スーパーサイエンスハイスクール                                 (高校教育課)

スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の実践

 −山口県立岩国高等学校−

学校紹介2 具体的な活動内容3 成果と課題4 担当者から見た指導のポイント

実  践  の  ポ  イ  ン  ト

生徒の実態把握と特別講義・研修における事前・事後指導の充実
様々な科学の分野を体験できる授業(教材開発)や課題研究の実施
発表会やポスターセッションによるプレゼンテーション能力の向上
大学、研究機関や地域との連携の強化
研修会、発表会等への生徒の参加及び課外活動の推進
担当者の共通認識、校内のコンセンサス
情報発信、外部の評価最先端の科学に触れる科学的・数学的な体験の企画

1 学校紹介

 本校は、学校創立125年の歴史を刻み、「文武両道」「質実剛健」「高雅な気品」の伝統的校風を尊重しながら、時代の流れに応じた新しい取組みを積極的に展開している。
 たとえば、平成11年度に単位制を導入し、生徒の能力・適性、進路希望等に応じた多様な科目選択が可能となっている。また、平成14年度には65分授業、2学期制を導入し、授業の充実改善に取り組んでいる。
 現在の入学定員は、理数科40名、普通科240名であり、多くの生徒が大学進学をめざしている。勉強だけでなく、全校生徒の9割が部活動に加入し大会等で好成績を上げるなど活力溢れる学校である。
(詳細は学校ホームページに掲載)

(学校ホームページは こちら

(正門付近から校舎を望む)


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2 具体的な活動内容

(1)スーパーサイエンスハイスクール(SSH)とは…

 文部科学省は、平成14年度から科学技術・理科数学教育を重点的に行う高等学校を「スーパーサイエンスハイスクール」として指定し、理数系教育に関する教育課程の改善に資する研究開発を行っている。平成17年度は全国で82校が指定されている。指定期間は3〜5か年間である。

(文部科学省のスーパーサイエンスハイスクールに関するページは こちら

(2)研究開発の実施期間

 平成15年4月〜平成18年3月の3か年

(3)研究開発課題

  「創造的に科学的な行動がとれる資質や能力をもつ生徒を育成するための指導方法とカリキュラムの研究開発」

(4)研究の概要

 創造的に科学的な行動がとれる資質や能力(以下「科学実践力」と呼ぶ)を育成するための学習活動を分析し、教科「理数」に、学校設定科目「総合サイエンス」及び「実践サイエンス」を設置した。これらの新設科目と既存の理数科目について目標と学習内容を明確化し、科目相互の連携を図る理数のカリキュラムを編成した。

 1年次「総合サイエンス」では、科学の事例からの教材と指導方法を研究開発し、実習を中心とした多様な学習活動を外部講師の指導も取り入れて展開した。

 2年次「実践サイエンス」では、科学に関する探究や問題解決を中心とした活動をし、科学の実践に対する感覚をつかみ、科学的な行動力を身に付けることをねらいとした課題研究を実施した。
 
 理数科目の教科指導の他、外部講師による特別講義・実習、施設・研究機関での研修を企画・実施するとともに、課外活動の活性化を図った。

(5)研究開発の実施規模等

 平成15年度は理数科1年次生を対象として実施し、平成16年度は理数科1年次生と2年次生、平成17年度は理数科2年次生、3年次生を対象として実施した。
 なお、研究開発に必要な経費はJST(独立行政法人科学技術振興機構)により支援されている。

(JSTのSSH関連ページは こちら

(6)研究開発内容

 研究計画
第1年次

(ア)「総合サイエンス」の教材と指導法の研究開発と1年次生での実施
(イ)
校外研修、特別講義など教科外の取組みの研究と実施
(ウ)
大学や研究機関との連携の在り方の検討
(エ)
次年度実施の「実践サイエンス」の計画立案・準備

第2年次

(ア)「総合サイエンス」の見直し及び1年次生のプログラムの実施
(イ)
「実践サイエンス」を中心とする2年次生での実施
(ウ)
教科外の取組みの見直しと実施
(エ)
大学や研究機関との連携の在り方・方法の研究
(オ)
学校設定科目の評価

第3年次

(ア)2年次生プログラムの見直し及び実施
(イ)
教科外の取組みの見直しと実施
(ウ)
大学や研究機関との連携の在り方・方法についての提言
(エ)
研究成果の普及方法の検討
(オ)
カリキュラムの評価


 教育課程上の特例等特筆すべき事項
 選択必履修科目「家庭基礎」(2単位)、「情報C」(2単位)を、学校設定科目「総合サイエンス」(2単位)、「実践サイエンス」(2単位)に代える。この学校設定科目では、「家庭基礎」及び「情報C」の内容にも配慮する。
 研究事項
(ア) カリキュラムの研究・開発
 
教科「理数」に、学校設定科目「総合サイエンス」(1年次、2単位)及び「実践サイエンス」(2年次、2単位)を設置した。「科学実践力」を育成するために、これらの新設科目と既存の理数科目について目標と学習内容を明確化し、科目相互の関連性と依存性を考えたカリキュラムの研究・開発を図った。
(イ) 「総合サイエンス」を中心とする1年次生プログラムの開発
 学問領域・分野や系統性によらない、より現実的な科学に関する題材を体験的に学習し、科学に対する感性及び関心や探究心を高め、科学に対する認識を深め、科学とのかかわりを豊かにすることをねらいとする学習プログラムの開発を行った。

 「総合サイエンス」(2単位)では、@遺伝子の本体を探る、A環境化学、B新しいエネルギー変換と先端技術、C数学のトピックス、Dコンピュータ利用の情報・工学の5分野の学習を行い、校外研修では、科学技術を中心とした3施設での研修(2泊3日)を実施した。生徒が科学の魅力を感じ、科学に対する認識を深め、科学と豊かなかかわりをもてたことが明らかになった。


(遺伝子の本体を探る実験)

(油吸着剤を用いた実験)

(新しいエネルギー変換と先端技術の実験)

(超伝導の演示実験を見学)

(暴風雨の体験)

(東京大学物性研究所での研修)
(ウ) 「実践サイエンス」を中心とする2年次生プログラム開発
 科学に関する探究や問題解決を中心とした活動をし、科学の実践に対する感覚をつかみ、科学的な行動力を身に付けることをねらいとする学習プログラムの開発を行った。
 「実践サイエンス」での課題研究を中心に、山口大学理学部での研究室研修、特別講義を実施した。課題研究は2〜4人ごとの11グループに分かれて、課題の設定に始まり計画を立て研究を進め、報告書を作成し発表を行うまでの研究過程を通じて多様な活動を経験した。
 
活動の様子の観察や生徒が記した活動の記録を評価の観点に照らし合わせて分析することにより、生徒が科学の実践に対する感覚をつかみ科学的な行動力を発揮できたことが明らかになった。

(早稲田大学が行った錦帯橋強度調査に協力)


(DNA抽出実験)

(電波天文学の基礎実験)
(エ) 「理数科目」学習についての研究
 
カリキュラムにおける理数科目の在り方を踏まえ、従来の学習の見直しと新たな学習の導入を行った。
 
理数理科では科学実践力を支える科学的な知識・理解や科学的な探究の方法・思考力の育成を主に担う。1年次「理数化学」、2年次「理数物理」「理数生物」について重点目標を設定し、従来からの学習の見直しと新たな学習の導入を行った。このことで、科学的な知識・理解及び探究の方法や思考力をより向上させる成果を得た。

(オ)  教科外の活動についての研究
 
セミナー・研修会への参加、課外活動等、教科外の活動について研究するため、研修会、発表会等外部の催しへの生徒の参加及び課外活動の推進に取り組んだ。希望者による活動のため、研究開発の目標をより高度に設定することができた。また、学校外での催しでは、活動をともにした他校の生徒やその他の人との交流が大いに刺激になった。

(喜和田鉱山における研修)


(SSH生徒研究発表会でのポスターセッション)

(物理学会Jrセッションでの発表)
 具体的な活動内容 ※年度をクリックすると、当該年度のまとめ(pdfファイル)がご覧になれます。
(ア)平成15年度

(イ)平成16年度

(ウ)平成17年度

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3 成果と課題

(1)実施による効果とその評価

 生徒への効果
 「科学に対して興味・関心と豊かな感性をもつとともに、科学に対する認識を深め、魅力を感じる」という目標が達成されたと判断した。また、目標の達成が、科学と結びついた理科、数学の学習への意識の高まり及び学習以外の場での経験へと広がりを見せた。

イ 教員への効果
 「総合サイエンス」では、科目の目標に基づいた授業ごとのねらいから生徒の学習成果を評価した。「実践サイエンス」では、課題研究を中心に生徒の学習活動を評価した。いずれも既存の科目とは異なる目標に応じた教材を開発し、生徒の活動やレポートにより生徒の学習状況を把握した。この経験を通して、理数教育に対する視野の広がりと認識の深まりが得られた。


(2)事業実施の評価

SSH通信の発行、ホームページの立ち上げなどにより、事業実施に沿って情報発信をした。これにより、保護者を中心にSSHについての認知度が高まり、SSH事業の評価を得ることもできた。

科学系部活動の生徒や希望者に対して、外部の研修会や発表会、科学に関する行事、コンクール等への参加を働きかけ、研究開発の目標をより深める成果をあげた。

「実践サイエンス」の課題研究では、意欲のある生徒は授業時間内だけではなく、放課後の自主的活動や科学系の部活動と連動して研究を進めた。このように、教科の学習を授業外へ広げるための環境の提供が効果を上げた。

校内に推進協議会を設置することにより、教育課程、学校行事、理数科の運営や学級経営との調整や、校内的なコンセンサスが得られた。また、ほぼ定期的に担当者会議をもち、SSHなどの進捗状況について、共通した理解を得ることができた。

山口県内のSSH指定校が2校になり、運営指導委員会を共同開催の形で、年4回開いた。これにより、参加する運営指導委員並びに高校関係者の人数が増え、より活発な協議が行われ充実したものになった。


(3)研究成果の生かし方

 「科学実践力」の育成を既存の科目、課題研究、総合的な学習の時間、学校行事、課外活動の中で生かしていく。また、「総合サイエンス」で開発した教材、「実践サイエンス」で得た課題研究指導のノウハウなどを活用していく。


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4 担当者から見た指導のポイント

生徒の実態把握と特別講義・研修における事前・事後指導の充実

様々な科学の分野を体験できる授業(教材開発)や課題研究の実施
発表会やポスターセッションによるプレゼンテーション能力の向上
大学、研究機関や地域との連携の強化
研修会、発表会等への生徒の参加及び課外活動の推進
担当者の共通認識、校内のコンセンサス
情報発信、外部の評価



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