特別支援教育推進体制モデル事業の実践                (指導課)

特別支援教育推進体制モデル事業の実践

 −山口県立周南養護学校−

学校紹介2 具体的な活動内容3 成果と課題4 実践に当たってのポイント

実  践  の  ポ  イ  ン  ト

校内外を自由に活動できる特別支援教育コーディネーターの存在
校内体制の確立
フォーマルなネットワークとパーソナルなネットワーク

1 学校紹介

 周南養護学校は、主として肢体不自由の障害のある児童生徒が学ぶ養護学校で、平成12年に開校20周年を迎え、高等部を開設すると同時に新校舎が完成した。小児科、内科等の医療施設を含む社会福祉法人鼓ヶ浦整肢学園が隣接しており、ほぼ半数の児童生徒が整肢学園より通学してくる。他の児童生徒は周南地区から2便ある通学バス等を使って通学している。
 約87%の児童生徒は重度・重複障害であり、また医療的ケアの対象となる児童生徒も在籍しているので、自立活動を主とした教育課程を編成している。一方で教科を中心とした教育課程を編成している児童生徒も在籍しており、幅広い教育活動を行っている。
 本校では、家庭、鼓ヶ浦整肢学園との緊密な連携のもとに、児童生徒一人ひとりの能力・個性を最大限に伸ばし、社会生活に必要な知識・技能・態度及び習慣を身に付けることができるとともに、自ら障害に基づく種々の困難を改善・克服し、進んで自立し社会参加できる児童生徒の育成を目指している。
 「特殊教育」から「特別支援教育」への移行に伴い、シンポジウム等を開催してセンター的機能について研究をしてきた。平成16年度から小・中・高各学部より1人ずつ、また、養護教諭を特別支援教育コーディネーターに指名した。文部科学省委嘱事業「特別支援教育推進体制モデル事業」の推進校を県教委から指定を受け、4名のうち1名の特別支援教育コーディネーターが校内外の連携を担っている。


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2 具体的な活動内容

(1)周南地域特別支援連携協議会の運営

 事務局を本校に置き、16年度は2回の協議会を実施した。事前に周南地域内の3名の地域特別支援教育コーディネーターと事前研修会を行い、協議内容等を検討した。福祉・労働・教育の各関係機関が一堂に会し、個別の教育支援計画の策定を軸にした就学前から卒業後までを見通した一貫した支援を進めるための協議を行った。

(2)小・中学校との連携

 小・中学校と養護学校の連携を進めるために、周南地域内の特殊学級及び通級指導教室の担任や担当者及び特別支援教育コーディネーターを対象に、@現状と課題を探る、A養護学校のセンター的機能の充実をめざすためにアンケート調査を行った。簡単に紹介すると以下のようになる。

抱えている不安や悩み

児童生徒の学習指導
個別の指導計画・個別の教育支援計画
校内体制の充実
今後の特別支援教育の動向
専門性の向上

養護学校へ要望すること

コーディネーター派遣による教員支援
個別の教育支援計画、指導計画の作成
校内研修への講師派遣
特別支援教育に関する情報発信(専門書や研修成果の公        開、研修会案内等)
教材・教具の貸出及び製作支援
発達検査の実施、検査器具の貸出
軽度発達障害に関する相談、支援

 養護学校への幅広い要望があることが分かり、いつでも支援を要請できる環境づくりを行ってほしいという要望があった。そこで、小・中学校の実態を知ることが急務と考え、県の専門家チームによる派遣とは別に、地域の小・中学校をいくつか訪問し、見学・質問並びに協議を行った。また、その中でお互いに具体的に連携できることを考えていくきっかけとした。小・中学校からの要請で校内研修会や事例検討の指導者として訪問させていただくことができた例もある。また、中学校の福祉体験実習を引き受けるに当たり、当該中学校に赴き事前指導の段階から携わることができた。

(3)ボランティア養成講座の実施−地域人材の活用

 本校PTAと連携して、地域の人材を活用し地域との連携をすすめるために、ボランティア養成講座を実施した。養成講座は、本校や特別支援教育について知ってもらうとともに、受講者の生涯学習のひとつとして計画をした。高校生を中心に9名の参加があった。「障害」についての考え方、支援の基礎や車椅子の基本操作等についての講義を行った上で、サマースクールや夏祭り、学習発表会を通して本校児童生徒たちとふれあってもらった。参加者からは大変好評であった。

(4)校内体制の整備

 週に1度コーディネーター連絡会を開き、お互いの共通理解を図っている。特別支援教育コーディネーターからの報告・校内支援・地域支援を主な協議内容としている。この連絡会は誰もが参加でき、自由に意見を出すことができる。
また、小・中学校を訪問して得た情報や特別支援教育に関する動向を全員で共通理解するために、「特別支援ニュース」として不定期ではあるが発行している。下記はその例である。

(5)特別支援教育シンポジウムの計画・実施

 第1回は、特別支援教育の動向を確認するとともに、養護学校としてセンター的機能をいかに充実させるかを目的に実施した。

第1回
テーマ  「一人ひとりの子どもが輝くための支援体制・連携を考える」
期  日  平成16年1月24日(土)
基調講演 「これからの特別支援教育の在り方」 
講  師 文部科学省初等中等教育局特別支援教育課特殊教育調査官 古川 勝也 
シンポジウム
 コーディネーター    山口大学教育学部助教授     川間健之介 
 シンポジスト(実践発表)京都市立呉竹養護学校長     重光  豊 
   〃   (実践発表)神奈川県立茅ヶ崎養護学校教諭 瀬戸ひとみ 
   〃          山口県立周南養護学校長    江原 健二

 第2回は地域の中で地域の中で、小・中学校も含め、関係機関との具体的な連携について探ることをねらいとして開催した。

第2回
テーマ  「ひろげよう支援の輪」〜地域における支援ネットワークづくりをめざして〜
期  日  平成17年1月29日(土)
基調講演 「特別支援教育の動向と地域における支援の推進」
       〜特別支援学校(仮称)と小・中学校の連携の推進〜(仮題)
講  師 独立行政法人国立特殊教育総合研究所教育研修情報部研究員 徳永亜希雄
シンポジウム
 コーディネーター  筑波大学大学院人間総合科学研究科助教授    川間健之介
 シンポジスト    北海道真駒内養護学校長            山田規美江
   〃       鼓ヶ浦整肢学園総合相談支援センター
                          ぱれっと副所長 竹内 俊路
   〃       周南市立徳山小学校教諭
                地域特別支援教育コーディネーター  古谷 充 
   〃       山口県立周南養護学校PTA会長        佐古 淳子


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3 成果と課題

(1)成果

特別支援教育コーディネーター1名が地域内の小・中学校を訪問して、学校での様子を参観し、お互いの連携について協議できた。
連携協議会の運営を通じて、各関係機関の担当者と顔見知りになることができた。
地域特別支援教育コーディネーターや徳山養護学校の特別支援教育コーディネーターと地域における実情や課題等について協議するなかで、連携した取組みができるようになった。
校内の特別支援教育コーディネーター連絡会を行うことで、校内連携を一層深めることができるようになった。

(2)課題

養護学校と小・中学校の連携は緒についたばかりであり、養護学校が提供できる具体的な教育資源を積極的に提示していくことが急務である。そのためには、自由に校内外を活動できる特別支援教育コーディネーターの存在が不可欠である。
特別支援教育そのものに対する学校や地域、また校内における理解や認識に差があるように思われるので、特別支援教育の理念は教育界全般の理念であることの認識を広める必要を感じている。


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4 実践に当たってのポイント

校内外を自由に活動できる特別支援教育コーディネーターの存在
 自由に動くことのできる特別支援教育コーディネーターを配置することで、はじめて小・中学校の要望等に応えることが可能となる。
校内体制の確立
 特別支援教育コーディネーターの活動は単独でできるものではない。常に誰かと相談しながら、連携しながら活動すべきものである。そのためには、校内体制を整備して特別支援教育コーディネーターの活動を支える必要である。
フォーマルなネットワークとパーソナルなネットワーク
 会議等におけるネットワークはもちろん不可欠だが、それをきっかけに気軽に連絡したり相談したりできる関係が大切と思われる。


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