学力向上フロンティアハイスクールの取組み           〔高校教育課〕     

生徒の学習意欲の向上と新たな可能性の発見をめざして
                          −山口県立佐波高等学校−

1 学校紹介2 具体的な活動 (1)表現力向上の取組み (2)キャリアインストラクターを活用した職業観・人生観の育成 (3)高校・大学・地域の新たな連携活動 (4)セルフプロデュース方式インターンシップの実践/3 成果と課題4 校長からみた指導のポイント

実 践 の ポ イ ン ト
地域の指導者を活用し、地域の文化や自然にふれ、自己表現の力を身に付ける。
社会の諸問題を理解して、対応力を育成する。
地域づくりをとおして、自らの新たな可能性を発見する。
インターンシップをとおして仕事の現実を実感するとともに、礼儀・言葉遣い・マナーを身に付ける。

1 学校紹介
 本校は、旧佐波郡の中心地(現山口市徳地堀)にある。
 昭和20年、山口県立佐波農林学校として開校。平成9年に福祉コースを設置し、現在は普通科と普通科福祉コースを設置している。平成16年に創立60周年を迎え、これまでに7000名以上の人材を輩出している。
 校訓「親和協力」のもと、心身ともに健やかで、豊かな人間性と主体性をもち、知的好奇心の旺盛な、広く社会に貢献できる人物を育成することを教育目標として、地域に根ざした授業や活動を展開し、生徒はボランティア活動や地域づくり活動に積極的に取り組んでいる。
       
2 具体的な活動

(1)表現力向上の取組み
 
 サポートバンク活用事業を利用して、地域在住の優れた指導者を招き、国語科教諭とのティーム・ティーチングを行っている。
 具体的には、普通科2年生を対象として、「国語表現T」の授業の中で実践的に俳句創作の基本を学んでいる。

@  国語科教諭による俳句創作事前指導
A  夏期休業中の俳句創作
B  外部講師による提出作品の添削
C  外部講師と国語科教諭による俳句創作の
 基本指導
D  外部講師と国語科教諭のTT指導による吟行
E  外部講師と国語科教諭のTT指導による句会
F  国語科教諭による継続指導
 
 本校のある町は、古い歴史や文化、美しい自然に恵まれている。この好条件を生かし、@俳句の題材を地域に求める吟行により、自らの生きる世界を見つめ直し地域への理解を深めること A句会を開き、お互いの作品を吟味し合う中で、次の表現へと繋がることばの力を育むこと B山口県俳句大会への応募等により、創作の成就感を持たせることなどをねらいとした指導を行っている。

[生徒作品]
 君の顔うつしだしたる大花火
 晴天に黒髪なびく秋の風
 鯉の背の水面で遊ぶ紅葉かな
    (平成16年度教育長賞)

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(2)キャリアインストラクターを活用した職業観・人生観の育成
 
 将来の生き方や仕事観、社会における現実的諸問題に対する理解と対応、特に「豊かに生きるとはどういうことか」について生徒に考えさせることを目的として、毎年、キャリアインストラクター派遣事業を活用した講演会を実施している。
 本校では、この講演会を、規範意識が薄れ、勉強や働く意欲を失いかけている生徒への対応策として位置付けている。
 この取組みを通じて、生きていく上で大切なことを、現実の諸問題をとおして様々な角度から、分かりやすく伝えることができた。また、人間関係やコミュニケーションの取り方、努力の大切さ、仕事をする上で大切なこと、離職によって発生する問題などを中心に、日常生活では見えにくい大切なことも伝えることができた。

[平成16年度実施内容]
第1回 放送現場の舞台裏について(全学年)

【グラフ】生徒の感想文にあらわれたキーワードの分布(人数)による講演会の目的の達成度


@ テレビのデジタル化から派生する問題について
A 放送現場の厳しさについて
B コマーシャルについて
C 仕事の楽しさ、人間関係について
D 挨拶と礼儀の大切さについて
第2回 仕事をするとは、どういうことなのか(3年)
@ 仕事をするとはどういうことか
A ニート、フリーターについて
B 仕事を辞めるときのことについて
第3回 佐波高生に期待するもの(1、2年・保護者)
@ 高校生の生活について
A 野球を通じて得られるものについて
B 友情、本当の優しさとは
C 佐波高生に期待するもの

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(3)高校・大学・地域の新たな連携活動
 高校・大学・地域が連携して、地域づくりのためのワークショップとフィールドワークを実施している。特に、地域の歴史や文化を再評価し、新たな地域資源を研究するフィールドワークは、高大連携事業の一つに位置付けている。
 平成16年度から、教員と生徒からなる「地域づくり推進委員会」を設置し、地域の豊かな自然や文化を教材とする学習や活動を通じて、生徒の新たな可能性を見出す取組みを行っている。
 平成16年度は、地域づくりプラン作成のためのワークショップ活動に年8回(土曜日)参加した。
 平成17年度には、様々なプロジェクトのうち、国際文化交流を中心に参画した。また、こうしたプロジェクトと並行して、次年度プロジェクトのプラン作成のためのワークショップ活動に参加している。

地域づくり推進委員会の目的
@  地域の文化や自然について知識を深め、地域の方々との触れ合いを通して、社会性を身に付ける。
A  諸活動を生きた教材として、生徒自身の新たな能力、可能性を引き出す機会とする。
B  豊かに生きるとはどういうことかを考えさせる。
C  大学との連携活動を将来の進路選択に結び付けていく。

国際文化交流事業
 
 山口県立大学の中国、韓国からの留学生21名、佐波高校生9名、大学・高校の教職員5名、町関係者5名の計40名で、地元産米のおにぎりの試食、和紙工作体験、海外修学旅行体験発表等を実施し、交流を深めた。

留学生との交流会

フィールドワーク

 山口県立大学生、佐波高校生を中心に、地域の文化資源や人的資源を訪ねて、ワークショップで発表する形を取っており、毎年3回(5日間)実施している。生徒の知的好奇心を喚起し、自分でまとめたものを発表することで、生徒には大きな自信となっている。

大学生とのフィールドワーク風景

山口県立大学サテライトキャンパス活用事業

 大学の地元農産物のブランド化に関する研究成果の発表会として、大学生の指導のもと、本校生徒が地元産冷凍保存したいちごを調理し、いちごどうふ、いちごのスムージー、苺のカラメルナッツ入りクッキーを作り、その後、試食会を実施した。
 本校生徒は地元米のクッキーも作って、一緒に試食した。

大学生指導のもとでの調理

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(4)セルフプロデュース方式インターンシップの実践

 本校では、2年生全員を対象に総合的な学習の時間を利用して、受入企業等の選定や事前交渉、依頼状・礼状等の文書作成を、すべて生徒自身に行わせる「セルフプロデュース方式によるインターンシップ」に取り組んでいる。
 「仕事」に関する様々な事柄を学習させることを主な目標としているが、コミュニケーションの取り方、電話での対応、パソコンの活用方法、文書作成の基本、人前で発表する力など、総合的に様々なことを学習できる機会となっている。
 生徒へのガイダンスでは、インターンシップの目的とともに、セルフプロデュース方式で実施するねらいを十分に説明する。また、アプローチシートにより、実施先の決定を支援する。
 インターンシップの成果と課題については、実習日誌と自己評価表により検証する。
 また、事後指導の充実を図るために、1年生も参加する合同体験発表会を行い、生徒に達成感をもたせるとともに、1年生の意欲を高める啓発活動ともしている。

インターンシップ指導年間計画
4月 インターンシップガイダンス
 インターンシップ実習風景
5月 業種・職種の希望調査
インターンシップ手順説明
アプローチシート配布 
受入先開拓開始
6月 インターンシップ事前講話・研修会
7月 インターンシップ先決定報告書提出
8月 依頼文・プロフィール・実習日誌を事業所へ持参
9月 インターンシップ先の詳細研究
10月 インターンシップ直前講話・研修会
インターンシップ実施
11月 礼状発送、感想文完成
12月 インターンシップ体験発表会

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3 成果と課題
地域の講師とのTTにより、俳句の創作意欲を喚起することができた。また、吟行の実施により、生徒の興味・関心を高め、ことばについての考察を深め、自己表現力を身に付けさせることができた。
キャリアインストラクター派遣事業を活用した講演では、授業では学ぶことができない、様々な社会の現実を分かりやすく話していただいたことにより、生徒は生きていく上で大切なことをたくさん学習することができた。
地域づくりのワークショップ活動において、一般の人々や大学生と一緒に行動し、議論することで、大きな自信をも4つようになった。また、身近な文化や自然のもつ意味を再発見し、本当の豊かさを考える大きな契機となった。
セルフプロデュース方式のインターンシップでは、職場開拓の厳しさを実感でき、学校生活においてもけじめのある態度がとれる生徒が増えてきた。
生徒が作成した関係文書の添削指導を繰り返すことで、文章力、表現力、漢字力が向上した。
インターンシップの体験発表会で話す能力を高め、積極性と自信を与えることができた。
仕事現場の厳しい面を経験できるような工夫や実施日数の増加が課題である。

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 校長からみた指導のポイント
いずれの試みも地域社会に根ざしたものであり、生徒が日常性を踏まえて学習・体験し、将来を自ら切り拓く契機となることを期待している。
当事者として、課題を具体的にとらえ直し、その解決法を考え、実践する過程を通して、自然にそして総合的に「生きる力」を育むことを指導の主眼としている。
 

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