1 学校紹介/2 推進の内容(1)ねらい/(2)具体的な活動内容/ 3 成果と課題
海と緑の自然環境に恵まれ、岩国・柳井のベッドタウンとして、真のゆとりと豊かさを実感できる「心のふれあう、活力ある生活しやすいまちづくり」をめざしている。 町の将来像として「水が澄み、人が輝くまち ゆう」をキャッチフレーズに掲げ、町民ぐるみで町づくりを推進している。その中に、ハード的には恵まれた自然環境と歴史や文化など町の特性を生かした各種の生活基盤整備もあげられる。 一方で、町民参加で快適な健康・教育のまちをめざし、保健・福祉・生涯学習について総合的に取り組み、町民一人一人が輝く施策も推し進めている。 また、町内には小学校3校、中学校が1校あり、町民や保護者の教育への関心は高い。 ここ数年、本校も大規模校・中規模校にありがちないわゆる「荒れた学校」というイメージが強かったことは否定できない。そのおもな原因は次のようにまとめることができる。
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連 携 不登校への対応は学級担任まかせにしないという鉄則がある。様々な教員やグループ、関係機関の有機的な連携体制が大きな効果を生む。教員間の連携は新たなる相互補完も生んでくるし、問題を先送りしない状態にもつながっていく。時として学校外の関係者に支援をお願いすることも有効である。学級担任だけが抱え込むといった状況は、細切れ的な対応にしかならないことが多い。そのことは学級担任を追い詰め、ひいては解決の先送りにもなりやすい。 信 頼 不登校は「特定の生徒に特有の問題があることに起因する」ものではないことはよく指摘される。いきたい学校、魅力のある居場所づくりが不登校の未然防止に大きくつながることをしっかり確認しておくことが第一義である。「わかる授業」「有用感のある人間関係づくり」「信頼し合える集団づくり」等がそれである。生徒と生徒、生徒と教員、保護者・地域社会と学校が信頼感で結ばれている体制が求められる。 環 境 環境が人をつくるという。昔から語り継がれたこの意味は大きい。「静寂な環境」は落ち着いた学級集団をつくりだす。落ち着いた集団は他人を思いやる人格をつくりだす。学校に「落ち着いた雰囲気、きれいな環境」が要求される理由の一つでもある。そういう空間をつくっていくのは学校の責務である。 学校環境や集団の雰囲気が直接的、間接的に生徒の心情に深くかかわっていくことは強く認識しておきたいことの一つである。 TOPへ戻る
生徒は、町青少年健全育成町民会議が募集する「中・高生ボランティア」(平成15年度発足)に参加している。これは、興味や意欲のある生徒が、地域の公共機関から依頼された活動に自主的に参加するものである。活動を通して、生徒は地域社会への所属感や絆を深め、自分たちの力も地域社会に貢献できるという満足感や達成感を得ている。 このようなボランティア活動は、他の生徒へのよい刺激や模範となり、学校内にもすばらしい影響を与えているだけでなく、学校に対する地域社会全体の信頼感を高めている。
9月に体育祭、11月に文化祭を行っていたが、平成15年度から、「由宇中祭」として体育祭と文化祭の連日開催とした。生徒は、1学期末から夏休みの間も準備に取り組み、今まで以上の成果を収めることができた。 全校生徒が初めての「由宇中祭」を一人一役で創りあげていく過程において、学級・学年等の集団への所属感・連帯感を深め、そのことによって、自己有用感が高まった。 ウ 教育相談 年2回の教育相談は、生徒一人一人とじっくり向き合う場として重要である。 春は、新しい環境に関する相談や生徒と教員の関係づくりを目的に担任との教育相談を実施している。さらに、小学校から中学校へと環境の変化の著しい1年生については、緊張と不安から心身共に疲れの出てくる1学期後半に、心の教室相談員との個別相談の機会を設けている。 秋は、教員との関係づくりに加え具体的な問題解決や進路相談、部活動についての相談など、生徒の様々な相談に対応するため、生徒自身が相談相手を選択するリクエスト相談を実施している。担任に限らず、生徒が話したい教員や部活動顧問、心の教室相談員など現状に合わせて選ぶことが可能である。このリクエスト相談は、生徒と教員の信頼関係をつくりあげただけでなく、全教員の教育相談に対する意識の向上にもつながった。 エ 発 信 本校では、生徒の活動、日々の気づきや、生徒の声、現在の問題点などを率直に学校・学年・学級通信を通じて発信することによって、「共有すべき情報の公開」に力を注いでいる。 学校行事や地域の協力を得ての活動なども積極的に公開し、その成果を保護者や地域の方にも見ていただく機会を設け、「開かれた学校」をめざしている。 オ 少人数授業 本校では、平成13年度より少人数による授業を行っている。数学・英語・理科において、課題別・習熟度別等に学級を分け、生徒の実態によって効果的な方法を工夫しながら行っている。少人数授業の実施によって、生徒をより理解しようとする教員側の意識の高揚、授業の改善、発言しやすい雰囲気が相乗効果を上げ、生徒の意欲の向上や生徒と教員の信頼関係づくりにつながった。 さらに、放課後やテスト前の補習を通して生徒のつまづきや疑問に答えることができ、授業がわからない生徒の減少につながっている。
本校は学校規模の割に運動部が多く、生徒から見れば選択肢が多い。 しかし、文化部は吹奏楽部と文芸部だけであった。運動を好まない生徒はこれら二つの文化部のどちらかを選ぶか、やむを得ず運動部の中から選ぶしかなかった。 そのような中、本年度、美術部を増設した。文化部の選択肢を増やすことによって不本意入部を減らし、自己有用感をもって活動できる場を設定した。 転部してきた生徒の理由は、「実は以前から美術をやりたかった」「美術部なら続けられるかもしれない」などであった。当初は部員1人でスタートしたが、半年後には6人になり、学校行事に大きく貢献している。 イ 相談室登校への対応 不登校生徒の中には、相談室までの登校を試みている生徒もいる。 教室復帰が理想であるが、そこに踏み出せない生徒に対して、空き時間の教員や心の教室相談員、町教育相談員が訪れて、継続的な学習指導を行った。これによって、該当生徒も平均的な学力を維持することができた。また、いろいろな教員が教室復帰への働きかけを行ったり、受容的態度で接したりしていることで、カウンセリング的な効果もあげている。 ウ 養護教諭のかかわり 養護教諭は、健康観察や保健室に来室してくる生徒の表情や態度、症状などからささいなことでも見逃さないように気を配り、対応する必要がある。 ・出欠状況の確認(休み明けや特定の曜日の欠席) ・頻回来室者の把握 ・保健室に来室したときの様子 ・保健室での表情や態度の変化 などの点に注意している。悩みや問題等を抱えている生徒に対して助言を行ったり、他の教員と連携したりして生徒一人一人にあった対応を心がけている。 エ 学級づくり GWT(グループワークトレーニング)を積極的に取り入れ、生徒の相互理解とコミュニケーション能力の向上を図り、支持的風土づくりを図っている。 また、合唱コンクールなどの行事を通して学級としての一体感を深めている。 教室においても、行事や道徳の感想や一人一人の目標を掲示するなど、生徒の思いを共有できるような工夫をしている。
日々の清掃活動や行事前の全校的な環境整備に力を入れるだけでなく、学期末には美化コンクールをクラスマッチ形式で行っている。 清掃指導だけでなく、生徒が清掃に取り組めるだけの用具の充実・管理など物的整備を継続的に行った。さらに、まず汚さない、汚れた時にはすぐきれいにすることをめざして指導している。 校舎全体に清掃がいき届くようになり、器物の紛失、損壊も激減した。 イ 道 徳 モラルハザードが叫ばれている現代において、道徳教育の重要性はさらに高まっている。 「日常、無意識に行ったり、見たりしていることの中に意味を見いだす」ことを目標にして、教材の自主開発を行ったり、生徒の状況に即した題材を選んだりしながら進めている。 例えば、社会事象を教材化したり、学級で起きた身近な問題を取りあげたりして、心に響く道徳教育の推進に力を入れている。 また、総合的な学習の時間と密接に関連して実践力の深化を図っている。 ウ 朝読運動 本校においても、全国的に実施されている朝の読書に取り組んでいる。毎朝、全校が静かさに包まれる「ひととき」がある。生徒も担任も、ともに教室で読書をしている10分間の時間帯がそれである。10分間、ただ本を読むことだけに専念することが集中力を生み、心の静寂・平穏をつくり出している。 読書という行為が校内で市民権も得た。昼休み、外でスポーツに興じる生徒、談笑するグループ、そして教室で読書する生徒等が違和感なく混在する。これも朝読の成果といえる。 さらに漢字検定、英語検定、数学検定、理科検定の受検者増加という波及効果まであげている。 TOPへ戻る
平成13年度こそ少なかったものの12、14年度は県の平均値をはるかに上回る数値であった。まだまだ予断を許さない状況ではあるが、14年度からの精力的な取組みによってひとまず改善の兆しが現れてきた。 ただし、今年度の統計に含まれている数人の生徒はすでに学校復帰を果たしている。 しかし、この結果は不登校生徒への対応の成果だけではなく、背景には、生徒全体の変容があると考える。 下記のグラフは、全校生徒を対象に7月と12月に実施した学校評価アンケートの一部である。
アンケートの結果から、次のようなことが浮かんでくる。 ○ 生徒のもつ学校・教員への信頼感が、高まっている。 ○ 自己有用感をもてる生活環境になっている。 ○ 向上心をもてる学習環境になっている。 ○ 穏やかな人間関係の中で生活している。 これは、全教員が心を一つにして同じ目標に向かって地道に取り組んできたことが、本校を「安心できる居場所のある学校」「行きたくなる学校」に少しずつ変え、そのことが「不登校の未然防止」にもつながったと考える。 また、このような変容は、地域社会との密接な連携によって支えられている。 しかしながら、不登校が長期化・閉塞化した状況や、また中学校入学以前から抱える複雑化した人間関係をどのように解決していくかが今後の課題である。 TOPへ戻る 実践編へ戻る |