特別支援教育推進体制モデル事業の実践                (指導課)

特別支援教育推進体制モデル事業の実践

 −山口県立徳山養護学校−

学校紹介2 具体的な活動内容3 成果と課題4 実践に当たってのポイント

実  践  の  ポ  イ  ン  ト

できる支援からしていこう
養護学校を知ってもらおう

1 学校紹介

 本校は主に周南地区に住む知的障害のある子どもたちが学ぶ養護学校で、小学部、中学部、高等部からなり、3学部を合わせて約70人の児童生徒が学んでいる。
 通学は、大半の児童生徒が通学バスを利用しているが、高等部の生徒の中には、自立に向けて電車を利用する者や、自転車や徒歩で通学する者もいる。
 年間を通じて様々な学校行事を設けている。運動会、とくぶん祭など学校全体で取り組むものの他に、各学部でそれぞれ修学旅行、宿泊学習、校外学習などを実施している。


<校舎全景>


<学校地図>

(1)地域交流を積極的に推進
@居住地交流
 小学部では、児童が住んでいる地域の同年齢の児童生徒との交流を、保護者の希望により行っている。
A学校間交流
 小・中学部は地域の小・中学校との学校間交流に積極的に取り組んでおり、お互いの学校を訪問し合って交流を深めている。
事前の打ち合わせや反省会などで教師間の交流ができ、連携に役立っている。
(2)障害特性に応じた教育
 小学部では、自閉症の障害特性に応じた教育活動の実践を行っており、平成16年度は、6年間の実践の成果と課題についてまとめた。また、他学部でも自閉症の生徒の入学は増えてきており、小学部の成果を踏まえ、障害特性に応じた教育課程編成について検討中である。


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2 具体的な活動内容

(1)校内の取り組み

@特別支援校内委員会の設置
養護学校は、地域の特別支援教育のセンターとしての役割が求められていることから、より実践的な支援活動が必要になってきたため、本校では全校体制で臨むことを全校で確認した。それに伴い、特別支援教育校内委員会の設置と、各部に1名の特別支援教育コーディネーターを指名した。
A専門性に関しての研修会実施(4回)

開催期日

研  修  内  容

講  師

H16.7.21

軽度発達障害のある子どもの障害特性について
実際の指導の現状や課題等について

ふれあい教育センター
大塚日登美 先生

H16.8.24

発達検査の意義とK式検査の実際と分析

山口県立萩養護学校
石橋 剛  先生

H17.1.10

自閉性障害の指導(支援)の実際について

福岡市立東福岡養護学校
緒方よしみ 先生

H17.1.12

K式発達検査からみた子どもの見方、とらえ方

山口県立萩養護学校

石橋 剛  先生

B個別の教育支援計画 
 16年度より教務部を中心に取り組んできた。個別の教育支援計画の基本的位置付けや、個別の指導計画との関係について、全職員で共通理解を図った。17年度はこのことを踏まえて、また、県教育委員会が示した県様式をもとに作成することとしている。

(2)支援活動

@ 支援の在り方について
 支援に当たっては、児童生徒一人ひとりがかけがいのない大切な存在であるということを基盤とし、基本的には本校の教育方針と同様の姿勢をもって支援活動を行っている。また、『できる支援』を積極的に行うことが大切であり、今後の活動の重要な部分であると考えている。
A小・中学校への支援
 16年度は以下の支援を行った。
ア 専門家チームによる支援
イ 地域の小・中学校を訪問しての支援
ウ 資料提供・・・障害理解(自閉症)について、今後の特別支援教育の動向について、保護者への支援の在り方について、事例研究の進め方について
エ 事例研究・・・子ども理解と子どもの要望や願いを把握し今後の方針や対応について教師間で共通理解する、授業参観による実態把握、保護者との懇談(家庭での対応について)
他の学校の実践の紹介
オ 研修会案内・・・研修会の計画を管内の小・中学校へ案内する。
カ 学校見学会の実施・・・平成17年2月15日(火)12:3015:30に実施

事例検討会を効果的に進めるために・・・
          〜山口県立徳山養護学校 小学部 自閉症学級の例〜

平成16年11月24日
○○市立○○小学校 研修資料

 この方法は、個別の指導計画作成のためにケースカンファレンスの時間に進めていったものです。

1 事実から出発する
  担当児童の一番気になること、一番問題だと思うこと、本人が一番困っていること               (これが改善されたらどんなにか本人が気が楽になるのに・・・)を日頃の言葉で出していく。
  また、担任以外の教師も簡単に感じていることを言う。同じ学級の教師、隣りの学級の教師も自由に出す。
* 一人の教師の目から見た姿だけだと見誤る可能性がある。複数の教師の目で共通項を確認する。→自閉症学級として、子どもを捉えるベースライン作りに有効であった。
(担任が替わってもベースとしての子どもの見方は変わらないという良さがある。)

2 分析と仮説 (発達要求を探る)
  ・行動の背景はどこにあるのか、何故、そのような行動をするのか
  ・本当はどうしたいのだろうか、どうなりたいのだろうか
  ・本当にしたいことは何なのか、したくないこと何なのか

生育歴や障害特性や発達段階などを考慮に入れながら、みんなで導き出していく。
 〜軽度発達障害の子どもさんには、実際に語ってもらうと良いのではないか〜
子どもに共感できる捉え方であるほうが的を得ていることが多いようです。

3 手だて、指導の方針、対応 〜集団の力を借りて〜
  本人が好きなこと、楽しいこと、分かることから取りかかる。
  心の育ちに起因することが多いので、集団の中でどれだけ自己実現、居場所を作るかが重要です。
  個別指導で自信をつけて、集団の中で認めてもらえることなど。
  人はやはり人の中で成長すると思います。しかし、本人にとって安心できる集団、認めてもらえる集団、分かる集団でなければ成長できないと思います。

B 就学前の幼児への支援
 これまでの教育相談活動(親子学級、相談、体験入学、学校見学)を継続しながら、更に“出向いての支援”を行った。
“なんでも相談”案内のリーフレット配布した。


<親子学級写真>

 

C 関係機関との連携
 周南地域特別支援教育連携協議会、周南地域システム会議、周南市特別支援教育コーディネーター連絡協議会、発達支援センターぱれっとによるケース会議(本校児童生徒について)へ参加することにより連携を図った。
 子どものケースを介して具体的な事例を通して、より密な連携を図ることができ、養護学校の役割についての理解も進むと考えられる。


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3 成果と課題

校内では、特別支援教育コーディネーターの活動への理解が得られたが、更に活動しやすくするには、校務分掌や校内体制の再検討が必要になってきた。
支援活動により、小・中学校の児童生徒の実態を知ることができた。また、教員との交流により小・中学校の実情を感じ取ることができた。今後は、定期的、長期的に児童生徒の支援ができるようにしたい。その意味でも今年度出会った児童生徒との関係は継続していきたい。
個別の教育支援計画につては、17年度中に盲・聾・養護学校での作成する必要があるが、位置付けや保護者の同意については各学校で十分な共通理解のもとに、取り組む必要がある。
支援活動をする際には、今までの実践の蓄積が大変役に立った。一方で、子どもの実践から離れてしまっては、今ある児童生徒と先生方へ適切な支援ができなくなってしまうのではないだろうかという思いもある。特別支援教育コーディネーターも実践者のひとりであるべきであろう。

幼稚園と保育園への支援は、出向いての支援のケースは少なかったが、自閉症の幼児の相談があった。本校の取組みである自閉症の障害特性に応じた教育活動の実践の蓄積が大いに役に立った。
小学校や養護学校への就学に向けて、“なんでも相談”“出向いての支援”を広め、何らかのかたちで幼児等へかかわる必要があるだろう。


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4 実践に当たってのポイント

できる支援からしていこう。 
 今までの実践から得た情報と成果をもとに、児童生徒や先生方を支援していき、そして目の前の子どもたちから、現場の先生方から情報と課題をもらおう。さらに返していこう。
養護学校を知ってもらおう。
 地域にありながら、なかなか実情を知られていない。まず養護学校の存在を知ってもらうことからもう一度取り組もう。

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