生きる力をはぐくむ読書活動推進事業の実践            〔高校教育課〕

豊かな人間性を育成する読書指導   
〜本に親しみ継続的に読書することを通して豊かな心を築く〜
−岩国市立岩国中学校−

1 学校紹介2 具体的な内容3 PTA・地域との連携
4 岩国中央図書館との連携5 成果と課題6 校長から見た指導のポイント
実  践  の  ポ  イ  ン  ト
 進んで読書に取り組めるような読書指導。
 良書との出会いによる内面世界の充実と、望ましい人間関係づくり。
 学校図書館の利用・促進。
1 学校紹介
 本校は岩国市の西部に位置し、付近には錦帯橋や、岩国城といった歴史的、文化的遺産を持つ落ち着いた環境にある。古くは吉川氏の城下町として栄えた風雅な街並みや、緑と静寂に囲まれた雰囲気は、教育的にも恵まれた環境といえる。生徒は温和で素直であり、読書活動をはじめ、ボランティア活動や部活動にとても熱心に取り組んでいる。
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2 具体的な内容
(1)読書の定着
 





毎朝10分間(8:10〜8:20)、全校一斉に朝の読書を行っている。
教育相談と並行して読書の時間を設けている。(毎学期50分間×6日間)
夏休みや冬休みにも、調べ学習などに自由に利用できるように、図書館を開館している。
 <成果> 
  ・ 心を落ち着けて1日のスタートをきることができる。
  ・ 読書習慣が身に付いた。
  ・ 本屋や公立図書館に行くようになった。

(2)本の紹介
 ・  「中学生にすすめる100冊+1冊」(中学校図書館部会選定)に載せられている本を、見やすいように一か所において手に取りやすくしている。また、新刊図書や課題図書、「文化委員おすすめの図書」など、いろいろなコーナーを設けて、本を読んでみようという気持ちを起こさせるような工夫をした。 
 

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 図書だよりを月に一度発行し、新刊図書を紹介している。また、新刊図書は、「新刊図書コーナー」を設置して、生徒が手に取りやすいようにしている。生徒集会では、文化委員が図書の紹介を全校生徒に向けて、ステージ発表した

 ・ 「自分の薦める図書」のポスターをつくり、展示する
  

(3)全教員による読書指導
 ・ ・  全教員のアンケートにより、購入図書を選定している。
 教員による心に残る1冊、お薦めの1冊を生徒に紹介している。2・3学期の始業式には、校長先生による本の紹介が行われた。
 ・  教材に関連した図書を使って、授業を行う。

(4)委員会活動の活性化
 ・  昼休みには、貸し出し、返却の手続き、返却された本の整理、新刊図書のラベル貼り、破れた本の修理などを行っている。貸し出しの際には、返却日を書いた生徒手作りのしおりを渡している。


 徒

 作

 の




 ・  本に親しむ身近な場としての学級文庫は、文化委員2名で本を選択し、管理も行う。毎週チェック表に本があるかどうか記入していく。「自分たちで開き運営する学級文庫」を目指している。

(5)学習センター・情報センターとしての図書館づくり
 ・  コンピュータのデータベース化による検索と貸し出しを実施している。図書館には、検索用パソコン1台と、インターネット用パソコン2台を設置して、調べ学習ができるようにしている。また、学習ビデオや物語ビデオの貸し出しも行っている。

(6)学校図書館内及び図書館周辺の環境整備
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選択技術の授業で製作された手作りの本立てを利用する。
手作りのベンチや観葉植物を置き、くつろいで本を読める空間を作っている。
図書館内、廊下の壁には生徒のお勧め図書のポスターや、読書感想画を掲示している。
−岩国市立岩国中学校−

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3 PTA・地域との連携

 ボランティアグループ「紙風船」による紙芝居の上演。プロジェクターを使って大型紙芝居の絵をステージのスクリーンに同時上映する。今年度は「おおはくちょうのそら」「ひとりじゃないよ」「ないたあかおに」「あらしのよるに」の4作品を上演していただいた。
 また、その紙芝居を参考に1年生が総合学習で、紙芝居を作成した。昨年度は「道徳」をテーマにした紙芝居を作成し、今年度は「郷土」をテーマにした紙芝居を作成した。

【生徒の感想】











 なんだか紙芝居にくぎづけになってしまいました。紙芝居を見る前は途中で寝るかもなぁと思っていたけれど、とても楽しかったのでずっと真剣に見ていました。
 「ひとりじゃないよ」は心にズキンってきました。紙芝居では、「幸せを少し分けてあげよう。」と言っていました。今の私にぴったりでした。悩んでいる私に「幸せを少し分けてあげよう。」と言ってくれて素直にそうだなと思いました。私も幸せを分けてもらった者なんだから・・・。なんかそう思うとすっきりしました。
 「おおはくちょうのそら」では、病気の子どもを置いて、北の国に飛び立つのか、それとも、家族が危険になってもその子が治るまで一緒にいてあげるべきか、本当に難しい決断をしたと思います。最後に北の国へ一度飛び立った後、やっぱり病気の子どものところへ戻ってきたときは、本当に感動しました。家族の大切さ、きずなを感じました。
 「おおはくちょうのそら」では、病気の子どもを置いて、北の国に飛び立つのか、それとも、家族が危険になってもその子が治るまで一緒にいてあげるべきか、本当に難しい決断をしたと思います。最後に北の国へ一度飛び立った後、やっぱり病気の子どものところへ戻ってきたときは、本当に感動しました。家族の大切さ、きずなを感じました。
 保護者を含むボランティアグループ「ナルニア」による絵本の読み聞かせ・人形劇
 月2回、第1・3水曜日に保護者を含むボランティアグループ「ナルニア」による読み聞かせを行っている。人形劇も行い、大変好評だった。紹介した本はコーナーを設置し図書館にしばらく展示している。
 年度末には反省会を行い、次年度につなげている。

【生徒の感想】
・ すごく楽しかった。その季節の本があってよかった。
・ すごく分かりやすく読み聞かせをしてくれる。
・ 授業中にやってほしい。
・ 委員会の仕事があるので、聞くことができない。

<例3>郷土の作家による講演

 日時 平成17年12月7日(水)
 対象 第1学年生徒 154名
 美和町在住の絵本作家松田もとこさんに来校していただき、「お話がうまれるまで」という演題で、講演していただいた。絵本の読み聞かせや、新しい作品の紹介などもしていただき、自分たちがこれから作成する紙芝居に向けてのよい意欲付けとなった。

【生徒の感想】




 私は小学校のころ「いればのパッコン」を読んでいました。夜中に逃げ出したり、勝手に冷蔵庫の中の物を食べたり、すごくおもしろかったです。絵本なので、読みやすくあまり読書が好きでもない私が夢中で読む本bPでした。今日読んでいただいた本もすごく心にひびくものでした。今度出版される本もすごく楽しみにしています。
 今日は絵本を作ることや、本の紹介をしてくださってありがとうございました。僕は物語を作ることも絵を書くことも好きなので、話を聞いていてとてもおもしろかったです。

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4 岩国中央図書館との連携




 調べ学習(3年修学旅行、1年広島班別研修)において必要な資料を岩国中央図書館で借りた。
 毎年、読書感想文・感想画優秀作品を、岩国中央図書館で展示させていただいている。
連絡会をもったり、研修に参加したりして、中学生向け図書の動向などについて話を伺ったりした。その他、図書館経営についていろいろな相談にのってもらっている。


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5 成果と課題
 本校では、16年度より、「生きる力をはぐくむ読書活動推進事業」の指定を受け、「豊かな人間性を育成する読書指導 〜本に親しみ、継続的に読書をすることを通して、豊かな心を築く〜」を研究テーマに取り組んできた。
 「継続的に読書をする」という取組みとして、「朝の10分間読書 」を行っているが、朝の読書がないと本を読む時間が減ると考えている生徒が多く、生徒の読書活動にかなり効果をあげているといえる。
(Q 朝の読書がなかったら、あなたは本を読みますか。 対象 1年生154名 1月実施)
 また、朝読書を行うことで、本のおもしろさが分かってきた、本を読むようになったという生徒が増えている。これまで、漫画ばかり読んでいた生徒が、字だけの本も抵抗なく読めるようになってきているといったような効果があがってきている。
(Q 朝の読書があってよかったと思うことは何ですか。 対象 1年生154名 1月実施)
 しかしながら、研究テーマの「豊かな心を築く」という点では、アンケートの「言葉が豊かになった。」「作者のいいたいことが分かるようになった。」「人の気持ちを考えるようになった。」の項目の結果が表すように身に付いたと感じる生徒が少なく、まだまだ課題が残されているといえる。今後は、いろいろなジャンルの本を紹介していくこと、授業など学校での活動に読書を取り入れていくこと、講演や紙芝居の上演などを引き続き行っていくことで、豊かな心を育てていければと考えている。
 図書館環境においては、生徒の満足度は高く、観葉植物や手作りの椅子などが設置された心を和ませる空間として利用者も非常に多い。一日の来館者は60人程度で女子より、男子の来館者が多い。しかし、図書館利用者が固定化されているといった課題もある。調べ学習用の図書の充実を図り、もっといろいろな授業で使用してもらい、図書館をアピールすることによって改善していきたい。加えて、「スポーツの本を入れてほしい。」、「音楽関係の辞典を入れてほしい。」といった生徒のニーズに答えながら、より満足度の高い図書館をめざしていきたい。

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6 校長から見た指導のポイント
学校経営方針の重点目標としての共通理解。
朝の読書や新刊図書、図書便りの発行などの継続的活動。
地域の読み聞かせボランティアの方々の協力や絵本作家などの講演会の実施。
長期休業中の図書館の開館による読書活動の推進。

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