学力向上フロンティアスクールの取組み                     〔指導課〕
 主体的に問題解決活動に取り組む児童の育成
  
〜個に応じた指導の工夫〜    
柳井市立新庄小学校−
                    
1 学校紹介2 本年度の取組み3 意識調査4 成果と課題5 実践に当たってのポイント
実  践  の  ポ  イ  ン  ト
評価と指導の一体化を図り、計画的に評価を実施し、結果を指導に生かす。
児童による授業評価を実施し、指導改善に活用する。
同一単元の追試を行い、評価改善を行う。
長期的な視野に立って国語科と総合的な学習の時間、国語科と生活科マッチングの開発を行う。 
「帯単元の開発」においては、基礎学力を定着する学習プリントの開発を行う。

※ マッチング 異教科で指導内容に関連があるようなものを同時期に平行して行い、児童の意識の持続や目的意識の明確化を図る。
※ 帯単元 朝の学習と単元の学習の連携を図った単元で基礎・基本の定着を図る。

1 学校紹
 わたしたちの学校は、柳井市の西に位置し、田園地帯に囲まれた地区にある。全校児童296人の中規模校である。平成14年度より学力向上フロンティア事業の指定を受け、「主体的に問題解決活動に取り組む児童の育成〜個に応じた指導の工夫〜」をテーマに研究に取り組んできた。図1は、平成14年度から16年度までの研究計画である。1年次の平成14年度は、「実践をためす段階」と位置付けて、「実践を通しての単元モデル・単元評価モデルの作成」をした。2年次の平成15年度は「実践を広げる段階」と位置付けて、「カリキュラムの編成」について研究してきた。主に単元計画や単元評価表の累積を行った。本年度は「実践をつきつめる段階」と位置づけて、昨年度までの実践をもとに「カリキュラムの評価及び改善」を図ってきた。


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2 本年度の取組み
(1)新庄評価モデルの作成
@授業評価
 児童の「振り返りカード」による評価やアンケート調査などを行い、授業に対する理解度・満足度を授業後にチェックした。これをもとに授業改善を図った。授業評価方法としては、次の4点について検討した。
「レディネステスト」の実施→実態把握
「学力テスト」の実施→全国レベルとの比較
「業者テスト」の実施
  →学習内容の到達度チェック
「定点観測」の実施→同じテストの繰り返し実施の後に分析・支援
A自己評価・相互評価
 自己評価として、「振り返りカード」を活用した。授業を振り返り、自分を見つめ直すことで、学習への取り組み、理解度が再確認できたようである。相互評価においては、付箋紙を活用した。作文や作品にコメントを書いて添付していく。作文の推敲の活動の際、友達の評価を参考にしながら書き直しをする児童の姿が見られた。

(2) 新庄プランの作成
@同一単元の追試
ア 少人数課題別学習の実践例
 6年 算数「体積を極めよう」 
図2は、同一単元の追試の様子を図式化したものである。本校では、1年次に実践したものを2年次、3年次に追試し、評価・改善を行ってきた。児童の実態をレディネステストから把握し、その実態に応じた単元開発を行った。6年算数「体積を極めよう」の単元で課題別少人数学習を設定した。昨年度は4つのコースを設定し、表現・処理に重点を置いた単元構成だったが、今年度は、コースを3つに絞り、児童の実態から「数学的な考え方」の育成に重点をおいたコース設定に変更した。また、活動内容がわかりやすいようコース設定も工夫をした。昨年度は表現処理能力を高めるため、モジュール制を導入し、授業の半ばでコース変更をしたが、今年度は、思考力の育成をねらったため、1単位時間たっぷり時間をとって選択したコースで学習するようにした。
<図2> 同一単元の追試(例1)
イ 少人数習熟度別学習の実践事例
 5年算数 「めざせ!面積名人〜図形の面積〜」 
 図3は今までの実践の追試で2年次と3年次を比較したものを図で表したものである。本年度の改善点は、次の3点である。まず、1つ目は、課題別学習で行った単元を習熟度別学習に変えたという点である。児童の実態をもとに、一人ひとりに対応できる場の設定を行った。2つ目の改善点は、「いかす段階」で設定した少人数学習を今年度は「わかる段階」の途中から導入したことである。より早い段階で児童のつまずきに対応するために少人数を導入する時期を早めた。3つ目はコース設定の工夫である。昨年度は図形が異なるだけで、学習内容は図形の面積を求めるものであった。今年度は、鉄人コースでは「図形の変身」求積の「技」を求めるなどして、時間をたっぷりとって楽しく操作活動に取り組ませた。達人コースでは、プリント学習や方眼紙・ヒントカードなどを用いて、基礎学力の定着を図った。名人コースでは、自作の問題をつくったり、グループ学習をとりいれたりして学びあいの場を多く設定した。
<図3> 同一単元の追試(例2)
<名人コースでの共学びの様子>
A帯単元の開発
 図4は、本校における帯単元の取り組みを図式化したものである。昨年度から朝の学習の時間を5分拡大し、15分間設定している。ピンクで表しているのが朝の学習の内容である。単元に入る前にレディネスアップを図り、単元の学習を行っている間は学力の定着を図る。また、単元学習を進めている間も黄緑色で示しているとおり、前時の復習を次時の導入5分の中で行う。朝の学習では単元の学習が終わった後も、引き続き定着を図るために学習を続ける。このような朝の学習と単元学習との効果的な活用により、技能習熟を図ってきた。
<図4>
B国語科と総合的な学習の時間のマッチング
図5は、6年生の国語科と総合的な学習の時間のマッチングの例である。実施したのは2学期であるが、国語科と総合的な学習の時間をどの単元でどのようにマッチングさせるか1学期の後半から計画を立てた。国語科の単元「自分の考えを伝え合おう」は、総合的な学習の時間<しんじょうタイム>の「ハローマイセルフ〜一人の夢の実現〜」とマッチングさせて指導を行った実践例である。<しんじょうタイム>で実際に体験したことをもとに国語科でインタビュー、取材、報告文の作成などを進めていった。図6は、単元計画の一部である。国語科のどの学力と総合的な学習の時間のどの学力がリンクしあうのかを検討してそこを念頭におき、指導してきた。国語科と総合的な学習の時間の双方で育てる力を明確に示すことでより計画的な指導が行えたように思う。
<図5>
<図6>


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3 意識調査
(1)調査方法および回答結果
 児童の実態に即した授業改善を図るため、少人数に関するアンケートを適宜行ってきた。2年間少人数指導を受けてきた6年生の意識調査の結果の一部を紹介する。昨年の2学期と今年度1学期に実施した。調査人員は48人である。各設問に対し、4段階評価(とても・まあまあ・あまり・全く)で回答している。
「少人数学習はわかりやすいですか」
 →「とても」と答えた児童が48%から42%へと前年に比べ減少している。
 →「まあまあ」と答えた児童が27%から54%へとかなり増加している。
 →「あまり」「全く」と答えていた児童が前年度25%から本年度4%へ減少している。
「少人数学習は好きですか」
 →「とても」と答えた児童が昨年度52%から本年度71%へ増加している。
 →「まあまあ」と答えた児童を含める92%の児童が少人数学習を肯定的にとらえている。
「わからないことを調べる方法はわかりますか」
 →児童昨年度・本年度と共に1/3近くの児童が「あまり」「全く」と回答している。
(2)考察
「少人数が好き」「少人数はわかりやすい」と肯定的に答えた児童がかなり多いことから本学年における2年間の少人数指導の取り組みは,学習意欲・学習の満足度を高める上で効果があったと考えられる。
少人数指導が肯定的に受け入れられた原因として、本校で3年間研究してきた児童の実態に即した単元の再構成があげられる。児童の学力検査やレディネス検査の結果をもとに児童の実態に即して単元構成を行い、指導スタイルや授業スタイルを開発したことが児童に適切な指導を行うことにつながったのではないかと考えられる。
少人数指導を行う際、コース選択を自己選択性にしたこと、習熟度がわかりにくいコース名にしたこと、コース変更を自由にしたことで児童が抵抗なくコース選択をし、少人数学習に対する偏見や抵抗を少なくすることができたのではないかと考える。
調べ学習の方法については、十分理解できてない。そこで、今後学習の仕方を身に付けさせる手だてを工夫していくことが課題となってくる。


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4 成果と課題
(1)「新庄評価モデルの作成」における成果
 授業後に関する評価「振り返りカード」に記入させることで教師自ら授業の進め方を反省することができ、児童の実態や児童の理解に即したきめ細かな指導を進めていくことができた。自己評価・相互評価を導入したことで児童自身が「評価をする」習慣ができたとともに、話し合い活動や人の発表を聞く際、「観点」を持って参加することができるようになった。レディネステストの実施により、的確な実態把握に努め、授業に生かすことができた。また、学力テスト・業者テストの活用により客観的な評価分析を行うことができた。
<図8>
(2)「新庄プランの作成」における成果
 「新庄プランの作成」では次のような成果があった。先ず、昨年度、一昨年度より継続して取り組んだ同一単元の追試実践である。児童の実態に即して同一単元を様々な角度から評価し、工夫改善を行った。単元計画、それに即した単元評価表の作成、指導スタイル・授業スタイルの工夫など単元の再構成を行うことにより、きめ細かな指導を行うことができた。帯単元の開発により朝学習とタイアップし、基礎学力の定着に努めてきた。また、国語科と総合的な学習の時間・国語科と生活科のマッチングの導入により効率的・効果的な授業展開を図ると共に重点を図った観点については確かな学力の伸びが見られた。
<図9>
(3)課題
「指導に生きる評価の研究」
・児童の評価がより授業に還元できるように努める。
・定点観測の活用方法の確立と具体的な支援の研究を行う。
「グローアップへの取り組み」
(「グローアップ」とはどの習熟度の段階の児童もレベルアップを図って全体的に学力を伸ばすという意味で今回使用している。)
・一人ひとりの学力にあった満足度・達成感の味わえる授業をめざし、全体の学力を向上させる。
・また発展的な学習の研究を続け、今後実践例の蓄積を行う。


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5 実践に当たってのポイント
評価と指導の一体化を図り、計画的に評価を実施し、結果を指導に生かす。
児童による授業評価を実施し、指導改善に活用する。
同一単元の追試を行い、評価改善を行う。
長期的な視野に立って国語科と総合的な学習の時間、国語科と生活科マッチングの開発を行う。 
「帯単元の開発」においては、基礎学力を定着する学習プリントの開発を行う。
※ マッチング 異教科で指導内容に関連があるようなものを同時期に平行して行い、児童の意識の持続や目的意識の明確化を図る。
※ 帯単元 朝の学習と単元の学習の連携を図った単元で基礎・基本の定着を図る。
◎校長から見た指導のポイント
評価方法の収集、見直し、評価を指導に生かす指導体制の確立を図る。
少人数指導における授業の在り方について指導スタイル(担任や教科担任による指導・TT指導・少人数指導)・授業スタイル(課題別・習熟度別・融合型)の視点から研究・実践の累積を行う。
授業公開・HP公開により研究実践の様子を情報公開する。


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