学習指導カウンセラー派遣事業の取組み                〔指導課〕

自ら考え自ら表現し、学び合う子どもの育成
〜国語科を通して学びを追求する意欲を高める指導の工夫〜                        
 −和木町立和木小学校−

1 学校の紹介2 学習指導カウンセラーの紹介3 全体構想4 研究の基本方針5 公開授業一覧6 仮説にそった研究の手だて7 成果と課題
実  践  の  ポ  イ  ン  ト
 学習指導カウンセラーの継続的な指導助言の中で取り組む授業改善。
 友だちとのかかわりの中で、学ぶ意欲を高めことによる確かな学力向上。
 
ひとり学び→グループ学習→一斉学習の流れによる学び方の取得。
 学ぶ意欲を見取る評価の工夫。

1 学校紹介
 本校は山口県の東端に位置し、小瀬川を県境に広島県大竹市と向き合う和木町にある。
 和木町では、「尊師親愛生」の精神のもと、平成2年に「教師の日」が制定され、教育風土の醸成が図られている。
 本校は、平成15・16年度学習指導カウンセラー派遣事業の指定を受け、特殊学級2学級を含めて14学級、416名の児童の確かな学力の向上をめざして取り組んでいる。

(和木町立和木小学校)


 TOPへ戻る

2 学習指導カウンセラーの紹介
 本事業は、大学研究者等の学習指導の専門家が「学習指導カウンセラー」として派遣され、その助言の下、児童の学習状況の把握、教育課程に関する自己点検・自己評価、及びそれに基づいた指導計画や指導方法の改善など、児童の「確かな学力」の向上に向けた取組みについて実践的な調査研究を行い、成果の普及を図るものである。
 本校には、次のお二人がカウンセラーとして派遣され、大変熱心にご指導いただいた。
 山口大学教育学部技術教育教室   助教授   岡 村 吉 永 先生
 山口大学教育学部美術科教育教室  助教授   吉 田 貴 富 先生


 TOPへ戻る


3 全体構想


 TOPへ戻る


4 研究の基本方針
 本校は平成14年度より算数科において少人数指導を行い、疑問点を明らかにして理解しようと意欲を持つ者が増えてきた。しかし、基礎的・基本的事項の定着が不十分な者もおり、自ら学ぶ意欲を持続させ、学ぶ喜びや達成感を味わうまでには至っていない。
 基礎基本の定着はもちろんのこと、本校の児童に最も必要とされるものを「学びを追求する意欲」ととらえ、国語に対する興味・関心・意欲をマスターキーとして、子どもたちに「確かな学力」を身につけてほしいと願いのもと、指導法の工夫や授業改善に取り組むことにした。


 TOPへ戻る


5 公開授業一覧(少人数指導を含む全学級授業公開)
公開日 学年・組 単 元 名 授業者
5/26
(水)
日本語学級 4年 音や様子を表すことば 田中 和枝
6/16
(水)
なかよし・たんぽぽ みんな なかよし 白井ひとみ
前田 玲子
6/25
(金)
3年1組(少人数) 三 相手に伝わるように表そう
 ・みんなに知らせたいこと
高林 尚子
10/15
(金)
5年1組
5年2組(少人数担当)
五 話し合って考えを整理しよう
 ・ものごとの二つの見方から
西浦 直樹
谷村 孝子
宮本 恵子
10/22
(金)
4年1組 一 本の紹介のしかたを考えて
 ・何を覚えているか
廣川 詳史
3年1組 一 しょうかいしたい本をえらんで
 ・やまんばのにしき
西山 徳子
10/27
(水)
4年2組 一 本のしょうかいのしかたを考えて
 ・ごんぎつね
西岡 亜紀
11/2
(火)
2年2組 一 おもしろい読みものをさがして
 ・かさこじぞう
中村 聡子
3年2組 一 しょうかいしたい本をえらんで
 ・やまんばのにしき
石谷 芳栄
11/10
(水)
6年1組 一 読書の世界を広げて
 ・川とノリオ
八道 昌恵
6年2組 一 読書の世界を広げて
 ・川とノリオ
上田 隆敏
11/24
(水)
1年1組 三 かいてあることをくらべてよもう
 ・くらべてせつめいしよう
三田 恭子
1年2組 三 かいてあることをくらべてよもう
 ・くらべてせつめいしよう
植木 敦子
2/9
(水)
2年1組 ことばをきちんとつかって 島田 幸子


 TOPへ戻る

6 仮説にそった研究の手だて
(1)授業改善   
友達と学び合う学習過程の基本形
 子ども自らが考え自ら表現し学び合うためには、課題解決的な学習を基盤とし、友達とのかかわりの中で学び合う学習過程を設定する必要がある。
 そこで、本校では次のような学習の流れを考えた。しかし、この学習過程はあくまで基本形であり、子どもの実態や単元、学習内容、授業形態などにより弾力的に考えて創造的な授業に取り組む必要がある。


 実践例 第6学年 国語 読書の世界を広げて『川とノリオ』
@本時のねらい(8/19)<おぼんの夜>〜<冬>を読み、描写や表現の工夫を読み取る活動を通して、じいちゃんとノリオの心情をとらえることができる。
A準備物  場面絵、貼付用色画用紙、ワークシート、補説物(盆提灯)、ふり返りカード
B学習の展開

学習活動・内容および予想される児童の反応 教師の働きかけ







































1 本時の学習課題を確認する。
じいちゃんとノリオの気持ちを読み取ろう。
学習方法を確認する
 @黙読
 Aワークシートに書き込み
 Bグループ学習
 C一斉学習
・読みの視点の確認

2 <おぼんの夜>から<冬>を読んで、じいちゃんとノリオの心情を読み取る。
<おぼんの夜>
母ちゃんの死が感じられる叙述
 「新しいぼんじょうちんが下がっている。」
 「じいちゃんがノリオのぞうすいをたいた。」
 「ノリオはじいちゃんの子になった。」
じいちゃんの気持ちが感じられる叙述
 「横顔が、へいけがにのようにぎゅっとゆがむ。」
<また秋>
あらしの叙述
「父ちゃんは小さな箱だった。」の叙述
「う、うっと、きせるをかんだ」じいちゃんの心情
父ちゃんの死を知ったじいちゃんの心情
<冬>
「なまり色の中を生きた二点」の叙述
自転車で通るタカオの父ちゃんを見るノリオの心情
春を待つノリオの心情

3 本時の学習を振り返る。
ふり返りカードの記入
学習の仕方を振り返りながら、本時の学習課題をしっかりつかませ、主体的に読み取ろうとする気持ちを高めるようにする。
<読みの視点>
@会話
A行動
B表現の特徴(擬人法、倒置法、比喩、反復、体言止め、省略、色彩表現、擬態語・擬音語



【読み取り】 ひとり学び
黙読後読みの視点を手がかりにして、じいちゃんとノリオの気持ちを書き込ませる。
書き込みが進まない児童には、じいちゃんの様子を手がかりにしながら考えるように支援する。
【話し合い】 グループ学習
自分の読みをグループに伝え、友達の読みを主体的に聞くことができるようにする。
話し合いの進んでいないグループには、リーダーに話し合いの手順を確認させ、着目させたい叙述を中心に、じいちゃんとノリオの心情を話し合わせるようにさせる。
【広げ合い】 一斉学習
児童の話し合いをもとに、効果的な発問により、登場人物の心情を焦点化していくようにする。
意味の分かりにくい言葉については、具体物を提示して簡単に補説する。
発表にあたり「〜という表現から○○と考える」という発表の仕方(発言ルール)を意識させる。
発言の確認・評価・整理など効果的に板書するように工夫する。
前時までの活動と比較した自己評価ができるようにする。

(2)読書環境部の取組み
朝読書
@ねらい  読書意欲の向上を図る。
A方 法  毎日 8:15〜8:25
       月・水・金 … 子どもたちだけ 
       火・木 … 先生もいっしょに読んだり読み聞かせをしたりする。
B本の種類 和木町立図書館で月ごとに貸し出しをしてもらう本、学級文庫の本、図書室の本、家から持ってきた本
C読み方  ・前もって選んでおいた本を時間いっぱい読む。
      ・選んだ本は最後まで読みきる。


(3)言語環境部の取組み
@音読、朗読会
A1分間スピーチ
B詩や俳句の掲示
C言葉づかい、話し合いの進め方についてのマニュアル化(司会カード等)


(4)調査資料部の取組み
国語に関する児童意識調査
<平成15年12月、平成16年6・12月実施>
@国語の勉強は好きですか。(4・5・6年生は すきな理由/きらいな理由記述)
Aじゅぎょう中、先生や友だちの話を聞くことは好きですか。
B自分から発表することは好きですか。
C作文や日記を書くことは好きですか。
Dきょうかしょのお話を読むことはすきですか。
(4・5・6年生は 教科書の物語や説明文を読むことは好きですか。)
E本を読むことは好きですか。
Fわからないことがあったらどうしますか。
Gもっと勉強したいなと思うことがありますか。
H国語の勉強は役に立つと思いますか。


 TOPへ戻る


7 成果と課題
(1)成果として
学習指導カウンセラーの分析により、学力検査を比較すると、どの学年も前学年のときより平均値が上がり、ほぼ全国平均並みになった。
児童の意識調査の結果、「国語の勉強がきらい」と答える児童が減った。
朝読書の実施により、本を読むのが好きな児童が増えた。
ひとり学びの設定や少人数指導の活用により、自分の意見を持つ必然性が生じた。
ひとり学びからグループ学習への流れがスムーズになり、全員の意見の吸い上げが可能となった。
グループでの学び合いの中で、友だちとのかかわりが深まり、多様なものの見方にふれることができた。
司会カード、話し合いの手引き等の活用により、話し合いがスムーズになった。
書き込みをする際の読み取りの視点を与えることにより、深い読み取りができる児童が増えた。
類似点や相違点をさがす視点を与えることにより、二つのものを比較する説明文が書けない児童はいなくなった。
少人数指導により互いに読み合う場を設定することで、作文の質が向上した。
(2)課題
学ぶ意欲の見取り、評価の客観性
表現する側の目的意識・相手意識とともに、受け止める側の聞こうとする目的意識と思いを推し量ろうとする相手意識の必要性
話し合い経験の積み重ねと話し合いの質を高めるリーダーの育成
子どもの単語だけの発言を教師が受けて説明的するのではなく、子どもたちに双方向に伝え合わせる学級経営


 TOPへ戻る                   実践編へ戻る