キャリア教育の推進                     〔指導課〕

自己発見、自己実現をめざして                        
 −山口県立柳井高等学校−

     1 学校の紹介2 総合的な学習の時間「湧源」活動計画3 実施内容
     4 評価規準と評価5 教員の担当6 実践を通して(生徒の感想)
     7 成果と課題8 指導上の留意点
実  践  の  ポ  イ  ン  ト
 系統的な年間計画に基づき、生徒自身が自己の在り方生き方や進路について主体的に考える機会を提供し、キャリア教育の充実を図る。
 職業人講演会において「柳高キャリアネットワーク」の活用を図るなど、卒業生、保護者との連携・協力体制を構築する。
 学習内容について、本校ホームページや「柳高通信」おいて紹介するなど、情報発信を進め、保護者・地域の理解を得る

1 学校の紹介
 本校は平成19年に創立100周年を迎える伝統校である。長い歴史の中で受け継がれてきた右文尚武の校風のもと、学習や部活動に前向きに切磋琢磨している。
 地域からは、大学進学などの一層の進路実績づくりが特に期待されている。さらに、野球部などの部活動や体育祭などの学校行事の一層の充実への期待も極めて大きい。
 総合的な学習の時間は、本校卒業生の広中平祐博士の言葉をいただき、『湧源』と名付けて平成15年度から本格的に実施している。地域からの期待もふまえ、進路学習を中心とした内容としている。

(校門前)



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2 総合的な学習の時間「湧源」活動計画    
 「自己発見」「自己表現」「自己実現」の観点から活動計画を立案した。また、年間の流れが、進路決定の原則(@職業理解→A学部学科選択→B大学選択→C今すべきことへの挑戦)に沿うようにしている。
 実施時間は毎週木曜日の第6限とした。第7限はLHRになっており、活動の内容によっては次週との振替などにより、2時間続きで実施することにした。また、各自に「キャリアファイル」を持たせ、「湧源」の時間で使用したプリントや自己に関する調査結果などをすべて綴じ込むようにした。なお、そのファイルは随時提出させ、評価することにした。

4月 オリエンテーション
柳高セミナー
5月 職業資格研究
6月 職業人講演会
小論文
7月 小論文
9月 分野別グループ活動
小論文講演会
10月 分野別グループ活動
11月 分野別グループ活動
職業人との座談会
12月 小論文
1月 ディベート
2月 ディベート


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3 実施内容
(1)柳高セミナー【4月】
〈目的〉
 教員生徒間、また、生徒同士の人間的なふれあいを深め、規律・協同・友愛・自律などの面から「柳高生らしい柳高生」になる。
〈内容〉
 入学後すぐに光青年の家において1泊2日で実施した。従来の集団宿泊的な要素による人間関係作りに加え、教科研修を実施し、学習に対する姿勢および方法を確立させるようにした。

(柳高セミナー)

(2)職業資格研究【5月】
〈目的〉
 自己分析をふまえて、自分の将来の職業について考える。
〈内容〉
 自己の適性の客観的評価と、自分による自己分析を照らし合わせる。それをふまえて将来の職業について考え、その職業に就くためにはどうしたらいいか、ということも含めてその職業について探求する。内容についてレポートを作成の上、提出させた。

(3)職業人講演会【6月】
〈目的〉
 実際に現場の最前線で働いていらっしゃる方の話を聞くことで、社会人、職業人としてのあり方を知る。
〈内容〉
 外部講師を招き、『働くことの意義と責任』という演題で、現在の仕事の内容、高校時代からその職に就くまでのこと、仕事の意義、社会の中での役割などについて話していただいた。

(4)小論文講演会【9月】
〈目的〉
 入試小論文の傾向を知り、その対策を聞くことで、ものの見方・考え方を身に付ける。
〈内容〉
 『小論文で問われるものは何か』と題し、小論文の意義を通して自己表現力の必要性を、また、課題のとらえ方を通してものの見方・考え方についてお話しいただいた。

(5)分野別グループ活動【9月〜11月】
〈目的〉
 自分の希望する学部・学科の内容を具体的に調べることで、進路意識を高める。また、情報取得の手段や得られた情報の取捨選択の方法を身に付ける。
〈内容〉
 九つの分野(理学・工学・医療保健・生物農学・人文科学・社会科学・教育・芸術・生活科学)のうち、いずれかのグループに登録し、自分の進むべき学部・学科について個人で調べ、1600字程度のレポート にまとめた。レポートについては、発表の場を設け、さらに全員のものを一つの冊子にまとめた。
 指導については、副担任を含む1学年の教員が各分野の顧問のような形で、調査の方法やまとめ方の指導をした。なお、教員の担当を決める際には、生徒とともに教員も幅を広げるという意味で、極力それぞれの専門とは違う分野を担当した。
 なお、この分野別のグループは、次年度の課題研究へと継続する予定である。

(グループ活動)


(6)職業人との座談会【11月】
〈目的〉
実際に各分野で活躍しておられる方を招き、経験談やその職に就くための資格、進路等についての話をお聞きすることで、職業に対する意識を高め、将来の進路決定に役立てる。
〈内容〉
様々な職種の方に来ていただき、座談会形式でその話をうかがう。講師は、生徒からアンケートに基づき、柳高キャリアネットワーク登録者(※)や保護者、本校教職員の知り合いなどに依頼した。実際に来ていただいたのは、法律家、保育士、小学校教師、中学校教師、公務員(事務)、医師、看護師、薬剤師、理学療法士、栄養士、コンピュータ関連の方、化学技術・研究者、警察官、福祉関係者、通訳、銀行員、ツアーコンダクターの17名。1グループ6名〜19名となった。座談会の感想および考えたことをレポートにまとめさせ、発表、提出させた。


(座談会)


(7)小論文・ディベート【12月〜】
〈目的〉
 課題について考え、表現することで、ものの見方、考え方、表現の仕方を学ぶ。
〈内容〉
 小論文については、大学入試も意識しながら、その書き方を指導した。また、小論文模試とも連動させ、1年間でだいたいのパターンを知ることができるようにした。書いた小論文は担任が添削の後、返却。また、観点を設けて生徒同士で相互評価させることで、評価の観点を体得させた。1年間で最低でも一人3本の小論文を提出させた。
 ディベートについては、本格的なルールに基づいて実施した。8人程度のチームを作り、リサーチの時間を取った後、クラス予選を行い、クラス対抗を勝ち残ったチームが決勝戦に進出し、優勝チームを決めた。

(8)柳高キャリアネットワークについて
〈目的〉
 大学への不本意入学による中途退学者の増加、また、フリーター人口の増加などの社会現象を考えたとき、高等学校における進路選択は非常に重要な意味を持つ。
 自己実現という形で進路選択をさせるには、まず職業や仕事内容についてきちんと知ることが必要になる。それは、通り一遍の知識ではなく、実体験に基づいた、確かで、身に迫ってくるようなものが求められるだろう。そうすると、インターンシップをはじめ実際に最前線で働いている社会人とふれあう機会は、必然的に求められてくる。
 本校では、そのような活動を円滑に進めていくために、「柳高キャリアネットワーク」を立ち上げた。
〈内容〉
 これは、卒業生を中心に協力いただける方にボランティア登録を呼びかけ、行事の際に協力を依頼する、というものである。昨年度、今年度と「キャリアネットワークボランティア」の中から職業人講演会、職業人との座談会に講師として参加していただいた。


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4 評価規準と評価方法
(1)評価規準
   自分について、きちんと分析ができているか。
   自分の進むべき方向について主体的に考えているか。
   様々な角度から適切な資料を用い、客観的に考え、的確に表現できるか。
(2)評価方法
   提出されたレポート・ファイルを点検し、それをもとに個人と面談の上、内容についての質問をすることで、課題に対する取り組みの姿勢と内容を評価する。
   活動のたびに個人または代表者の発表の機会を設け、その内容を担当者および生徒が評価する。生徒による評価については発表者に知らせ、以後の活動に役立てさせる。
   小論文については、生徒同士の観点別相互評価に加え、担任により添削・観点別評価を実施する



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5 教員の担当
 1学年(正副担任10名)で担当した。計画については、昨年度までに準備委員会で作成したものに、実施に際して再検討を加えた。また、研究開発課を中心に湧源委員会を組織し、年度途中で発生した問題点について検討した。


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6 実践を通して【生徒の感想】
□「いろいろなことを調べていて、自分の進路に対する価値観が変わってきたように思います。これから進学する大学ついてのいろいろなことを知り、また、視野を広げることができてよかったと思います。」(1組女子)

□「政治学を研究することでよりいっそう学部・学科内容について理解し、大学進学への気持ちも高まったような気がする。これからも機会があれば、自分の進路についてよりいっそう追究していきたいと思う。そして自分の希望する学科に行くには、今何をしなければならないのかが見えてきた。このことを日々の生活に取り入れていかなければならない。政治学では、常に社会の出来事に関心と問題意識を持っていることが求められているので、今まで以上に日々日本や世界の情勢に目を向け、出来事に対する自分の考えをしっかりと持っていきたいと思う。」(1組男子)


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7 成果と課題
(1)成果
 例年に比べて進路意識がはっきりしている生徒が多くなったこと。個人面談をしてみても、進路希望が未定という生徒は少ない。また、単なる好き嫌い、あこがれだけで決めているわけではなく、教育課程や就職のことまで考えている。分野別グループ活動のレポート発表を聴いた担当外の教員からも、1年生という早い時期から自分の進路を系統的に考えているということについて、好意的な評価をいただいた。
 情報収集の手段を身に付けたこと。また、教員に相談することに抵抗がなくなったこと。物事を客観的に判断する姿勢を持つことができた。
(2)課題
 柳高キャリアネットワークの充実および運用方法の再検討
登録者の絶対数がまだ少ない。また、登録者へのケアのあり方(運用状況や校内の様子の説明など)が求められる。
 校内協力・連携体制の確立
学年進行の一年目ということもあり、担当する教員以外には認識が充分でないところもあった。「湧源委員会」も組織されているが、十分に機能したとは言い難い。その役割も含め、再検討が必要。


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8 指導上の留意点
 卒業生、保護者、地域の協力を得ながら、学校全体で取り組む体制をつくる。
 3年間の生徒の発達段階を見据えた計画のもとに実施する。
 『湧源』とホームルーム活動の連携を考える。 
 学習内容について、本校ホームページや「柳高通信」にて紹介する。


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