児童生徒の心に響く道徳教育推進事業                 〔指導課〕

 思いやりの心をもち、自ら考え、共に生きようとする児童の育成
   
〜自立と豊かな関係づくりをめざした道徳教育〜
萩市立多磨小学校

1 研究主題設定の理由2 研究の概要3 実践例4 今後の課題5 心のノート活用例6 市町村の取組み(萩市)
研  究  主  題
思いやりの心をもち、自ら考え、共に生きようとする児童の育成
〜自立と豊かな関係づくりをめざした道徳教育〜

1 研究主題設定の理由
 価値観の多様化と変化が激しい現代社会において、失われつつある人間としての豊かな心を取り戻し、夢と希望をもって生きていくため、道徳教育のより一層の充実を図る必要がある。その中で児童一人ひとりが自分を見つめ、自分で未来を切り開いていくことができる力を育成し、生き方を高めていくことが大切となる。
 本校の児童の実態をみると、生活体験の中からの課題を見付け、自分自身で考えていくことが十分であるとは言えない。また、生活の中で共に支え合って生きていくことの大切さに気付かないまま生活しているのが現実である。児童が様々な人やものとかかわり、人が人として生きていくことの意味をじっくり考えることができる道徳の時間を重視し、思いやりを育む場や自分自身の生き方を考える機会を確保することが大事であると考えた。
 そこで「思いやりの心をもち、自ら考え、共に生きようとする児童の育成」を研究主題に掲げ、道徳教育の推進を図っていくこととした。
 一方、本校において道徳性検査や児童の実態の調査結果から、主として自分自身に関すること(基本的生活習慣、責任感等)、主として他の人とのかかわりに関すること(思いやり、人間関係づくり等)が十分でなく、本校児童の一番の課題であることが分かった。この課題を解決していくためには、個人目標を設定し、その実現に向けて努力することを支援する手だてや自己有用感を強めることのできる集団づくりが必要である。
 そのために副主題として「自立と豊かな関係づくりをめざした道徳教育」を設定し、自立心を育み、友だちとの豊かな関係づくりに取り組むこととした。

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2 研究の概要    
(1)研究体制
  
(2)研究計画
 1年次 実践目標 見つめよう 育てよう 自分の自立
 2年次 実践目標 見つめよう 友達のよさ 育てよう 豊かな関係
@ 研究構想立案       4〜5月
A 授業研究(公開)     6月25日(6年)、7月1日(4年)、1月26日(2年)
B 町教育研修大会      8月3日(研究概要発表、道徳示範授業、講演会)
C 萩管内道徳教育研究協議会 10月14日
  公開授業(全学年)、研究協議(授業研究と持参資料検討)、講演
D 示範授業と教育講演会 1月19日
E 1年次の整理と課題 2〜3月
(3)研究内容
@ 総合単元的な道徳学習の展開
 ア 年間を見通した総合単元的な道徳学習の構想、道徳の時間の年間指導計画の作成・実践・評価
 イ 「学級における道徳教育」の作成
 ウ 地域や家庭と連携し、地域教材や人材を生かす工夫
A 道徳の時間の授業づくり
 ア 児童が自ら課題に取り組む手だて
 イ 児童の考えや気持ちを引き出す発問と表現の指導方法の工夫
 ウ 「心のノート」の活用(授業、学校行事等)と道徳ポートフォリオ・ファイルの作成
B 生きて働く環境づくり
 ア 子どもの活動や学習や思いが見える校内・教室掲示(「やさしい心の花を咲かせよう」の取組等)
 イ ボランティア活動、交流学習(異年齢集団)、豊かなふれあい体験活動の推進
 ウ 言語環境の改善
 エ 家庭や地域社会へ、道徳教育の意義について啓発活動を推進
C 児童の変容が分かる実態調査、評価

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3 実践例
(1)「児童自ら課題に取り組む」ための具体的な手立て
 自ら見付け、自ら学び、自ら考え、よりよく問題を解決するための2つの手だてを仕組んだ。
@ 日常生活の中で児童が課題を見付け、取り組むためのハートポストの設置
(教師の手立て) (児童の意識)
問 題 場 面
話題提供と日常生活へ目配り 問題場面との出会い
課題への気付き
課題メモを書く場面設定 生活の課題をポストへ
課題の設定
教師が課題を分類・選定 課題の意識化
課題への取組
道徳の時間の内容項目と関連
(学級指導や個人指導にも活用)
課題解決への取組み
A 発達段階に沿った道徳の時間におけるねらいの設定
 道徳の時間を「自分を見つめ、他者を理解する時間」と捉え、主体的に学び価値追究が可能となるようにめあてを設定することとした。
学 年 具  体  例
低学年 ・今までの自分について書こう。
・したことや言ったことについて、友達の意見をしっかり聞こう。
中学年 ・自分の言動の根拠について考えよう。
・友達のよさや自分のよさを見付けよう
高学年 ・友達の考えを聞くことで、より自分の考えを深めよう。その中で、価値項目を深めていこう。
(2)道徳の時間の工夫
@ 地域人材の活用(保護者をゲストティーチャーに招いて)
 主題に対する自分の考えを明確にもたせるための工夫として、葛藤場面で対立する意見をもつゲストティーチャー2人と児童とがディスカッションするという学習形態に取り組んだ。       
A 役割演技やロールプレイの導入
 問題場面を劇化し、自分だったらどの立場と同じかを考えたり、ロールプレイで多様な立場の意見交換をしたり、意見が素直に言える場づくりを工夫した。
(3)全教育活動における心を育む実践
@ 「心の種をまこう・やさしい心の花を咲かせよう」の取組み
 友だちや学校のために取り組んでみたいことを心の種カードに書き、その実践を他の児童が見付けた時、その様子をやさしい花カードに記述する。校内掲示板の幹に花カードを貼り付けて、満開の心の花となるように促し、奉仕の気持ちや他の友だちへの思いやりを拡げる動機付けとした。
A 「夢や願いを語ろう」の取組み
 校内の数か所に、全校児童の自画像と各自の夢や願いや感謝の気持ちを掲示し、友だちの思いを伝え合うとともに道徳的実践力を育む環境づくりに取り組んだ。
(4)児童の変容と教職員の意識の変化
 道徳の授業におけるめあてを意識することで、より学習に集中できた。ゲストティーチャーの考えや思いに接することで、児童の考えが深まったり、広がったりした。生活面でも、落ち着いてきており、思いやりの心が育ちつつある。教師は、共感的態度で子どもに接するようになった。
(5)家庭や地域の反応
 保護者をゲストティーチャーとして迎えた授業では、保護者自身が生き方を深く考えさせられたこと、児童と心を通わすことができたことに感動された。授業公開や教育講演会を通して地域の道徳教育への関心が高まった。

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4 今後の課題
(1) めあてに向け、粘り強く取り組むなどの自立する姿が見られるようになったが、さらに「もっとできると思う自分」の意識化を図る。
(2) 考えを伝えられない、相手の考えを汲み取れないといった傾向があるので、伝え合う力を高め、望ましい人間関係を構築するための研究を深める。

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5 心のノート活用例学校行事との関連を図った「心のノート」の活用例)
1 活用の趣旨
 道徳の学習の日常化をめざした「心のノート」を、自主的、実践的な態度の育成を図る特別活動の中の、体験的な活動を中心とした学校行事と関連させて活用することで心の居場所づくりを設定することができる。
2 活用例
(1)「心のノート」と学校行事(勤労生産・奉仕的行事)
 ボランティア活動として、クリーン作戦(ごみ拾い活動)を展開して本年度は2年目となる。1・2年生は、校地内のごみを拾い、3〜6年生は、遠泳大会を行う海浜のごみを拾う奉仕的行事である。
@ 児童の活動への意欲を高める手だて(事前)
 「今年もするのか」「またか」という意識は、継続し繰り返せば出てくるものである。
 そこで、中学年では、「心のノート」P.70〜73 を利用して、働くことはだれのためになることなのかをしっかりと考えさせた。
A 体験活動中に生きて働く「心のノート」(活動中)

<海浜ボランティア清掃活動>
 夏の暑い中、汗を流しながら働くことは、確かにつらいことである。
 しかし、ごみを拾う行動が、自分たちの使う海浜をきれいにするだけでなく、大勢の海水浴客や地域にも喜ばれることとなり、また美しくなった海浜を見て自分が満足でき、自信につながっていく。このような中で意識付けを図る場合にも「心のノート」は活用できた。
 いざ活動が始まると、児童はおもしろそうな物、拾えそうな物から優先順位を付け、拾っていく。あらかた取れそうな物がなくなると、手持ちぶさたでいる。
 その時、「心のノート」で考えたことを投げかけることで、より海浜をきれいにしようとする意識が高まった。
B 高まった意識の継続を図る手だて(事後)
 社会奉仕の精神を涵養する体験に終わりはない。ただ、それを教師が用意していくのではなく、「心のノート」に立ち返ることで、自らがボランティア精神を高めていくことができる。
 児童の中には、自分の行っている体験を紹介した事例もあった。
(2) 「心のノート」でつながる学校行事
 遠足・集団宿泊的行事では、公衆道徳が気になるところであるが、中学年では「心のノート」P.68〜69を読むことで、自らのマナーについて考えることができた。その結果、お世話してくださる方への感謝の気持ちを含め、楽しく集団として行動することができた。その感謝の気持ちが、さらに「心のノート」P.46〜47 にある「みんなにささえられているわたし」へとつながっていった。

<春の全校遠足>

<見学場所での商品の観察>
3 今後の課題
(1) 「心のノート」を利用した時の集団としての高まり
 今回、「心のノート」は、自分の心に尋ねながら、資料として読んだり、ワークシートとして記入したりすることで個人的な活用を図った。
 しかし、自分の心の中を素直に「心のノート」に書き表した児童の中には、「人に見せないでほしい」と願い出る子どももいた。道徳の時間のように資料の登場人物に自分の価値を投影して表現することなら可能だが、特別活動など自分本来が主人公なら難しい。
 集団として、特別活動で利用した「心のノート」の記述の中に、児童の本音が出ている場合、どのように取り上げていけばよいかが、今後の課題である。
(2) 「心のノート」の趣旨を生かした活用
 「心のノート」は、いつでも、どこでも活用できるように編集されている。趣旨や特徴を、教師はどこまで理解できているのだろうか。
 じっくり読むと、すばらしい道徳的価値にふれることができるので、自由な活用ばかりでなく、「心のノート」の趣旨や特徴を生かした活用を研究することが今後の課題である。

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6 市町村の取組み(萩市)
1 研究主題
 思いやりの心をもち、自ら考え、共に生きよ  うとする児童生徒の育成
 各校サブテーマ
 推進校 多磨小学校 「自立と豊かな関係づくりをめざした道徳教育」
 協力校 小川小学校 「道徳性の涵養を促すよりよい授業実践」
 協力校 田万川中学校 「心に響き、心を揺さぶる資料の活用」
2 研究主題の設定理由
 変化の激しい現代社会において、学校では、いじめや不登校、社会体験の不足等、豊かな人間性を育まなければならない時期に様々な課題を抱えている。
 このような中、社会の一員として主体的に生きるための基本となる資質や能力である豊かな道徳性の育成が望まれている。また、学校の全教育活動における道徳教育の推進が急務となっている。本町では「ふるさと田万川町」を愛し、将来に向かって夢と希望を抱きながら主体的に生きていこうとする子どもの育成をめざし、学校教育の重点施策の一つに「豊かな心をもち、たくましく生きる力を育む教育の推進」を掲げている。
  そこで、各学校においては「児童生徒の心に響く道徳教育推進事業」(文部科学省指定)の推進地域として町内3校が共通認識をもち、児童生徒が自ら課題に取り組み、お互いに他者を思いやり、課題解決に向けて共に考え、たくましく生きていく力を育む道徳教育の推進に力を注いでいくことにした。さらに、田万川町道徳教育研究協議会を立ち上げ、町内共通研究主題を「思いやりの心をもち、自ら考え、共に生きようとする児童生徒の育成」とし、次代を担う「生きる力」を身に付けた心豊かな児童生徒を育む道徳教育の在り方を探ることとした。
3 事業の概要
(1) 田万川町道徳教育研究協議会における研修
 本町の道徳教育の充実深化を図るため、町内3校の教職員が下記のとおり共同研究を行い、授業研究会、研修会等を実施した。
 @ 推進校を中心とした共同研究体制
 A 児童の実態把握(3校で道徳性検査実施)
 B 「心のノート」、「地域人材」の活用の推進
 C 先進校視察
 D 道徳の授業研究と研究協議、講演会
 ・3校合同授業研究会
  授業研究会1 5月24日 田万川中学校
  授業研究会2 6月25日 多磨小学校
  授業研究会3 7月6日 小川小学校
 ・要請訪問(7月1日 県教育委員会指導課)
 ・3校合同研修主任会(6回:推進校にて)
 ・田万川町教育研修大会(8月3日)
  道徳教育実践研究協議(3グループ)
  道徳示範授業・講演(北九州市教育委員会指導主事 弥永和利氏)
(2) 萩管内道徳教育研究協議会の開催(10月14日)
 町内3校を会場に萩管内の教職員、町内保護者、地域を対象(町内行事「学校へ行こうの日」同時開催)とし、道徳授業を公開した。
 @ 公開授業(3校にて)
 A 研究協議1(授業研究)、2(持参資料検討)
 B 講演「体験活動を生かす道徳教育の推進」(田んぼの学校おごおり校長 原田雅登氏)
(3) 示範授業と教育講演会(1月19日)
 町内小学校高学年を対象とした示範授業と保護者を対象とした教育講演会を実施。
4 今後の課題
(1) 地域に根ざした道徳教育の具体的実践項目などの提案(地域の道徳チャレンジ目標など)
(2) 保育園、小学校、中学校、地域等の連携強化と広報活動の定着。
〜担当課〜
 萩市教育委員会 田万川地域事務所
 〒759-3113 萩市大字江崎338
 電 話:08387(2)0211

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