歯と口の健康つくりの取組み                           〔学校安全・体育課〕
 生活を見つめ、生活をつくり出す子どもを育む
      〜歯・口の健康つくりを切り口に、子どもの元気を創造する〜
平生町立平生小学校

1 学校紹介2 具体的な活動内容3 成果と課題4 指導に当たってのポイント
実  践  の  ポ  イ  ン  ト
目的の明確化
 ★単なる虫歯予防教育ではなく、子どもたちの「幸せな人生」(QOL)の向上が目的
自分を見つめる学習の重視
 ★各学年の発達段階に応じた見つめる学習の工夫
 ★健康にかかわる正しい知識と技能を身に付けさせる指導
 ★健康を自分とのかかわりでとらえる指導
 ★健康の視点を生活に生かし、自分の生活を発展させる活動や働きかけ
健康行動を始めたり、継続したりするために必要な協力や支援
 ★学校・学校種間(幼・小・中)交流の活性化
 ★家庭、地域(特に高齢者)とのかかわりの活性化
 ★専門家(学校医・学校歯科医・学校栄養士・歯科衛生士等)との連携強化
家庭・地域への「健康つくり」に対する啓発・情報発信
 ★「健康つくり」にかかわる情報の提供
 ★学校での取組みの紹介

1 学校紹介

 本校は、山口県の東南部、熊毛郡平生町のほぼ中心部にあり、全校児童616名(平成17年5月1日現在)をかかえる柳井地域一の大規模校である。先人の努力によって干拓された平生平野部は、元来水田として利用されてきたが、近年、大手スーパーの進出や宅地化が進み、都市化の傾向をたどっている。都市化傾向にある地域では、ややもすると人間関係の希薄化が懸念されるが、「地域の宝である子どもたちを地域の中で、地域と共に育てたい」という願いのもと、地域と共に推進する教育活動を日々模索しているところである。
 平成16年度から3年間、日本学校保健会「児童生徒等歯・口の健康つくり推進事業」の委託を受けた。幼・小・中学校の連携を核に、胎生期から老人までの一貫した取組みが不可欠であるという視点から、町内の各機関との連携を図り、親子、地域の高齢者との交流、学校歯科医や栄養士、歯科衛生士との連携、町広報誌による啓発活動等、様々な垣根を越え、地域を巻き込んでの「健康つくり」に取り組んでいる。


【平生小学校校舎】

【校訓「自立」「友愛」「協力」】
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2 具体的な活動内容
(1)「健康つくり」にかかわる基本的な考え方
 本校では、「歯・口の健康つくり」を切り口に、子どもたちの元気創造を、子どもたち自らが生活の主体者として「幸せな人生」へのはじめの一歩を力強く踏み出していける力を身に付けさせたいと考えている。こうしたライフスタイルを求め、健康行動を起こす背景として、以下の二つの因子に目を向け、それぞれの因子にかかわる具体的な指導や支援を考えていくことにした。
★因子1:本人に関すること
 健康行動を起こすためには、自分の健康生活向上に関心を寄せ、具体的な行動を起こすために必要な知識や技能を身に付けさせる必要がある。
★因子2:周りの人に関すること
 健康行動を始めたり、継続したりするためには、本人にかかわる周りの人の協力や支援が不可欠である。
 以上の考えをもとに、子ども自らが健康生活の主体者であるという自覚を促す学習を進めている。(上図参照)
(2)かかわりを重視し、自分を見つめる学習の展開
 子ども自らが健康生活の主体者であるという自覚を促すためには、自分を見つめる学習が不可欠である。幼・小・中学校それぞれの連携を密に、それぞれの発達特性をとらえ、自覚化のプロセスに沿った学習の展開に努めている。自分を見つめ、自らのライフスタイルを考えていくためには、過去・現在の自分をつなげていくだけでなく、将来までを見通した、一貫した取組みが不可欠である。(上図右上部参照)
 そこで、こうした学習がより豊かに展開されるよう、町内の各機関との連携を図り、親子、地域老人との交流、学校歯科医や栄養士、歯科衛生士との連携、町広報誌による啓発活動等、様々な垣根を越え、地域を巻き込んでの「健康つくり」に取り組んでいる。
                   (上図右下部参照)
 以下、具体的な取組みについて紹介する。
(3)歯・口の健康を保つ技能を身に付ける学習
 低学年では、まず、自分の口の中を意識し、清潔であることの清々しい感覚を味わわせることを大切にしている。
 自分の舌や手で歯の感覚を確かめたり、鏡で自分の歯を見ながら正しいブラッシングを身に付けたりする学習を通して、歯が自分の身体の一部であるという感覚や口の中を清潔に保つための方法を学んでいる。
(写真左上・右上)
 また、ブラッシングの後、友達同士でお互いの口の中や歯の様子を見合い、ブラッシングを確かめ合う活動は、友達同士、豊かなかかわりを築き上げていく上で効果的である。(写真右下)

(4)自分の歯・口(健康)について正しく知る学習
 中学年では、虫歯ができる要因や口の中を清潔に保つことと健康とのかかわりについて正しい知識を身に付ける学習を重視する。その際、紙芝居等を活用して、子どもたちの興味・関心を大切に、自分にとって身近な問題としてとらえさせたり(写真左上)、実際に実験したりする(写真左下:うがいによる洗浄効果実験)活動を通して、実感を伴った学習を工夫している。
 また、ただ単に口の中の健康だけでなく、全学年を通して、食の大切さに目を向け、育てる・かかわる・作る・食べる(いただく)・噛む・磨く・確かめるといった活動の流れを大切にしている。(写真右下)

(5)健康を自分とのかかわりでとらえる学習
 高学年では、特に、健康を自分とのかかわりでとらえることを重視している。何気ない日々の生活に立ち止まり、健康に関する新たな視点づくりをしたり、新たな視点で生活を見つめ、学びを自分の生活に発展できるような学習や活動を展開している。
【自分の噛み方を見つめよう】 【自分の飲み物を見つめよう】
【自分の歯を見つめよう】 【講演「楽しく学ぼう虫歯予防」】
 6年生では、教室を飛び出し、町保健センター等を利用し、保健センターの栄養士さんにも協力をいただいて、自分にとって身近な「飲むこと」「噛むこと」「歯・口の様子」を見つめ直す学習を行った。学習後の学校保健委員会では、講師の先生をお迎えし、「楽しく学ぼう虫歯予防」という演題でお話をしていただいた(上写真参照)。保護者・地域・専門家を巻き込んだこうした学習は、「歯・口の健康」や「健康生活づくり」について、親子で改めて見つめ、考えるよい機会となった(下:保護者の感想より)。
(6)かかわり、見つめ、響き合う学習
 自分を見つめる学習を展開していく上で、他者とのかかわりはとても重要である。同級生同士で、お互いの歯を観察し合ったり考えを伝え合ったりする過程で、つながりが深まっていく。高学年の児童が幼稚園に仕上げ磨きに行き交流することで、自分の成長についての気付きや思いやりの心が育まれる。家族で共に行う活動や地域高齢者とふれあう活動は、子どもたちに安心感を与えてくれる。かかわりを見つめ、響き合いが生まれる場づくりに心がけている。(下写真参照)
【幼稚園へ仕上げ磨きへ】 【親子ふれあい料理教室の後に一緒に歯磨き】
【明治青年大学の高齢者との交流:一緒に遊び、一緒に食事をし、一緒に磨く】
(7)地域に発信する
 健康つくりの学習の一番の課題は、学びを生活に生かし定着化・発展化していくことである。学校での取組みを学校の中だけでの取組みにさせないために、また、地域全体への取組みへとつなげ広げていくために、町広報誌に紙面をいただいて、学校での取組みの様子を定期的に発信している。

【広報ひらおより 平生小学校の取組み】

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3 成果と課題
(1)成果として
自分を見つめる学習を通して、教師の授業の質が変わった。子どもの目線、子どもの思いを受け止めながら、対話の質を意識し、自分の感じ方や考え方を見つめる場を大切に授業に臨んでいる。
自分を見つめる学習を通して、子どもたちが落ち着いてものを見、考えるようになりつつある。
幼・小・中学校とのつながりが密になるとともに、保護者や地域高齢者とのかかわりを通して、お互いに健康つくりの意識が高まってきた。
学校医や栄養士、歯科衛生士、食育ボランティア等とのつながりが深まり、「健康つくり」にかかわる情報や適切なアドバイスを得やすくなった。
(2)課題として
学校での取組みを地域の取組みへ、学校での学びを生活での実践へとつなげていくための広報活動の充実。
「歯・口の健康つくり」について、いつでもどこでも取り組めるような環境整備(実践の整理と共有化、児童への情報提供等)
児童の「健康つくり」の行動が、生活の中で生かされ継続されるために、「歯・口の健康つくり」推進委員会への地域ボランティアの参加等、住民参加型ネットワークの構築。

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4 指導に当たってのポイント
目的の明確化のポイント
 ★ことあるごとに子どもと一緒に確認しよう。「○○のために、○○しよう」
自分を見つめる学習のポイント
 ★低学年では、「健康つくり」にかかわる行動に目を向けさせよう。
 ★中学年では、「健康つくり」にかかわる行為を支える理由や思いに目を向けさせよう。
 ★高学年では、「健康つくり」にかかわる行為や思いを客観的に見られるようにしよう。
健康行動を始めたり、継続したりするために必要な協力や支援のポイント
 ★子どもの成長を長いスパンでとらえ、幼稚園・中学校に進んで声をかけよう。
 ★なんといっても家庭での取組みが大切。積極的に保護者に学習に入ってもらおう。
 ★専門家(学校医・学校歯科医・学校栄養士・歯科衛生士等)の知恵をかりよう。
家庭・地域への健康つくりに対する啓発・情報発信
 ★はじめは身近なところで、口コミから。確実にネットワークを広げていこう。

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