キャリア教育の推進                         〔指導課〕

キャリア教育の推進      −山口県立下関中央工業高等学校−                        

     1 学校の紹介2 なぜ、キャリア教育が必要か?
     3 キャリア教育の3年間の学習プログラム1年次の学習プログラム
     2年次の学習プログラム3年次の学習プログラム4 成果と課題
実  践  の  ポ  イ  ン  ト
 キャリア教育の重要性を教員・生徒が共に理解する。
 3年間を見通した学年に応じた学習プログラムを作成し、実施する。
 保護者はもとより地域との連携を密にし、協力を求める。
 継続性のある教育活動とし、評価・改善を行う。

1 学校の紹介
 本校は、明治43年(1910年)開校以来、一貫して職業教育の推進と発展に力を注ぎ、社会に有為な人材を輩出してきた。
 下関市内中央部の文教地区に位置し、施設設備の充実したすばらしい教育環境の下、学習と部活動の両立を図りながら、意欲あふれる工業技術者の育成に努めている。
設置学科は、機械・造船科、建築科、土木科、化学工業科である。平成9・10年度に文部省の教育課程の研究指定を受け、平成10年度から「一括くくり入学」、「進学コースの設置」を導入した。平成13・14年度は文部科学省のキャリア教育実践モデル地域指定を受け、平成14年度から「2年生全員によるインターンシップ」、「キャリアセミナー」等を実施している。また、平成15年度からの3年間は文部科学省の学力向上フロンティアハイスクール事業の指定を受け、「キャリア教育学習プログラムの開発」を推し進めている。
 このように本校は、「特色ある工業高校」、「生徒中心の教育」を目指して、日々教育改革に取り組んでいる。

   


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2 なぜキャリア教育が必要か?    
 「中教審答申」では、「キャリア教育」は「望ましい職業観・勤労観に関する知識や技能を身に付けさせるとともに、自己の個性を理解し、主体的に進路を選択する能力・態度を育てる教育」とある。また「キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議」では、「児童生徒一人一人のキャリア発達を支援し、それぞれにふさわしいキャリアを形成していくために必要な意欲・態度を育てる教育」と定義している。さらに、「キャリア」とは「個々人が生涯にわたって遂行する様々な立場や役割の連鎖」として、また、そうした連鎖の中で行われる「自己と働くことの関係付けや人生における働くことへの価値付けの課程及びその累積」としている。
 これを受けて各学校の教育内容には、「就職・就業をめぐる環境の激変」、「若者の勤労観・職業観や職業人としての資質・能力をめぐる課題」等から「学校の教育活動全体を通して、発達段階に応じた組織的・系統的なキャリア教育の推進」が必要とされるようになった。キャリア教育の視点から従来の教育のあり方を見直し、教育課程の改善を促すものである。


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3 キャリア教育の3年間の学習プログラム
 各学年で取り組んでいるキャリア教育の実践を紹介する。
(1) システム図
 本校は、平成10年度入学生から「一括くくり入学」、「進学コースの設置」を行っている。入学から卒業までのシステム図は、次のとおりである。



(2)3年間のテーマ及び達成目標
 それぞれの学年に対して、発達段階を考慮して、次のテーマと目標を設定した。
学 年 テーマ 達  成  目  標
1学年 探 索 自己の個性を理解するとともに、職業全般に関する知識を増し、進路の方向性を選択する。
2学年 行 動 目標とする職業に関する体験的理解を深めるとともに、勤労観・職業観を確立していく。
3学年 実 現 進路を決定し、その実現に向けて取り組む。また、決定後、将来のライフプランを具体的に設計する。


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1年次の学習プログラム
 1年次は、くくり入学のため「学科・コースの選択」(選科)が大きな柱となり、2学期中に選科を終了させるようプログラムを組んでいる。内容は、「工業技術基礎」で各コースを体験するとともに、「総合的な学習の時間」(1単位相当)の中で、「学科・コースの説明会・実習見学」、「適性調査」等、選科に関する指導を行っている。また、「進路ノート」を使って個性理解や生き方を考え、自己を認識する作業を行っている。3学期は、決定した「学科・コース」のガイダンス等を行い、専門教科の学習も導入している。
学期 内              容 担 当 者
・オリエンテーション
(くくり募集の目的と選科指導の概要)
・高校生活と進路について
選科指導委員
進路指導課
・あなたの個性は?(進路ノートによる学習)
・各科・コースの学習内容と卒業後の進路
普通科教員
各科長
・資格試験へのチャレンジ
・各科・コースの実習見学
・選科についての心構え
普通科教員
工業科教員
選科指導委員
・選科予備調査 担任
・講話「私の進路選択」
・選科適性調査
校長・教頭
担任
10 ・仕事について調べよう(進路ノートによる学習)
・第1回選科調査
・個人相談会
普通科教員
担任
選科指導委員
11 ・第2回選科調査
・保護者懇談会
担任
選科指導委員
12 ・資格試験へのチャレンジ 普通科教員
・各科・コースのオリエンテーション
・各科・コースの学習
各科長
工業科教員
・各科・コースの学習 工業科教員
・選科についてのアンケート調査 選科係


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2年次の学習プログラム
 2年次は、「学科・コース」が決定し、専門的学習をしながら、「工場見学」や「インターンシップ」、「キャリアセミナー(卒業生の講話)」等、体験的な学習を中心にプログラムを組んでいる。特に「インターンシップ」は全員が実施している。また、LHRを使って進路の知識や1年次から引き継いだ「進路ノート」で自己の適性を確認している。このプログラムを実施することで勤労観・職業観が確立されていくことを促進したい。
学期 内              容 担 当 者
・進路について 進路指導課
・自分の適性を捉えよう(進路ノートによる学習) 担任
・工場見学
・資格試験へのチャレンジ
工業科教員 工業科教員
・資格試験へのチャレンジ 普通科教員
工業科教員
・インターンシップ事前準備1(意義確認と事業所決定) 工業科教員
10 ・インターンシップ事前準備2(事業所調べ) 工業科教員
11 ・インターンシップ事前指導3(安全教育)

・インターンシップ事前指導4(直前指導)
・インターンシップ実施
・インターンシップ実施後のアンケート
キャリア・アドバイザー
工業科教員
工業科教員
担任
12 ・資格試験へのチャレンジ 普通科教員
工業科教員
・くくり募集についてのアンケート 選科係
・キャリアセミナー(卒業生の講話) キャリア・アドバイザー
・講演「高卒者の雇用状況(仮題)」 キャリア・アドバイザー

 

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3年次の学習プログラム
3年次は、「進路決定の心構え・心得」を学習しながら、進路を決定しその実現に向けて取り組む。また、将来のライフプランを具体的に設計できるプログラムを組んでいる。
学期 内              容 担 当 者
・進路決定の心構え(就職・進学) 進路指導課
・進路決定の心得1(進路ノートによる学習)
・小論文指導
担任
進路指導課
・進路決定の心得2(進路ノートによる学習)
・資格試験へのチャレンジ
・小論文指導
担任
工業科教員
普通科教員
・資格試験へのチャレンジ
・小論文指導
工業科教員
普通科教員
・進路四者懇談会
・オープンキャンパスへの参加(進学希望者)
・小論文指導
担任・各科長
進路指導科
普通科教員
・講話「就職試験の心構え(仮題)」

・面接指導
・就職試験
・小論文指導
キャリア・アドバイザー
工業科教員
担任・各科長
普通科教員
10 ・就職試験
・小論文指導
担任・各科長
普通科教員
11 ・大学等推薦入試 担任
進路指導課
12 ・ライフプランの設計1(進路ノートによる学習)
・資格試験へのチャレンジ
担任
工業科教員
普通科教員
・ライフプランの設計2(進路ノートによる学習)
・くくり募集についてのアンケート
担任
選科係
・講話「社会人としての心構え(仮題)」 キャリア・アドバイザー


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4 成果と課題
(1) 1年次の学習プログラム
 「くくり入学」、「進学コースの設置」を始めて、今年度で6年目を迎える。アンケートの結果から毎年95%以上の生徒が、決定した「学科・コース」に満足しており、綿密なプログラムと個々人への面談等の対応の良さが表れている。
 また、「総合的な学習の時間」に選科指導を組み込み、「生き方」についてを深く考えることによって、自己の個性や適性の認識が深まっている。
 課題としては、この時期にもっと多くの職業についての知識を増やす方法の講話が必要である。
(2)2年次の学習プログラム
「工場見学」は以前から実施していたが、外部のいろいろな機関が実施するものを上手く活用し、各学科で2〜3回行うことができるようになった。
 「インターンシップ」は昨年度から2年生全員で実施している。2日間の日程で全員同時に行っているが、生徒は「働くことの意義」を充分認識し、非常に効果のある体験となっている。生徒は朝早くから遅くまで緊張感を持ちながら大変な体験しているが、97%の生徒が「インターンシップを実施して良かった」と答えている。
 「キャリアセミナー」(卒業生の講話)では、生徒と年齢の近い卒業生を講師として「学科・コース」単位で実施している。いろいろな体験を聞き、質問も多く、和やかなムードの中で行われている。
 校外の体験活動は、地域との連携が最も重要である。趣旨をしっかり説明すれば、地域の企業や自治体等、多くの事業所からの協力が得られる。また、今後も継続できるよう学校側にもたゆまない努力が必要とされる。
(3)3年次の学習プログラム
 3年次は従来の「進路学習」が充実しており、大きな変更点はない。進路決定にばらつきがあり、決定後のライフプランの設計をしっかり行いたいが、現時点ではまだまだ不十分であり今後の大きな課題である。
(4)プログラム実施の評価
 キャリア教育の実践プログラムの評価は非常に難しいが、プログラム実施毎にアンケートや感想を与えながら評価・改善をしていきたい。
 また、これから卒業生の就職後の離職状況などの統計をしっかり把握し、評価に反映していきたい。


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