教師が提示したものの、炭焼きに対する興味・関心が高まり、実際の活動においては生徒が主体的に取り組んでいた。 |
(簡易炭焼き)
(できた炭) |
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炭焼き釜での炭焼きは2回行った。1回目は町の産業建設課の方や農林事務所の方に来ていただき、炭焼きについて細かい指導を受けた。自分たちの手で炭を焼き、それを町のPRにつなげていくという思いを喚起させるのに必要な活動として取り組んだ。そして、指導していただいたことを整理し、2回目は自分たちだけで炭を焼くことにした。これまでの活動や1回目の経験から、役割分担の必要性に気付いたり、それを話し合いで決定したりすることができるようになっていった。体験中にも、自分のことだけでなく他の生徒の活動に協力しようとするなど、自主的な活動が増えていった。 |
町の観光施設(美川ムーバレー)で、製作したクッションの販売実習をした。観光施設の方への交渉など、生徒に行わせる場を設定することによって、会場設営・宣伝・金銭の取り扱い・お客様への対応など、たくさんのことを学ぶことにつながった。
クッションは1個200円で30個準備し、完売した。 |
(販売会場) |
◎ 発表会
2月 −発表会準備−
○発表会の内容決定
○原稿・資料作成と練習 |
3月 −発表会−
○保護者へ案内
○1年間のまとめ |
(発表会) |
発表会の内容・発表方法の工夫すべて生徒たちの手で成し遂げるまでに成長した。保護者の前で発表したところ、充実した内容に賞賛の声が聞かれた。
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評価の観点は次の4つである。
○学習への主体的な態度
○課題設定や課題解決の力
○自己表現力
○故郷の発展を願う心 |
また、実際の評価においては次のような方法をとった。
○活動記録や自己評価を毎時間記録し、それをファイルさせ、収集した資料とともに評価する。
○担当教員が生徒の活動の様子をできるだけ細かく記録し、それぞれの評価を参考にする。
○発表会を行う際には、生徒による相互評価を行う。 |
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炭づくりは簡単そうに見えて、とても大変だということがわかりました。とても疲れたけど、みんなで協力していい炭をつくることができ、クッションが完成したときにはすごくうれしかったです。これからももっと炭の効果や美川町について調べていきたいと思いました。 |
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初めは、自分で考えて取り組むことができないで、リーダーの指示に従うだけであったり、教師の指示を求めたりする生徒も多かったが、リーダーへの個別の指導や、自己評価・振り返りを大切に行った結果、活動を進めるにつれて、しだいにリーダーが自覚をもって動き始めるようになった。そして、それを支えるように周りの生徒も自分のできる役割を、自分で見つけることができるようになっていった。また、教師への質問も、アドバイスを求めることにかわり、自主的に活動する生徒が増えていったことも大きな変化である。
クラスの活動に取り組もうとする雰囲気が高まり、最後まで成し遂げられる自信がついていった。考えたことを自分たちの力で少しずつ実行できるようになり、一人一人が適材適所で活躍できるようになった。
物事の進め方や気の配り方がうまくなり、話し合いや役割分担なども上達した。
ふるさとを好きになる生徒が多く、PRのために活動したことが充実感へと高まっていった。 |
活動時間が十分あったにも関わらず、生徒の活動が予定より遅れてしまった。
外部指導者や外部機関との打ち合わせの時間設定が少なかったため、目的や意図が十分に伝わらない部分があった。 |
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(1)話し合いの仕方を学習させるため、話し合い活動の時間を確保する。また、学習の初めの段階で話し合いのルールや基本的な手順を押さえる。
(2)話し合い活動においては、司会をする生徒への事前指導を大切にし、話し合いの方向性や案をいくつか確認し、生徒自身の手で話し合いが進められるようにしておく。
(3)体験をすることが最終目的ではなく、体験という手段を通して、自分たちがふるさとに貢献することを第一の目標に据えて活動を進める。
(4)自分たちの取組みの良かった点や反省点を振り返る時間を設定し、事後の学習の進め方を考えさせる。
(5)ふるさとにしっかり目が向けられるよう、地域の方とのふれあいを大切にする。直接地域の方に指導していただける学習については、地域の方と一緒に活動できる機会を多くもつように計画する。
(6)自然に対して感謝の気持ちを抱く豊かな心を育てるため、身近な環境に直に接することができる場を設定する。 |
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(1)全教育活動との関連のもとに、全体計画を見直す。
(2)総合的な学習の時間の目標を明確化し、各教科との関連付けを図る。
(3)校内指導体制の確立を図る。
(4)地域の学習環境や施設・人材の積極的な活動について工夫する。
(5)生徒の学習した内容等、地域に発信する方法や場の設定を工夫する。 |
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