学力向上フロンティアハイスクールの取組み         〔高校教育課〕

基礎学力診断テストの作成と生徒一人ひとりに対応した教育活動の展開
                          −山口県立鹿野高等学校−

1 学校紹介2 具体的な活動内容3 成果と課題校長からみた指導のポイント

実 践 の ポ イ ン ト
生徒の学力に関する詳細な分析
あらゆる教育活動を通じて、目的意識、達成感をもたせるシステムの構築
PDCAサイクルに基づいた実践
研修会等を通じての教員の意思統一

1 学校紹介
 
 本校は周南市北部(JR徳山駅から約30分)の人口約4500人の鹿野(旧都濃郡鹿野町)にある。校舎は金峰山を望む小高い丘の上にあり、麓には澄んだ錦川の源流が流れる豊かな自然に恵まれた環境にある。
 本校の沿革は、昭和24年の県立都濃高等学校定時制鹿野分校開設まで遡る。以来、昭和25年に県立都濃高等学校全日制鹿野校舎となり、昭和51年に県立都濃高等学校より分離独立し、現在の県立鹿野高等学校となった。平成11年には創立50周年を迎え、平成16年度末時点での卒業生総数は3547名である。
 生徒数については、昭和54年の9クラス・341人を最高に徐々に減少しており、現在は、下表のとおり4クラス・67人である。生徒の約55%が地元の中学校から、45%が旧徳山市・新南陽市などからバス通学をしているが、生徒数の減少もあって、地元中学校からの入学者が減少傾向にある。
 
[学年・学級別生徒数]
学年・組 1年 2年 3年
1組 2組
2 3 5 13 13 31
10 10 20 7 9 36
12 13 25 20 22 67

教育方針
 個性に応じた能力の伸長と、より高い人格の形成を期するとともに、国家及び社会の有為な形成者として必要な資質を養う。

(基本方針)
1 豊かな人間性の育成と個性の伸長
2 基礎学力の充実と自主的な学習習慣の育成
3 健康な心身と自主的・主体的な実践力の養成
(平成17年度の学校運営方針)
1 恵まれた自然と小規模校の特性を生かした「生徒一人ひとりに対応した、きめ細かい教育活動」を展開する。
2 「社会に貢献できる能力を身に付け、生き甲斐がもてる人間」「相手の立場に立てる人間」を育成する。
3 生徒が学び、保護者が学び、教職員が学び、地域が学ぶ学校そして「地域に愛される学校」づくりをする。
(平成17年度チャレンジ目標)
○ 読書力の養成
○ あいさつの励行

       
2 具体的な活動内容

(1)研究テーマの決定への経過
 本校では、学力向上フロンティアハイスクールの指定を受ける平成15年以前から、「一人ひとりの夢の実現」のためにきめ細かな教育活動を展開しており、既に以下のような多様な手段を講じていた。
○具体的な到達目標の設定
○学習意欲・学力実態把握
○習熟度別指導
○教材開発
○進路ガイダンス
○学習指導目標設定
○シラバスの作成と配布
○学校設定教科・科目の活用
○大学や中学校との連携
○公開授業、研究発表

 しかし、様々な取組みの効果や改善点について検証し、客観的にも正しい指導や努力をするため、研究テーマの中心に「生徒の学力を正確に検証するシステムの作成」を位置付け、そのシステムを活用した学習指導をあわせて行うこととした。
 また、生徒の学習に関しては、「分かる(理解)」「おもしろい(興味)」「やる(意欲)」「分かる」が繰り返されることにより学力が向上していくという「スパイラルプラン」により、基礎学力の習得・定着をめざし、一人ひとりに対応したきめ細かな学習指導を展開していくことにした。

(2)組織づくり
 学力向上フロンティアハイスクール事業を推進していくにあたって、次のように組織を編成した。検討事項に応じて教頭が招集する。
職員会議
学力向上推進委員会


 校長・教頭・教務課長・進路課長
 各教科主任
(国語科・地理歴史科・公民科・数学科・理科・英語科)

(3)研究・実践内容
 次表は、平成15年度から17年度までの研究・実践内容である。平成17年度に初めて全学年の基礎学力診断テストが揃った。3学年用については試行段階であり、平成17年度の結果を考察した上で、18年度から本格的に実施する。
平成15年度 ・基礎学力診断システム(高1用)の研究・開発
・基礎学力の実態に関する研究
平成16年度 ・基礎学力診断システム(高2用)の研究・開発
・校内における指導体制の確立
平成17年度 ・基礎学力診断システム(高3用)の研究・開発
・自己学習力の養成
・特別支援教育に関する研修会 

(4)「基礎学力診断システム」の作成
 基礎学力診断システムの作成にあたって、まず共通概念として、本校における「基礎・基本」とは何かについて検討した。
 その結果、学習指導要領その他を拠り所として、全国レベルも視野に入れながら、本校生徒の学力を考慮しつつ、「基礎・基本」について分析・検討し、目標に沿った評価規準(絶対評価)を作成することとした。
 評価は、システムの改善に反映されなければならない。したがって、右図のとおり、診断システムの内容について、今後も検証、見直しを継続していくこととなる。                      
ア 「基礎学力診断テスト」の作成にあたって
  基礎学力診断テスト(以後「診断テスト」という)の作成にあたって、右図のとおり、生徒が何をどのように学習してきたか、また、どのような評価を受けてきたかを研究した。
 また、本校生徒の学力を考慮しながら、全国的なレベルも視野に入れて、取り組むべき学習内容を設定した。
 なお、診断テストは同一テストを繰り返し実施するのではなく、2回目以降は高校において学習した内容を加味して作成し、学習内容の理解度と課題点を明確にするために活用しており 、各回の評価結果の単純比較は困難である。
イ 各学年の「診断テスト」のねらい
1・2学年
[1回目]
(ア)中学校あるいは高校での学習におけるつまずきを、生徒、教員ともに的確に把握し、問題点を明確にすることによ  って適切な学習指導・援助を行い、高校への橋渡しあるいは2年次への学習の連結をスムーズに行う。
(イ)学習を効果的に行うためのクラス分けを行う。

[2回目〜3回目] 
(ア)基礎・基本に関する理解度・定着率の検証と、学習指導の問題点の明確化を行う。
(イ)高校での学習内容の理解度・定着度を確認する。
 
3学年 就職・進学希望者の2系統とする。
(ア)就職希望者用⇒国語・地歴公民・数学・理科・英語の総合問題とする。また、与えられたテーマによる小論文、作  文を実施する。
(イ)進学希望者用⇒国語・地歴公民・数学・理科・英語の5教科から各自の進学希望にあわせて3教科選択制とする。
 
  診断と学力回復のためのPDCAサイク
Plan ⇒ 診断テストの作成、分析、個別の教育相談的学習指導及び習熟度別クラス分け
Do  ⇒ 授業、「基礎学力回復講座」
Check  ⇒ 授業中の観察、定期考査及び次回の診断テスト
Action ⇒ 授業改善、「夏休み特別学習会」及び個別学習指導  
 診断テストの評価は、(1)診断的評価及び(2)形成的評価の2種類とし、(1)、(2)の結果を踏まえて、生徒・教員ともに学習計画を立てる。その後、基礎学力を回復するための授業や、高校での学習内容を一定期間学習した後に、次回の診断テストを実施する。その後、更に課題が残る場合は、更に詳細に問題点を検証して、個別学習指導を行う。

ウ「診断テスト」と学習指導の流れ
1年次の流れ

ア 入学準備教材を準備し配布する
 中学校学習指導要領に示された学習内容と本校の教育目標、教科の指導目標をもとに、国語、数学、英語について、自作による課題を作成し、3月末の入学説明会で配布する。「基礎学力診断テスト」はこれに準拠する形で作成される。
イ 第1回基礎学力診断テストを実施する
基礎学力診断テストでは、解答だけでなく、理解度についても生徒自身が記入する
 具体的には、小問毎に生徒自身の理解度をA〜Dの4段階で解答用紙に記入させる。このことにより、生徒自身の理解度について、より詳細な分析が可能になる。

評価の結果については、診断的評価と形成的評価の2種類を作成する。
 個人成績カードを作成し、教科担当教員が生徒一人ひとりに対する学習カウンセリングを行う
 学習の理解度、これからの学習方法などについて説明しながら、基礎学力回復講座のクラス分けを行う。
 なお、習熟度別クラス編制については、生徒の学習状況によって変化する可能性があり、固定したものではない。

<診断テストの解答用紙>
 理解度の記入欄を設けている
<診断的評価:生徒用> 
<形成的評価:教員用>
 上図は、数学の評価票である。単元、項目毎に分類され、到達度を評定として記載している。

診断的評価(生徒用個人成績カード:生徒の学習上の問題点を明確にする)
形成的評価(教員用データ:結果の解析により学習指導における課題を明確にする)
 
ウ 教科担当教員との個別面談により問題点の明確化とクラス分けを行う
 診断的評価の結果を受けて、教科担当が生徒と個別面談を行い、学習カウンセリングにより、問題点の説明や習熟度別のクラス分けを行う。これにより、生徒は何が理解できていないか、どのように学習すればよいかなど各自の学習上の課題が確認できる。
 基礎学力診断テスト及び教科担当者との個人面談
診断的評価によりクラス分け     
エ 基礎学力回復講座を行い、自作教材により高校への橋渡しをする
 1学期中間考査までは、「基礎学力回復講座」として、数学、外国語に関して、生徒の学習状況にあわせて教材を自作し、高校へのスムーズな接続を図ることとしている。この2教科以外についても、橋渡しの期間であることに配慮した授業を展開する。
オ 1学期中間考査は基礎学力回復講座の内容を含む
 基礎学力回復講座の成果を確認するための診断テストを含んだ内容とする。その結果を踏まえて、中間考査以降の授業計画を立てる。
カ 「特別夏休み学習会」で進級・卒業に不安のある生徒の自主的な参加により学力回復を図る
 1学期末の評価と授業中の観察をもとに、平素の学習状況が困難な生徒については、夏季休業中に「特別夏休み学習会」を実施し学習指導を行う。これは強制ではなく、本人の自主性に任せることにしている。また、通学等に要する経済的な負担を軽減するため、会場は、本校に加え、生徒の住所に近い会場も借りて実施している。「特別夏休み学習会」は、2、3学年の生徒に対しても必要に応じて実施する。
 第2回・第3回診断テストでは、基礎学力と本校での学習内容の理解について確認する
 「第2回」「第3回」の診断テストは、「第1回」の結果を踏まえて重点的に指導した内容に、その後の授業の内容を加えて作成し、評価をする。 このように、各診断テストは同一問題ではないため、単純比較は困難である。
2年次の流れ
 2年次の指導の流れについては、上図のとおりである。診断テストの流れは、1年次と同じであるが、1回目の診断テストは、1年次の既習内容の理解度を検証することを主眼としている。
 
3年次の流れ
 3年次の基礎学力診断テストは、上図のとおり2回実施した。就職希望者と進学希望者によって、下表のとおり2種類の問題を作成した。
就職希望者用 本校の学校設定科目(時事国語・数学応用・総合英語)で学習した内容 及び 地歴公民、理科の5教科の総合問題として作成した。一般就職試験の問題も参考にし、また、課題作文も課している。
進学希望者用 センター試験レベルの問題を5教科で作成した。必要教科・科目に応じて3科目の選択受験とした。

(5)中学校・大学との連携
ア 中学校との連携
 
 平成17年度から、年3回の中高連絡協議会を実施し、中高連携、学習指導、生徒指導、進路指導その他について全体会、分科会(分掌別、教科別)を開催し、研究協議・情報交換を行っている。
 学力向上フロンティアハイスクール事業にかかわる内容としては、次のようなものがある。
「入学準備教材」の作成
 1年生対象の入学準備教材として「中学校学習指導要領」、「近隣中学校使用教科書」「観点別学習状況の評価方法」をもとに自学自習教材を配布しているが、中学校での学習指導について直接情報交換を行うことが可能である。
 
「基礎学力診断テスト」の作成、「基礎学力回復講座」の指導法についての研修  
 基礎学力診断テストに関しては、問題に関して意見・アドバイスなどを得ることができる。
 また、基礎学力回復講座とは、1年次の1学期中間考査までの期間に中学校までの既習内容を定着させるため、全教科で学習のつまずきに配慮しながら授業を行うものであるが、この講座の指導方法等についてアドバイスを得ることができる。
 
研究授業を通じた学習指導研修
 中学校での研究授業の参観だけでなく、高校の教員が実際に中学校で研究授業を行う取組みを行っている。高校の教員にとっては、中学校の学習指導の現況、中学生の理解度等を把握した上で、高校での授業を行うことができるため、特に、入学直後の指導にはこの取組みの成果を生かすことができる。
 
中学校でのTT授業の実施
 平成15年度の中高連絡協議会では、中学校の数学の授業において、本校教員が中学校の教員とのTTによる研究授業を実施した。この経験は、基礎学力回復講座等の学習指導にも大いに生かされる貴重な研修となった。
       
イ 大学との連携
 本校では、生徒一人ひとりの夢の実現に向けて、入学時から様々な形で進路指導を行っているが、進学希望者の指導については、次図のとおりである。
 毎年、4月に全生徒に対して進路希望調査を実施した上で、個人面談を行う。これは、担任だけではなく、進路課でも行う。その後、全学年を対象に、進路説明会をPTA総会の際に開催し、生徒・保護者が揃って説明を受けるとともに、疑問点等を質問することによって、進学への動機付けを行う。
 課外指導は、個人指導を基本としている。進学希望者については、部活動や各種委員会、その他、生徒の活動の支障とならないように配慮しながら、生徒の進学希望先や学力等を考慮しながら行う。
 進路説明会は、生徒の進学希望に応じて、大学・専門学校から講師を招き、専門分野に関する情報収集や説明を受ける機会としている。
 進学希望者については、毎年、夏季休業中に現役大学生を講師に招き、1泊2日の勉強合宿を実施する。
 インターンシップについては、1・2年生に実施しているが、2年次には進学希望先の大学や専門学校に依頼し、体験授業や説明会を実施している。
 学習会については、夏季勉強合宿のほか、1・2年生については、春季休業中にも
学習意欲の向上をめざして、現役大学生を講師に招いて実施している。
1泊2日の勉強合宿(8月)
 山口大学教育学部の協力を得て、現役の大学生や大学院生を講師に招いての勉強合宿を1泊2日の日程で実施している。
 学習内容は国語、数学、外国語の3教科とし、1年生から3年生まで、本校教員が生徒の学力を勘案した上で大学入試センター試験レベル程度までの学習教材を作成し、大学生に学習の援助をしてもらう形式をとっている。
 学習教材は事前に生徒に配布しており、生徒は予習をした上で勉強合宿に臨む。解法や疑問点などについての質問を、僅か1〜4年前に大学入試を乗り越えた大学生にすることができる。
 大学生による学習指導は、それぞれの専門教科を中心に、全員が各学年を分担して行う。本校からも各教科び担当教員が参加しているが、勉強合宿の運営にあたる、指導内容を確認する、あるいは大学生からの質問に答えることなどを主な業務としている。
 この勉強合宿の大きなメリットとして、現役大学生から、大学で学ぶことの意義、大学生活の様子、将来の夢などを直接聞けることがあり、学校説明会とは違った視点からの生きた情報を得て、生徒の学習意欲、目的意識を高めることができると考えている。


徳地少年自然の家(2005年8月)
2日の勉強会(3月)
 夏の勉強合宿と同様に、3月中旬に大学生を迎えて勉強会を実施する。これは、学年末考査終了後から新年度までの期間を有意義に過ごし、学習への目的意識を高めることを目標としている。

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3 成果と課題

(1)基礎学力診断テスト
診断テストの分析結果を踏まえて学習支援を行った結果、国語、数学、英語ともランクが上がった生徒が30%〜70%となった。
特に、国語に関しては、本校の教育目標である「コミュニケーション能力の育成」、チャレンジ目標である「読書力の養成」にも多大な効果を及ぼし、「スパイラルプラン」が学習全体に良い影響を与えているものと考えている。

<国・数・英のA〜Eランク数の変化>
例えば、数学の学習項目ごとの正解率の変化については、右図のとおり、「図形」を除いて「実数の計算」「文字式の計算」「方程式」「関数」ともそれぞれ向上していることが分かる。「図形」が低下しているのは、診断テストの間に「図形」に関する学習がなかったためと分析している。このような詳細な分析と一人ひとりに応じた教育相談的学習指導によって「理解」が「興味」「意欲」を喚起し、さらに「学力」が向上していく「スパイラルプラン」が、今後も効果を上げることを期待している。
2回目から3回目にかけての基礎学力診断テストの結果の解析によっては、設定目標や比較基準の見直しも必要になる。 

<数学における項目別ランク変化>

(2)基礎学力回復講座
 1年生対象のアンケート(2005年7月実施)によって、次のとおり「基礎学力診断テスト」の結果による「基礎学力回復講座」の少人数指導、診断テスト、及び回復講座は有効であると認識している生徒が多いことが分かる。

一般的に高校では入学後すぐに高校の学習内容にはいりますが、本校では入学直後に「基礎学力診断テスト」(以後は「診断テスト」と呼ぶ)を実施し、よく理解できていないところをはっきりさせようとしています。「診断テスト」によって自分がよく理解できていないところが分かりましたか。
 1 よく分かった 25%
 2 まあまあ分かった 63%

 3 あまり分からなかった 4%
 4 分からなかった 8%
 5 その他 0%
高校に入学直後から、すぐに高校の学習内容にはいるより、しばらくは基本的なことを確認する「基礎学力回復講座」がある方がよいと思いますか。
 
1 とてもよいと思う 67%
 2 まあまあよいと思う 29%

 3 あまりよいと思わない 0%
 4 よいと思わない 4%
 5 その他 0%
「診断テスト」の結果により、どれくらい理解できているかでクラス分けをしています。この「基礎学力回復講座」によるクラス分けは、すでに理解できているところは簡単に、理解できていないところはしっかりと説明を受け、理解を深めるのに都合がよいと思いますか。
 1 とても都合がよいと思う 21%
 2 まあまあよいと思う 71%

 3 あまりよいと思わない 8%
 4 全く思わない 0%
 5 その他 0%
クラス分けがされた授業では、中学校の時と比べて分からない点などの質問はしやすいですか。
 1 とてもしやすいと思う 25%
 2 まあまあしやすいと思う 67%

 3 あまりしやすいと思わない 8%
 4 しにくい 0%
 5 その他 0%
中間考査以後、「基礎学力回復講座」によって無理なく高等学校の学習にはいれたと思いますか。
 1 とてもそう思う 17%
 2 まあまあそう思う 71%

 3 あまり思わない 4%
 4 思わない 0%
 5 その他 0%
高校入学後、中学校時代より勉強しようという意欲は高まりましたか。
 1 とても高まった 4%
 2 まあまあ高まった 67%

 3 あまり高まっていない 17%
 4 全く高まっていない 13%
 5 その他 0%
1学期を振り返ってみて、中学時代より今の方が勉強がしやすいと思いますか。
 1 大変勉強しやすい 17%
 2 少しはしやすい 54%

 3 あまり変わらない 29%
 4 少ししにくい 0%
 5 勉強しにくい 0%
高校に入って、家庭学習の時間は変化しましたか。
  1 かなり増えたと思う 8%
  2 少し増えたと思う 29%
  3 変わらない 50%
  4 少し減った 0%
  5 大幅に減った 13%

今あなたの家庭学習の時間はどれくらいですか。
  1 0分 38%
  2 0〜30分 21%

  3 31〜60分 33%
  4 61分〜90分 4%
  5 91〜120分 0%
  6 121〜150分 4%
  7 151〜180分 0%
  8 181分以上 0%
「診断テスト」によって、8割の生徒が学習上のつまずきの箇所を把握できている。
「基礎学力回復講座」ほとんどの生徒がある方がよいと回答している。これは、同様な学習上のつまずきをもつ集団の中で、中学時代に比べて「質問がしやすくなった」ことなどにより、主体的に授業に参加できたためと考えられる。
「スパイラルプラン」によって、約7割の生徒が学習への意欲が高まったと回答している。
家庭学習時間については、約6割の生徒が中学時に比べて変わらないか減少している。その時間についても、9割の生徒は60分以内、全く家庭学習をしない生徒も4割いることから、適切な課題の提出や家庭学習の指示に全教員で取り組んでいる。

(3)中高連絡協議会・高大連携
中高連絡協議会は、中学校でどのように学習指導がなされているかについて、直接、情報交換・意見交換ができるという点で、基礎学力の向上を図る上で非常に有益である。
本事業の研究発表会では、小学校からの参加もいただいたが、中高のみならず、小中高の連携意識も、地域で継続的に児童生徒を育てるという観点から重要である。
大学生による学習指導は、オープンキャンパスや大学説明会とは異なり、生きた情報を現役の大学生から得られるという点で有効である。この取組を継続していくためには、高校・大学の双方にメリットがあることが必要である。本校では教育学部の学生に協力を依頼しており、教育実習的な要素、あるいは高校の現状等の情報を得られるという点で大学側にもメリットがある。

(4)授業評価と公開授業
基礎学力の向上を図る様々なシステムの検討・実施・検証を行ってきたが、重要課題の一つに「授業改善」がある。生徒による授業評価は、平成17年度に年2回実施したが、生徒の授業への満足度に関してはよい評価が得られている。
本校では、保護者の授業見学を常時受け入れているが、平成17年度から、教員の相互研修として全校で公開授業を2週間程度設定した。批評という視点でなく、他の教員の指導上の工夫点等を積極的に吸収する視点から実施している。

(5)今後の課題
「理解」「興味」「意欲」の三者が相乗効果をもたらし、「学力向上」に結び付けるという「スパイラルプラン」により、生徒の授業への満足度は高い。しかし、この取組が家庭学習時間の増加に結び付いていない傾向が認められ、学習習慣の定着には課題が残る。
平成17年度に各学年の診断テストが揃った。課題としては、第3学年の診断テストの実施時期と評価の活用法がある。進路決定の時期の関係から、テストの実施時期を早め、評価結果を活用した学習指導に結び付ける必要がある。

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 校長からみた指導のポイント
あらゆる教育活動の見直しの必要性
 多様な能力、学力、目的意識、進路意識の生徒が高校へ入学している状況下で、本校は小規模校の利点を生かした様々な取組みを実践してきた。生徒一人ひとりを十分理解し、それぞれの目標に即しての指導により夢を叶える支援をしているが、生徒は自らの問題として捉えず、受動的傾向がある。生徒の主体的な学習・活動意識を育成するために、教育活動全般を見直し、あらゆる活動を有機的に機能させるための検討が必要で、その上で事前事後の指導を充実することで、それぞれの活動の実効性もあがると思われる。  
 そのため本校では進路指導課の年間指導計画を主軸に教務課、生徒指導課、保健体育課のすべての行事、指導計画の再検討を開始している。

現状分析に基づいたシステムの構築及び運用・活用のための教員の意志統一の重要性
 平成17年度末で本校の基礎学力診断及び基礎学力定着のためのシステムは一応の完成をみたことになる。しかし、今後の課題にもあるように、このシステムを今後いかに活用するかが最も重要なことである。生徒一人ひとりの夢の実現を支援するという所期の目的を活動のベースに据えつつ、運用・活用できるように、研修、会議等で教員の意思統一を図るとともに、授業改善に努める必要がある。

鹿野高校ホームページに学力向上フロンティアハイスクール事業関連のページがあります。     http://www.kano-h.ysn21.jp/

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