生きる力をはぐくむ読書活動推進事業の実践             〔高校教育課〕

読書に親しむ、心豊かな児童の育成                                      

   −岩国市立岩国小学校−

1 学校紹介2 事業の組織及び推進体制3 研究の実践(1)読書環境の整備
(2)読書の機会の提供4 成果と課題

実  践  の  ポ  イ  ン  ト
 読書環境を整えることで、読書に親しむ児童を育成する。
1 利用しやすい学校図書館
2 居心地がよく、また来たくなる学校図書館
3 手に取りやすい環境整備
 PTAや地域社会と連携し、読書に親しむ機会を提供することで、生活の中に読書を取り込んだ児童を育成する。
 ・ 読書の楽しさを伝える。
 ・ 読書の日常化をはかる。
 

1 学校紹介
 本校は、山口県の東部に位置し、関が原の合戦後、吉川氏の岩国藩の城下町として栄えてきた、歴史と伝統を持つ、たいへん落ち着いた地域にある。岩国城がそびえる城山の下を錦川が流れ、校区内には、日本三名橋のひとつ、錦帯橋がある。橋を挟んだ両側の一帯には、城下町・岩国の静かなたたずまいが続いている。
 い わ く  を学校教育目標に掲げ、社会の変化に主体的に対応できる心身共に健康な児童の育成に努めている。

学校の向かいには市立図書館があり、親子で図書館に行くなど、児童が読書に親しみやすい環境にある。

児童数 学級数 学校図書館の概要
蔵書数 図書に関わる職員
741人 24学級 12,955冊
(図書標準達成率112%)
平成15年度から司書教諭発令
                          (平成18年1月31日現在)

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2 事業の組織及び推進体制
(1)推進体制全体の概要
 

本校は、平成15年・16年度、岩国市の「学校図書館活用推進校」として指定を受け、「生きる力を育む読書活動の在り方〜本に親しみ、継続的な読書活動を通して、豊かな心を築く〜」の研究テーマのもと、読書を通して心豊かな児童の育成を目指してきた。
 更に、小中学校9年間を見通した段階的・系統的な読書活動の推進をはかるため、平成16・17年度「生きる力を育む読書活動推進事業」として文部科学省から、西岩国として地域指定を受けた。学校・家庭・地域社会が一体となって取り組めるよう、読書活動推進会議を設置し、研究を進めてきた。特に、本校では「読書に親しむ、心豊かな児童の育成」を研究主題に学校司書・図書館ボランティアと連携し、全校体制で取り組むことで児童の生きる力を高めようと努めている。


(2)活動内容

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3 研究の実践
(1)読書環境の整備
 (ア)利用しやすい学校図書館
   ア 終日開館

学校司書、図書館補助員、司書教諭が連携することで、終日開館している。図書の貸出と返却の日時も最大限の時間で設定することで、子どもたちが希望の本を借りやすいようにしている。
 夏休み中は6日間、午前中開館し、貸し出しや返却、自由読書ができるようにした。


   イ スムーズな貸出・返却

全生徒のバーコード一覧を作成し、コンピュータによる貸出と返却がスムースにできるようにしている。クラスでも調べ学習ができるように、持ち出し禁止の図書についても、1日だけの貸出をしている。
 コンピュータで貸出・返却を行うようになって、図書が借りやすくなり、本を借りる児童が増えた。


   ウ 図書の検索・予約
 職員室や各教室から図書を検索することができる。また、予約制度を設け、希望者がスムースに本を借りられるようにしている。

   エ 配架の工夫

手に取りやすいような書棚でテーマに沿った本や読み聞かせされた絵本など数冊の本を展示している。適書を適者に適時に出会わせ、読書の幅を広げたりできるように工夫をしている。
 文学は著書名で配架することで、教科で活用しやすいようにしている。


   オ 図書の時間のわりあて
 学級数が多いため、全クラスに週1時間、図書館が確実に使えるように、「図書の時間」を確保し、図書館利用指導や読書指導を行っている。近くに21台のコンピュータを設置したパソコンルームがあり、インターネットを利用した調べ学習にも対応できるようにしている。

 (イ)居心地がよく、また来たくなる学校図書館
   ア 掲示物の工夫

毎月、季節感が出るように、掲示物を工夫している。今年は、あやめ、こいのぼり、あじさいなどの掲示をした。子どもたちからリクエストが出るほど、子どもたちは入口の掲示物を心待ちにしている。わくわくするような掲示物の工夫をすることで、居心地がよく、また来たくなる図書館を目指している。


   イ 書棚の工夫
 図書館の入口前に、子どもたちの興味をひく本を並べ、学校図書館で読みたくなるように努めている。新刊図書の案内や先生のお薦め本の紹介をするなどして、本が子どもたちを迎えてくれているようにしている。

 (ウ)手に取りやすい環境整備
   ア 市立図書館の団体貸出の利用

市立図書館から学級文庫用図書、調べ学習用図書を、団体貸出で利用している。市立図書館が本校に近いことから、子どもたちと本を借りに行くこともある。
 調べ学習用の図書は、あらかじめ調べたいテーマなどを伝えておくと、テーマにかかわる図書資料を市立図書館の方で準備をしてくれている。


   イ 学級文庫(教室)

各学級には、常時100冊くらいの本を設置し、子どもが読みたいときにいつでも読書できるようにしている。


   ウ 読み聞かせ本のコーナー(職員室)

市立図書館から、毎月職員室に置く図書を借り、教師が読み聞かせをする本のコーナーを設置している。


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(2)読書に親しむ機会の提供
 (ア)学校
   ア 朝の読書
 週に1回、始業前に全校一斉の朝の読書に取り組んでいる。担任も子どもたちと一緒に好きな本を読み、静かに始業を迎えている。

   イ 啓発活動

読み聞かせの予定を下足箱に貼り、児童が「いつ」「どこで」「どんな話が聞けるのか」がよく分かるようにしている。
 また、読書新聞「ほんだぁいすき」にも、読み聞かせの予定を掲載し、保護者に知らせ、親子で読書の話題ができるようにしている。


   ウ 図書委員会
 学校図書館の利用が活発化し、児童の読書意欲が向上することをめざし、活動に取り組んでいる。お昼のテレビ放送や集会の時間などを利用して、読書クイズや本の紹介を意欲的に行い、子どもたちの読書への関心を高めている。更に、毎月、読書新聞を発行し、読書をすることの楽しさを伝えている。

   エ 読書週間「大好き!本祭り」

いろいろな本に興味をもち、進んで本に親しもうとうする気持ちを育てるため、図書委員会が中心となって様々な取り組みをしている。図書委員が朝学の時間に低学年の教室に行き、紙芝居の読み聞かせをするなど、児童が読書に親しめるように多様な働きかけをしている。


   オ 公演会の開催

全校児童を対象に人形劇団「クラルテ」による公演、親子を対象にした宇部にっこり座による朗読劇など、積極的に読書に親しむきっかけづくりの場を設けている。

人形劇 朗読劇

 (イ)PTA・地域社会
   ア PTAとの連携
 PTAの専門部の一つである環境委員会の委員の方が毎週2人ずつ来られ、図書にかかわる活動に積極的な参加をされている。

   イ 読み聞かせボランティアの活動

   ウ 市立図書館
 児童の読書指導を専門職である市立図書館司書と連携して行っている。ここで、紹介された本は、1か月間学校で借りることができるので、子どもが自由に本を読むことができる。積極的に子どもたちに読書の楽しさを伝えている。


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4 成果と課題
(1)成果
 (ア)読書好きの児童の増加
 読書が好きと答えた児童が57%から93%に増え、読書に親しむ回数や時間が増加した。

 (イ) 学校図書館の利用者数の増加
 貸出冊数も昨年度と比べて33%増加し、本に親しむ児童が増えた。

 (ウ)図書委員の活動の活発化
 コンピュータの導入により作業効率が格段に早くなったため、ゆとりが生まれ、活動の幅が広がった。PTA・地域社会の人たちによる読み聞かせから影響を受け、図書委員の子どもたちも読み聞かせを行い始めた。

 (エ) PTAや地域社会の支援の輪の広がり
 読書への関心が高まり、「本を読むために、自分で目覚ましをセットし、早く起きて学校に登校する前に本を読んでいます」という声を保護者の方たちから聞くようになった。家庭でも読み聞かせをされたり、積極的に市立図書館に行ったりする人が増えた。

(2)課題として
 (ア)生涯にわたる読書習慣の形成
 高学年になるほど、本を読む日数や一回の読書時間が減り、不読の傾向が高まっている。読書習慣を形成できるよう発達段階にあわせて継続的に取り組んでいきたい。

 (イ)メディアセンターとしての学校図書館
 今後も 学校・家庭・地域社会が一体となり、時代のニーズ、子どものニーズに応えながら、あらゆる教育活動を支える、まさにメディアセンターとしての学校図書館をめざすよう努力したい。

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