スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール        〔高校教育課〕

SELHi(スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール)における取組みについて                                      
−山口県立華陵高等学校−

1 学校紹介2 具体的な活動内容(1)英語教育と国際理解教育の概要
(2)英語教育の実践事例3 成果と課題4 校長から見た指導のポイント

実  践  の  ポ  イ  ン  ト
 本校のSELHiでは、次の3つの要素をバランスよく備えた「自己表現力を身に付けた生徒」の育成をめざして教育実践を積み重ねた。








 高度な英語運用力
 「積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度」「事実・自分の気持ち・自分の意見を書いたり、話したりして表現する能力」
 豊かな国際感覚
 「自国や世界の事情に関する豊富な知識」「自国の文化を知り、異文化を積極的に受け入れようとする寛容な姿勢」
 
主体性と課題解決能力
 「課題を見つけ、考えようとする姿勢」「主体的に課題を解決しようとする態度」「課題を解決する能力」

1 学校紹介
 本校は、昭和62年に創立され、以来「21世紀の国際社会に雄飛する、創造性豊かな実践力をもった人間を育成すること」を教育方針に掲げ、校訓「感動 探究 健康 そして 雄飛」の下、特色ある教育活動を展開してきた。
 なかでも、英語教育及び国際理解教育を本校教育の柱と位置付け、先進的な教育実践を積み重ねてきたところであり、生徒は充実したティーム・ティーチングや少人数授業、実用英語技能検定のための学習を通して、実践的な英語運用力を修得し、また、姉妹校交流、語学セミナー、海外ホームステイ研修等の国際交流活動、外国人留学生との日常的な交流などを通して、豊かな国際感覚とグローバルな視野を身に付けてきた。
 
また、平成14年度には、普通科英語コースを英語科に改編し、英語教育に係る専門学科をもつ学校として新たなスタートを切るとともに、そのさらなる深化充実に努めてきたところである。こうした中、平成15年4月、文部科学省よりSELHi(スーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール)の指定を受け、主として英語科の生徒を対象に研究開発と教育実践に取り組んできた

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2 具体的な活動内容
 21世紀が到来し、国際化が急速に進展する中、英語教育にあっては、これまで以上に広い視野をもって物事に対処する能力や自分の考えを主体的かつ積極的に発信していく高度な英語運用力の育成が求められている。そこで本校のこれまでの英語教育及び国際理解教育における教育実践を検証し、SELHi研究開発課題を「英語教育・国際理解教育における自己表現力育成のための指導方法と評価方法の研究開発」と設定するとともに、めざす具体的な姿として、前述の「実践に当たってのポイント」にあるような「自己表現力を身に付けた生徒の育成」を掲げ、研究開発を進めてきた。

(1)英語教育と国際理解教育の概要
 英語教育については、生徒に「高度な英語運用力」を育成するために、授業は勿論、大学教員等を招聘しての特別授業Karyo Intensive English Lessons: KIELなどを通して、下の表のとおり計画的・段階的に自己表現力を培う活動を展開した。
 また、国際理解教育についても、下の表にある学年別計画に基づき、「豊かな国際感覚」の育成に努めた。
海外ホームステイ研修 語学セミナー
 以上、本プロジェクトの基盤となる「英語教育」及び「国際理解教育」の概要を示したが、授業実践という観点から高度な英語運用力の育成に向けた英語教育について具体的に紹介したい。

(2)英語教育の実践事例
 ア  到達目標と言語活動の内容設定
 

 高度な英語運用力」を育成するために、生徒の英語運用力の実際をアンケート等により把握し、各学年の4技能別の到達すべき目標を設定した。SELHi事業に関しての3年間の最終到達目標は以下のとおりである。

スピーキング力『多様な話題について、ディベートやディスカッションを行える』

ライティング力『多様な話題について、400語程度でエッセーを書くことができる』

 次に、これらの到達目標を達成するために、授業の中で実施する具体的な言語活動を以下のように設定した。

(ア) スピーキング力の伸長を目標とする言語活動

パブリック
スピーキング

(準備型→即興型)

1〜3年生で指導する。聴き手を意識した態度と自分の意見を論理的に伝える力を養うことを目標にしている。ディベートやディスカッションでの基本−「まず自分の意見を発言する」ことにつながる。学年が上がるごとに、「原稿を準備したスピーチ」から「即興スピーチ」へと移行して、「相手の意見に即座に応答する」方法も学ぶ。

ドラマタイゼーション

(ロールプレイ→自作スキット)

 1〜3年生で指導する。既存のスクリプトを使ったペア・ロールプレイから自作のペア・スキットまでを行う。感情を込めた話し方、自信をもった話し方などを学ぶことを目標にしている。ディベートやディスカッションで「相手を説得する」ために必要な表現力を学習するよい機会となる。

ディベート・ディスカッション

 ディベートは2〜3年生で、ディスカッションは3年生の選択授業で指導する。ディベートは、2〜5人程度で行うパーラメンタリー形式である(競技ディベートと異なり、態度やデリバリーも評価される)。ディスカッションは、全員で行う課題解決型(problem-solving)である。
(イ) ライティング力の伸長を目標とする言語活動
プロダクト・アプローチ・ライティング  1〜3年生で指導する。ライティング用のテキストを使用する。文の転換、文章構成また作文技法の原則を規則として示して練習問題を解く伝統的なライティング指導を行う。
プロセス・アプローチ・ライティング  1〜3年生で指導する。ライティングの過程を重視して、自由英作文やエッセーライティングなどを行う。ALTが中心になって添削を行う。
 また、こうした活動を補完・強化するために、ディベートの背景知識の深化等に向けた他教科との連携授業や教員・生徒の手によるKaryo Weeklyの発刊(毎週)、さらには、語彙・構文の向上と定着をめざしたソフトウェアの開発と定期的なテストなどにも意欲的に取り組んだ。
スキットの様子 大学との連携による特別授業
 評価方法の研究開発
 生徒のスピーキング力・ライティング力の伸長度については、短期間の到達度評価方法と長期間の熟達度評価方法とで測定してきた。到達度評価は主に授業で学習したことの評価を、熟達度評価は主にこれまでに生徒が学習してきたことの蓄積や純粋に生徒の英語力の熟達度を測定するために行った。評価結果は定期的に検証し、より望ましい評価方法を継続的に構築できるよう努めた。
(ア)  到達度を測定する評価
 授業内で復習小テスト(語彙、文法、暗唱例文など)を実施し、「言語の知識」の観点について評価した。また、実技テスト(スピーキングテスト・ライティングテスト)も単元ごとに実施し、取組みから発表するまでを観察し、「関心・意欲・態度」「理解の能力」「表現の能力」の観点について評価した。年間4回行われる定期考査では、「理解の能力」「表現の能力」「言語についての知識・文化についての理解」の観点について評価した。1つの設問につき、なるべく評価項目が混在しないような問題作成を心がけた。
(イ)  熟達度を測定する評価方法

 本校英語科教員が開発した独自の「語彙力テスト」・「スピーキングテスト」・「ライティングテスト」を年に2回程度実施し、また、市販の『GTEC』を年に2回、『英語運用能力テスト』を年に1回実施し、結果を分析した。

 学習指導案集の作成

 スピーキング力とライティング力の伸長を目標とする授業では、到達目標・活動内容・評価方法等を含めた指導案を作成した。英語科教員がこれを共有することで、指導方法・評価方法について共通した理解を図るとともに、生徒の3年間を見通した指導が展開されるようになった。


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3 成果と課題
(1)成果

 現在、全学年で年間3回外部基準の英語運用力測定テストを実施している。7月及び2月には、『英語コミュニケーション能力テスト(以下GTEC)』を、10月には、『英語運用能力テスト』という計画である。結果としては、学年が上がるにつれて、レベルが下位の生徒が減り、上位の生徒が増えており、成績が順調に伸びていることが分かる。

3年生の総合成績の推移(『GTEC』)

 また、生徒の授業の感想や英語学習のアンケートにおいても、「1年間で話す力と聴く力がよく身に付いたと思う。」「英語の学習だけでなく、留学生との交流、語学セミナーへの参加を通して、自分の視野が広がったように思う。」といった声が多く聞かれ、着実に成果が上がっていることがわかる。さらに教員についても、明確な目標を共有し、3年間を見通した段階的な指導を実践する中で、より深い共通理解やより強い結束力も生まれている。
 平成17年11月22日本校において県内外から150名を超える英語教育関係者を迎え、「研究成果報告会」を開催したが、アンケートの結果、9割を超える参加者から満足できるものであったとの回答を得た。とりわけ、本校の取組みの成果を県内はもとより県外の先生方とも共有できたことは、英語教育充実の視点から何よりも大きな成果であったと考えている。


(2)今後の課題
   「スピーキングやライティングにおいて、fluency(流暢さ)の指導に、accuracy(正確さ)の指導を加える工夫」「3年間を見通した指導方法と評価方法の精選」などのSELHiとしての課題とともに、この3か年の取組みの成果を今後どのように維持・継続し、さらに発展・充実させていくかということである。

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4 校長から見た指導のポイント
(1)組織としての取組みとすること

 本事業を推進するに当たり、英語科の教員はもとより、教職員の共通した理解と協働体制の下、進めることが不可欠であるとの観点から

 チャレンジ目標に「SELHiへの着実な取組み(昨年度)」「SELHiの取組みの成果を「かたち」あるものに(今年度)」を掲げ意識付けを行った。
 具体的な取組みとして
 英語科会(週1回月曜日)の設定
 全教職員への事業全体が分かる「研究開発構想図」の作成・配布
 職員会議等における進捗状況の説明等を行うとともに、実際の教育実践にあっても、他教科の教員との共同授業などの取組みも行った。

(2)県下全体の英語教育の充実に資すること
 研究成果をまとめた報告書を県内の全高等学校及び地域の中学校に配付するとともに、今年度は指導のマニュアルを作成・配付するなど可能な限り他の学校へのフィードバックに努めたところである。
 
また、「研究成果報告会」においては、パネルディスカッション及び質疑応答の場面において、予め寄せられた質問事項に具体的に答えるなど、各学校における教育実践に役立つことを視点に会を設定した。

(3)「華陵」らしさの創出と発信
 ホームぺージの作成はもとより、報道等を通じての情報発信、PTAや学校評議員、地域への情報提供など、この取組みを媒体に本校の特色をより鮮明にし、「華陵」を強くアピールすることを企図した

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