確かな学力育成のための実践研究事業の取組み            〔義務教育課〕
学び合い、自ら未来を切り拓く生徒の育成
         
〜磨き合いの中でわかる喜びを実感できる授業をめざして〜                    
 −防府市立華陽中学校−

1 学校の紹介2 具体的な活動内容3 成果と課題
実  践  の  ポ  イ  ン  ト
 選択教科の充実
 Kタイム(知識・技能を習得するための自学自習)の実施
 授業改善
 個に応じた指導 

 学習集団づくり・学習基盤づくり
 外部人材協力

1 学校の紹介
 本校は防府市の南に位置し,昭和23年4月に開校し,校区は広く,生徒は新田小学校・向島小学校・中関小学校の3校から入学している。生徒数は昭和62年前後には1,000人を越える大規模校であったが,平成18年2月現在は21学級630人となり減少傾向にあるものの依然大規模校である。
 校訓に「健康」「創造」「奉仕」「自主」を掲げ,基本目標を「平和を愛し,文化の継承・創造にはげみ,旺盛な生きる力と心豊かな人間性とたくましい体力を備え新時代に即応でき,時代を切り開く人間の育成を図る」こととしている。



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2 具体的な活動内容
(1) 研究の背景
 本校は,平成15・16年度に防府市指定「心の教育」の研究を終え,本年度から文部科学省及び山口県教育委員会の指定を受け,「確かな学力育成のための実践研究事業」に取り組んでいる。「全職員が1つの目標に向かって努力する」「小さくとも確実な実践の積み重ねが学校をつくる」をモットーに,本校が研究してきたことを紹介する。
 平成10年度の学習指導要領の改訂に伴い,完全学校週5日制の下,総合的な学習の時間の創設,教育内容の厳選,選択学習幅の拡大など,生徒自らが学び考える力を育む様々な取組みが実践されるようになった。その反面,国際数学・理科教育調査(国際教育到達度評価学会(IEA)調査)やOECD生徒の学習到達度調査(PISA)の結果から学力低下が指摘されるようになってきた。
 本校でも,昨年度までの「心の教育」の研究を終え,学校生活に落ち着きが見られるようになってきたものの、保護者からは,学力の保障を求める声が聞かれるようなった。このような背景から「確かな学力」を育む教育の在り方を模索することになった。

(2) 研究主題及び研究副主題

 本校では,「確かな学力」を,文部科学省と同じく「知識や技能に加え,学ぶ意欲や,自分で課題を見付け,自ら学び,主体的に判断し,行動し,よりよく問題を解決する資質や能力」と考えている。さらに,社会で生活する個人は,他者とかかわりながら生活していく力を付けなければならないとも考えている。


 本校では,「確かな学力」を獲得した生徒が,自分の獲得した力を生かして他者とかかわりながら自らの未来を切り拓いていけるようになることをめざして,研究主題を右図のように設定した。






 自らの未来を切り拓くことのできる「確かな学力」を育むために,本校では,三つの取り組みを考えている。一つ目は,基礎的・基本的な内容の定着を図るための学習を仕組むことである。二つ目は,生徒の学習意欲を高める学習を仕組むことである。そして,三つ目は,生徒同士が高め合い磨き合える基盤をつくることである。この三つのことに取り組むことで,生徒の未来を切り拓いていく力を育成することができると考えている。


 このような考えから,本年度は研究仮説を右図のように設定した。




 この研究仮説を検証するためには,生徒が学んだ内容を理解し,できるようになったことを大切にし,できること,わかることの喜びを生徒が感じ,自ら主体的に学習に取り組むようになる授業づくりをすることが必要である,本年度は右図のように研究副主題を設定し,生徒同士が磨き合える基盤をつくるとともに,生徒が学んだ内容を理解し,わかる喜びを実感できる授業をめざして研究実践することにした。








(3) 研究組織
 研究組織については,校内研究推進員会,研修部を中心に企画・推進をしながら,全職員が,学力向上支援部,豊かな心育成部に分かれた。学力向上支援部は,個に応じた指導と授業開発の2つの部会で,豊かな心育成部は,学習集団づくり,外部人材協力の2つの部会で研究を進めた。
(4) 具体的な実践
 本校では,確かな学力育成のために,選択教科の充実,Kタイム(知識・技能を習得するための自学自習)の実施,授業改善,個に応じた指導の充実,学習集団づくり及び学習基盤づくり,外部人材協力の6つの内容について研究を進めた。






@ 選択教科
 将来自分で自己決定しなくてはならない数多くの場面にそなえて,自分の能力や適性にあった選択ができる力,選択能力を育成することが重要である。そのためには,選択枠を広げ,生徒が自分にあった学習を進めていけるようにすることが必要となる。本校では,多様な生徒の個性に対応し,生徒の選択能力を育成する学習として選択教科の時間を位置付けることとした。
 選択教科の内容として,基礎コース(国語,社会,数学,理科,英語),発展コース(国語,社会,数学,理科,英語),技能コース(音楽,技術,保健体育)の8教科13科目を用意した。( )内の数は,予定開設数である。それぞれのコースの科目の指導内容は,生徒の希望をできるだけ優先するために同じ内容を指導することとした。例えば,第3学年の数学の基礎コースは,教師2人で担当するが,教師が違っても原則的には同じ内容を指導することで,数学基礎コースの選択生徒数が多くなった場合でも生徒のニーズに柔軟に対応できるようにした。
 生徒の希望を尊重した結果,実際に前期の数学コースを,基礎コース3,発展コース1とした。
 希望者が少なかった音楽技能コースは,開設数を3から1へと減らし,希望者が多かった理科発展コースは,1から2へと増やして,生徒のニーズに応えられるようにした。


 また,選択教科開設時に行うガイダンス機能を充実するために,選択教科については,前期を15週(A日課),後期を20週(B・C日課)とし,前後期の最初にガイダンスを設け自分自身にあったコースを選択させることとした。後期にガイダンス機能を設けることにより,前期に選んだコースが適切であったかどうかを生徒自身に評価させ,より自分にあったコースを履修できるようにしたのである。














A Kタイム
 Kタイムの実施時間は,通年で,朝読書の前に行い,教育課程外の時間設定ではあるが,朝の会に引き続いて学級担任が指導を行った。
 Kタイムは,学習習慣や学習方法を身に付け,家庭学習の習慣化を促すとともに,国語,数学,英語の3教科の基礎的な内容の習得を図ることをねらいとしている。
 本校では,生徒のドリル学習の不足や家庭学習の不足を感じることが多くあり,生徒達にコツコツと積み上げる学習を経験させたいという教師の願いから,Kタイムの時間を設定した。
 また,一人で学習する以外にも定期的に華陽中学校独自の華陽検定という進級制度を設け,進級ごとに認定書を授与することで生徒の学習意欲を持続させようとした。まだ1年目であるため,Kタイムの実施についての改善策を模索している
B 授業改善に向けての授業づくり
 他校の取組みのよさを本校の研修や各教員の授業づくりに生かすために,先進校視察を行っている。また,教科単元別評価計画及びシラバスを作成した。次に,本校の学習規律及び授業規律の確立のために生徒に「学習のポイント」を示した。そして,実際の授業で生徒にわかる喜びを実感させることができるように,授業づくりと授業の振り返りとして授業検討会を行った。授業を構想したら授業を実践し授業検討及び授業評価,アンケートを行っていきながら,授業や校内研修上の問題点を明らかにし授業改善及び研修改善につなげている。授業検討では,KJ法を用い協議している。それぞれの気付きをカードに書いていき,課題を絞って焦点化し,参加者参加型の協議にした。



 これらの取組みは,教職員を3つのグループに分けて研究を進めた。3つの主な研究内容は,右図のとおりである。
 少人数などによるきめ細かな指導については,英語科ではT.Tから習熟度別少人数学級に向けた段階的な少人数指導を第1学年に,数学科では少人数学級を第1学年の1・2学期と第3学年の3学期に実施した。
C 外部人材協力
 外部人材協力として,図書補助員の方に,図書館づくりや生徒の朝読書に協力していただいている。また,第1学年の総合的な学習の時間では,学年テーマ「ふるさと防府について知ろう」において,「防府の昔話を紙芝居にしよう」をテーマにしているグループが,図書ボランティアの方から,紙芝居による読み聞かせをしていただいた。
 このように,外部の人材との出会いを教師が意図的に設定することで,生徒はより広く深く学んでいくことができた。

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3 成果と課題
(1) 生徒の学力を分析する手だてと成果
 生徒の学力を分析していく手だてとしては,CRT,NRT,アンケート,自己評価及び授業評価をもとに数値化し分析している。
 分析例として,3学期から始めた数学科第3学年少人数授業では,各学級の少人数学級のクラス分けに伴い,アンケートを行った。
 IEAの第3回国際数学・理科教育調査第2段階調査の第2学年の結果では,「大好き」及び「好き」と答えた生徒の割合が日本では48%である。本校では第3学年のものであるが66.0%と今までの実践の成果が見られ始めている。しかし,国際平均値は72%でありまだまだ不十分である。
 また,「大好き」を4点,「好き」を3点,「嫌い」を2点,「大嫌い」を1点としたときの平均も,全国では2.4点,本校では2.8点,国際平均値では2.9点とまだまだ不十分な結果となっている。3学期の少人数授業での実践を踏まえて少人数授業の成果を高めることにより,数学が得意であり好きである,または不得意だけれども好きであるという生徒を増やしたいと考えている。



 CRT,NRT,本校独自のアンケートなどの数値化した分析については,長期的に考えており,最終年度に公表する予定である。





(2) 来年度に向けての課題と方向性
 来年度からは,Aグループは「個に応じた指導及び自己評価」,Bグループは「魅力ある課題づくり」,Cグループは「他者とのかかわり合い」をテーマとし,3つのグループ実践研究を踏まえて,右図のような学びの質の向上をめざした授業づくりを考えている。
 授業モデルとして,「教師が知識・技能を獲得させる授業」では,課題提示,かかわり合い,振り返り場面を設定する。この授業では,教師が課題を示し,生徒はその課題の取組み方を参考にし,さらに他者と助け合いながら学習の習得を図っていく。学習の最後には,自己の学びの振り返りを行い次の課題を知ることになる。
 また,「生徒が自ら主体的に学習する授業」では,生徒は課題に気付き,その課題を追究し,他者とかかわりながら自分の学びを深め高めていく。学習の最後には,自己の学びを振り返ることで,新たな課題をつくり出していく。
 このような授業づくりを実践していくことで,生徒が学びの質を向上させていくと考えている。

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校長から見た指導のポイント
 全教職員による授業に関する統一的な理解と共通実践
 生徒の活発な学習活動を促進する教育課程を含んだ全校体制
 生徒の変容をめざした継続的な授業実践と評価・分析による授業の再検討
 個人と個人、組織と組織の情報交換によるPーDーCーAを通した実践可
 能な研究推進の確立

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