学力向上フロンティアスクールの取組み               (指導課)

生きる力を育む教育課程の実践
   〜生徒の学ぶ意欲を育てる教育活動〜                            
 −小郡町立小郡中学校−

1 学校紹介2 具体的な活動内容2@ 選択教科部会2A 少人数指導部会3 成果と課題4 実践に当たってのポイント
実  践  の  ポ  イ  ン  ト
大規模校としてのデメリットをメリットに変える。(生徒数や教員数→選択幅拡大・多様な授業)
少人数授業や選択授業の指導体制づくりを通して、きめ細かい個に応じた授業を展開する。
校内研修組織を活用し、全教員で取り組む。

1 学校紹介
 本校のある小郡町は、県のほぼ中央に位置し、交通立地条件に恵まれた要地であり、都市部・農村部・住宅地区に大別される。町内には、小学校3校、中学校1校があり、地域住民の教育に対する期待が強い地域である。
 本校は、24学級(特殊学級1を含む)、生徒数750人、教員数50人の大規模校である。校舎やグランドが広く、町民体育館も隣接しており、恵まれた環境・設備の中で生徒たちは落ち着いた生活を送っている。学習活動だけでなく、学校行事にも生徒会を中心に積極的に取り組み、ほとんどの生徒が部活動(運動部15、文化部12)に熱心に参加している。
 平成14年度まで、小中連携教育「伸びゆく学び舎づくり推進事業」(山口県)、専門高校と小・中学校との連携推進事業(文部科学省)を、平成15年度まで、先進的教育用ネットワークモデル地域事業(文部科学省)、ボランティア活動普及事業(山口県社会福祉協議会)の研究指定を受け、研究を進めてきた。また、小郡町教育委員会の指導のもと「2006年度を目途とする学校づくりプラン」を作成し、毎年、PDCAサイクルを活用し学校づくりを進めている。


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2 具体的な活動内容
(1)取組みの概要
 理科、英語、数学の少人数指導や習熟度別の5教科選択授業を中心に、「確かな学力」の向上のため、生徒の実態に応じたきめ細かな指導に取り組んできた。指定3年目に当たる本年度は、学ぶ意欲の向上にも着目し、必修教科指導や総合的な学習なども含めた教育活動全体を通して、「確かな学力」の向上を図る研究を進めてきた。
@ 発展的な学習や補充的な学習など個に応じた指導のための教材の開発
 ア 2年理科少人数授業の基礎コース・発展コースに応じた教材開発
 イ 5教科選択授業の基礎コース・発展コースに応じた教材開発
 ウ 各必修教科の研究授業の実施、きめ細かく個に応じた教材開発
A 個に応じた指導のための指導方法・指導体制の工夫改善
 ア 少人数授業
  ・少人数授業の全学年実施(1年英語、2年理科、3年数学)
  ・グループ分けの工夫(英語…機械的・均一)(理科…習熟度別)(数学…2学級→3グループ)
  ・グループ編成変更の工夫(英語…機械的→均一)(理科…一斉・TT・少人数)
  ・希望調査・ガイダンス・人数配分・コース変更の工夫
 イ 選択授業
  ・基礎コース・発展コース2コース×5教科=10コースの選択履修幅の拡大
  ・1年 週1時間、2年 週2時間、3年 週4時間の実施。
  ・希望調査・ガイダンス・人数配分・コース変更の工夫
  ・各コースで関連した年間計画・評価法の工夫
 ウ 質問教室(定期テスト前の放課後)・補充学習(夏休み・冬休みの補習)

B 児童生徒の学力の評価を生かした授業改善
 ア 診断テストによる少人数理科のコース分け
 イ 選択授業のコース変更に活用
 ウ 選択授業の各コース同一評価テスト
C 児童生徒による授業評価を生かした授業改善
 ア 自己評価・アンケート(必修教科・選択教科・総合的な学習)による授業改善
 イ 評価活動を通しての意識付け
 ウ 全校意識調査の実施
D 実践研究の成果の普及のための方策
 ア 授業研究会の実施(9月 町内小学校3校に公開)
 イ 公開授業の実施(11月)
 ウ 研究集録のホームページ掲載
(2)研究体制
5つの研究部会に分かれ、研究を進めた。
@ 必修教科部会
A 選択教科部
B 少人数指導部会
C 道徳・総合・特活部会
D 情報教育部会

 以下、選択教科部会と少人数指導部会の取組みについて紹介する。


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ー@ 選択教科部会
1 部会テーマ「自らを高める選択教科のあり方
(設定理由)コースごとに生徒の力に応じた指導を行うことにより、生徒の興味や学習意欲を高め、生徒たちが充実した学習活動を行うことをめざしこのテーマを設定した。今年度は年間計画を整備し、具体的な評価規準・基準を設定するなど、3年間のまとめとなる活動ができるように計画を立てた。

2 研究内容
(1)評価の改善…評価の観点について検討し、評価規準・基準を確立する。
(2)教材の開発と蓄積…発展的な学習や補充的な学習など、個に応じた指導のための教材の開発や、資料を検討する。
(3)指導体制のまとめ…選択教科の開設から、希望調査、振り分け、ガイダンスなどの具体的な方法を検討し、実施する。
(4)アンケート及び自己評価の工夫…よりよい選択教科の運営と、個に応じた指導をめざし、意識面のアンケートを実施する。

3 選択教科に関わる取組み
(1)コースについて
学年 5教科 4教科 ねらい
1年 各教科「基礎」「発展」の2コース・計10コースより1コース選択 なし 自分の興味・関心を探り、学びたい教科を選択し、主体的に学ぶことの楽しさを味わわせる。
2年 各教科「基礎」「発展」の2コース・計10コースより1コース選択 体育のみ3コース、他各2コース・計11コースより1コース選択 1年生での経験を生かし、教科学習で抱いた疑問や、日頃から興味・関心をもっている学習課題に意欲的に取り組ませる。
3年 各教科「基礎」「発展」の2コース・計10コースより3コース選択 体育のみ3コース、他各2コース・計11コースより1コース選択 自分の興味・関心だけではなく、学習の到達度との関連も考え、これまでの「選択教科」で積み上げた学習内容等から選択し、学習を深めさせる。
(2)各学年の週当たりの選択教科の実施時間
 ・1年生は5教科選択1時間
 ・2年生は5教科選択1時間 + 4教科選択1時間 ・・・計2時間
 ・3年生は5教科選択3時間 + 4教科選択1時間 ・・・計4時間
 昨年度まで、5教科選択を「基礎・充実・発展」の3コースに分けていた。全15コースを運営する上で、技術室や美術室などを利用して学習していたため、落ち着いた学習環境を提供することが難しいところもあった。今年度は各学年35人学級が実施されたため、空き教室が減り、選択教科15コースを運営するための教室がさらに不足した。昨年度の反省点も加味し、より落ち着いた環境で学習を進められるよう今年度は「基礎・発展」の2コースで実施することとした
(3)コース決定の流れ
(4)選択オリエンテーションについて
 (2・3年生)5教科選択のコースに関する希望調査を前年度の終わりに実施。この場合、各コースのねらいを設定した教員と、実際に指導する教員が同一人物ではない場合がある。しかし、新年度が始まって、各学年260人あまりの生徒の希望をとり、人数調整をするのは難しい。その学年の生徒を理解している教員が、できるだけ生徒の希望を叶えることを考えて振り分けている。4教科選択は、担当者により内容が大きく異なるため、4月に入り、担当者がねらいと内容を設定後、それを見て生徒がコースを選択する。
 (1年生)年間30時間の実施。中学校での必修教科の学習を体験し、教科に対する興味・関心が備わった後、十分にオリエンテーションやガイダンスを行って開始。
(5)コース変更に伴うガイダンスについて
 5教科選択において、各自が自分に合った学習を進めていくために行う。変更は同曜日・同教科内でのみ行うこととし、生徒の習熟度を考慮の上、変更を認める。コースを振り分ける段階で、基礎コースに人数が偏ってしまっているので、発展コースの人数を増やす方向を検討して実施。昨年度までは1学期と2学期にわけて実施していたが、2学期に移動してきた生徒を評価するのは難しいため、今年度は1学期に2回行った。生徒にとっても1学期のうちに自分に合ったコースで勉強できるようになった。
国語 社会 数学 理科 英語
基礎 発展 基礎 発展 基礎 発展 基礎 発展 基礎 発展
4月 29 18 29 20 28 21 29 21 30 20
第1回 26 21 32 17 23 26 27 23 30 20
第2回 20 27 32 17 23 26 29 21 27 23

4 考察
(1)指導体制のまとめ
@コース別の指導法・指導体制について
 各教科でねらいや内容を相互に検討し、評価表や年間計画を作成することにより、連携のとれた組織的な指導体制を作ることが可能となった。
習熟度別の授業なので、コース間の移動ができ、自分に適したコースで学習できるようになった。移動後も学習しやすいように、教科内で同じテキストや問題集を使うように連携をとっている。
選択授業では、生徒たちはクラスという枠を取り除いて学習しているので、新たに授業が進めやすいグループ作りや組織作りを工夫することも大切である。
A適切なコース選択について
 5教科選択は、昨年度の各教科「基礎・充実・発展」の3コースから「基礎・発展」の2コースにしたため、1コースの人数が増えた。また、発展コースを選択する生徒より、基礎コースを選択する生徒が多い傾向があった。しかし、ガイダンスを通してコース変更を認めることにより、自分に適したコース選択をするとともに、次第に適正な人数配分になってきた。
(2)評価の改善について
 同じ教科内で関連をもたせた評価規準を作成し、各コースでの評価が偏ったものにならないように工夫してきた。数学科を例にとると、昨年より全コース統一のテストを行い、それをガイダンスに用いたり、評価に用いたりしている。同一の教材を用いて各コースが習熟度に応じた授業を行い、その後同一のテストをして理解の程度を確認している。よって評価がより明確になり、生徒も自分の評価に納得がいくようになってきた。本年度より英語科でもその方式を導入している。
(3)教材の開発と蓄積について
 習熟度別の選択授業を行っているので、資料の開発として、同じ教材を用いて習熟度に応じた授業展開を工夫する研修を行った(昨年度)。また年間計画に照らし合わせ、効果的な学習を進めるための教材の開発に努めた。
(4)アンケート及び自己評価の工夫について
 意識面に関わるアンケートを、選択教科の学習を1年間経験している2年生で実施した。よりよい選択教科の運営と個に応じた指導の参考になった。


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ーA 少人数指導部会
1 部会テーマ「少人数授業の利点を生かした生徒の学ぶ意欲を高める工夫
 本校では、学力向上フロンティアスクールの指定校となる1年前の平成13年度から少人数授業を導入し、少人数指導部会や必修教科部会を中心に、効果的な手法を模索してきた。この4年間で、少人数授業を効果的に仕組むために、大きく以下の3つの段階で協議を重ねながら、現在のシステムを確立してきた。
(1)どの教科で、いつ少人数授業を実施するのか
全教科で少人数授業を3年間実施していくことは不可能である。限られた条件の中で、どの教科でいつ仕組むのかを検討しなければならない。特に、この点では3年間の教育課程を視野に入れながら決定していくことがとても大切である。例えば、「学習の初期に丁寧に指導したい」「実験や実習の多い時期に行いたい」「学力差が生じてくる時期に行いたい」など、各教科で、どの時点で行うとより効果的であるかの仮説をたて、それらのメリットを勘案していくことで、最終的に実施すべき教科、時期が決まってくる。
(2)どのように少人数授業を実施するのか
実施教科及び実施時期が決定したら、@どのように学級(学年)組織を少人数授業用に再編成し、Aどのような指導形態で、Bどのように評価していくか、を検討する。例えば、@では、「機械的か習熟度か」「年間実施か部分実施か」「年間固定か再編成か」などいくつか考えるべきポイントがある。特に少人数授業では、該当学年にかかわる教員数が多くなるので、できるだけ早い段階で、教科部会を頻繁に、また、綿密に行い、共通理解をしっかりと図ることが、少人数授業の成功の是非に大きくかかわってくる。
(3)どのように周囲の理解を得るのか
「説明責任」の時代である。生徒、保護者や地域が不安を抱き、質問や苦情を受ける前に、学校から少人数授業がもたらすメリットを、しっかりとアピールしていくことが大切である。例えば、入学説明会や学年保護者会、学年だよりなど、機会を見つけ、できるだけ、具体的に分かりやすく伝えていくことで、生徒や保護者などにそのよさを分かってもらい、そのことにより、さらに少人数授業の効果が高まってくると思われる。

以上、3つのポイントについて検討し実施していくことで、さらに少人数授業を成熟させていきたい。

2 少人数授業の経緯
平成13年度
教科 学年 学習集団 学習集団編成方法
理科 機械的 ・出席番号により、1クラスを2分割
・週3時間の内の1時間実施
英語
理科 機械的→習熟度 ・年度当初は機械的に、2学期中間テスト後、習熟度により、生徒選択のもと再編成
・週3時間のうちの1時間実施
数学 機械的 ・出席番号により、1クラスを2分割
・試験的に各クラス年間3時間実施
平成14年度
教科 学年 学習集団 学習集団編成方法
英語 機械的 ・出席番号により、1クラスを2分割
・全時間実施
理科 習熟度 ・第1学年の成績を参考に希望調査をとり1クラスを2分割
・全時間実施。
平成15年度
教科 学年 学習集団 学習集団編成方法
英語 機械的 ・出席番号により、1クラスを2分割
・全時間実施
理科 習熟度 ・第1学年の成績を参考に、希望をとり、1クラスを2分割
・全時間実施
数学 機械的 ・出席番号により、学年7クラスを、2クラス3分割×2、3クラス4分割×1で編成
・全時間実施
平成16年度
教科 学年 学習集団 学習集団編成方法
英語 機械的→均一 ・年度当初は出席番号により、1クラスを2分割
・1学期末に教科部会を開き、均一クラスを編成
・全時間実施
理科 習熟度 ・第1学年の成績を参考に希望をとり、1クラスを2分割
・単元ごとに、診断テストや興味を考慮して再編成
・全時間実施
数学 機械的 ・出席番号により、機械的に2クラスを3分割
・全時間実施

3 少人数授業(英語)について
(1)成果
@ 個に応じたフィードバックのできる指導体制の確立
A グループ編成システムの確立
B パフォーマンス評価方法の確立
C 学習規律の確立
D 学習形態の工夫
E 生徒のアンケートより
人数が少ないので、先生の目も届きやすく、静かで、集中することができ、授業内容がわかりやすい。
発言する回数が多いのでよい。
発表回数が多いので、授業の内容を覚えやすい。
小さなテストやチェックが多いので、変な間違いをしなくてすむ。毎回一人ひとり確認していくので、常に気が抜けなくてよい。
先生を呼べばすぐ来てくれるし、間違いをすぐに教えてくれる。
学級全体でやる授業はあまり質問することがないけれど、少人数だと質問することも多くなって、先生も詳しく教えてくれるので、分かりやすくてよい。
少人数だからスピーチなどのテストが2回受けられる。1回失敗してもチャンスをもらえてよい。
(2)まとめ
 本校での英語科少人数授業の取組みも4年目となった。初年度は週3回のうちの1回を少人数授業にあてるというものだったが、次年度より全時間を少人数で行い、そして今年度は年度途中におけるグループ編成を行うというところまでこぎつけた。また評価についても教員間の相互理解を図るために、随時、教科部会を開き、評価方法の確立に向けた研修を深めてきた。今後は、指導方法の工夫という点に関しては未開発の点も多いので、さらなる研鑽を深めたい。
 英語科に関しては、少人数授業は第1学年のみ実施しているので、現1年生も来年度は学級全体での授業を受けることになる。このことは、1年時では落ち着いた雰囲気で授業に集中し、個別指導も頻繁に受けながら楽しく進めてきた英語学習が、そうではなくなる可能性も出てくるということを意味する。そのようにならずにスムーズに2年時・3年時の学習に移行できるかは、言語学習の特性を考えると、第1学年で英語の基礎・基本をしっかりと定着させ、できる喜び、これから学ぶ新しいことに意欲をもって吸収しようとする気持ちを育てていくことができるかどうかにかかっている。そのためには、私たち教師が「分かる授業」を展開すること、3年間を見通した指導方針、指導方法を確立させること、3年間の教育課程の中で少人数授業をどのように位置付け、どのように効力を発揮させていくかということを考え、日々の授業に取り組んでいかなければならないと考える。

4 少人数授業(理科)について
(1)成果
 本校のような大規模校においては、さまざまに混在する地域的要素や家庭的背景の中で生活している生徒たちが、互いに関わり合い、影響し合いながら学校生活を送っている。真面目で正直な生徒、自分の目標に向けてがんばる生徒、優しく思いやりのある生徒、いうならば明日の社会の担い手として充分に期待できる生徒がいる。反面、自分の都合や感情、目先の楽を優先してしまう生徒、揺らぐ価値観の中で悩んでいる生徒もいる。生徒を本来学ぶ欲求を有する学習主体と捉えるとき、一人ひとりの学ぶ意欲を引き出す手立てが当面の課題となると考えた。本校生徒のおかれた現状で、如何にすれば生徒たちの意欲を引き出すことができるかを考えるとき、今年度は少人数における学習集団のあり方に着目して、生徒の意欲を育てる少人数学習でのグループ編成のあり方について、実践的に研究することにした。
 研修部として実施した生徒の意識調査にも、また、理科部独自で実施したアンケート結果にも、少人数学習への肯定的な見方が現れている。理科で行ったアンケートでは、「少人数授業が好きである。」とする割合が基礎コースでは6月の54%から10月の71%に、発展コースでは6月の60%から10月の73%へと推移した。また研修部で実施した調査では、理科少人数授業を是とする生徒の割合が大きく向上し、10月時点では少人数授業を支持する割合が全生徒の86.6%に達している。
 今年の実践を通していえることは、グループ編成を生徒の学習への思いに合わせてある程度柔軟、適切に運用することが、生徒個々の学ぶ意欲を引き出し高めるのに有効な要素の一つであることが検証されたことである。理科学習を肯定的にとらえる生徒の増加や授業態度、レポートやノートなどからもそんな手応えが感じられる。本校の年次ごとの研究が、生徒の実態を踏まえた実践であり、その成果の積み上げが今年度も着実になされていることに意義があると考える。
(2)まとめ
 理科の学習内容は、単元ごと、ほぼ系統的に完結しているといえる。重要なのは、学習内容の全体イメージの形成を意図した教師の支援と指導内容のストーリー性を大切にした指導である。周到に準備をして基礎基本を丁寧に指導することは大切である。しかし統合的イメージの形成をぬきに、学習に対する興味関心を高く維持させることは難しい。
 生徒の学習課題へのアプローチの仕方が、大きく3タイプ(@分析的に細部から細かく学ぶ傾向を有する学習者 A統合的に全体イメージを捉える傾向の学習者 B統合的傾向と分析的傾向を併せもつ学習者)に分類できると仮定すれば、個々の生徒の傾向が把握しやすくなる。不足している傾向を補い、分析的傾向と統合的傾向を併せもつことのできる学習者の育成をめざすことが目標である。これは、生徒個々を把握し、個別の指導の方向を見定めるわかりやすい基準となりうる。これを活用すれば、指導の視点をより明確に見出し、より適切な指導援助が可能になると考える。

5 この4年間で得たもの、そしてこれからに向けて
(1)システムの確立…「人数を半分にすればいいのかな」というあいまいな考えから、教科の特性によって、どのようにグループ編成(分割)をしたら効果的なのかについての考えがまとまった。
(2)指導方法、評価方法の工夫…今までにない授業展開が可能になり、今までできなかったことが実践できた。
(3)教師の意識の変容…「少人数授業」を導入したことを契機に、どうすれば生徒の意欲が高まり、わかる授業を展開できるのかについての教員の意識が高まり、連携も深まった。
(4)さらなるステップアップをめざして…少人数授業を単一のものとしてとらえず、3年間の教育課程の中で、どのように位置づけ、どのように効力を発揮させていくかという、グローバルな視点で、学校全体を巻き込みながら、少人数授業を展開させていくことが、今後の課題である。


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3 成果と課題
(1)成果
生徒の学力向上意識の高揚
自己評価・意識調査・アンケートなどによる授業改善
授業実践・研究授業・公開授業などによる授業改善・指導力向上
全校体制・学年体制・教科部会など組織的な学力向上への意識の高揚
少人数授業、選択授業の指導体制の工夫・確立
校内研修組織の確立


※ 全校意識調査について(平成15年10月・平成16年2月・6月・10月実施)
A:はい B:どちらかといえば はい C:どちらかといえば いいえ D:いいえ
A、Bを合わせた数値で比較【H15.10月→H16.10月】すると

1 「基礎基本が身に付いてきている」(生徒自身の取組みをどう意識しているか)
(1)全教科で基礎基本が身に付いたという意識が高まった。【全校64.9→83.2%、3年56.0→86.9%】
(2)教科別・学年別で見ると、ほとんどの教科で増加。【最高 1年音楽85.8%、2年保体90.2%、3年音楽88.2%】
(3)特に少人数授業を実施している教科で増加。【1年英語69.6→76.3%、2年理科57.4→84.4%、3年数学51.5→75.5%】

2 「授業は分かりやすい」(教師・授業についてどう意識しているか)
(1)全教科で授業が分かりやすいという意識が高い。【全校76.5→90.5%、1年89.5→92.9%、2年69.8%→86.6%、3年71.4→91.6%】
(2)教科別・学年別で見ると、ほとんどの教科で増加。

3 「選択教科の学習に満足感や充実感をもっている」
(1)満足感や充実感が増えてきている。1年【75.1→76.3%】2年【63.8→74.5%(6月)】3年【63.3→67.5%】と増加。

4 「少人数の授業は分かりやすい」
(1)1年英語【86.8→92.5%】2年理科【77.0→83.5%】3年数学【77.9→81.0%】と増加。特に1年英語のA(はい)は57.9%に達している。
(2)課題
さらなる意欲の向上への方策
さらなる指導体制の改善
さらなる指導改善・授業改善
全校意識調査からの考察
(ア)学習への意識が、1年で高く、2年生で少し下降し、3年で再び上昇する傾向(いわゆる「中だるみ」)への対応。
(イ)少人数授業では意識が高まったが、必修教科に比べ、選択教科の伸びが低いことへの対応。
(ウ)教科別や学年別での特徴(例えば、1年社会で歴史が始まる10月ごろ苦手意識が高まるのではないか?)などについての検討。


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4 実践に当たってのポイント
○ 担当者
大規模校としてのデメリットをメリットに変える。(生徒数や教員数→選択幅拡大・多様な授業)
少人数授業や選択授業の指導体制づくりを通して、きめ細かい個に応じた授業を展開する。
校内研修組織を活用し、全教員で取り組む。
○ 校長
教員がチームとして取り組み、研究実践の成果が見える目標、評価項目、評価時期を設定する。
少人数授業や選択授業での教員のコース設定の根拠、生徒のコース選択の根拠が明確になるガイダンスを行う。
教員、生徒の多様性やよさを生かし合う研究や授業実践を行う。


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