スーパーサイエンスハイスクール                 (高校教育課)

スーパーサイエンスハイスクール(SSH)の実践

 −山口県立山口高等学校−

学校紹介2 具体的な活動内容3 成果と課題4 実践に当たってのポイント

実  践  の  ポ  イ  ン  ト

最先端の科学に触れる科学的・数学的な体験の企画
理科教育に関する中・高連携の改善と小・中学校及び地域社会への拡大
科学的・数学的な思考力、創造性や独創性を育成するめの教育プログラム開発
大学・研究機関との十分な連携

1 学校紹介

 本校の歴史は、文化12(1815)年に創設された私塾山口講堂(後の山口明倫館)が明治3(1870)年に改称されて山口中学となったことに始まり、平成17年には創立135年を迎えている。
 全日制・定時制・通信制の課程をもち、卒業生も4万人余りとなる県下屈指の歴史と伝統がある高等学校である本校では、「至誠剛健」の校訓のもと、長い歴史の中で培われた「自由な気風」「進取の気風」「文武両道の気風」が脈々と受け継がれ、徳・知・体の全人的なバランスのとれた、社会のリーダーたる心身ともに健全な生徒の育成を図る教育を実践している。
 全日制の生徒数は1,000名を越えており、1学年普通科8クラス(第1学年は7)、理数科各学年1クラスの構成となっている。「二学期制65分授業」を実施し、十分な授業時間を確保すると同時に量から質への転換をめざした授業を展開している。このことにより、基礎学力や発展的・応用的な学力はもちろんのこと、大学進学に向けた確かな学力の定着と、生徒の自主的な学習の促進など教育の充実に努めることができている。
 また、様々な学校行事は伝統と特色をもち、部活動も盛んであり、各種大会で優秀な成績を上げている。これらは重点目標である「勢いのある学校づくり」の実現に大きな役割を果たしている。
(詳細は学校ホームページに掲載)

(学校ホームページは こちら

(正門から校舎を望む)


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2 具体的な活動内容

(1)スーパーサイエンスハイスクール(SSH)とは…

 文部科学省は、平成14年度から科学技術・理科数学教育を重点的に行う高等学校を「スーパーサイエンスハイスクール」として指定し、理数系教育に関する教育課程の改善に資する研究開発を行っている。平成17年度は全国で82校が指定されている。指定期間は3〜5か年間である。

(文部科学省のスーパーサイエンスハイスクールに関するページは こちら

(2)研究開発の実施期間

 平成16年5月10日〜平成19年3月31日の3か年

(3)研究開発課題

 「大学や研究期間との効果的な連携を通して、体験に基づいた科学的・数学的な思考力を育成するための教育プログラムの研究開発」

(4)研究の概要

 不足していると思われる、理科的・数学的な体験を幅広く補充するとともに、これまでの系統的な理数の学習を基本として、理数以外にも情報などの内容も加え、自然の事象を総合的、体系的にとらえる科学観を醸成するため、スーパーサイエンスに係る新しい学校設定科目を設け、発達段階に応じた理科的・数学的な体験をさせる学習内容や方法について研究する。また、独創的な科学研究を実施する際に必要となる実践的な知識や能力を身に付けさせる学習内容や指導方法についても研究する。
 方策として、これまで本校で培ってきた高大連携の研究成果を、さらに幅広く発展させ、生徒の科学的・数学的な思考力の伸長を図っていく。そして、その成果は理数科の生徒のみならず、普通科の生徒の理数教育の一助となる研究とする。
 なお、研究成果については、地域内の小・中学校及び近隣の高等学校にも普及させることとする。



(秋吉台での研修)

(5)研究組織の概要

 研究を主体的かつ円滑に進めていくため、「スーパーサイエンス推進室」を設置し、関係委員会とも連携をとりながら、研究を進めた。研究に必要な経費はJST(独立行政法人科学技術振興機構)から支出支援されている。

(JSTのssh関連ページは こちら



(6)平成16年度・17年度の主な研究事項・活動内容

 スーパーサイエンス理科、スーパーサイエンス数学(第1学年の学校設定科目)
 不足していると思われる、理科的・数学的な体験を重視した学習内容や実験を行った。理科は物理・化学・生物・地学の4分野について、生徒を少人数に分けて実施した。また、数学は統計処理を中心に情報の要素も加えて実施した。

 スーパーサイエンス理数T(第2学年の学校設定科目)
 本校が長年実施してきた学校設定科目「理数課題研究」(1単位)をさらに発展させるため、学校設定科目「スーパーサイエンス理数T」(2単位)を設けた。生徒は、物理分野4班、化学分野2班、生物分野4班、数学・情報分野1班の合計11班に分かれ、各担当教員はもちろん、大学の先生の指導を受けて研究に取り組んだ。第3学年では、発表会の準備も含めたスーパーサイエンス理科Uを履修する。
 

(化学実験)
 大学・研究機関・企業との連携の在り方についての研究
(ア) 教員研修
 科学館等との連携を視野に、首都圏や地方の科学館を訪問したり、各分野で理数科課題研究に資するため、多くの大学の研究室を訪問した。

(イ) 研修・先端技術体験学習
 夏季休業を利用して、2泊3日の日程で実施した。1年次は東京・つくば研修を実施し、日本科学未来館や筑波宇宙センター、東京大学等を訪問した。2年次には、山口東京理科大学において、先端技術研究に関する講義や実験を行い、発表会を設定した。参加者は、高大連携教育により1単位を修得した。
(先端技術体験研修)
(ウ) 出前講義
 理数科1年生・2年生に対して山口大学および山口東京理科大学から講師を招へいし、理数系の様々な分野の先端科学の講義や実験を行っていただいた。生徒たちは、興味の深化と研究の最前線に触れることができた。ロボットの解体や導電性プラスチックの実験、位相幾何学の学習など高校のカリキュラムにはない、興味深い内容に引き込まれていた。なお、理数科だけでなく、普通科の生徒も加わったものもいくつかある。

(エ) 屋久島生物実地研修
 平成17年8月、生物分野の課題研究班の理数科2年11名と教員が2泊3日で屋久島の自然を体験し、生態観察を中心に実習を行った。


(屋久島での実地研修)
(オ) 化学工場見学
 理数科1、2年生と普通科理系の希望生徒に対して実施した。平成16年度は石油や鉄に焦点をあて、石油製品の製造からリサイクルまでや製鉄所の見学を行い、平成17年度は石けん工場やチタン工場、タイヤ工場等の見学を実施し、それぞれ専門的な説明を受けた。課題研究の内容に大きく資することができた。     




(工場見学)
(カ) 全国中学・高校ディベート選手権
 生徒の発表能力を高めることを目的に、「ディベート甲子園」を見学した。 
               
(キ) 科学英語
 平成17年度に理数科2年生を対象に、本校ALTが講師となって、大学での研究内容の紹介をすべて英語でおこなう授業を実施した。 
      
(ク) 地学巡検
 1年生理数科希望者に対し、萩の笠山や須佐のホルンフェルス等を巡見した。防府市の科学館の学芸員の方にも講師を依頼するなど、科学館との連携も図ることができた。                    

(地学巡検:須佐ホルンフェルス)
エ 理数教育に関する地域や中高連携の在り方についての研究
 中高の理科教員の連携を図るとともに、平成17年度は地域への広がりを考えて、地域の小・中学生とその保護者を対象に「鴻の峰の蝶の調査会」を5、6、7月に計3回実施した。天候にも恵まれ予定どおり実施でき、参加者にも大変好評であった。 
    

(鴻の峰 蝶の調査会)
オ 科学部等の課外活動の指導と支援
(ア) 天文部
 岡山県美星天文台や大阪市立科学館を訪問し、実際に観測したり、研究に対する助言をいただいたりした。


(美星天文台への訪問)
(イ) 化学・生物部
 岡山大学での化学グランプリに参加した。


 研究発表会等の参加
(ア) SSH生徒研究発表会
 平成17年8月、東京ビッグサイトで開催された全国の大会に、各課題研究班の代表者11名が参加し、平成15年度指定校の発表を聞き、自分たちの課題研究の参考にするとともに、ポスターセッションに参加した。
      
(イ) 岩国高校SSH研究成果発表会
 平成17年10月、本校より1年先行して研究指定に取り組んでいる岩国高校のSSH研究成果発表会に出席し、研究発表や講演を聴くとともに、ポスターセッションに参加した。


(平成17年10月 
ポスターセッション)

(7)山口県スーパーサイエンスハイスクール運営指導委員会

 スーパーサイエンスハイスクールの運営にあたり、大学や企業関係者の先生方10名を委員として、専門的見地から指導、助言、評価を受けるため開催している。平成15年度の岩国高校の指定から年4回開催され、研究の進め方や成果のまとめ方などに多くの御意見をいただいている。(記録写真や詳細情報等は山高ホームページにSSH関係として掲載している。)

(平成17年度第1回委員会)
(記録写真や詳細情報等は こちら

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3 成果と課題

(1)成果

先端技術体験学習や特別講義、大学・研究機関の見学など、これまで本校では実施したことのない内容、規模、形態で大学や研究機関との連携による理数科教育が実施できている。
生徒の実験や実習の取組みは熱心で意欲的であり、実施後の報告書や意識調査などの分析結果から、科学や数学についての生徒の興味・関心は、着実に高まっていると判断できる。
指定1年目からホームページや校内広報誌を活用し、様々な機会にSSHに関する広報を行ってきた。2年目では校内に研究成果を掲示するスペースを設け、普通科の生徒や保護者に対してSSHの研究内容を紹介している。
教職員の理解や協力も深まっており、ディベートの研究や科学英語の学習などを通して、国語科・英語科との連携を図っている。


(2)課題

まとめの年度では、2年以上にわたる多くの成果をどのように形にしていくかが問われている。テーマである教育プログラムの研究開発に、どのようにアプローチしていくかをしっかりと校内で議論する必要がある。
授業進度により基本的な知識が乏しい分野もあり、実験や実習において、生徒の理解が追いつかない場面が見られた。
生徒にとって一つひとつの出前講義や実験、見学、実習等が単発的なものになっており、学習している教科科目の中での位置付けやつながりが、十分理解されていない可能性がある。時間的な制約もあるが、事前学習や事後学習などをしっかりと行い、日頃の授業の中でも意識して関連付けさせる必要がある。
本研究の成果を普通科の生徒や地域にどのように還元していくか、また、研究指定後の理数科教育にどのように生かしていくかを考える必要がある。


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4 実践に当たってのポイント

 生徒の理科的な体験や数量に対する感覚、空間的なイメージ力不足を感じる中、理科的・数学的な体験を通して何かを発見した感動や理科・数学を学ぶ楽しさを体感させ、科学技術への興味・関心を高め、思考力や創造力を身に付けさせることが必要である。


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