学力向上フロンティアスクールの取組み                〔指導課〕
 生きる力をを育む学習指導の探究
 −山陽小野田市立高泊小学校−

1 学校紹介2 具体的な活動内容3 成果と課題4 実践に当たってのポイント

実  践  の  ポ  イ  ン  ト
発展的な学習や補充的な学習など個に応じた指導のための教材の開発
個に応じた指導のための指導方法・指導体制の工夫改善
児童生徒の学力の評価を生かした授業改善
児童生徒による授業評価を生かした授業改善

1 学校紹介
 本校区は、小野田市北西部に位置し、厚狭川を境として山陽町に接する地域であり、神功皇后にまつわる伝説と史蹟が残り、寛永年間及びそれ以後の開作事業によって広大な耕地を有するようになった。 戦中、戦後の一時期には小野田市最大の小野田炭坑をもち、相当な殷賑を極めたが、エネルギー革命のあおりを受け閉山に至った。その後、高度経済成長の国是のもとの市政発展に伴い大塚工業団地をはじめ、バイパス沿いに企業・工場・商店・住宅などが進出してきた。また、校区内各地に団地・住宅・公民館などの建設がなされ、本校区は農漁村性と都市性の二面性を有するようになった。
 学校は地区中央部にあり、周囲を緑の木々に囲まれた見晴らしのよい高台に位置し、自然環境に恵まれた全校児童216名の学校である。
 平成15年度より「学力向上フロンティアスクール」としての指定を受け、算数科を中心として、児童一人ひとりの実態に応じたきめ細かな指導の実現のため研究に取り組んできた。


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2 具体的な活動内容
@ 研究主題
研究主題
生きる力を育む学習指導の探究
〜「確かな学力」の定着に向けた少人数指導、TT指導の在り方〜(2年次)

A 研究主題設定の理由
 平成15年10月、中央教育審議会答申「初等中等教育における当面の教育課程及び指導の充実・改善方策について」においては、子供たちに基礎・基本を徹底し、「生きる力」を育むことを基本的なねらいとする学習指導要領の「確かな学力」などの更なる定着を進め、そのねらいの一層の実現を引き続き図ることの必要性が示されている。これを受け、学習指導要領でも個に応じた指導の一層の充実ということについて一部改正され、具体的には小学校において学習内容の習熟の程度に応じた指導を、また、補充的な学習、発展的な学習など個に応じた指導の例示として加えられている。
 これまで、「確かな学力」を定着するための方策としては、
きめ細かな指導で、基礎・基本や自ら学び自ら考える力を身に付ける
発展的な学習で、一人ひとりの個性などに応じて子どもの力をより伸ばす
学ぶことの楽しさを体験させ、学習意欲を高める
学びの機会を充実し、学ぶ習慣を身に付ける
確かな学力の向上のための特色ある学校づくりを推進する
 が挙げられている。本校においても「生きる力を育む学習指導の探究」を研究主題に、「学力向上フロンティアスクール」として昨年度より研修を始め、一人ひとりの実態に応じたきめ細かな指導の一層の充実を図るための実践研究を推進している。その中でも「学力向上フロンティア事業」の重点項目である
1 発展的な学習や補充的な学習など個に応じた指導のための教材の開発
2 個に応じた指導のための指導方法・指導体制の工夫改善
3 児童生徒の学力の評価を生かした授業改善
4 児童生徒による授業評価を生かした授業改善

 の4点を中心に、学校・地域の特性を生かした体験的な活動の工夫とも絡めながら少人数指導、TT指導を進めることが課題の解明に繋がるであろうという仮説のもと、研究を進めてきた。

B 全校体制での取組み
ア 発展的な学習や補充的な学習など個に応じた指導のための教材の開発
○ 効果的な少人数指導、TT指導のための教材作成について
 個に応じた指導のため、各学年で少人数指導やTT指導を実践した。その際に活用する教材が児童の課題意識に沿ったものであったり習熟度に対応した教材であったりするために教材開発の研修・実践を行った。特に習熟度別の学習指導においては各学年の発達段階に応じ「チャレンジシート」を、基礎的・基本的事項の定着、補充的な学習の推進をねらいとした「茶つみコース」用、発展的な学習の推進をねらいとした「梅もぎコース」用、また更に自分のペースに合わせ、自主的に発展的な学習に挑戦していくことができる「探検コース(中学年)」「すももクラブ(高学年)」用などに分類し作成した。


(「茶つみコース」用学習カード)

(「梅もぎコース」用学習カード)
○ 学校の特色や他教科・領域と関連づけた教材開発について
 また、児童の追究意欲が最後まで継続するために、本校の特色(茶つみ、梅もぎなど)を積極的に教材化し児童に提示したり、他教科の学習内容や総合的な学習の時間の活動と関連した教材開発を積極的に行ったりするようにした。
イ 個に応じた指導のための指導方法・指導体制の工夫改善
○ 学習指導案形式について
 効果的な少人数指導やTT指導の方法についての研修と、いろいろな学習形態の学習計画への取り入れ方について、共通理解を図りながら指導案形式の検討を行った。学習指導案については、各コースでの児童の思考の流れと、児童一人ひとりに対応するための教師の支援を明確にするために本時案を複線化にした。評価規準も学習計画と本時案の中に明記することで、より計画的に評価できるようにした。
(複線型本時案例)
○ 学習内容と児童の実態に応じた少人数指導、TT指導について
 各単元において効果的な少人数指導、TT指導を進めていくために学習内容や児童の実態に合わせて指導形態のパターンをつくり、学習計画の中に計画的に組み込んだ。
指導形態について
 ○  T T :学級担任と少人数担当とのティーム・ティーチングによる指導
 ○ 少人数A:無作為なグループ分けによる少人数指導
 ○ 少人数B:習熟度に対応したグループ分けによる少人数指導
 ○ 少人数C:興味、関心、課題別学習に対応したグループ分けによる少人数指導
 ○ 少人数D:学習方法別の学習に対応したグループ分けによる少人数指導
 個に応じた指導を徹底させていくために、習熟度別のコース選択の際には学級便りや「TAMARIかわらばん」等の各種通信を活用し、児童のコース選択の支援をしたり、保護者からの意見を吸い上げながら学習指導を行ったりした。また、習熟度別指導の際のグループのネーミングを学年の発達段階に応じ工夫し、児童に親しみやすく浸透しやすいものにした。
コース名 学習する児童の例
1・2年生:「ちゃランド」
3〜6年生:「茶つみコース」
学び直し、補充学習が必要な児童
1・2年生:「うめランド」
3〜6年生:「梅もぎコース」
活用、発展的な学習に取り組める児童
ウ 児童の学力の評価を生かした授業改善
○ 標準学力検査の実施
 児童の年度初めの学力を客観的に把握し、学習指導の見通しを立てるために全学年算数科の標準学力検査を実施した。年度末にも実施し、比較方法などを検討し、成果を数値化して表したい。
○ 児童の学力評価方法の工夫と授業改善
 単元開始時、単元途中、単元終了時に児童の学力を把握し、学習計画立案や授業改善のための参考資料としたり、補充的な学習指導の計画を立てるため、評価方法を工夫し実践している。
 単元開始時・・・「ちょっとおためしテスト」「○年算数アンケート」など
 単元途中・・・・「プチテスト」「ちりつもテスト」「ミニテスト」など
 単元終了時・・・「市販テスト」「振り返りチェックテスト」など
エ 児童による授業評価を生かした授業改善
○ 算数学習への意識調査の実施
 算数学習への児童の意識と、少人数指導、TT指導に対する児童の意識を把握するため「算数の学習についてのアンケート」を実施して実態を把握した。
○ 「振り返りカード」の改善と授業評価
 児童による授業評価方法の研究として、「振り返りカード」の授業評価欄について研修を進め、児童一人ひとりの願いを把握しながら授業を改善していくことができるように配慮した。

(算数の学習についてのアンケート)

(「振り返りカード」例)
オ その他学校の特色を生かした取組み
○ 夏季休業中を利用した学習指導について
 夏季休業中を利用して、希望者を対象に学習指導「梅っ茶スクール」を行った。本年度は、前期、後期合計8日間実施し、半数以上の児童が参加した。1学期に基礎的・基本的事項が十分に定着しなかったと思われる児童にとっては補充的な学習を、希望者には発展的な問題を提示し指導を行うことができた。

(「梅っ茶スクール」の様子)
保護者の声(一部抜粋)
いやだなあと言っていた引き算ができるようになったと喜んでいました。
だらだらしがちの夏休みの引き締めになった。
1学期の復習など、レベルにあった学習でとても充実していた。
今後も「梅っ茶スクール」を続けてほしい。
○ フロンティアスクールとしての研究成果の普及
A 校内授業研究会と授業参観を一体化   
B 学力向上研究大会の開催
C 各種通信等で保護者へ普及(フロンティアスクール情報「TOMARIかわらばん」)
D 研究集録の作成・配付
E ホームページで公開(現在調整中)
F 教育後援会等の総会・役員会、学級懇談会での説明や取組みの紹介による家庭や地域との連携
(フロンティアスクール情報「TOMARIかわらばん」)
C 各ブロック・各学年での取り組み
 全学年で研究授業を行った。本年度は10月に「学力向上研究発表会」を開催し、どの学年も習熟度別の少人数指導の形態をとり、個に応じた指導ができるように配慮しながら実践することができた。

(1年生授業風景)

(2年生授業風景)

(3年生授業風景)

(4年生授業風景)


(5年生授業風景)

(6年生授業風景)


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3 成果と課題
 学習スタイルを配慮した学習プリントなどの作成と実践により、児童一人ひとりが自分にあった問題に取組み、問題解決の楽しさを味わいながら基礎的・基本的事項を確実に身につけることができたり、発展的な学習問題に挑戦し、自力で解決したときの喜びや達成感を感じたりすることができた。また、他教科・領域とも関連した教材を開発することで、「どうしても解きたい」という意欲や「解かざるを得ない」という意識を喚起することができた。これからも単元の初めから終末まで学習意欲が継続していくような素材の教材化や、学習して身につけた知識・技能・思考力などの力が実生活の中で生きて働くようになるために、他の教科や領域などの学習と効果的に関連づけていきたい。
 習熟度別学習はコースでの学習内容の違いや、選択方法など児童によく浸透し、学習もスムーズに進むようになってきた。これからは、本校の少人数指導、TT指導でより成果の上がる領域や単元を考察・整理し、実践例などをまとめていきたい。
 形成的な評価をスモールステップで行うことで、授業改善の方法や方向性が明確になっただけでなく、実態に合わせた個別指導も効果的に行うことができた。また、「振り返りカード」の中に「算数日記」などの児童の授業評価欄を設けることで、児童の素直な願いを理解することができただけでなく、教師と子どもとのコミュニケーションも算数科の学習を通して深めることができた。


4 実践に当たってのポイント
@ 発展的な学習や補充的な学習など個に応じた指導のための教材の開発
 「茶つみコース」「梅もぎコース」、それぞれの習熟度別コースの児童に応じた学習カードなどが作成でき、児童一人ひとり、個に応じた指導のために成果を上げることができた。また、「茶つみ」「梅もぎ」などの学校行事、他教科の内容や総合的な学習の時間の学習内容に関連させた教材開発を進めることで、算数の時間に身につけた力が、児童の中で生きて働く「確かな学力」となりうるよう心がけた。
A 個に応じた指導のための指導方法・指導体制の工夫改善
 学習内容や児童の実態に即した様々な少人数指導、TT指導の形態を研究し、各単元の学習計画の中に効果的に結びつけようとした。また、本校独自の習熟度別コースも児童に浸透し、各種通信を活用し、保護者にも理解を得ることができた。
B 児童生徒の学力の評価を生かした授業改善
 スモールステップの形成的な評価を行うことで、児童の学習状況をきめ細かに評価しながら授業改善を行うことができた。また、各学年で児童の発達段階に応じた「振り返りカード」の研究が進められ、単元中における児童の実態把握も効果的に行うことができた。
C 児童生徒による授業評価を生かした授業改善
 各学年の「振り返りカード」内の授業評価欄の研究を行い、児童の学習内容、教師の指導方法に対する意見や願いを吸い上げることができた。また、教師と児童のコミュニケーションの場ともなった。


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