確かな学力育成のための実践研究の取組み             (義務教育課)

一人ひとりの夢を育み、学ぶ意欲を高める指導の工夫

〜 確かな学力の定着をめざして 〜

 −岩国市立灘中学校−

1 学校紹介2 研究の概要3 実践例4 成果と課題5 実践に当たってのポイント

実 践 の ポ イ ン ト
各プロジェクトにおいて、生徒の実態を踏まえた、基礎・基本としてとらえた内容の
 定着を図るための取組みの推進
昨年度の取組みの深化および改善
生徒による授業評価を活用した授業改善の推進
2年間の取組みの数値的成果の検証
教職員の共通理解・共通実践の推進

1 学校紹介
 本校のある灘地域は岩国市南部、瀬戸内海に面する帯状の地域にあり、市の発展や企業の進出により、従来の農業や沿岸漁業中心の生活から徐々に都市化が進み、共働き家庭が増えてきた。伝統的に地域住民の共同体意識は強く、地域行事も盛んであり、学校教育への関心は高い。過去PTA活動で文部大臣賞を二度受賞している。
 生徒は1年116名、2年120名、3年125名、計361名、教員数26名の中規模校である。明るく素朴な生徒が多く、学校は比較的落ち着いている。学習活動だけでなく、各行事や生徒会活動への取組みも積極的である。また、ボランティア精神を生かした奉仕班活動の伝統が残っている。


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2 研究の概要
(1)研究主題
一人ひとりの夢を育み、学ぶ意欲を高める指導の工夫
〜 確かな学力の定着をめざして 〜
(2)仮説
(研究仮説1)
生徒一人ひとりの習熟度や興味・関心に沿った教材や指導方法、指導形態を
工夫し「基礎学力の向上」と「基礎・基本」の定着を図れば、生徒は「分かる喜び」を味わい、学習意欲を高め、確かな学力をもつことができるであろう。

*「基礎学力」とは、いわゆる読み、書き、計算をさし、新たなことを学んでいく元になる学力ととらえ、「基礎・基本」は「学習指導要領に示された共通に指導すべき内容」ととらえている。
(研究仮説2)
学校行事や総合的な学習の時間に、授業で身に付いた知識や技能を活用し、思考力、問題解決能力、表現力などを発揮する場面を経験させ達成感をもたせれば、「生きる力」が身に付き、「学ぶ意欲」も高まるであろう。
学校、学年、クラスが「学びを支える集団」となれば、授業でもその他の活動でも生徒はのびのびと心豊かに活動し「学ぶ意欲」を高めることができるであろう。
(3)本校のとらえる「確かな学力」
 本校では「確かな学力」を生徒の実態に即して立体的にとらえることとした。

 本校では生徒の学力の実態と上記の学力の観点から「確かな学力」を構成する8つの学力を研究イメージ図のように立体的・階層的にとらえることとした。学びを発展させていく中で、下のような流れをイメージし、学力を階層的に配置することにした。


           灘中の考える「学び」の発展方向(イメージ)

  

          → 学年が上がるにつれて重視(学ばせ方の工夫)
          → 学びの質の高まり

(4)研究組織

私たちは、仮説に迫るために3つの部会を組織した。
 アクションという名前には「現実を変えられるのは行動を起こしたときのみである」という思いが込められている。


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3 実践例
(1)シラバスへの取組み


@ シラバス(学習案内)とは

 「シラバス」とはもとはギリシア語であり、和訳する場合は「教授(講義)要目」とするのが一般的である。学校で行われる授業等の案内であり、生徒に「これから、何を、何のために、いつ、どのように学ぶのか」を知らせるものである。教育内容を公開することは保護者や地域社会から理解と信頼を得ることにもつながると考えられる。

A 本校のとらえるシラバス

 研究主題の中の「一人ひとりの夢」すなわち「目標」を長期、中期、短期と三つに分けて考えると、長期の目標は進路を決定することである。なりたい職業や行きたい高校をはっきりさせることが「学ぶ意欲」に結び付く。
 短期は1時間の授業である。1時間の授業の目標をはっきりと示し、教材や指導方法・指導形態などを工夫することで生徒の学ぶ意欲を喚起することができる。
 
中期は、年間、学期、単元という期間である。この期間でも一時間の授業と同じように生徒に学習の目標をもたせたいと考えた。そのために「シラバス」が効果的であると考えた。

 教師は「シラバス」で学習の見通しを立て授業を行い、その単元や題材が終了した時点で授業評価をする。理解の高くなかった項目については再学習をし、生徒に「分かった」「できた」という思いを味わわせることで、新たな「学ぶ意欲」を喚起することができる。

生徒にとっては学習の見通しが立つため、準備物や提出物への対応が余裕をもってでき、予習や復習のきっかけになり、家庭学習の定着が図られると考えた。また、あらかじめ評価規準を示せば、生徒の目標もはっきりして学習意欲を高めることができる。
 教師にとってシラバスを作成することは生徒の立場に立って指導計画を練り直すことである。指導内容を焦点化し、どのように指導していくかを明確にすることになる。授業の流れをはっきりと意識することが、分かりやすい授業の実現、すなわち教師の意識改革に結び付くと考えた。


B シラバスの形式


  シラバスが「きめ細かい支援」を行う手だてとなるよう、下記の形式・内容・表現で作成することにした。

                                               年  科 学習の予定(シラバス)
 単元名【          】                           

教材題材 予定時数 学習のねらい 学び方のアドバイス 備考
使用教材・単元についての情報 ○○ 学習到達目標

・学習目標達成する ためのヒント
・既習事項との関連
・学習者への要望

・準備物・提
 出物の予定
・主な課題

・テスト等の
 予告
・評価方法等

○記入上の留意点
教材 題材】教科書の内容に沿って記入する。 

学習のねらい】生徒は何ができるようになればよいのかが分かるように、なるべく具体的に目標行動で記載する。

学びのアドバイス】学習のねらいを達成するためのヒントを、語りかけるように表現する。すでに習ったこととのつながりや、家庭学習としてできることや、しておいてほしいことを記載する。何を見たらよいか調べたらよいかなど、なるべく具体的に記載する。

*「予習しよう、復習しよう」という気持ちになるような工夫を心がける。

備考】生徒に知らせておきたい様々な情報を記載する。評価方法の記述については生徒にプレッシャーを与えすぎない内容と表現を心がける。


C シラバス実践例
 
 3学期になってすべての教科で作成し授業で活用した。教科の特性に合わせて作りやすい期間で作成した。実技教科は学期で作成し、5教科は単元や教材で作成する傾向にあった。

 教科の特性や授業者の個性を生かして、様々な工夫がされた。


D 成果と課題

 生徒の関心を引くよう、より使いやすいように、と各教科が様々な工夫をして作成したためか、生徒はすぐにシラバスに慣れ、活用できるようになっていった。
 シラバスを使用した生徒の反応はおむね良好で、3年国語科では授業後の評価が右のグラフのような結果になった。

 「進度が分かりやすい」「学び方のアドバイスがあったので、予習復習に使えた」「学習する前にポイントや授業の進め方が分かって、意欲的に取り組めた」「テスト勉強の時に役立った」などという感想が多く、中には、「入試に出るポイントを書いてほしい(2年理科)」という要望も出た。また、「役に立たなかった・どちらかというと役に立たなかった」と答えた理由は「あることを忘れていた」「行方不明になっていた」というものがほとんどだった。                                                                                      

 シラバスをより効果的なものにするには、学びのポイントの充実と保管のさせ方、授業の中での意識のさせ方が課題といえる。
 教師も「シラバス」を作成する過程で、指導内容と指導過程がはっきりと意識できた。「学びのアドバイス」を書くために生徒がつまずきそうな点を考え、既習事項との結び付きを生徒に意識させる工夫をすることは、生徒の立場に立って授業をとらえることになった。
  シラバスは生徒の学習意欲を喚起するだけでなく、私たち教師の授業に対する意識改革をうながす大きなきっかけとなった。それだけに、今後作成し続け、活用していくには大きなエネルギーが必要となることが予想される。「記載内容の程度」や「計画と授業進度差」など、これから取組みを続けながら、よりよいものをめざしていきたい。

(2)授業改善への取組み

 教科ごとに生徒の「学ぶ意欲を高める」ための研修を行っている。5月に行ったCRTの結果と全教科で1学期末に実施した生徒による授業評価を分析し、授業改善のための指針とした。
 その中のいくつかを紹介したい。


@ 数学科

 数学科では、「個に応じた課題を設定し、どこでつまずいているか把握する」ねらいで少人数授業を行い、一斉授業の中でも、理解度に応じた3種類のプリントを用意して、生徒に選ばせる試みをしている。

 

「問題のみ」

「ヒント記入」

「対応順に注意」

             


A 社会科


 「課題解決や討議する場面を授業に組み込み、生徒の主体性を促す」ねらいで、様々な取組みをしている。

歴史新聞の活用
 学習した過去の出来事に対して自分の立場(賛成か反対か)をはっきりさせた意見を書かせた後、歴史新聞を作成する。その新聞をもとにグループ討議や簡単なディベート、ロールプレイングを行い歴史への関心と理解を深めさせている。

 ○歴史新聞(560新聞):右図
 ○班活動の様子:下図
 ○班発表の様子:右下図

  


調べ学習・レポートの作成

 授業だけでなく、長期休業中も課題解決学習に取り組ませている。テーマを個人で設定させ、各自の興味・関心に基づいて調査活動ができるように配慮している。学校で行う場合は、調べる図書室やパソコン室を利用し、資料を主体的に選択できる環境を整えるようにしている。レポートの内容としては、題材として選んだ理由や資料の比較、考察や新たな疑問などを書かせるように指導している。3年間で調べ方を継続していき、調べ方やまとめ方を上達させていく指導を心がけている。そのため、生徒の作品を廊下等に掲示し、他学年の教員が評価し、評価の客観性に努めている。


(3)基礎学力向上研究班の取組み

@ 補習の実施

 基礎学力が身に付いていない生徒に対してなんらかの補習は必要であると考え、今年度はテスト前の補習を全学年で行うことに決定し、少しずつではあるが成果をあげている。実際に補習をしてみると、一斉授業では理解できない生徒が、個別に教えると分かるケースがある。テスト直前だけでなく、週1回定期的に補習の時間を確保できるとより一層の効果が期待できるように思う。


A 朝学の実施

○目的
・基礎学力の定着、特に低学力の生徒の基礎学力向上をめざす。
 また、達成感をもたせることにより、次への意欲につなげる。

・朝学習の意義と時間の大切さを認識させ、取組みによって集中力を身に付ける。

○対象学年・教科…1年生、2年生・国、数、英の3教科

実施時間…8:10〜8:25

実施方法
 ・週単位で教科を割り振り、国数英の順で行う。毎週月曜日は百ます計算を行う。
 ・その週の学習の確認テストを金曜日に行う。
   (数・英は再テストを次週水曜日に行う。)

○内容(目標)…各教科とも基本を徹底的に練習し、生徒がこれだけはやったと思えるような達成感がもてるような内容に厳選した。

・国語…漢字の書き取りの練習をする。目標は小学校3年〜中学校2年レベルの漢字の習得である。確認テストを検定方式にすることにより、日々、目標をもたせ、漢字力の向上をめざす。

・数学…基本的な計算問題を解く。目標は小学校〜中学2年レベルの計算力の習得である。
1、2年同じ問題を行う。

・英語…基本英単語を練習し、つづりを覚える。目標は中1の必修基本単語200語の習得である。

○成果と課題
  10月下旬に生徒を対象に朝学についてのアンケート調査を行った。

 (アンケート結果から)            回答数…1年106名、2年115名
 ・あなたは、毎日の朝学に意欲的に取り組んでいますか?
  → 各学年、各教科とも全体の約半数(50%)が「はい」
 ・各教科の朝学を続けて、基礎学力が身に付いているという実感はありますか?

 ・朝学に取り組んだことにより、授業が分かりやすくなるなど変化がありましたか?
  → 変化あり 
  ○授業や家庭学習に積極的に取り組むようになった。1年(3名) 2年(3名)

  ○授業での理解力が高まった。          1年(25名) 2年(18名)
  ○家庭学習がスムーズにできるようになった。   1年(33名) 2年(19名)
  → 変化なし                  1年(42名) 2年(74名)
 ・週1回の百ます計算について
  ○集中力が身に付いたと感じている生徒      1年(76%) 2年(59%)

  ○以前より学習意欲がでてきたと感じている生徒  1年(45%) 2年(31%)
  ○計算のスピードが速くなったと感じている生徒  1年(57%) 2年(57%)
  ○以前より正答率が増えたと感じている生徒    1年(43%) 2年(42%)

 アンケート結果によると、生徒の過半数が朝学に意欲的に取り組んでいる。また、「朝学によって基礎学力がかなり身に付いている」と感じている生徒は1年生で約42%、2年生で約33%というデータが出ている。「少し身に付いている」を含めると1、2年とも約70〜80%の生徒が「朝学によって基礎学力が身に付いた」という実感をもっている。1年生では「朝学が授業理解など他の学習活動に役に立っている」と感じる生徒もかなりいた。
 しかし、確認テストへの取組みは全体的に消極的で、確認テストに負担を感じている生徒が15〜20%いる。様々な要因があると思われるが、再テストを受けた生徒からは「計算のやり方が分からない」「漢字や単語が覚えられない」との回答があった。再テストの実施だけでなく、計算の仕方や覚え方を具体的に教えるというような援助が、これから必要になってくると考えられる。
 百ます計算は、週1回実施でも、集中や計算のスピードにある一定の成果が出ており、今後も継続して行いたいと考えている。


(4)総合的な学習の時間での取組み

@ 取組みの概要

 研究仮説Uの目標を達成するために、次の2点に重点を置いて取り組んでいる。
  ○3年間の学習に系統性・発展性をもたせる。
  ○知識や技能を活用し、表現力などを発揮させる場面を設定する。

テーマ「生きる 〜自分、人、そして社会〜 」
 学習内容の三本柱 〜 キャリア教育、テーマ学習、表現学習

キャリア教育=学習を通して自己の適性を知り、進路を切り開いていく力を身に付ける。
「私のキャリア探し」

第1学年 第2学年 第3学年
身近な職業調べ
職業講話→発表
(保護者を講師として招へい)
職業希望調査
職場体験学習→発表
立志式
進路調べ
高校生の話を聞く会
面接での自己表現

○テーマ学習=テーマに基づいた調べ学習や現地調査で課題解決を図る学習を行う。
「究極の課題解決学習」
第1学年 第2学年 第3学年
地域・環境・情報 健康、福祉、職業 文化、人権、国際理解
宮島研修
文化祭
基礎総合
広島研修
文化祭
修学旅行に向けての調査
修学旅行(京都自主研修)
文化祭

表現学習=学習して得られたことを他人に最も効果的に伝えられる表現力を養う。
「最高のパフォーマンス」
第1学年 第2学年 第3学年
文化祭の合唱
ステージ発表や展示
文化祭の合唱
ステージ発表や展示
文化祭の合唱、クラス発表・NIE、総合美術
※3年生のNIEは1〜2学期週1回、総合美術は2〜3学期週1回の固定総合で行う。

A 各学年の取組み例
1年生の基礎総合

 1年生では「学び方」の基礎・基本を学ぶことを主なねらいとし、3年間の学習に系統性・発展性をもたせるために、本年度からガイダンスと基礎総合を取り入れた。

A 課題を立てる力 B 情報を収集する力 C まとめる力 D 表現する力
講座 ・身近な地域にある
 課題を発見

・課題の作り方と仮
 説の立て方
・考察の仕方

・インタビュー
    (取材)

・インターネット
・デジカメの使い方
・フィールドワーク

・宮島新聞の検討
・レポート
・ポスター作成
・図やグラフの作成

・ディベート
・パネルディスカッ
 ション

・シンポジウム
・ロールプレイング
・お礼の手紙

ねらい  課題解決学習の流れを一通り学習することを通して、課題解決のために必要な視点や方法を身に付けることができる。  「灘中の中で○月を探そう」というテーマを追究することを通して、情報収集に必要な道具の使用技術や心構えを身に付けることができる。  「部活を紹介しよう」というテーマでレポートを作成することを通して、調査結果を効果的にまとめる方法を身に付けることができる。  多様な発表方法を学ぶことを通して、調査結果を他人に効果的に伝えたり、自己の認識を深めたりする方法を身に付けることができる。
1時間目 @課題解決学習の流
 れ

A人間メジャー
B調査テーマ発見法
・鳥の目、アリの目

・うらしま太郎

@情報収集の方法
Aアポイントの取り
 方
B写真や録音マナー
Cデジカメの使い方

@全クラスの宮島新
 聞の評価と検討

・新聞の採点
・高い評価を得た新聞
 に共通しているもの
 を話し合う

@表現方法の種類
・ディベート、劇
・パネルディスカッ
 ション
・シンポジウム
・ロールプレイング
A発表の極意

2時間目 C「藤生駅周辺」に
 ついて調査テーマ
 の設定

D調査項目設定練習
E調査方法
D「灘中の中で○月
 を探そう」のテー
 マのもと、デジカ
 メを使ったフィー
 ルドワーク

ルートマップ
観察記録
インタビュー
A調査結果のまとめ
 方の学習(便覧使
 用)

・新聞
レポート
ポスター
Bグラフ
表の作成方法
B模擬ディベート
 (国語の教科書使
  用)

C「男と女のどちら
 が得か」というテ
 ーマについてディ
 ベート
※次週までに各自で根
 拠となる資料を調査
3時間目

F調査計画書の作成
G質問内容を考える

Eインターネットで
 「○月の風物詩」
 を検索
Fワード作成
Cポスターのレイアウ
 トやレタリングの方
 法(美術資料集使用)

Dディベートの実施
※ディベートを行う時
 に必要なことの話し
 合いも含む

4時間目 H模擬レポートを通し
 て課題解決学習のま
 とめと考察の在り方
 を考える
Gワードにタイトルと
 インターネットで調
 べた内容(単語程度)
 とデジカメ写真を取
 り込んだ作品を作成
D「部活紹介」をテー
 マに1〜4の内容を
 組み込んだレポート
 の作成(学習と並行
 して作成)

 ディベートの続き

Eお礼状の書き方

 基礎総合に入る前にガイダンスを行い、中学校における3年間の総合的な学習の時間の見通しをもたせるとともに、課題解決学習の流れをプレゼンテーションソフトを使用して説明し、総合的な学習の時間の取組みが少しでもイメージできるように心がけた。
 5月の宮島研修の後に始めた基礎総合は、1学期に週2時間ずつ実施し、クラス単位で4講座を4時間ずつ学んでいくローテーション方法をとった。1講座4時間を担当教員を決めて行うので、教員の負担も少なく、教科の専門性を講座に反映させやすいというメリットがあった。学習内容は、身近な灘地区を主な題材としながら学習を充実させるために必要な基礎・基本となる技術(スキル)や知識を身に付けられるようなものを選び、4講座をすべて学習することで大まかな課題解決学習が習得できるものをめざした。
A「人間メジャー」   B「デジカメの使い方」  C「宮島新聞の検討」  D「ディベート」

2年生の職場体験学習
 2年生では、学ぶ目的を知るために、主に人とのつながりを題材として扱い、地域と交流していく活動を多く取り入れている。なかでも職場体験学習は、授業や「職業講話」で学んだ進路についての学習内容を、実際の職場体験でより身近なものとして感じとらせることにより、自らの生き方を考え、自己実現への意欲を高める貴重な機会となっている。

            職場体験学習にかかわる「キャリア教育」
項  目 内    容
事業所希望調査 希望の事業所を選び、その理由を文章表現する。
進路適性調査実施 マークシート方式で質問に答え、分析されたデータと資料(業者依頼)をもとに自分の進路を考える手だてとする。
職業についての学習
(生きがいや目的)
働く理由を「個人性」「経済性」「社会性」「名誉」などから選び、グループ討議を行う。
職業調べ 体験学習先の職業について、本やインターネット、聞き取りなどで調べる。
礼法指導 マナー、言葉遣い、あいさつ・返事・質問の仕方について学ぶ。
電話のかけ方 アポイントメントの取り方、緊急時の対応の仕方について学ぶ。
職場までの交通手段 地図・時刻表・料金表などの見方を学び、当日のシュミレーションを行う。
事前挨拶訪問 事業所を実際に訪問し、職場体験依頼の挨拶をする。職場体験に必要な事項(心構えや時間・持ち物・服装等)を質問し、聞いたことを教員に正確に報告する。
職場体験 41事業所に分かれ、2日間実施。(写真参照)
報告書・お礼状 季節の挨拶・敬語の使い方、文の構成について学ぶ。丁寧な字で書く。

3年生のNIE学習

テーマ 学習内容
ニュースの記事を読もう 新聞の構成を知る。見出し、リードを書き写し、要約と感想を書く。分からない漢字・語句を調べる。
投稿欄を読んでみよう 投稿欄をざっと読んで、投稿を1つ選び、感想を書く。
現代の医療について考える 朝日新聞連載記事「良医めざしてD」を読んで問いに答え、感想を書く。
国際問題を考える 朝日新聞連載記事「一人でも多くを救いたい」(コートジボワールの児童労働の話)を読んで問いに答える。感想や解決策を書く。日本の現状を考える。
コラムを読もう 朝日新聞の天声人語(柳井市のレンタカウ制度の話)を読んで、要約しコラムに見出し(題)を付ける。感想を書く。漢字の読み方を書く。
周囲の人に読んでもらいたい記事を選ぼう 自分が興味があり、周囲の人にも読んでもらいたい記事を1つ選んで感想を書く。班の人に、自分の選んだ記事について感想を書いてもらう。最後に周囲の人に書いてもらった感想を読んで自分の考えをまとめる。
トップ記事を比べよう

中国・朝日・読売・毎日・防長の5紙の第1面をそれぞれのトップ記事、2番目に取り上げられている記事は何かを比べる。また、5紙を読み比べて分かったことを書く。最後に授業についての感想をまとめる。
ニュースに登場している人物の中から関心をもった人を8人選び、ニュースの内容とニュースになった理由を書く。


投書にチャレンジ! 持参した新聞の投書欄をざっと読み、自分が最も関心をもった投書を1つ選び、それについて自分の考えをまとめ、投書原稿を作る。(または、独自のテーマを決め、当初原稿を作る)実際に新聞社に投稿する。


(5)人間関係づくりの取組み

@ 本校における「人間関係づくり」のねらい

 授業を実施するうえで基盤となる学級で自分の意見を率直に言え、他の生徒の意見も素直に受け入れることができるなど、よりよい学習集団にするために以下の3項目をねらいとし、構成的グループエンカウンターを中心に研究することとした。


 ○ 新しい人間関係を築かせる。
 ○ 生徒の相互理解を深めさせる。
 ○ 自己の可能性を探索させ、自己を表現させる。

A 今年度の取組み

 各学年、学期に1〜2回構成的グループエンカウンターを実施した。
  1年:「わたしたちのお店屋さん」「君にぴったし」「共同絵画」
  2年:「ライフボード」「国際協力について考える」「宝さがし」
  3年:「ぼくらは聞きジョーズ」「自分探し(エゴグラム)」「みんなでリフレーミング」

B 成果と課題

 構成的グループエンカウンターを行った後の生徒の感想の中に「あまりしゃべれなかった班の人ともしゃべれた」「人によってもののとらえ方が全く違うんだなぁと深く感じた」「一体感を感じた」「自分の発言が役に立った」「話を真剣に聞いてくれてうれしかった」「思っていることが言えてよかった」などがあった。このことから、新しい人間関係を築き相互理解を深めたり、自分を認めてもらえ自己を表現したりすることの喜びを感じ取れているように思われる。今年度は手探り状態での実践であったが、今後は、さらに計画的・系統的に実施することによって自己理解や自己表現、他者理解などをさらに深めさせる必要があると思う。


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4 成果と課題
(1)成果

教師の意識改革と授業改善に向けての取組みが図られた。
 「確かな学力」のとらえ方、学びの発展方向について全教員の共通理解が図れた。
 CRTの結果から生徒の学力を客観的にとらえ、授業改善に生かせた。
 シラバスのとらえ方や形式について共通理解し、全教科で「シラバス」を作成した。
  また、その中で、教師の意識改革が図れた。
 生徒による授業評価や保護者による授業評価など客観的な評価が定着した。
  また、それらの客観的な評価を授業改善の指針にして取り組めた。

 各学年でエンカウンターの授業を実践し、集団作りへの意識が高まった。
 3年間の「総合的な学習の時間」で生徒に付けたい力を見通して、1年生で『基礎総  合』の取組みができた。
 校内研修組織を確立し、全教科で授業改善の方向を設定して、研究授業や教科部会、  校内研修会などを通して全校体制で研究を進められた。 


(2)課題

 生徒の学力と「学ぶ意欲」の検証
 学ぶ意欲を高める、より効果的な「シラバス」の作成
 授業改善に向けて各教科で今年度の取組みのさらなる深化
 基礎学力定着に向けて、生徒がより主体的に取り組める朝学の工夫
 「総合的な学習」と教科学習との連携・補完
 「構成的エンカウンター」のより計画的・系統的な実施

 PTAや地域と連携を図るための積極的な広報活動の継続


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5 実践に当たってのポイント
担当者
 全教科でシラバスと授業評価を活用して、教師の意識改革と授業改善を推進する。
 教科学習だけでなく総合的な学習の時間や学校行事を「学ぶ意欲を高める」場とし  てとらえる。
 生徒がのびのびと活動できるよう、学びを支えるよりよい集団づくりを図る。
校長
 シラバスの作成、授業評価の工夫などの授業改善へのアプローチは、授業実践を通  して試行錯誤の積み重ねによって、はじめて確かな方策を獲得することができる。
 子どもの視点に立った評価を導入することにより、教員に対する真の意識改革と授  業改善への意欲を喚起して授業の質的な転換を図る。
 本研究は教員として個々の資質向上をめざすだけでなく、全教員が確かな学力の育  成に向けて「協働」の意識をもち、研鑽意欲を高め組織として実践研究を推進する  。人材育成のための中学校教育は何をすべきか目標を明確にする。


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