本校の子どもたちは少人数であるため、一人ひとりの個性がよく見え、縦割り班活動
により、他学年との結び付きが強いというよさをもっている。しかし、普段は限られた
人間関係の中での生活であるため、多様な意見や考えにふれにくく、社会の出来事に積
極的にかかわりながら、見通しをもって解決していこうとする力が十分に育っていない
という実態がある。
そこで、自分の考えをしっかりともちながら、社会の変化に主体的に対応し、創造的
に生きるための資質や能力として、「表現力」の育成を図りたいと考え、「自ら問いや
願いをもち、生き生きと表現する子どもの育成」を研究主題に掲げて、すべての教科の
中で、子どもたちが主体的に表現活動に取り組むことをめざして研究を進めてきた。
本校では、「表現力」を「自分の思いを相手によく分かるように説明したり、人の話
をよく聞いて考えを理解したり、相手の気持ちまで感じ取ったり、話し合って問題を解
決したりする力」、さらに考えを広げると、「自分なりの方法を使って、自分の考えや
思いを具体的な姿に表し、心の交流を図る力」であるととらえている。そして、「表現
力」を培うことは、自分を出し切る、自分らしさを表現する、創造的に表現するなど、
豊かな人間性や社会性を育てるための力ととらえ、「生きる力」に直結するものと考え
ている。 |
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(2)研究の仮説 |
研究主題に迫るために3つの研究の仮説を立てた。
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仮説1 |
子どもたちの問いや願いを生かした単元を構想すれば、意欲的に学習に取り組み、表現することの喜びや楽しさを味わうことができるだろう。 |
仮説2 |
自分なりの問いや願い・追求の方法・表現方法を生かすことができるよう、個に応じた支援を工夫すれば、確かな表現力を培うことができるだろう。 |
仮説3 |
表現する「場」や「機会」、「時間」を計画的に設定した学習過程を工夫すれば、進んで表現しようと試み、その過程で友達との豊かなかかわりをもつことができるだろう。
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(3)研究の視点 |
研究の仮設をより分かりやすい形で示し、普段の授業実践の中に生かしていくことが
必要であると考え、研究の視点を設定した。 |
○ |
少人数のよさを生かした支援の在り方 |
○ |
単元の構想を工夫した授業づくり |
○
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スキルタイムの有効活用の方法
スキルタイムとは、2校時後の10分間を、読み・書き・計算といった学習の基礎となる力の習熟を図るとともに、子どもたちの表現力の育成を図るための時間として設定したもの。
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3 研究の実際 |
仮説1
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子どもたちの問いや願いを生かした単元を構想すれば、意欲的に学習に取り組み、表現することの喜びや楽しさを味わうことができるだろう。 |
この研究では、次のようなことに取り組み、効果を上げることができた。
(1)教材の工夫 |
(教材開発して行った授業)
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(2)発表の場の工夫
低学年では、できるようになったことを見てもらうことをとても好むことから、発表
の場を設けることが効果的である。今年度は参観日に保護者に向けて発表することや2
年生と1年生がお互いに発表し合うことを実践した。国語学習発表会を設け、1年生は
『おむすびころりん』、2年生は『スイミー』の学習の成果を発表し合った。1年生は
、登場人物の気持ちを読み取るために登場人物やナレーター役になりきり、動作化を大
いに取り入れた音読を発表し、2年生は、場面の様子を想像して主人公の気持ちに同化
できるよう、ペープサートをしながらの音読を発表した。
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(登場人物になりきって、『おむすびころりん』の音読劇を行う)
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(3)行事と教科の学習の関連
5年国語科『インタビュー名人になろう』の学習では「修学旅行」や「大島タイム」
との関連をもたせることにした。
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(健康科学館でインタビューし、脳の働きについて教えていただく) |
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仮説2 |
自分なりの問いや願い・追求の方法・表現方法を生かすことができるよう、個に応じた支援を工夫すれば、確かな表現力を培うことができるだろう。 |
この研究では、次のようなことに取り組み、効果を上げることができた。
(1)一人ひとりの活動の場の確保 |
学習の過程では、子どもが思考している時を大切にしたい。自分の苦手なところを知り、それを課題として受け止めて、自分で“できる”ようがんばろうとしているときには、考える時間を十分に確保したいものである。
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(2)スキルタイムの効果的な活用
高学年ではスキルタイムを活用して、修学旅行や1年生を迎える会などの行事や委員会活動の連絡や準備、話し合いを行った。スキルタイムを活用すれば、授業時間を割り当てることなく、短時間で共通理解を図ったり、簡単な話し合いや準備をしたりすることができる。
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(3)異学年との交流 |
(2年生、3年生の教室で音読を披露する4年生)
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(4)地域の方との交流
本校は地域との結び付きが強い学校で、子どもたちも幼い頃から地域の方の温かさを感じながら育っている。そのため、学習を進める際には、地域の方に参加していただくことで、大きな成果をあげることが期待できる。
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(定期船の中を見学し、船長さんから説明を聞く) |
(5)学校間の交流
平成17年度から、本校は見島小学校と修学旅行・宿泊学習を一緒に行うことになった。少人数の学校間の交流であるため、一人ひとりがメールを活用して事前に情報交換を行った。
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仮説3 |
表現する「場」や「機会」、「時間」を計画的に設定した学習過程を工夫すれば、進んで表現しようと試み、その過程で友達との豊かなかかわりをもつことができるだろう。
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この研究では、次のようなことに取り組み、効果を上げることができた。
(1)振り返り活動の重視
国語の音読発表会や生活科のまとめの発表などは、各自の発表練習が終われば学級全員の前で発表することになる。児童数が多ければ、その機会は一回しかもてないことが多い。しかし、少人数であれば、一人数回の機会がつくりやすい。そのため、発表時に指導・助言を繰り返し加えたり、振り返りをしたりすることができる。 |
(友達のインタビューを聞いて記録用紙の評価項目に記入する) |
(2)学習形態の工夫
個別学習・小集団学習・一斉学習といった学習形態を、学習の目的や子どもたちの実態に応じて柔軟に授業に取り入れていくことが可能である点が、少人数のよさとしてあげられる。子どもたち一人ひとりの追求の過程での疑問やつまずき、考え方の違いなどを短時間のうちに見取り、学習形態の工夫を行い、その後の学習の展開に役立てるようにしてきた。
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(3)個別指導の重視
表現力を育成するにあたっては、子どもたちに基礎学力を付けていくことが必要である。子どもたちの能力に応じた課題に取り組ませ、段階を追って力を付けていくようにした。
(4)スキルタイムの効果的な活用
スキルタイムでは、基礎学力の定着や個人の学習能力の伸張を図ってきた。めあてを立てて取り組み、それができるようになったことから自信と意欲が高まり、学習に取り組む姿勢がさらに意欲的になった。
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(スキルタイムで「聞き取り漢字テスト」に取り組む)
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