学力向上フロンティアスクールの取組み               (指導課)

基礎・基本の徹底を図り、確かな学力を培う指導の在り方
              〜学ぶ意欲を喚起させる指導の工夫を通して〜                
 −岩国市立通津中学校−

1 学校紹介2 本校の研究主題と仮説3 全体構想4 4つの視点と本校の取組み5 成果と課題6 実践のポイント

実 践 の ポ イ ン ト
各プロジェクトにおいて、生徒の実態を踏まえた、基礎・基本としてとらえた内容の定着を図るための取組みの推進
昨年度の取組みの深化および改善
生徒による授業評価を活用した授業改善の推進
2年間の取組みの数値的成果の検証
教職員の共通理解・共通実践の推進

1 学校紹介
 本校の校区は岩国市南部に位置し、昔ながらの集落と工業地帯や住宅団地がある。最近は、団地の生徒数が増加して、地域ごとの生徒数に偏りがでている。校舎は、住宅と少なくなっていく蓮田に囲まれている。地域には、歴史的な史跡も多く、古くからの行事等も地域の方々で伝承されている。学校周辺には、名水百選に選ばれている「桜井戸」もあり、地域に親しまれている。
 生徒は各学年2クラス計6クラスの生徒数約160名、教員13名の中規模校である。隣接する通津小学校からほとんど入学してくるため、家庭的で落ち着いた雰囲気のもと、意欲的に学習や各行事等に取り組み、様々な成果をあげている。 


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2 本校の研究主題と仮説
 生徒一人一人の実態に応じたきめ細かな指導の一層の充実を図り、今までの研究や少人数授業による成果をさらに深化させることをねらいとし、研究主題を設定した。
(1)研究主題
基礎・基本の徹底を図り、確かな学力を培う指導の在り方
〜学ぶ意欲を喚起させる指導の工夫を通して〜
(2)仮説
(仮説1) 生徒一人一人の学習の到達度を把握し、その習熟度に配慮し、個に応じた指導やドリル学習等を進めることにより、基礎・基本の定着が図れるのではないか。
(仮説2) 基本的生活習慣の定着や家庭学習の習慣化など学びの構えの定着を図り、分かる授業や楽しい授業のための指導方法や指導体制の工夫改善を進めれば、学習に対する意欲が高まるのではないか。


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3 全体構想


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4 4つの視点と本校の取組み
各教科において、基礎・基本と考えるもの
授業改善プロジェク
<国語科>
(ア)国語について理解する力
(イ)言語活動の力
<社会科>
(ア) 日本および世界の生活に地域的な特色と、一般的な共通性があることを理解する。
(イ) 世界の歴史を背景にしながら、我が国の歴史事象を各時代や地域との関連で理解する。
(ウ) 基本的な人権の尊重を認識し、現代生活の政治経済の役割を考えながら、様々な国内外の問題にも目を向ける。
<理科>
教科書に書かれていること。更に、過去の公立高等学校入試に出題されたこと。
<保健体育科>
(ア)生きる力(実践力・体力の向上)
自分の健康と体力を把握し、自己の課題を見つけ解決する力
(イ)フィードバック能力
現状を理解し、向上するためのよりよい取組みや、考えを生み出せるフィードバック能力
<音楽科>
(ア)音(音楽)を深く感受し、そのよさや美しさを鑑賞する能力 
(イ)音楽でよりよい表現をするための技能(読譜力、発声、奏法)
(ウ)ア、イをとおして生まれる音楽を愛好する心情
<技術・家庭科>
自立して主体的な生活を営むために必要とされる知識や技能の習得であり、生活を創意工夫してよりよく生きようとする力につながると考える。
少人数による指導グループ
<数学科>
「計算力」 「応用力」
<英語科>
「語彙力」「音読力」「ディクテーション力」

(ア)発展的な学習や補充的な学習など個に応じた指導のための教材の開発等
英語科における実践例 (英語科における個に応じた基礎・基本の徹底のための工夫)
a「語彙力」育成に向けての取組み
・単語テストの実施
毎時間
5問テスト
5回分
25問テスト
100問テスト
“チャレンジタイム”
*100問テストにおいては、3つのレベル(黒帯、茶帯、白帯)に分けて問題を作成し、生徒が自分の語彙力に合った問題形式を選択して受検できるようにした。
黒帯(問題用紙に日本語のみ)
従来通りの和問英答形式
茶帯(問題用紙に日本語と選択肢)
50問区切りの単語選択形式
白帯(問題用紙に日本語と選択肢)
25問区切りの単語選択形式
・単語テスト成績記録カードの活用

b 「音読力」育成に向けての取組み
・時間の確保
・音読・暗唱カードの活用
・音読補助プリントの活用

c 「ディクテーション力」育成に向けての取組み
・自作の資料の作成
NHK教材や旧教科書のDialogのページをリスニング教材として作り変えた。
<単語テスト記録カード>

音楽科における実践例 (音(音楽)の感受を読み取るためのワークシートの工夫)
・身近な音風景の地図作り(「ふるさと通津の音風景」)
・イメージしたことを言葉や絵で表す(「鑑賞曲全般」)

<京都の音、音楽(3年 5月の修学旅行前に)>
<ふるさと通津の音風景>

技術・家庭科における実践例(各領域での個に応じた基礎・基本の徹底のための工夫)
<情報>
〜1年〜 ペイントを使ったコンピュータグラフィックスの作成。
〜2年〜 錦帯橋周辺の観光案内のプレゼンの作成。
〜3年〜 修学旅行のまとめのプレゼンの作成。
     自己紹介などの簡単なWebページ(ホームページ)の作成。


<ものづくり>
〜1年〜 木製品の製作をし、仕上げにステンシルで装飾。
〜2年〜 ダイナモを使ったラジオの製作をし、ハンダづけなどの基本的な技能の習得。


<食物>
〜1年〜 実技テストの実施により基本的技能の習得。到達基準に達するまで実施。
〜2年〜 郷土の特産品を利用した料理を工夫することにより食生活を豊かにする授業の展開。

(イ)個に応じた指導のための指導方法・指導体制の工夫改善
数学科における実践例
<平成16年度 数学科における少人数授業形態>
前 半 後 半
1年生 等質集団(出席番号前半・後半) 習熟度別(2コース)(「方程式」以降
2・3年生 生徒選択による習熟度別 (2コース)
生徒選択による習熟度別 (2コース)
単元や内容毎に評価テストを実施し、その結果を踏まえたアンケートを実施する。
保護者の同意の下、コース選択を生徒の希望により実施する。
途中でのコース変更も担当教員に相談の上、認める。
同じ学習内容でも、その対象となる生徒の実情に合わせ、教材も工夫し、それぞれのコースで使用した学習プリント類は他コースにおいても配布する。
単元終了後は、再度アンケートを実施し、自己評価・授業改善に役立てる。
ワークはどちらのコースにも対応するように基礎や発展問題等、難易度の差があるものを選ぶ。
テストは教科書の内容とワークの内容から主に出題する。
評価については、コースにかかわりなく校内の評価規準をもとに評価する。
どちらのコースを選択しても不利にならないように考慮する。
【習熟度別グループ編成の流れ】
【アンケート表<単元到達度アンケート>】 【アンケート裏 <評価テスト>】

英語科における実践例(少人数による授業の実施および一斉授業での指導の工夫)
・クラス編成の方法:学年ごとに編成方法が異なる。
1学期 2学期 3学期
第1学年 教師が任意に設定した等質集団 習熟度別グループ編成
第2学年 教師が任意に設定した等質集団 習熟度別グループ編成
第3学年 習熟度別グループ編成

(ウ)児童生徒の学力の評価を生かした指導の改善
@教師による学力評価
数学科・英語科による教研式標準検査(CRT)の実

英語科における実践例(ALTによる生徒の学力評価の活用)
ALTに生徒の表現能力の評価

<ALTによる評価カード>
A生徒による学力の評価
保健体育科における実践例(客観的に自分を分析するための工夫)
・視聴覚教材の活用・・・ビデオ視聴によるフォーム分析
撮影後にゆっくり視聴することで、授業内容について考えたり、個々のつまずきやがんばりに気づく等、新たな発見がたくさんあった。
・友人のアドバイスの活用
・実技テストの工夫
・「最低限、身に付けさせたいこと」のテストの実施。
数学科における実践例
【学習到達度自己評価表の実施】
昨年度から単元テスト終了後に「学習到達度自己評価表」を実施している。単元テストを返却する際に、右記の学習到達度自己評価表を各自に配布し、その単元での学習の取組み状況を十段階でチェック(右下)し、下記の4観点のそれぞれの学習状況をABCの3段階で自己評価
させ、その結果をふまえた感想や今後の課題を記入させている。

「学習到達度自己評価表」

(エ)児童生徒による授業評価を生かした授業改善
 本校では、全教科においてその特性に合わせ、単元毎や学期毎に生徒による授業評価を実施している。
国語科における実践例(生徒による相互評価の活用)
・「わたしの1冊」の紹介で生徒相互評価の活用

社会科における実践例(生徒による授業評価表の活用) 
 生徒による授業評価と自己評価によって、 生徒は自分の取組みを確認する中で、次への課題を見つけておくことができるし、教師は授業改善の参考にすることができた。

<わたしの1冊の紹介風景>
理科における実践例(生徒による授業評価の授業への活用)
 生徒による授業評価を、4段階の真ん中(2.5)を基準にした。H16年7月の評価で2.5以下は、項目13(分からない人には、分かるようにしている)と項目14(興味や関心がわき、学びたいと思う授業だった)であった。実施後、項目13については、生徒にはヒントを与えるように配慮した。項目14については、できる限り物を持って行って演示して見せたり、今学習している内容を生徒の身近な所から話すよう心がけた。5ヶ月後、H16年12月の評価では、若干改善された。
【各教科における生徒による授業評価表】

(社会科)

(理科)

(音楽)
<保護者によるアンケート>
 参観日において、保護者にアンケート実施している。事前に授業者が「今日の授業のポイントや思い」を記入し、保護者に感想を記入していただいている。その感想等を授業改善に生かしている。
〜保護者の感想から〜
「人数が少ないので、一人一人に指導が行き届き時間的に有効に使えて良かった」「わかりやすくてよかった」
「一人一人がかなり集中していてよかった」
「一人一人の意見を取り入れつつ、興味をもったことから、理解を深めていく方法で授業が楽しそうでした」
「少人数だと、分からないときでも、流されずに人に隠れることなく行われるという授業は素晴らしいと思います。また、分かった時も、きちんと発表する場があり、子供のやる気につながると思います。」

(オ)その他の取組み
<各学年での取組み>
基礎・基本と考えるもの 実  践  内  容
1年部 ア 学習の構え
イ 家庭学習の習慣化
ウ 基本的生活習慣の確立
・総務委員による自学ノートの点検(毎日)
・学習委員による朝学の点検(毎日)
・生活委員による生活点検(毎週)
・整美委員による環境づくり
・学習だより「ホップ」の発行
・テスト週間中の放課後の補習
2年部 ア規律
イ学習環境
・総務委員による自学ノートの点検(毎日)
・学習委員による朝学の点検(毎日)
・生活委員による生活点検(毎週)
・整美委員による環境づくり
・学習だより「ホップ」の発行
・テスト週間中の放課後の補習
3年部 ア男女の学力差の解消 イ学習意欲の乏しい生徒の改善 
ウ学習課題提出への厳しさの自覚
・教室の環境の整備
・学習規律の定着の工夫
  黙想の徹底  忘れ物をさせない取組み
・基礎・基本の徹底を図るために「家庭学習の定着」に向けての工夫
 学習通信“FRONTIER”の配布 課題の期限内全員提出
 朝学ノートの提出
テスト週間、夏休み、部活動引退後の補習の実施

<各分掌での取組み>
・読書指導
・生徒理解(教育相談)
・生徒会活動
・校内研修の効率化
・広報活動


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5 成果と課題
 2年間の取組みにより、各教科、各学年部において様々な成果が得られた。その一部を次にあげる。
<生徒による授業評価の推移(音楽科・保健体育科)>

 以上のように、生徒による授業評価の推移を見てみると、実施を重ねることに、各項目について評価が向上していることが分かる。教師も、生徒による授業評価を実施することで、自分自身の授業について見つめ直すことができ、生徒一人一人を見る良い機会となったように思われる。

<理科における定期テスト年間平均点の結果>
 理科では、テスト前に学習プリントを配布するなどテスト前の学習内容を示し、その効果を検証してきた。上記の結果から分かるように、テスト前に何を学習すればよいかを示すことで、生徒の目的意識が高まり、1年、2年、3年とその学習を積み重ねることで、その得点も向上している。

<英語科におけるCRTの推移>
 英語科において、「書くこと」「読むこと」「話すこと」について、向上していることが分かる。英語科において、基礎・基本としてその定着を図ってきた、「語彙力」「音読力」にあたる。しかし、「聞くこと」つまり「ディクテーション力」については、更なる取組みの工夫改善が必要であると考える。

<数学科におけるCRTの推移>
 数学科では、上記のような結果が得られた。どの学年も5段階評定において、評定1,2の生徒が減少し、評定3,4,5の生徒が増加していることがわかる。また、観点別評価においても、「知識・理解」「表現・処理」について、評価A,Bの生徒が向上し、評価Cの生徒が大幅に減少していることが分かる。これは、数学科において、最重点課題として取り組んだ「計算力」にあたる内容であると考える。また、2、3年生では、「見方・考え方」「関心意欲態度」についても評価A,Bの生徒が増加している。1年生においては、今後も年次的に更なる取組みの実施の必要性を感じている。

<今後の課題>
2年間の成果を踏まえた更なる研究の継続及び学力の検証
生徒による授業評価や相互評価、自己評価等を活用した授業改善の推進
更なる教職員の意識改革の推進
全職員の共通理解・共通実践の推進


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6 実践に当たってのポイント
担当者
各プロジェクトにおいて、生徒の実態を踏まえた、基礎・基本としてとらえた内容の定着を図るための取組みの推進
昨年度の取組みの深化および改善
生徒による授業評価を活用した授業改善の推進
2年間の取組みの数値的成果の検証
教職員の共通理解・共通実践の推進
校長
人材育成のための中学校教育は何をすべきか目標を明確にする。
心豊かな人間、確かな学力の定着を図る教育実践を推進する。
分かる授業と学習意欲に相乗効果が生まれる指導方法を創造する。
共通理解を図り、学校全体で研修に取り組む体制をつくる。


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