小中連携教育実践研究の取組み                  (義務教育課)

夢つなぐ学びの創造

〜小中のなめらかな連結をめざして〜
 
               
 −周南市立和田小学校・和田中学校−

1 学校紹介2 具体的な活動内容3 成果と課題4 実践に当たってのポイント

実 践 研 究 の ね ら い
学びの意欲を高め、確かな学びの力の定着をめざす。
児童生徒一人ひとりが健やかな学校生活を送るための支援の在り方を探る。
特別活動や地域の諸行事を通して、児童生徒のかかわり合い、育ち合いを支えていく。

1 学校紹介
 和田地区は、周南市の山間部に位置し、「高瀬峡」「島地川ダム」等の名勝や「和田丸太」「高瀬茶」等の特産品に象徴される豊かな自然に囲まれた地域である。地域の人々は、「三作神楽」を守り伝えていく活動や「高瀬の旬をクイーン祭」等のふるさとおこしの活動にも代表されるように、地域の伝統や文化に誇りをもち、稲作・特産物等の産業を大切に受け継ぎ、発展させていくことに対し、とても積極的である。
 小学校は、学級数6、児童数105名、中学校は、学級数4、生徒数40名の小規模校である。年々、子どもの数が減ってきており、共働きの家庭の増加など子どもをとりまく環境は変化しつつあるものの、三世代同居も多く、教育活動への期待や関心も高く、学校教育には協力的である。
【和田地区全景】 【しめなわ作り(三世代交流会)】


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2 具体的な活動内容
(1)研究主題の設定
 「国・県の施策」「学校教育をめぐる問題」「和田小中の児童・生徒の実態」について研修を積み重ね、9年間を見通した小中連携教育を進めながら子どもたちを育てていくために、主題を右のように設定した。
(2)研究の視点
 研究主題の解明のために、次の3点を研究の視点として、実践における拠り所とした。 
視点1  学びの意欲を高め、確かな学びの力を定着させるための小中連携の在り方を探り、授業改善をめざす。
視点2  一人ひとりの児童生徒が健やかな学校生活を送るための支援の在り方を模索する。
視点3  特別活動や地域の諸行事等を通して、児童生徒のかかわり合い・育ち合いを支えていく。
(3)研究組織
(4)研究の実際
@ 授業研究部の取組み
【研究仮説】
 授業参観や授業検討会を通して、小中の教職員が学び合い、同僚性を構築していけば、『夢を育む学び』への意欲を高めることができるであろう。
 授業研究部では、上記の研究仮説を受けて、次のような4つの視点を設定し、研究を進めることにした。
視点1 合同授業研究会の実施
視点2 小学校教師と中学校教師のTTやGTによる授業形態の導入
視点3 小中児童生徒の交流による学び合いの場の設定
視点4 小中児童生徒に共通した課題である「伝え合う力」の育成
【体育における小中教師によるTT】 【社会における小中教師によるTT】
【国語における児童生徒の交流授業】 【音楽における児童生徒の交流授業】
   【授業を通して見えてきたもの】

○ 中学校教師による専門的な指導による
 子どもたちの技術の向上 
○ 小中教師による個に応じたきめ細かな
 支援の実現
○ 中学校の授業に対する不安の解消
   【授業を通して見えてきたもの】

○ 教材研究や授業参観による授業力の
 向上や教師としての幅の広がり
○ 生徒の意欲を高めるための授業改善
 ・具体物や体験の導入・問題解決学習
○ 個に応じた指導の徹底
授業を通して見えてきたものを総括すると
   【授業を通して見えてきたもの】

○ 「小学生の手本になる」という目的意識
 が大きなエネルギーに。…(中)
○ 「伝える楽しさ、伝わる喜び」の奥深さ
 難しさを実感する。…(中)
○ 「中学生になったら私も…(あこがれ・
 目標)」…(小) 
   【授業を通して見えてきたもの】

○ 中学生の音楽練習に対するひたむきさ を感じとることができる。…(小)
○ 中学生の器楽演奏の技術を直接学び取 ることができる。…(小)
○ 親しみのある先輩から学ぶことで楽し く気軽に練習に取り組める。…(小)
A 児童生徒理解部の取組み
【研究仮説】
 小・中学校が連携した情報交換、客観的に児童生徒をとらえることのできる心理検査の活用、教師のカウンセリング力の向上など、健やかな学校生活を送るための支援を充実するならば、すべての児童生徒にとって学校が心の居場所になるであろう。
児童生徒理解部では、上記の研究仮説を受けて、3つの視点を中心にして実践を進めた。
視点1  小中教師による情報交換の場の設定
視点2  小中合同カウンセリング研修会の実施
視点3  客観的に児童生徒をとらえることのできる心理検査の活用
 情報交換やカウンセリング研修を行うことが、教師の意識改革や児童生徒一人ひとりを見守ろうとする姿勢につながった。
B 特別活動部の取組み
【研究仮説】
 特別活動・諸行事等を通して児童生徒が地域社会へかかわり、学校・家庭・地域が協同して支援することで、ふるさとに誇りをもち、自分の可能性を見いだし、夢を育む子どもが育つであろう。
 特別活動部では、上記の研究仮説を受けて、3つの行事を中心にして実践を進めた。
【行事1】 小・中合同秋季大運動会 【行事2】 小・中合同学校保健委員会
【行事3】 トワイライトフェスティバル
○ 連携を通して育まれたリーダー性や思いやりの心
○ 地域の中で培われたふるさとを愛し、誇りに思う心や感謝の心
○ 一つ一つの活動を通して味わう達成感や貢献感

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3 成果と課題
(1)授業研究部の取組みから
 この3年間、小中は互いの授業を公開したり、小中の教師が合同で授業づくりをしたりしてきた。そこで、互いの教育観を知り、指導法の違いについて学び合った。その成果を4つの視点からまとめたい。
視点1  合同授業研究を通して9年間の学びの成長を明らかにする。 
 様々な実践を通して、小中の子どもたちの学びの姿に直接ふれることができ、9年間の成長の様子を見通すこととなった。
 中学年においては、具体物や実物と出会い、事実に基づいて考えようとする。高学年から中学1年生にかけては、イラスト・図・写真等、自分の問題として認識しやすい「もの」による思考が可能になる。そして中学校2、3年生になると具体物に頼らない抽象的な思考が可能になる。グループによる集団思考も、ペアから4人、4人から7、8人、そして、10人以上というように集団の規模も話合いの質も向上してくる。
 教師は、これらの発達段階に応じた指導内容や指導方法を工夫しながら、授業を構築することができるようになった。
視点2  小学校教師と中学校教師のTTやGTによる指導形態の導入
 小・中の教師のTT授業を通して、児童は中学校教師から専門的な指導を受けることができた。このことが、子どもたちの課題に向かう意欲に結び付いた。
 また、授業づくりの段階で価値ある学び
をつくるための方法や小と中の学びの違い
などについて話し合った。このことが互い
の教育観を共有し、同僚性を構築すること
になった。
視点3  小中の子どもたちの交流による学び合いの設定
 ここでは、交流学習後の中学生の感想を
いくつか紹介したい。

○教えていくうちにどんどん上手になり、
 できた時喜んでもらってうれしかった。
○毎日の生活でいろんな人に優しく、時
 には厳しくの精神が分かった。
○人に教えることで、自分も気を付ける
 ようになった。
視点4  小中児童生徒の共通課題である「伝え合う力」の育成
 話合い活動を適切に仕組み、授業の流れ
の中に取り入れていくことで、授業が活性
化された。子どもたちは、他者に説明する
ことで自分の考えがより明確になった。
 また、仲間に承認されることで一層考え
る意欲も増していった。さらに、異なる視
点からの見方・考え方と出会うことで葛藤
が生まれたり、理解が深まったりして新た
な課題が生み出されていく喜びも感じ取る
ことができた。
(2)取組みを振り返って
 連携教育の推進は、小学校教師の価値観(小学校文化)と中学校教師の価値観(中学校文化)を止揚させ、新たな価値観(文化)を創り出すことにある。教師同士の交流は、徐々に子ども同士の面への交流へとつながっていき、子どもたちに多様な文化にふれさせることになり、子どもたちを大きく成長させていくといえる。

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4 実践に当たってのポイント
小中の教師が、TTによる授業づくり、授業参観、研究協議等を通して、交流を深め
 ることにより、教育観を共有することができる。小中連携教育について共通の認識を
 もち、それを小・中それぞれの新たな学校文化を創ることにつなげていく。
行事や授業を通して、小学生・中学生の子どもたち同士の交流を積極的にすすめるこ
 とによって、学びの意欲や自尊感情を高めていくことができる。特に、小・中の授業 交流によって得られるものは大きい。
子どもたちの姿を見取り、導いていくために必要な客観的資料を小・中が互いに交換 し共有することによって、より適切な対応が可能となる。


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