総合的な学習の時間                         〔指導課〕
○総合的な学習の時間 TABEプラン の実践
                      −
山口県立田部高等学校−

1 学校紹介2 総合的な学習の時間の考え方3 実践事例4 成果と課題
実  践  の  ポ  イ  ン  ト
 教員と生徒、それぞれの主体性の尊重
 地域における系統だった総合的な学習の時間の実践

1 学校の紹介
 私たちの学校は、下関市の北東部に位置し、緑豊かな山々に囲まれた人口8000名余りの「小日本きくがわ」と呼ばれる盆地にあります。全校生徒277名の小規模校です。 本校は平成15年度から、文部科学省総合的な学習の時間モデル校に指定されたことに伴い、研究主題を「菊川で学び、心豊かに生きる児童生徒の育成〜小・中・高の望ましい連携のあり方を求めて」として、地域の小・中学校との有機的な連携を中心とした研究に取り組んできました。
 これにより、異校種連携による教育資源の有効活用や地域の教育力の有機的連携のあり方を模索しながら研究を進めてきました。
 平成9年度から学校裁量の時間に実施してきた本校独自の「講座」の時間を発展的に継承しながら、総合的な学習の時間を「TABEプラン」と命名して取り組んでいます。
(詳細はhttp://www.tabe-h.ysn21.jp/kyouikuへ)
校門から見た田部高
 TOPへ戻る


2 総合的な学習の時間の考え方
1 全体計画   
(1) モデル事業を踏まえた「地域の研究主題」
「菊川で学び、心豊かに生きる児童・生徒の育成」〜小・中・高の望ましい連携のあり方を求めて〜
@ 地域の研究主題は、地域の小・中・高の連携を推進するための組織である「モデル事業推進連絡協議会」、「モデル事業推進実践研究部会」によって策定されました。各学校段階においては地域の研究主題を踏まえ、地域の小・中・高の各発達段階に応じた「地域で共有するつけたい力」を次のとおり作りました。
A地域で共有する「つけたい力」

(2) 「TABEプラン」の指導計画
@ 本校で育みたい生徒像
 身近な題材の中から課題を見付け、主体的かつ意欲的に学習しながら課題解決に取り組むことで、問題解決能力を育成するとともに、よりよく生きるための資質や能力を自ら高め、自己の在り方生き方について社会とのかかわりの中で的確に判断し行動していく力を育む。
A 目標
ア 身近な題材の中から、興味・関心に応じた内容を選択し、自ら課題を見付け主体的に探究することを通して、自分で考え、判断し、行動していく力を育む。
イ 主体的な学習活動を通して、生き抜くための洞察力を身に付け、問題解決能力を育成するとともに、よりよい地域社会の構築に向けて情報発信する資質や能力を育む。
B 取組みの特徴
 生徒の進路希望が多様な本校においては、様々な教科・科目の開設と同様に、総合的な学習の時間においても生徒の選択幅を最大限に尊重することが重要であると考えました。そこで以前から学校裁量の時間に実施してきた本校独自の「講座」の時間を発展的に継承しながら、地域で共有するつけたい力を踏まえて展開しています。以下に取組の特徴を示します。
(ア) 多様な選択幅のある「選べる講座」
(イ) 異年齢集団による学習活動の取組み
(ウ) 教科・領域を越え、生徒の興味・関心に応じた横断的・総合的な課題への取組み
(エ) 地域で共有するつけたい力を踏まえた「ブリッジ」の作成
(オ) 「ブリッジ」を踏まえた講座の年間指導計画(単元プログラム)の作成
(カ) 総合発表会における高大連携教育の活用
(キ) サポートバンク制度の活用
C 四つの柱(テーマ)
1.Tradition (伝統文化に触れ)
2.Action  (教科をこえた活動を通じて)
3.Blend   (異年齢集団の中で学びあい)
4.Expression (問題解決への熱き想いを表現しよう)
以上、四つの柱の頭文字と、校名を踏まえて本校の「総合的な学習の時間」は「TABEプラン」と命名されました。
D ブリッジ(本校でつけたい力)
 「ブリッジ」とは、「地域で共有するつけたい力」を基とした各「学校のつけたい力」を指しています。地域と各学校を結び、橋渡しをするという意味を込めて「ブリッジ」と名付けられました。「ブリッジ」は、各学校の実態に即して、より具体的に、より細分化されており、各学校の独自性が発揮されています。

E 講座の開設
 各講座は、「ブリッジ」、「TABEプラン」の目標、四つの柱、四つのコース(「地  域社会」、「福祉健康」、「自然環境」、「文化教養」)を念頭に置きながら、各教員の得意分野、地域の教育力などを活用して講座を開設されました。各講座担当者は「ブリッジ」を踏まえ、単元プログラム(年間指導計画)を作成に取り組みました。
F 講座の決定
 講座は、身近な題材をテーマとし、担当教諭による柔軟な発想のもとで取り組まれています。これに伴い生徒の選択幅は最大限に尊重され、一人一人の潜在的な課題意識に応えられるよう平成16年度には次の16講座が開設できました。

G 講座の運営
ア 講座の選定
 開設された各講座の学習内容を、生徒に十分説明するため、4月中旬に「総合説明会」を実施しています。生徒は、各講座の学習内容や受講条件等が記載してある 講座パンフレットを参考にしながら講座を選択します。この時、生徒は、希望する 講座を第5希望まで選択希望調査票に記入することとし、教師は、これをもとにして、各講座の定員枠を考慮しながら生徒の所属する講座を決定します。
イ 課題設定
 それぞれの講座は、教科・領域を越え、生徒の興味・関心に応じた横断的・総合的で身近な課題を設定しています。生徒は所属講座の課題を踏まえ、ウエビングやKJ法による手法等を用いながら自分の課題を決定していきます。
ウ 支援の工夫
 教師は生徒主体で学習が進められるよう、課題設定の場面では大まかな説明をするだけにとどめ、一人ひとりの生徒の課題解決を側面から支援するように努めます。
エ 成果の発表
 生徒は、課題解決の過程で得られた成果や新しいアイデア等を情報発信することによって、よりよい地域社会の構築に寄与することも視野に入れながら学習を進めていきます。各講座の学習活動の成果を発表する場として、平成16年度には12月に「総合発表会」を実施しました。高大連携教育の推進も踏まえ、総合発表会の名称を「一日総合大学」とすることとし、発表会では、4つのコースの学習内容に近い専門領域の大学教員を招き、講義と併せて指導講評をいただきました。「一日総合大学」の取組みは次のとおりです。
@ 各講座によるステージ発表
A 各講座による展示
B 高大連携教育による講義・指導講評

(3) 評価 
 評価規準は、本校の総合的な学習の時間の目標及び、地域で共有するつけたい力や「ブリッジ」に照らしながら次の4つの観点で行いました。
@ 評価の観点
ア 関心・意欲・課題設定能力「見付ける力(きづく・つかむ)」
イ 問題解決能力「追究する力(しらべる・かんがえる)」
ウ 表現・発表力「表現する力(まとめる・つたえる)」
エ 応用力「活かす力(みつめる・つなげる)」
A 評価の工夫改善
ア 生徒による評価
 生徒はポートフォリオ用紙(自己評価表)の5項目について4段階で自己評価します。また、学習活動ごとに行う文章による自己評価、総合発表会における相互評価を行います。
イ 教師による評価
 教師は、生徒の自己評価に加え、学習の様子の観察やつぶやき、対話、作品、レポート、総合発表会における評価等を手がかりに、多面的、柔軟に評価を行います。
ウ カリキュラムの改善のための評価
 教師アンケートにより改善点の把握を行うとともに、総合発表会における地域の方々からの評価や生徒アンケートを踏まえ、単元プログラムの見直しや改善を行います。
「総合発表会」の展示見学の様子
「心のバリアフリー講座」の体験学習 「幼児絵画教育講座」の作品を保育園に寄贈

  TOPへ戻る


3 実践事例

「特産物利用料理講座」でサツマイモの収穫 収穫したサツマイモでイモ大福作り 「下関から世界へ講座」で留学生を招いて多国籍料理に挑戦

 TOPへ戻る


4 成果と課題
1 成果
(1) 様々な体験学習を通して、身近な課題を自分のこととして真剣に捉えることができるようになり、自己の在り方生き方や進路について考えるきっかけとなった。
(2) 総合生活科による「課題研究」の発表を「総合発表会」に加えることで、普通科の生徒も異なる視点からのアプローチに触れることができ、生徒相互の学びの共有化を図ることができた。
(3) 「ブリッジ」の作成によって地域でつけたい力を踏まえた単元プログラムの作成を図ることができた。
2 課題
(1) 総合的な学習の時間のねらいをより的確に捉えた講座設定のための研修の充実
(2) 生徒一人ひとりの課題解決を側面から支援する体制づくり
(3) 地域の教育資源の更なる共有化と有効活用の推進
(4) 生徒一人ひとりの発表(情報発信)の場の更なる充実
(5) ポートフォリオを活用した評価の推進

 TOPへ戻る                      実践編へ戻る