学力向上フロンティアハイスクールの取組み            〔高校教育課〕

「授業改善」「学習意欲の向上」「生活習慣の確立」の三位一体で学力向上を図る
                          −山口県立西京高等学校−

1 学校紹介2 研究主題3 授業改善4 学習意欲の向上5 生活習慣の確立6 成果と課題校長からみた指導のポイント

実 践 の ポ イ ン ト
分かる授業をめざし、授業改善の方策を探る
明確な進路意識をもたせ、学習意欲の醸成をめざす
学習習慣の定着に向けて、生活習慣の確立を図る
様々な事業を通して、学校外の組織や地域、保護者との連携を図る

1 学校紹介
 本校は、昭和61年に山口市南西部に新設された。
 普通科と商業に関する学科2科を有し、普通科の中には、山口県唯一の体育コースを併置している大規模校である。開校当初から、意欲あふれる個性豊かな生徒が集う明るく活発な学校として高い評価を受けてきた。
 運動部の活躍はめざましく、陸上・水泳をはじめ各部が全国大会に進出し、優秀な成績を残しており、現在、15の競技で県の強化指定を受けている。また、近年文化部の活動も大変活発になってきた。
 平成17年度、開校20周年を迎え、校訓「進取 創・信・健・和」のもと、さらなる発展をめざしている。

       
2 研究主題

 本校では、「確かな学力」は「知識・技能の獲得」「自己実現への意欲」「心身の健康」の3要素が相互補完的に作用し、育まれるものと考えた。この3要素実現のため、「授業改善」「意欲醸成」「生活習慣確立」をテーマに据え、校内組織を整備し、地域社会・校外諸教育機関・事業所・保護者等の協力を得ながら、学科(コース)の枠を越えて、学力向上の方策の開発と指導体制の構築をめざした。
 

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3 授業改善

(1) 到達度テスト
 国・英・数・理・地歴・商で到達度テストを実施し、学力の実態把握に努めるとともに、授業改善に役立てた(平成15・16年度1年生には4月・10月・2月に、平成17年度は4月のみ実施)。
 到達度テストの分析結果を受けて、「新聞の切り抜き・要約課題」の実践を、国語科、地理歴史・公民科共同で継続中である。(平成17年度からNIE教育研究実践校)

(2) シラバス
 シラバスの作成について、全教科・科目で取り組み、生徒(保護者)への配布を行った。現行教育課程の進行に合わせて、1年生から順次作成し、本年度、全学年・全教科の作成を完了した。

(3) 授業評価
 生徒による授業評価を実施した(前期・後期全教科で最低2回)。評価アンケート作成システムは独自に開発した。 →評価集計シート(例) 

(4) 授業公開
 平成16年度は中高連携事業(公開授業及び研究協議)として実施した。
 平成17年度はオープンスクール(保護者の他、中学生を含めた外部への授業公開、外部評価の導入)として実施した。

(5) その他の取組み
@ 平日放課後課外授業、補習個別指導、長期休業中課外授業、検定受験前集中指導(1〜2週間)など生徒の希望に応じて、発展的・補充的指導に努めた。
A 英語検定や漢字検定の他、簿記検定など商業に関する諸検定の受験を積極的に勧めた。
B 1単位時間の運用改革(45分7限授業/2学期制)に取り組んだ。
C 少人数指導・習熟度別指導を行い、生徒一人ひとりの実態に合わせたきめ細かい指導に努めた。
D 新入生オリエンテーションの一環として、国・英・数の3教科で、予習・復習方法の指導を行った。
E 「総合的な学習の時間」では、"あらわせ自分"をテーマに諸活動に取り組んだ。1年生では、ディベート学習を行い、最終的にディベート大会を開いた。2年生では文章表現講座を実施した。

(6) 学力養成クラス
 平成12年度から、普通科の中に、希望者からなる「学力養成クラス」を設置し、放課後の課外授業や自習を義務付けている。このクラスでは、上記の諸実践が集中的・効果的に行われている。

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4 学習意欲の向上

(1) 職業別講演会
 1年生を対象として、職業研究のために、社会人(職業人)を招き、仕事の内容など様々な体験談を聴く会を開催した。10以上の講座を開設し、生徒は2講座を聴講した。講師選定には保護者や卒業生から多大な協力をいただいた。
〔開設講座の例〕
 営業 事務 販売 保育 介護 看護 美容 コンピュータ 旅行 など

(2) 出前講義及び体験学習
 2年生を対象として、大学や短大、専門学校など上級学校の講義を受ける機会を設け、進路意識の向上を図った。具体的には、上級学校から講師を招く出前講義と、生徒が上級学校に出向く体験学習を同時に実施し、生徒はどちらかを選択して参加した。

(3) 先輩に学ぶ
 1・2年生を対象に、身近な存在である先輩(本校卒業生)から、進路実現の参考となる体験談を聴き、進路に関する知識と意欲を醸成する場を設けた。できるだけ多くの卒業生に協力を依頼し、進学・就職を合わせて20程度の講座を開設した。
〔開設講座の例〕
人文,教育,経済,体育,理学,工学,看護,芸術,社会福祉,介護福祉,リハビリ(理学療法),リハビリ(作業療法),保育,美容,スポーツトレーナー,公務員 など

(4) インターンシップ
 商業に関する学科(会計OA科と情報処理科)の1年生を対象に、地域の企業の協力を得て、職場体験(インターンシップ)を実施している。

(5) 外部講師の招へい
 普通科体育コースでは、コースの特徴を生かすために、外部講師を招き講義や技術指導を積極的に受けている(主に2・3年生)。
 商業に関する学科では、社会人として求められるマナー等について、外部講師(職業人など)を招き、実践的に学んでいる。また、家庭科では、「調理と献立」で外部講師を招き、指導を受けている。

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5 生活習慣の確立

(1) 「遅刻ゼロ運動」「朝のあいさつ運動」の推進
 社会における基本ルールの重要性の認識と授業へのスムースな導入を目的として、遅刻生徒の減少と、あいさつの励行に取り組んだ。毎朝、校門に生徒と教員が立ち、生徒に声をかけた。9の付く日は「遅刻ナイ(ン)デー」と称し、生徒への啓発を図った。また、遅刻・欠席生徒の情報を教員間で共有するため、「出席状況板」と「連絡メモ」を導入した。

(2) 「学習と生活の記録」
 学習時間の確保を目的とした生活習慣の改善及び学習に対する意識の高揚を目的として、「学習と生活の記録」を作成し、生徒に配布した。


(3) 「学習と生活実態調査」
 到達度テストの実施に合わせ、1年生を対象として「学習と生活実態調査」を実施した。

(4) 教員研修会
 人間関係構築の手法の習得や生徒理解の深化を目的として、外部講師を招いての教員研修会を開催した。
 [内容] 「グループエンカウンター」「生徒理解を深める研修」「制服の着こなし講演」

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6 成果と課題
(1) 成果
@授業改善

 到達度テストにより、生徒の実態把握ができた。同一問題の継続使用により、年度ごとの生徒の特徴を把握することもできた。問題作成のために中学校の学習内容を精査したことも教員にとっては大変有益であった。

 シラバスの作成は、授業内容、指導方法、評価方法等に関する教科内での議論を活発化した。他教科の内容・進度を知ることができ、参考になったという声もあった。
 授業評価は、生徒の授業の受け止め方を具体的に知ることができ、指導方法の改善に生かすことができた。取り扱いの簡単な集計方法を独自に開発したことも教員の積極的な取組みにつながった。
 授業公開は、外部の方の参観の中で自らの授業の見直しを図ることができた。学校外の方の意見も参考になった。来校者からは概ね好評であった。
A学習意欲の向上  生徒にとっては、職業別講演会、出前講義・体験学習、「先輩に学ぶ」、インターンシップのいずれも、学校外の講師や先輩から、進路に関する具体的な情報を得る場であったため、興味・関心をもって積極的に取り組むことができた。その結果、モチベーションが上がって学習意欲の向上へつながった。例えば、進路相談室の利用の増加などにその効果が現れている。
 また、諸事業を通して、高大連携をはじめ、学校外の組織等との連携が深まった。
B生活習慣の確立  生徒の遅刻者数は確実に減少しており、落ち着きが見られてきた。出席状況板等の導入により、不在生徒の情報を教員全体が共有し、家庭とも連携して素早く的確な対応が取れるようになった。
 一部のクラスでは、「学習と生活の記録」の習慣化が家庭学習時間のアップにつながっている。

1日・1人あたりの遅刻者数の推移

(2) 課題
@授業改善  シラバスは、実効性の高い内容への改善が求められている。作りやすく、活用しやすい(されやすい)形式を模索していきたい。授業評価については、質問項目、統計的な処理など、学校全体としての組織的な取組み方の研究が課題となる。
A学習意欲の向上  様々な取組みを通して、生徒の進路意識や意欲は確実に高まるが、それをいかに持続させ、さらに高めるかが課題となる。また、外部に依頼する諸事業には、長時間の多岐にわたる準備が必要であり、そのための校内体制作りも必要である。これらの課題を解決することが、多様な進路希望にこたえる本校の進路指導体制の充実にもつながると考える。
B生活習慣の確立  遅刻生徒は確かに減少したが、今後はさらに余裕のある登校を促したい。また、不登校傾向のある生徒や、「おはよう」の声かけに反応しない生徒への対応を考えていく必要がある。

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 校長からみた指導のポイント
個々の生徒の能力と適性に応じたきめ細かな指導を実践するために、一人ひとりの学力の実態を正確かつ継続的に把握できる情報の収集と適切な処理・対策を実践すること
生徒の視野の中に常に学習目標が見えるように学習計画が提供されており、学習のねらいと具体的な学習活動の整合性が図られること。また、それらの活動がいつでも公開できる状態にあること
学校の校訓や教育目標が、教職員、生徒・保護者、地域に理解され、学校が取り組む特色づくりや魅力づくりが組織的に運ばれていること。また、それを点検するための評価活動を適切に実施すること
学校外の「教育資源」を積極的に取り入れ、生徒にとって適切でタイムリーな刺激が適度に提供されること。また、それにかかわる人材や環境等が確保され、生徒・保護者のニーズに対する保障がなされていること

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