道徳の時間
ふるさと体験学習
児童生徒の心に響く道徳教育推進事業                 〔指導課〕

 ふるさと体験学習を生かした心に響く道徳教育の推進
   
〜体験学習と道徳の時間の関連を図りながら〜
下関市立豊田西中学校

1 研究主題設定の理由2 研究の概要3 実践例4 今後の課題5 市町村の取組み(下関市)
研  究  主  題
ふるさと体験学習を生かした心に響く道徳教育の推進
〜体験学習と道徳の時間の関連を図りながら〜

1 研究主題設定の理由
 学習指導要領の改訂により道徳教育の基本方針の中に、「体験活動等を生かした心に響く道徳教育の実施」や「家庭や地域の人々の協力による開かれた道徳教育の充実」という内容が示された。さらに、その中には「道徳的価値の自覚が一層図られるよう体験活動等を生かした多様な取組みの工夫や、魅力的な教材の開発や活用を行うとともに学校全体で取り組めるようにする」ことや「学校、家庭、地域を通じて、道徳性を培う体験活動を深める学習を一層活発に展開し、各学校の創意工夫と特色を生かした道徳教育の充実を図る」ことが提示されている。
 本校では以前から、「地域の人々とのふれあいを通してふるさとに誇りをもたせること」「ふるさと以外の異文化の学習を通してふるさとを見つめ直すこと」をねらいとして、農業体験学習や異文化学習などのふるさと体験学習を総合的な学習の時間に実施している。また、平成15年度は、下関管内中学校道徳教育研究協議会の会場校となったこともあり、校内研修で道徳教育全般(年間計画の立て直し・道徳資料の精選等)について見直しを図った。そして、今回「平成16・17年度児童生徒の心に響く道徳教育推進事業」の推進校の指定を受けた。
 そこで、本校がこれまで取り組んできたふるさと体験学習と道徳の時間の関連を図ることで、生徒が自ら人としての生き方を探求する姿勢をより効果的に育めると考え、その指導の在り方を追求することとし、研修主題を「ふるさと体験学習を生かした心に響く道徳教育の推進〜体験学習と道徳の時間の関連を図りながら〜」と設定した。

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2 研究の概要    
 研究は図1のような体制で行った。研究の進め方としては、各学年部でふるさと体験学習と関連した道徳の時間の授業を計画し、研修職員会で指導案を検討し授業を行った。そして、授業後の研修職員会で授業研究を行った。研修部は研修職員会を企画、運営するとともに、授業の参考となる資料を提供し、授業者の相談を受けることにした。
 また、道徳教育研究会への参加、参考図書の購入・活用、専門の講師を招いての研修会を実施し、教員の道徳教育についての研修の充実に努めた。
 次に生徒の実態把握として、ふるさと体験学習の前後にアンケートや感想を書かせた。そして、10月には道徳性の検査(教研式NEW HUMAN)を全生徒に実施した。
 また、12月に学校評価の中で生徒や保護者に道徳教育や人権教育についてアンケートをとった。結果を分析し、より適切で効果的な道徳教育を展開していきたいと考える。
 さらに11月から校区内の小学校教諭・PTA会長、地域の学識経験者などから構成される「豊田西中学校道徳教育推進協議会」を発足し、道徳の公開授業の参観や研究協議会への参加、子どものためのボランティア人材バンク作成など、本校の道徳教育推進への支援が積極的に行われることになった。  

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3 実践例
(1)3年生の味噌作り体験を生かした道徳の授業(総合的な学習の時間と関連させて)
 3年生(22名)は、豊田町味噌加工場で職員の方を講師とし、味噌づくり(米味噌、麦味噌)を3日間体験した。大変な作業であったが、興味をもって取り組むことができ、新しい知識を得ることができたという生徒の自己評価が多かった。
主題名 伝統継承の心 4−(8)
資料名 「秋田杉桶樽」(出典 日本文教出版)
ねらい 郷土の文化や伝統を守ろうとしている人の思いや願いを理解し、伝統のすばらしさが分かり、伝統を大切にしていこうとする心情を育てる。
展開
 味噌作りの体験学習を映像で振り返り、自家製味噌をつくる意義や資料を通して自分の身の回りの文化や伝統に気付くこと、また、それをどのように受け止め自分の生活に生かしたらよいかを考える。
成果
 道徳の時間に生徒は味噌づくりの体験について、様々な感想を述べた。ある生徒は「日本独特の伝統的なものについて改めて考えることができた」と発表した。体験したことを道徳の時間に振り返りながら考えさせたことにより、伝統を守り続ける大切さを自覚させることにつながった。
(2)1、2年生の文化祭での取組みを生かした道徳の授業(学校行事などの体験を補助資料として)
1年生 2年生
1年生
主題名 集団生活の向上4−(1)
資料名 「運動会団長」
(出典 山口県道徳実践活動学習教材 未来を拓く 第3集)
ねらい 集団の目標を達成するためには、一人ひとりが自己の役割と責任を自覚し、実行することが必要であることに気付く。
2年生
主題名 集団生活の向上4−(1)
資料名 「のんちゃん」
(出典 よりよく生きる2「のんちゃんとの出会い」 学宝社)
ねらい よりよい集団を形成するためには、互いの気持ちを理解し共感することと、一人ひとりのやる気や人間性が重要であることに気付き、これからの生活に生かそうとする気持ちをもつ。
 体育大会や文化祭での生徒の感想やVTRの活用により、当日の思いを生徒一人ひとりに思い起こさせながら考えさせた。それによって、授業後の感想では「みんなはリーダーをしっかり支え、みんなの気持ちを考えた言動をとる」、「明るさ、元気さ、声の大きさ、一生懸命さが大切である」などがあり、ねらいとする道徳的価値を自分とのかかわりで捉えさせることができた。
(3)教員の意識の変化
 研究実践を通して、道徳の時間は、体験活動の中で生徒が様々な道徳的な価値に気付き、その意味や大切さについて考えを深めるかなめの時間として重要であることを改めて感じた。ふるさと体験学習と道徳の時間の関連を図った効果的な指導の在り方について研修が深まった。

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4 今後の課題
 今年度は、ふるさと体験学習後にそれと関連した道徳の授業を計画し、実施した。今後は、体験学習や道徳の時間を通して道徳的価値を深く掘り下げるように、意図的・計画的な総合単元的な道徳学習を仕組みたいと考えている。
 また、道徳的価値を深める道徳の時間の展開や生徒の道徳性の評価の在り方については、まだ十分だとは言えず、研究を続けたい。
 さらに、「心のノート」の家庭での活用の仕方や道徳教育推進協議会との連携など、家庭・地域社会への本校の道徳教育の啓発についても充実させていきたい。

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5 市町村の取組み(下関市)
1 研究主題
 ふるさと体験学習を生かした心に響く道徳教育の深化・充実
  〜体験学習と道徳の時間の関連を図りながら〜
2 研究主題の設定理由
 学校における道徳教育は、学習指導要領の総則に述べられているように、学校の教育活動全体を通して行うものであり、そのねらいは、まず「道徳の時間」における道徳的価値の主体的自覚を促すことと考える。つまり、何が善で何が悪かを明らかにするだけではなく、「なぜ、善と思いながら、実践できないか」「なぜ、悪と知りながら、そのような行為をするのか」等を振り返る中で、人間理解、他者理解、自己理解を深めるのである。そのためには、各教科、特別活動、総合的な学習の時間の特質を生かしながら、道徳教育の深化・充実を図ることが重要である。
 豊田西中学校は、平成9・10年度「ふるさと学習」の町研究指定校として、大きな成果をあげている。また、学習指導要領の趣旨を踏まえた教育課程の編成を行い、総合的な学習の時間を「ふるさと体験学習」と呼び、農業体験学習や職場体験学習、異文化学習を実施している。いずれも、地域の中で多様な体験活動を実践している。
 教育委員会としては、ふるさと体験学習と道徳の時間の関連を図ることで、より相乗効果をもたらすと考える。そこで、生徒たちが多様な体験活動を通して自分の生き方を考えることのできる支援体制を地域の人々とともに構築していくことが肝要と考え、標記の研究主題を設定した。
3 事業の概要
(1) 協議会の設置
 道徳教育推進校を豊田西中学校とし、道徳教育を推進するための協議会の名称を「豊田西中学校道徳教育推進地域協議会」とした。構成員は、以下のとおりである。
 ・豊田西中学校長
 ・豊田西中学校及び校区内小学校の道徳教育主任(研修主任)
 ・豊田西中学校及び校区内小学校のPTA会長
 ・青少年健全育成町民会議各地区役員
 ・学識経験者
 ・教育委員会 道徳教育担当職員
(2) 協議会の活動
 10月には協議会委員10名が、中学校の道徳の授業を参観し、中学校の道徳教育の現 状把握に努めた。また、12月には地域の方を講師とした注連縄づくりを行うふれあい活動も参観した。さらに、『田んぼの学校おごおり』の原田雅登校長先生を講師に招き、「地域と共に子どもを育てる」という題で講話をしていただき、体験活動を生かす道徳教育推進の必要性について研修を行った。
4 今後の課題
 本年度は初年度ということもあり、推進体制の構築や計画の策定に終始しがちであったが、より効果的な体験活動にするためには、学校間や地域社会との連絡・調整をより綿密にしたらどうかとの意見があった。また、学校・地域それぞれの情報発信力を高める必要性や参観日やPTAの在り方などの課題も見えてきた。
〜担当課〜
 豊田町教育委員会 教育課(現在は下関教育委員会)
 〒750-0424 豊浦郡豊田町大字矢田149-1
  電 話:0837(66)2100

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