特別支援教育推進体制モデル事業の実践                (指導課)

特別支援教育推進体制モデル事業の実践

 −周南市立富田東小学校−

学校紹介2 具体的な活動内容3 成果と課題4 実践に当たってのポイント

1 学校紹介

 周南市立富田東小学校(児童数約700名)は、周南地区で最も児童数の多い大規模校である。学級数は全22学級で、知的障害特殊学級、情緒障害特殊学級、通級指導教室も設置されている。通級指導教室は、旧新南陽地区の通級指導の場として、地域の言語障害や軽度発達障害のある児童の支援を行っている。今年度、「特別支援教育推進体制モデル事業」の研究協力校として、「特別支援教育」の推進に取り組んできたので、その実践を紹介したい。


 TOPへ戻る

2 具体的な活動内容

(1)校内支援委員会の位置付け

 本校では、校内支援体制の中心を各学年単位の「支援ミーティング」と「校内支援委員会」においている。図1がその組織図である。これらの組織を円滑に機能させるための連絡調整の役割を校内特別支援教育コーディネーターが果たしている。

 「支援ミーティング」は、各学年単位の同学年会に特別支援教育コーディネーターと生徒指導主任が参加する。担任から相談のある児童の中には、不適応状態を起こしたりする場合もあることから、生徒指導主任との連携は、「特別支援教育」を進めていく上では非常に重要であると考えている。生徒指導上の問題解決に「特別支援教育の視点」が必要な事例も多い。担任が特別な教育的支援が必要であると考える児童について、同学年の教師同士が互いに情報交換をすることで、共通理解を図り、同学年としての体制が整うという面で、大変意義のあるものとなる。特別支援教育コーディネーターは、各学年の状況を把握し、必要な支援についての情報提供を行い、全教職員で共通理解を図っていくことが必要な場合は「校内支援委員会」において協議を行い、専門機関との連携が必要と考える場合は連絡調整役を担う。

「支援システムとその流れ」については、図2のようになる。

(2)特別支援教育コーディネーターの役割

 特別支援教育コーディネーターが行ってきたこととして、主に以下の@からDのような役割がある。

@校内での連絡調整を行う。(支援ミーティング・校内支援委員会の計画と運営)
A教育相談を実施し、望ましい対応方針の原案を提示する。
B保護者、関係機関との連携に際しての窓口となる。
C該当児童への支援を行う。(児童の実態把握と指導:「個別の指導計画」の作成)
D特別支援教育に関する校内研修を推進する。

具体的な仕事について、項目別にまとめると次のようになる。
@校内での連絡調整を行う
・支援ミーティングを企画運営し、同学年単位での特別な教育的支援の必要な児童の把握と具体的な支援を考える。
・全校レベルで共通理解し、支援をしていく必要があると考えられるケースが生じた場合には、「校内支援委員会」を開催して検討する。
・特殊学級への入級等、就学措置に関係してくるケースについては、「校内就学指導委員会」として、より拡大した組織で検討する。
A教育相談を実施し、望ましい対応方針の原案を提示する
・特別支援教育にかかわる内容での相談を引き受ける。要望があった場合、担任や保護者、あるいは、児童を対象に相談の時間を設定し実施する。
・児童については、保護者の了解が得られれば個別の心理検査を実施し、客観的な資料を得るようにする。例えば、WISC-V、K-ABCITPA等を実施し、個々の児童の個人内差を明らかにし、思考の傾向や、認知処理能力の特性などから、望ましい対応方針の原案を提示する。
・検査や相談の結果を受けて、通級による指導やTT、少人数指導、あるいは特殊学級の活用等の支援体制について検討する。
B保護者、関係機関との連携の窓口となる
・支援ミーティング、校内支援委員会の協議結果や実態調査結果等を踏まえ、保護者への、教育相談を実施する。必要に応じて専門機関を紹介したり、家庭と学校が協力して進める支援方法を提示したりする。
・日頃から、専門的な機関に関する情報収集をし、各機関の担当者とコミュニケーションを図っておく。
C該当児童への支援を行う
・全校規模で実態調査を実施し、特別な教育的支援の必要な児童の実態を明確にする。
・実態調査の結果を受けて、実際の支援に結びつけていくための「個別の指導計画」を作成する。
・通級による指導を進めた方がよいケースについて、担任と連絡を取り合い、通級による指導を開始する。
D特別支援教育に関する校内研修を推進する
・研修計画に沿って、特別支援教育に関する校内研修を進める。
・年間を通じて「特別支援教育」にかかわる情報を随時、提供していく。

【特別支援教育にかかわる研修】

一学期

・研修計画ついての共通理解
・軽度発達障害に対する理解(講師を招聘しての研修)
・保護者への啓発(文書配布)
・研究先進校(地域特別支援教育コーディネーター配置校)視察
・特別な教育的支援の必要な児童に対して実態調査を実施(担任)

夏季休業中

・実態の整理と該当児童の「個別の指導計画」の作成
 (校内特別支援教育コーディネーター)
・指導の工夫等について研究
・文献研究
※校内就学指導委員会の実施

二学期

・授業研究
通常の学級での授業における、該当児童の支援計画の作成及び実施後の評価、検討

・全教職員が通常の学級及び通級指導教室の授業の両方を参観し、通常の学級において実施可能な支援について検討

三学期

 ・軽度発達障害への対応について(講師を招聘しての研修)

・該当児童の変容をもとに、支援のあり方や課題についての考察(担任、校内特別支援教育コーディネーター)

 ・次年度の計画立案

 TOPへ戻る

3 成果と課題

(1)成果として

 「支援ミーティング」(学年単位)の企画運営により、全校の実態を細かく把握することができ、さらには「校内支援委員会」において、当該児童の状態や支援について全教職員で共通理解することができた。また、校内研修の一環として、年間を通じて計画的に軽度発達障害に関する研修を積むことができたので、教員の意識改革が進んだ。通常の学級担任からの気付きや通級指導の希望が以前よりも頻繁に聞かれるようになった。

(2)課題として

 今後「個別の教育支援計画」に取り組んでいくことになれば、保護者への啓発が今以上に必要となる。担任が必要だと感じて教育相談を実施しても、保護者の理解を得ることができなかった例もあった。学校内での意識改革は進みつつあるが、家庭、地域への理解と啓発、専門機関等との連携に関しては今後力を入れていかなければならない。


 TOPへ戻る

4 実践に当たってのポイント

 年度当初に、支援システムの流れを全教員でしっかりと共通理解し、軽度発達障害のある子どもに対しては全校体制で取り組んでいくのだという意識をすべての教員がもつことが大切である。校内の特別支援教育コーディネーターは、連絡調整役として教員間、あるいは教員と保護者、教員と児童たちとを繋いでいくことができるようにフットワークのよさが要求される。また、関係機関や専門家とのつながりも日頃から築いていくように努めておかなければならない。さらに、特別支援教育にかかわる国の動向に目を向け、専門的な知識に関する自己研修を継続的に積んでいくことが必要である。特別な教育的支援が必要な児童生徒に対して、各学校の限られた人的、物的条件の中で可能な限りの力を注いでいくための工夫がなされていくことが大切である。


 TOPへ戻る                  実践編へ戻る