学習指導カウンセラー派遣事業の取組み                〔指導課〕

オープン型スクールのよさを生かした教育の創造
    〜学び続ける子どもを育てる指導の在り方〜
                    
 −阿東町立さくら小学校−

1 学校の紹介2 具体的な活動内容3 成果と課題4 校長から見た指導のポイント
実  践  の  ポ  イ  ン  ト
 全国的な学校調査等の問題を活用した学力の把握。
 研究者等の派遣による自己点検・自己評価の支援。
   山口大学教育学部
     音楽科教育 野波 健彦 教 授
     社会科教育 吉川 幸男 教 授
 教育課程全般の見直しと工夫

1 学校の紹介
 本校は、阿東町のほぼ中央「桜の里」に位置し、平成12年4月に篠目小・三谷小・地福小の3校の統合によって新設された学校である。学校の前には、田園風景が広がり、SL山口号が通るなど自然に恵まれた環境の中にある。平成16年1月よりオープン型スクールの新校舎になって、子どもの活動の場も広がり、「生涯にわたって主体的・創造的に学び続けるさくらっ子の育成」を、目指して様々な教育活動を行っている。校区の人々は三世代家族が多く、兼業農家や非農業が増えているが人情が厚く、勤勉真摯な気風がある。また、教育に対する関心も高く、学校の教育活動にとても協力的である。


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2 具体的な活動内容
(1)研究主題 

オープン型スクールのよさを生かした教育の創造

〜学び続ける子どもを育てる指導の在り方〜

 本校では「オープン型スクールのよさ」を生かした教育の可能性を探り、「確かな学力の向上」のために教育活動全般を見直している。
 研究2年次にあたる平成16年度は、「教師がかかわる場」「子どもたちが学び合う場」への質的変換のさらなる充実・発展を目指し、学び続ける子どもを育てる指導の在り方を追求した。
(2)研究仮説





(3)研究の内容

@ 子どもの学力の実態把握と活用
 1学期に、各教科・道徳・総合的な学習について、下記のような「好き・嫌い」「わかる・わからない」「がんばっている・がんばっていない」のアンケートを実施した。
 子どもたちの意識について、実態把握をし、傾向を分析、その後の授業研究に生かすようにした。

(子どもの意識調査 例 国語)
本校の子どもたちは、どの教科・道徳・総合的な学習についても意欲的に取り組んでいる傾向が伺えた。
「好き・嫌い」=「わかる・わからない」ではないこと、教科により「できる・できない」等別の指標が必要であることが再確認できた。
低学年から中学年へ、中学年から高学年へ学年が進むにつれ、特徴的な傾向が見られたことから、発達段階に応じ、ブロックごとで学習指導の在り方を探ることが課題としてあげられた。

A 確かな学力向上をめざす学習指導の在り方
 子ども一人ひとりに応じながら、授業を進めていくためには、
「個」の把握
指導方法・指導体制の工夫
子どもの意識・思考過程に沿い、子どもが生かされる授業展開
 が必要と考えた。

 そこで、昨年度までの取り組みをもとに、昨年度末に次のような授業の構想を本校なりに設定し、それに基づいて今年度さらに授業実践を積み重ねた。

ア 学習集団の工夫
 単元の中で、必要に応じて学年を解体して一緒に授業を行う。
 例えば、生活科では1・2年生が一緒に学習することにより、1年生が2年生より学び方を学んだ。

 また、自由な学習空間を確保することで、豊かな発想で学びを継続することができる。
(1年図工 「つないでどこへ」)
 教室と廊下の境を自分たちで取り除き自由に活動。
(1・2年生による生活科の交流)
 1年生の「学校探検」2年生の「町探検」の単元の中で、交流。
 2年生が1年生の学習のまとめ方について、様々なアドバイスをする。
イ 学習システムの工夫
 マイペースで進める反復練習プログラム(チャレンジタイム:B−アで説明)の他に、日々の授業の中でも課題を選択して取り組んだり、自由に研究ができたりするような学習を行うようにしている。
(6年理科「水溶液の性質」)
 身の回りにあるものについて、一人ひとりが調べる発展的な学習。
 ゲストティーチャーを招いての実験で、16人の子どもに対して、2人の教員で指導にあたった。
ウ 学習環境の工夫
 教育機器を効果的に用いた授業を展開することで、学習意欲をより高めたり、継続させたりする手だてとすることができる。
(5年 総合的な学習の時間)
 前日の給食の栄養摂取について考える。
(3年 社会「くらしを守る」)
 地域の消防署に教師が事前に行き、教材化。VTRにした。
エ 指導体制の工夫
 様々な立場の大人が、単元を通して、幅広い学年に渡り、計画的・継続的に授業に参加することで、子どもの学習への意欲を高めることができる。また、その専門性を生かし、さらなる気付きを子どもたちに与えることができる。
(栄養士、養護教諭の授業参加
(地域人材の招聘〜クラブ活動)
オ カリキュラムの工夫
 各教科・道徳・総合的な学習・その他学校行事などの関連を考え、長期的な視野に立ち、独自の単元を構成する。それにより継続的に子どもの学びが行われる。また、その中で「エ−指導体制」についても計画的に組織することができる。
(4年 学級活動「自分のいのち(からだとこころ)」について考えよう。)
 学級活動・保健・総合的な学習の時間の関連をはかりながら、全15時間で指導計画を立案。
 また、5年生は総合的な学習の時間・道徳・理科・行事の関連をはかりながら、全6時間で指導計画を立案。
B 学校生活の場における個別化・個性化の在り方
 教育課程全般を見直し、さまざまな場において、個に応じたきめ細かな指導を行うように工夫を重ねてきた。
ア  チャレンジタイム
 毎週水・金曜日 朝20分間、算数について、全校体制による習熟学習を行っている。
無学年制で、マイペースで学習を続けることができる。
 低中高3ブロックで実施している。
 6年生までの学習内容をまとめた80種240枚のプリントを使用している。
@いつも自分で学習するプリントをとり、自分のペースで学習を進める。
A「力だめし1」をし、自分で採点をし、主体的に学習を進めている。
B「検定」を受ける。先生に採点をしてもらう。一度で全部正解だったら合格。
 理解が不十分なようであれば、もう一度Aの「力だめし1」に挑戦し、再度「検定」を受ける。
C「力だめし2」に挑戦する。(採点方法はAと同じ)
(A〜Cの流れの中で必要に応じて、教師が個別に指導をする。)
イ エブリタイム
 毎日10分間、国語を中心に、各学級で基礎基本の定着を図っている。
(1年生)「文のつくり」についての学習プリントをしている。
同じ日の1年生と2年生のエブリタイムの様子)
(2年生)漢字の練習をしている。
ウ ティーム・ティーチング・ゲストティーチャー
 A−ウで記述したような取り組みのほか、毎週月曜日20分間、地域の読み聞かせの方に来ていただいている
 この日は台湾のお話で、十二支について知ることができた。
エ  縦割り班活動
 毎週火・木曜日 朝20分間、縦割り班で様々な活動(自然体験・集会準備・運動会・学習のまとめなど)を行っている。
オ  給食
 ランチルーム給食のよさを生かし、お年寄りとのふれあい給食、縦割り班での給食などを行っている。
カ  特別活動
 子どもも教師も地域から学ぶために、様々な方を年間通じて講師として招聘したり、年に一度「チャレンジクラブ」と称して日頃のクラブ活動ではできない活動に挑戦したりしている。
 具体的には、チャレンジクラブの際には、10程度の講座を開講。すべて地域の先生を講師としてお招きした。子どもは第一希望のクラブに属し、活動した。
個を大切にした授業の在り方
個を大切にした教育 16年度の実践及び授業の研究
指導の個別化 完全習得学習(一斉指導+個別指導) エブリタイム
到達度別学習
自由進度学習(自由なペースで)
無学年制学習(長期にわたり自由なペースで)
チャレンジタイム
学習の個性化 順序選択学習(どこから学習してもよい)
発展課題学習(学習後課題選択) 5・6年
課題選択学習(学習課題を選択) 1・2年
課題設定学習(自分で課題を設定) 3・4年

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3 成果と課題
(1)成果として
「個」とは何か、子どもたち一人ひとりはどのような思いや願いをもって学習に臨んでいるかを様々な形で把握し、授業に生かそうとすることで、教師自身の学習指導の在り方を見直すことができつつある。
一授業・一単元を大切にする一方、教育課程全般を見直し、縦割り班活動、チャレンジタイムといった10分・20分の日々の積み重ねを大切にすることで、確かな学力向上の土台を形成するような教育課程の工夫ができるようになった。
学力検査の結果(全国平均を100として)
学力検査については、どれも、全国平均を上回る結果となっている。チャレンジタイム・エブリタイム・読み聞かせなどの活動のためか、特に「言語事項」「読むこと」について大きな成果が表れている。また、算数については全般的に上回っているが、「量と測定」についてはさらに指導を充実させていく必要がある。  
(2)今後の課題
学力の他の様々な面をどのように把握し、どのように指導していくか。
指導と評価の一体化をどのように充実させていくか。
オープン型スクールのよさを生かしたカリキュラムの工夫

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4 校長から見た指導のポイント
学習指導カウンセラーの指導を活かし、授業改善を図る。
授業を大切にし、確かな学力の向上にむけて授業を工夫する。

個性や特性に応じたきめ細かな指導方法や指導形態の工夫を積極的に図る。
児童の実態を把握し、指導に活かすとともに、児童の変容を蓄積する。
オープン型スクールという校舎のよさを活かし、積極的な活用を図る。

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