障害児医療的ケア支援事業の実践                〔指導課〕

養護学校における医療的ケアの取組み
                          −山口県立下関養護学校−

   1 学校紹介2 実施スタイル3 主治医からの医療的ケア指示書
          4 システム整備の内容5 実践をとおして

実  践  の  ポ  イ  ン  ト
 学校全体の取り組みになるよう、情報の提供や全体研修を積極的に行う。
 福祉や医療機関との連携を密にする。
 医療的ケアの手続きや緊急時の対応などのシステムを整える。

1 学校紹介
 私たちの学校は、下関市の中心部よりやや北側の高台に位置し、気候は温暖で野菜作りが盛んな安岡富任地区にある。
 知的障害の養護学校であるが、近年、肢体不自由を重複する児童生徒の占める割合が増え、最近では日常生活の中で、経管栄養や導尿などの医療的ケアを必要とする子どもも就学するようになった。
 そのような中、県教育委員会より平成14年度に「障害児医療的ケア支援モデル事業」、平成15、16年度は文部科学省委嘱事業「養護学校における医療的ケアに関するモデル事業」の実践研究校の指定をうけ、学校に看護師(医療的ケア支援要員)が配置され、医療的ケアの在り方や実施体制の整備について取り組んでいるところである。


 TOPへ戻る


2 実施スタイル
 看護師による医療的ケアの実施

 TOPへ戻る


3 主治医からの医療的ケア指示書
対象児童生徒 主治医からの指示書にある項目
小学部2年〜高等部3年の5名(訪問学級の児童生徒を含む) ○吸引
○経管栄養(留置された管からの注入、管の挿入・抜去を含めた注入)
○定時導尿
○酸素投与


 TOPへ戻る


4 システム整備の内容
(1)看護師の配置
勤務時間 勤務体制 勤務内容
1日3時間
(必要に応じて延長することもある)
年間700時間以内
医療的ケア支援要員として2人の看護師が曜日により交代で勤務 対象児童生徒の健康管理
医療的ケアの実施、記録等

(2)校内委員会の配置
 校内に医療的配慮検討委員会を設置し、医療的ケアの施行管理や保健管理体制の整備等について、定期的に会を開いている。(月1回)

(3)実施のための手続き
 医療的ケアの実施にあたっては、保護者の申請書や主治医の指示書等、本校の実施要項に基づく一連の手続きを経ることになる。

(4)医療機関との連携

 校医や主治医の他に、本校では指導医として、K小児科医院のK先生に、医療的ケアについて様々なアドバイスを受け、校内研修や看護師の実施研修などをお願いしている。

(5)個別マニュアル
 医療的ケアの各行為についての一般的なマニュアルに、主治医の「医療的ケア指示書」に基づく個々の児童生徒に関する留意点を加えた、個別のマニュアルを作成し、活用している。


(6)緊急時の対応
@ 救急法の講習会
  毎年、消防署の協力を得て、救急法の実技(心肺蘇生法)講習会を開催している。


A 緊急時対応マニュアル
  てんかん発作が重積状態になりやすい児童生徒や日常的に医療的ケアを要するなど、健康・安全面で特に留意を必要とする児童生徒については、個別の緊急時対応マニュアルを作成し、万が一の場合に備えている。


(7)医療的配慮一覧表
 個別の緊急時対応マニュアル以外に、障害や疾患等で医療的な配慮を要する児童生徒については、症状や配慮事項、緊急時の対応等を記載した一覧表を作成し、全職員が共通理解を図るようにしている。

(8)研修
@ 全教職員対象
 ア 講師による研修会
時 期 講  師 内     容
7月 K小児科医院 K医師 講演:学校での医療的ケア〜意義と今後の課題〜
1月 本校 看護師 講演:本校の医療的ケアの実施状況について
3月 U病院 I言語聴覚士 講演、実技指導:摂食・嚥下障害について
 イ てんかんの研修会
   ビデオや本校で作成した資料を使い、6月、9月、12月の3回実施。
 ウ 実施状況の研修会
   本校の看護師を講師として、看護師が行う医療的ケアの一般的な手技や個々の児童生徒の対応など、実施状況についての研修会を実施。


A 特定教員対象
 ア 専門的研修
 看護師との連携を図りながら、対象児童生徒を支援していく必要のある担任、養護教諭等へは、指導医、看護師、保護者等の協力を得て専門的な研修を実施。

 イ 摂食機能療法の研修会
  摂食・嚥下障害とその評価や指導の実際について、てんかんの研修と同様、ビデオと資料を使い2度の研修会を実施。

 ウ 自立活動学習会
  発達センターの理学療法士や作業療法士を招き、姿勢保持や運動・動作についての学習会を3回実施。

B 看護師対象
 学校教育についての理解を深めるよう、教育目標や指導内容などの教育課程に関わる研修を実施。


 TOPへ戻る


5 実践をとおして
 ○ 教員の声
 子どもが登校する機会が増え、学習活動が充実した。
 安心して学習活動に取り組むことができた。
 訪問教育の子どものスクーリングがしやすくなった。
 ○ 保護者の声
 学校に来たり、待機したりする必要がなくなり、負担の軽減となった。
 安心して学校に登校させることができた。
 主治医の病院から配属された看護師なので、子どものこともよく分かっており、安心できた。
 ○ 課題
 研修の機会が取りにくかった。
 該当の子どもが多い場合、看護師一人では十分な対応が困難。
 校外学習や宿泊学習などは看護師が対応できない。
 ○ 校長から見た指導のポイント
 児童生徒が学校生活を安全(健康の保持・推進)にできる状況を確保する。
 専門機関である医療(主治医、指導医、校医、看護師)との連携、協力を推進し医療的ケアの充実を図る。
 学校全体で取り組む体制及び組織が必要である。(校内医療的配慮検討委員会)
 学校全体の一般的研修と対象児童生徒に関わる担任、養護教諭等の専門的研修を組織的、計画的に行う。


 TOPへ戻る                  実践編へ戻る