確かな学力育成のための実践研究事業の実践                           〔義務教育課〕
 自分の思いが生き生きと表現できる児童の育成
  〜国語科を通して、
   自分の思いを言葉で伝え合う力を高める手立て〜

                     
― 美祢市立伊佐小学校 ―

1 学校紹介2 研究のねらい・仮説等3 授業を通しての取組み
   4 各部の取組み5 授業実践6 授業評価から7 成果と課題
        
実  践  の  ポ  イ  ン  ト





言葉で伝え合う力を高める手立てとして、書くことに重点を置いた国語科の授業の仕組み方を工夫する。
学習を効果的に進める形態(少人数、TT、グループ等)を工夫する。
教員間の授業評価や児童の自己評価等を通して、授業改善に取り組む。
学力向上の基盤と考える学習意欲を高めるために、基本的な生活習慣の確立を家庭との連携を図りながら進める。

1 学校の紹介
 本校は、昭和45年に近隣の4校が統合してできた学校で、校区の中心部には、セメント関連工場と商店街があり、周辺部は棚田に頼る農業地帯である。地域の学校への信頼は厚く、期待度も大きいものとなっている。全児童数は、175名で各学年1クラスずつと特殊学級2クラスの、計8学級で構成されている。
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2 研究のねらい・仮説等
(1)研究主題設定の理由
 本校は、昨年度「生活科」「総合的な学習の時間」で、問題解決のための話し合い活動の充実をめざして研修に取り組んできた。自分の考えを他者に伝えようと努力し、話し合うことで課題解決に結び付けようとするものの、テレビ世代で育っている子ども達の語彙の少なさや文法表現の未熟さ故に、自分の思いが十分に表現できない様子が多く見られた。また、昨年度から実施している美祢市学力調査の結果からも、自分の思いを表現すること、特に自分の考えを加えながら記述することが苦手である傾向が顕著に見られた。
 これらのことから、昨年度の研究主題「自分の思いが生き生きと表現できる児童の育成」を引き継ぐとともに、今年度は表現力を身に付けるための原点である「国語科」を通して研修に取り組むことになった。国語科において、「言葉で伝え合う力」を高めることは、全ての学習の基本となり、全ての学習に関連する。そこで、研究主題を「自分の思いが生き生きと表現できる児童の育成」、サブテーマを「〜国語科を通して、自分の思いを言葉で伝え合う力を高める手立て〜」と設定し、確かな学力育成のための指導方法や指導体制等の工夫・改善に取り組むことにした。

(2)研究の仮説

 
研究主題に基づき、自分の思いを言葉で伝え合う力を高めるために、
  1、深い教材解釈に取り組むこと 
  2、書く活動を取り入れること 
  3、言語環境を整えること
の3点を手立てとし、次のような仮説を立て検証していく。
   
仮説1
教師が教材文の教材解釈を深め、ねらいをはっきりさせて指導することにより、児童は自分の思いを伝える方法を身に付けることができるのではないだろうか。

仮説2
相手や目的をはっきりさせて、自分の思いを言葉で書く活動を取り入れることで、伝え合う力が高まるのではないだろうか。

仮説3
学校生活全体を通して、言語的な環境を整えることによって語彙が増し、自分の思いを伝え合おうとする意欲が高まるのではないだろうか。

 研修の全体構想



(3)研究推進の組織

 1つめの柱:全学級授業公開による研究授業を通しての授業改善を進める。 
 2つめの柱:全職員が授業研究部・言語環境部・健康づくり部の3つの部に所属し、研       修を進める。


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3 授業を通しての取組み
(1)書く力を付けるための取組みについて
 自分の思いを言葉で伝え合う力を高めるために、書く力を付けていくことを重視し、各学級、授業の中で毎時間書く活動を取り入れ、書く機会を増やすようにした。
 例えば、5年生「詩を味わおう」の授業では、イメージを膨らませるための手段として、書く活動を取り入れた。ワークシートに題材である雑巾を見て気付いたことなどの事実をまず記入し、次にそれから広がるイメージを書き、それらを基に短詩を作成した。このように、段階を踏んで詩を書いていくことで、全員の児童がイメージを膨らませて短詩を作ることができた。



 また、3年生「まとまりに分けて書こう」(説明書を作ろう)では、説明書を書く際、児童のレベルに応じた3種類のワークシートを用意した。書くことが苦手な児童に対する手立てとして、実際に目玉焼きを作り、体験したことをすぐに説明書に書く活動を行った。これにより、抵抗なく書くことができる喜びを味わうことができた。



(2)少人数・TT指導について

 昨年度までの算数科に加え、今年度は3・4・5年生の国語科でも2人体制で取り組んだ。しかし、国語科で少人数指導をすることに対し、どのような指導体制が一番効果をあげるのか、あるいは少人数指導をする際のグループ編成の仕方など、試行錯誤の連続であった。4月当初は、書くことは少人数指導、読み取りはTT指導が効果的との先入観があったが、研究を進めていくうちに、児童の実態や学習内容・学習過程に応じて少人数・TT指導の柔軟な組み合わせを考えていくことが大事だということがわかってきた。



(3)授業評価について

 授業を児童にとって「わかる楽しい授業」に改善し、教師の力量を高めるために、教師同士で授業評価を行った。この授業評価カードも回を重ねるごとに変化している。私たちの評価の眼を養うために抽出児をあげ、評価及びその理由を書く項目を付け加えたり、評価項目の再検討をしたりして、より使いやすいものへと改善している。



(4)国語科の6年間を見通した関連図の作成
 各学年、1年間の授業内容を横のつながりで考える時に、前学年までにどんな学習内容を理解しているのか、そして次の学年でどんな学習につながっていくのかが大切になってくる。つまり、学年間の縦のつながりをしっかり踏まえておくことが、1時間1時間の授業の仕組み方に大きくかかわってくると考え、関連図を作成している。指導案にもその1部を載せるようにしている。
1年 2年 3年 4年 5年 6年

 知らせたい事を選び、事柄の順序を考えなが ら、相手にわかるように話すこと。

 伝えたい事を選び、自分の考えがわかるように筋道を立てて、相手や目的に応じた適切な言葉遣いで話すこと。

 考えた事や自分の意図がわかるように話の組立てを工夫しながら、目的や場に応じた適切な言葉遣いで話すこと
みんなにしらせたいこと
知らせたいことを選び、話の順序を考えながら友達にわかるように話す。
わたしはなんでしょう
当ててほしいものの特徴を聞き相手にわかりやすく話す。
ともこさんはどこかな
迷子の特徴となる大事なことを選び、順序良く話す
あったらいいな、こんなもの
「あったらいいな」と思うものについて、話す順序を考えながら、聞き手にわかるように話す。
道あんないをしよう
道案内で大切なことを考え、相手に順序よく適切な言葉遣いで話す。
進んで話し合い、発表しよう
「分類されているもの」
を見つけ、聞き手によくわかるように筋道を立てて話す。
漢字と友だち
伝えたいことが相手によくわかるように筋道を立てて話す。
モチモチの木
伝えたいことを選び、自分の考えがわかるように筋道を立てて、相手や目的に応じた適切な言葉遣いで話す。
伝言はまちがえずに
相手に用件が伝わるように、大事なことを落とさず、筋道を立てて適切な言葉遣いで話す。
「伝え合う」ということ
クラスの友達に自分の考えがわかるように筋道を立てて話す。
どんなとき、だれに
目的や場に応じて言葉遣いがどのように変わるかを考えながら話す。 
千年の釘にいどむ/本は友達
読書会で、自分が読んだ本の魅力や自分の感じ方・考え方を、紹介する。
読書の世界を深めよう
クラスの友達に薦めたい本の魅力を、紹介のしかたを工夫して発表する。
みんなで生きる町
調べたことがクラスの友達にわかりやすく伝わるように工夫して発表する。
今、わたしは、ぼくは
小学校生活を振り返って思うことを、相手や場面に応じた適切な構成で話す。

 大事な事を落とさないようにしながら、興味をもって聞くこと。

 話の中心に気を付けて聞き、自分の感想をまとめること。

 話し手の意図を考えながら話の内容を聞くこと。
みんなにしらせたいこと
話の大事なことを落とさないように興味をもって聞く。
わたしはなんでしょう
友達の話の大事なことを落とさないようにして、興味をもって聞く。
ともこさんはどこかな
迷子の特徴を聞き落とさないように注意して聞く。
あったらいいな、こんなもの
「あったらいいな」と考えているものの名前や理由を落とさずに聞き、わからないことは質問する。
道あんないをしよう
話の中の大事な言葉や順序に気をつけて聞く。
進んで話し合い、発表しよう
話の中心に気をつけて聞き、自分の感想をまとめる。
伝言はまちがえずに
大事なことを確かめながら聞き、短い言葉でメモをとる。
「伝え合う」ということ
話の中心に気をつけて聞き、自分の感想をまとめる。
インタビュー名人になろう
目的や内容を明確にしてインタビューをし、話し手の答えを予想しながら話の内容を聞く。
人と「もの」との付き合い方
発表者の考えと自分の考えとを照らし合わせ、話題のとらえ方の違いや共通点を明確にしながら聞く。

 身近な事柄について、話題に沿って、話し合うこと。
 
 互いの考えの相違点や共通点を考えながら、進んで話し合うこと。

 自分の立場や意図をはっきりさせながら、計画的に話し合うこと。
おみせやさんごっごをしよう
客と店の人になって売り買いのやり取りをする。
わたしはなんでしょう
わからないことや詳しくききたいことを尋ねたり、それに答えたりする。
あったらいいな、こんなもの
どんなものが「あったらいい」か、組になった人と話し合って考えを深める。
何に見えるかな
「何に見える」「なぜ、そう見える」という話題に沿って話し合う。
進んで話し合い、発表しよう
「ねこの分類」について、互いの考えの相違点や共通点を考えながら、話し合う。
名前をつけよう
互いの考えの相違点や共通点を考えながら、合意点を見つけようとして進んで話し合う。
話し合って決めよう
友達と互いの考えの相違点や共通点を理解しながら、決めるために進んで話し合う
「失敗」をめぐって
話し合いの目的や順序を確かめながら、話題に沿って話し合う。
学級討論会をしよう
討論会の進行方法を理解し、自分の考えや理由をはっきりさせて討論会に参加する。

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4 各部の取組み

■授業研究部
 ・指導案形式の作成、
 ・教師・児童・保護者による授業評価
 ・自己評価カードの作成・改善
■言語環境部
 ・図鑑・事典・辞書の充実
 ・発表形式の掲示と指導
 ・全校音読の実施
 ・朝の読書・読み聞かせ
 ・生徒指導部との連携を図った言葉遣いの指導
■健康づくり部
 養護教諭・栄養士が中心となり、学力を根底で支える健康な心や体を育成するために基本的生活習慣の定着に向けた啓発活動を行った。まず、児童・保護者に基本的生活習慣に関するアンケートを実施し、その結果を学校保健委員会やプリント等を通じて知らせ、生活習慣の見直しの必要性を呼びかけた。
 また、保健だよりや給食だよりで睡眠と食事の大切さを知らせ、基本的生活習慣の確立をめざすことが、ひいては学力向上につながっていくと考え、家庭と連携した指導を行っている。



 アンケートの結果を踏まえ、教育相談の中で、担任が実態に応じて児童にアドバイスをしている。また、生活が乱れがちになる長期休業前には、養護教諭と栄養士が「朝ごはんをしっかり食べる。」「早寝早起きをする。」ことの大切さを、各学級をまわって指導した。少しずつではあるが、保護者・児童ともに健康づくりへの意識が高まりつつある。

 このように、言語環境を整えることや健やかな心や体を育成する健康づくりは、学習をするための根本的な基礎だと考える。この土台をしっかり築いた上に学習指導があるという共通理解のもとに、家庭と連携しながら児童の指導にあたっている。

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5 授業実践

             第4学年 国語科学習指導案
平成18年2月2日(木) 第5校時
指導者 4年担任  (☆コース・読み進めコース)
    少人数担当 (◇コース・読み方コース)
場 所      4年教室   (☆コース)
         4年少人数教室(◇コース)

1 単元名  
登場人物の気持ちを想像して読もう
  教材名  
「ごんぎつね」
2 単元設定について
 本校では、物語文の学習においてはTTが効果的であるという仮説に基づいてTTでの学習に取り組んできた。なお、2学期「一つの花」の学習では、児童一人ひとりの学習をより確かにしたいという考えから、課題別少人数学習に取り組んだ。ここでは、場面の移り変わりや大事な言葉に着目して情景や登場人物の気持ちを読み取り、音読で表現しながら読み深めていくコースと、父親や母親の立場で日記を書くことを通して読み深めていくコースを設定した。コースの選択方法は、児童の学びたい方法を選択させて決めたため、学習後の感想には「音読をして(日記を書いて)人物の気持ちがわかったのでよかった。」と満足している児童が多かった。さらに、少人数で学習に取り組んだことについては、一人ひとりの活動の場が確保できたという理由から「良かった。」と答えた児童がほとんどであった。自分の思いを伝え合う機会が増えたことも、満足感につながっていると思われる。しかし、叙述をもとに想像を膨らませながら心情を読み取ることができる児童がいる一方で、心情のもととなる叙述が見付けられなかったり、心情の読み取りが浅く自分勝手な想像で考えてしまったりする児童も見られ、個々の読み取る力の差が感じられる。
 
 本教材の主人公のごんは、いたずらばかりしていたが、兵十の母の死を通してうなぎをとったことを後悔し、償いを始める。神様の仕業と思われても栗を持っていくほど、兵十へ熱い思いが芽生えているごんとは裏腹に兵十にはその思いが伝わらない。兵十がごんの仕業と気付いたのは、ごんを火縄銃で撃ったあとであり、ぬすっとぎつねという見方が一変する。両者の心が触れたのが、ごんの死の時であることに話の悲しさがある。児童は、ごんの生き生きとした行動の様子から心情に寄り添いながら、読み進んでいくことができる。初発の感想においても、次の日も次の日も栗や松たけを持っていったごんの姿や、神さまの仕業といわれながらもあくる日に栗を持っていくごんの姿が、心に残ったとする児童が多かった。しかし、ここではごんの心情だけではなく、兵十の心情について読み取っていかなくては、死に直面したときになって二人の心が触れた悲しさが理解できない。ごんの気持ちを中心に読み取りながら、常に、兵十の気持ちにもふれながら学習を進めていく必要がある。また、作品中には、登場人物の心情や置かれている状況を暗示する情景描写があり、それをもとに想像を広げていくことができる楽しさもある。学習を通して、物語の世界の美しさ・楽しさ・悲しさを一人ひとりに感じさせていきたい作品である。

 そこで指導に当たっては、以下のことに留意して取り組みたい。
叙述をもとに読み取る力を身に付けさせるために、少人数指導のコースは読む力の習熟度を加味した自己選択のコース編成にする。
☆コースは教師が支援をしつつ児童が課題に対して自分で読み進めるコースで、お互いの意見を交流させながら、自分たちの力でごんぎつねの世界を作り上げていくことにする。
◇コースは教師と児童が一緒にごんや兵十の心情読み取るコースで、叙述や情景から心情を読み取り想像する方法を学び、一つ一つ大切な語句や文章を押さえながら、心情や情景を読み取っていくことにする。
読み取る力を高めるために、習熟度に配慮したワークシートを各コースとも活用し、大切な叙述や情景描写が取り上げられるようにする。音読・役割演技などの学習方法も活用し、登場人物に対する自分の思いをしっかり持たせることで、伝えたいという切なる気持ちになるようにしていきたい。
毎時間、児童に自己評価カードで学習の様子を振り返らせるとともに、教師は児童の学習の状況を把握し、次の授業へとつなげる。
単元の導入やまとめのときにはTTで取り組み、全体で学習する場を設定する。T1は主に全体の学習を進め、T2は配慮児童の学習を支え、個の学習の様子をみとり全体に広げるようにする。

3 単元の目標
 ◎ 登場人物の人柄や心情を、叙述をもとに想像しながら読み、物語のおもしろさを味わ  うことができる。

4 評価規準
(◎特に本単元で身に付けさせたい力)
国語への関心・意欲・態度 ・ 登場人物の様子や気持ちを想像しながら読もうとしている。
◎読む能力 ・ 登場人物の人柄や心情を、叙述をもとに想像しながら読むことができる。
・ 読み取った内容について自分の考えをまとめ、一人ひとりの感じ方に違いがあることに気付くことができる。
言語についての知識・理解・技能 ・ 内容を理解するために必要な語句について、辞書を利用して調べることができる。

5 他教材等との関連 (読む領域)


6 指導計画(全10時間)
主 な 学 習 活 動
一B 「ごんぎつね」を読み、初発の感想を書く。    
わからない語句について調べたり、写真や音を聞いたりしてイメージを膨らませる。  
初発の感想から場面ごとに学習課題を設定し、次時の学習のコースを決定する。    
二F ☆コース(読み進みコース) ◇コース(読み方コース)      
学習の進め方を確認する。 物語文を読むときによくわからないことを話し合い、どのように読み進めていくか話し合う。    
ごんがいたずらをする訳を、根拠となる叙述をもとに考え、話し合う。      
うなぎ事件が起きたときのごんの心情を、情景や様子をもとに考え話し合う。兵十のごんに対する心情を様子や他の場面とのつながりから想像する。 第1場面の、ごんの置かれている立場や行動、兵十の行動をもとに、場面の様子を想像し、いたずらをしたときのごんの気持ちを考える。    
兵十のおっかあが死んだことを知ったごんの気持ちを、根拠となる叙述をもとに考え、話し合う。 葬式の様子やごんの言葉、行動をもとにごんの気持ちを想像し、第2場面の最後のごんの言葉をどう読むか考える。    


本時
いたずらばかりしていたごんの心情の変化を、根拠となる叙述をもとに考え、話し合う。 ごんの言葉や行動、兵十の言葉などをもとに、役割演技をしながら場面の様子を想像し、ごんがくりやまつたけを持っていくときの気持ちやまつたけを持っていくときの気持ちを考える。    
ごんと兵十との心情のずれを、根拠となる叙述や他の場面との繋がりをもとに考え、話し合う。 第4、第5場面の様子やごんの気持ちを、兵十や加助の行動や言葉、ごんの行動などをもとに、役割演技をしながら考える。    
兵十のごんに対する心情の変化を、根拠となる叙述や他の場面との繋がりをもとに考え、話し合う。 第6場面の様子を兵十の行動や言葉から想像し、ごんが撃たれた時のごんと兵十の気持ちを考える。    
神様の仕業と言われても栗を持って行き、最後にやっと兵十に気付いてもらったごんの心情を想像する。
10 ☆グループと◇グループで学習したことを交流する。  
A 11 学習を振り返り、感想を書く。  
7 本時案 (第二次 4/6)
<☆コース>
(1) ねらい いたずらばかりしていたごんが、兵十に同情の気持ちをもち、償いをする ようになる心情の変化を、叙述をもとに読み取ることができる
(2) 準 備 ワークシート 振り返りカード
(3) 学習過程
学習活動・学習内容 児童の意識の流れ 教師の支援
前時のごんの後悔の気持ちを想起した後、第3場面を読み、課題を確認する ごんは、うなぎをとったことを後悔していた 前時までのワークシートをもとに、ごんの兵十に対する心情が変化し始めていることを確認する。
兵十のおっかあが死んだことを自分のせいだと思っているよ。
ごんはなぜくりやまつたけを拾っては兵十のうちへ持っていったのだろうか。
ごんが栗や松たけを持っていく訳を考える。 ごんは兵十にうなぎの償いをしたいんだ。 ごんの心情を、叙述をもとに書き込むワークシートを準備し、個別に学習を進める。
兵十と自分と同じひとりぼっちと思ったからだ。 各自の学びの様子を把握しながら、取り上げたところを確認する。
考えのもとになった叙述をワークシートに書き込み、話し合う ごんにとって、いわしはいたずらじゃなかったけど、兵十には悪かったんだな 心情を想像する根拠になった叙述を出し合い、更にそこから想像する心情について話し合うことで、自分の考えを深めていく
・おれと同じひとりぼっちの兵十か
・うなぎのつぐないに、まず一ついいことをした
・次の日..くりをどっさり
・次の日も、その次の日もくりを..
・その次の日も..松たけも
毎日栗を持っていくごんは優しいな
自分の住んでる山から集めてくるんだろうな
おっかあが死んだことを自分のせいだと思っているから、償おうと必死なんだ。 繰り返しの言葉から兵十への償いの気持ちや同情心の強さを感じさせる。
兵十を励ましているのかな。 兵十はごんの気持ちの変化に気付いているのか、投げかけることで見方が変わっていないことを確認する。
でも、兵十は知らないから、まだ悪い狐と思っているだろうな。
いたずらをやめたごんは、いい狐に変わったよ。
償いをするごんについて自分の考えを書き、発表する。 毎日栗を持っていくってすごい。ごんの気持ちが、兵十に伝わってないのが悲しいな。 一人ひとりのごんに対する考えのよさを取り上げ、認める。
兵十のおっかあの死がごんのせいじゃないかもしれないのに、栗を毎日持って行くって、ごんはえらいな。
                       *言葉で伝え合う力を高める手立て
(4)評価 ごんが兵十に対して同情の気持ちをもち、償いを始めた心情の変化を読み取ることができたか。


<◇コース>

(1)ねらい  ごんが兵十にくりやまつたけを届けたときの様子や償おうとする心情を、叙述をもとに読み取ることができる。
(2)準備物  ワークシート 振り返りカード
(3)学習過程と教師の支援
学習活動・学習内容 児童の意識の流れ 教師の支援
前時を振り返り、本時の学習課題と学習方法を確認する。 ごんの最後の言葉は、兵十に「ごめんね」という気持ちで読んだよ。 前時にごんの気持ちを読み取った活動を想起し、叙述から気持ちを考えていくことを再確認し、学習の見通しがもてるようにする。
ごんの行動から、葬式が気になったことがわかったな。
くりやまつたけを拾って兵十のうちへ持っていったときのごんは、どんなことを考えていたのだろうか
くりやまつたけを持っていったときのごんの考えを想像する。 うなぎをとって悪かったと思っている。 考えが想像できにくい児童はそのままでよいこととし、次の活動をしながら考えていくことにする。
おっかあが死んでかわいそうと思っている。
よくわからないな。
教科書の、ごんと兵十の行動や言葉を色わけして、誰がどんな行動をしたのか確認する。 これはごんの言葉だな。 ごんと兵十で色わけをすることで、誰がどうしたということが明確になるようにする。
これは兵十の様子だな。
役割演技をして、わかったことや思ったことを発表する。
・いわしを投げ込む場面
・栗を持ってきた場面
いわしのときは、あわてていたんだな。 役割演技をするときに、見ている児童は「叙述どおりに演技ができているか」という視点で見させることで、常に叙述を意識させるようにする。
「まず一つ、いいことをした」と思ったのに迷惑をかけてしまって悲しかっただろうな。
「次の日も、その次の日も」持っていったから、とても悪かったと思っていると思う。 役割演技を通して登場人物の心情にせまることで、根拠のある読み取りをもとにした自分の意見がもてるようにする。
△△くんが言ったところは、ぼくは気がついていなかったな。 役割演技などから、新たにごんの気持ちがわかってきたときのつぶやきを取り上げ賞賛し、イメージを広げていくことのおもしろさを味わわせるようにする。
ごんと兵十の気持ちをふきだしに書く。 償いをしたいという気持ちを書きたいな。
ちゃんと自分で拾ったことを書こう。
                       *言葉で伝え合う力を高める手立て
(4)評価  ごんがくりやまつたけを持っていったときの償おうとする心情を、叙述をもとに読み取ることができたか。

8 考察
(1)少人数指導について
 児童一人ひとりに叙述をもとに読み取る力を十分に身に付けさせるために少人数指導を行ったが、少人数とはいえコースの中で個人差があった。☆コースでは、自分の思いを十分にもつことができず、自分の力で学習を進めることが難しい児童がおり、◇コースでは、ていねいに学習が進むので、少し物足りなさを感じている児童がいた。
 コース選択の際には、それまでに学習した単元での読む力について、児童の自己評価と教師の評価をもとに選択をしたが、☆コースと◇コースの境界線にあたる児童のコース決定がとても難しいと感じた。また、本単元は全児童が最初から最後までコースを変わらずに学習したが、☆コースと◇コースが同じ場面を学習するように進めていたので、児童の実態に応じて途中でコースを変更させることも可能だった。児童一人ひとりの状況をしっかりと把握し、最もよい学習方法になるように支援するべきだったと反省している。

(2)☆コースの学習の様子
 ☆コースの児童は、すでにある程度の物語のイメージをもっており、それを友達の意見を取り入れながら膨らませていく学習を進めた。叙述をもとにしながら自分の生活体験を絡め、想像豊かに読み取ることができたが、児童が気付いていない部分については、考えを深めさせるような発問を工夫し、児童の想像を膨らませていった。
 例えば、第3場面でごんが栗を兵十に持っていった理由として、児童は「いわしで兵十がひどい目にあったから」、「うなぎの償いをしたいから」の2点をあげていた。そこで、ごんがいわしを投げ込むという償いを始めたのは、ごん自身がひとりぼっちの寂しさを十分知っているからこそ、兵十の寂しさを感じ同情しているからこそであったことに気付かせる発問をした。すると、兵十が一生懸命取っていたうなぎの大切さとごんが一生懸命取ったであろう栗とを結び付け、いわしと栗の価値が違うという意見があげられ、これには感心させられた。ただし、いわしは簡単に手に入るという意見に対して、それはあくまでも盗んだからであり、ごんの償いの気持ちが十分伝わる行為ではないことをしっかり押さえるべきであった。
 児童が様々な意見を話し合うとき、教師がその意見を如何にまとめ、根拠となる叙述に立ち返らせるか、その難しさを感じた授業であった。教師主導の部分が多かったので、☆コースでは、授業を進めるのは児童であること、教師は児童の思考の道筋を示すことを目指して今後の授業を改善していきたいと考える。

(3)◇コースの学習の様子

 ◇コースの児童は、語彙や読書経験の少なさから文章に対して抵抗感のある児童が多く、文章から登場人物の心情や場面の様子を思い描くことが困難であった。そこで、まずはワークシートを利用し、場面ごとの最も重要な箇所において登場人物が何をし、何を言ったのかというのを一つ一つ取り出し、その上で役割演技をしたり実物を見たりして学習を進めた。そうすることで、場面の様子を具体的にイメージすることができ、その時の登場人物の心情や場面の様子を、自分の生活体験と重ね合わせながら考えていくことができたのではないかと思う。
 また、少人数ということで、一人ひとりがワークシートに記入できたかということがすぐに把握でき、つまずいている児童に個別に支援していくことができた。発表の際にはすべての児童が自分の意見をもつことができており、自信をもって発表することができたのではないかと思う。しかし、児童同士の意見を交流させ、友達の考えをもとに自分の考えを膨らませるということについては十分にできなかった。単元の前半で自分の考えをもつことができるようになっていたので、単元の後半には児童同士の意見の交流をもっと取り入れていく必要があったと思う。

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6 授業評価から
 物語を読むことについて、学習前は4分の1の児童が「あまり好きではない」「好きではない」と答えていたが、学習を終えて、「あまり楽しくなかった」と答えた児童が四人となった。また、その四人のうち、☆コースの二人は物語の想像を十分に膨らましており、一人は単に「話が長いから」、もう一人は「すでに読んでいたから」という理由だったことから、ほぼ全員が物語を読むことの楽しさを味わったと言える。しかし、残りの二人は物語の内容を十分に味わったとは言いがたい状況であった。


 
登場人物の心情や場面の様子を想像するといった読む力については、学習前に比べ、「よくできた」「できた」と答えた児童が多かったことから、少人数で学習することで読む力が付いたと児童が感じていることがわかる。しかし、☆コースの「あまりできなかった」の児童に個別に理由を尋ねたところ、そのうちの一人は「友達のペースについていけなかった」という答えだったことから、その児童にとってはよい学習とは言えなかったと言える。



 少人数指導をしてどうだったかという問いに対しては、9割の児童が「とてもよかった」「よかった」と答えており、少人数での学習に満足していると言える。「あまりよくなかった」と答えた児童のうち二人は、少人数よりもTT学習のほうが自分に合っていると感じているようである。「6回しか当てられなかった」という児童は、前の2つの項目も「あまりできなかった」「あまり楽しくなかった」と答えており、学習が満足いくものではなかったことがわかる。
<児童の感想>
☆コース
「とてもよかった」「よかった」
・少ない人数だから、1時間に一人1回は発表できた。
・少人数に分かれたら、同じ意見の人が少ないし、授業の終わりに同じコースの人と「ここはこう思ったけどあなたはどう思った?」と話ができるから。
・自分の速さでできるし、分かりやすかったから。
・少人数に分かれていると話しやすいから。
・◇コースは先生と学習するけど、☆コースは自分で意見を出すので、違いがあるからよかった。
「あまりよくなかった」
・◇コースの人の意見も聞いてみたかった。
◇コース
「とてもよかった」「よかった」
・意味の分からない言葉や学習の足跡が貼ってあったからよく分かった。
・ゆっくりいけたので分かりやすかった。
・人数が少ないから、はずかしがらずに発表できたからよかった。
・しだの葉を見に行ったり、場面ごとにミニ劇などをしたりしたから、分かりやすかった。
「あまりよくなかった」
・先生が二人(ティームティーチング)いた方がすぐ質問できるから。



 以上のことから、物語文においても少人数指導は児童にとって満足のいくものであり、児童に力を付けさせるための有効な手段であると言える。ただし、少人数指導であっても個を大切にする指導が大事であり、児童一人ひとりがもっとしっかりと物語を味わえるような支援や教材研究、コース選択の際のレディネスの見極めをする必要があったと反省している。

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7 成果と課題
1)成果として











児童一人ひとりの表現力を高めるための手立てをいろいろ試みることで、次年度への課題が見えてきた。
少人数やTT指導等の学習形態の工夫や、授業の中で書く機会を増やすことで、書くことに対する抵抗が少なくなってきた。
子どもの実態に応じた授業の仕組み方や、学習形態の工夫の留意点が少しずつ見えてきた。
教員間の授業評価カードや児童の自己評価カードを効果的に活用し、次時の学習に活かすことができるようになった。
学校だけでなく、家庭でも読書や音読をする姿が見られるようなった。
基本的な生活習慣の定着は、学校だけでなく保護者への働きかけを続けていくことが大切だとわかり、保護者の声も聞こえてくるようになった。
(2)課題として









児童の教材に対する思いや実態を考慮し、教師自身の教材研究と関連させながら授業を仕組んでいく。児童の表現力の実態を評価する手立てを研究するとともに、単元において少人数・TT指導やグループ作りなど、学習形態を効果的に仕組んでいく。
生徒指導との連携を図った言葉遣いの指導、基本的生活習慣の定着を図るために家庭との連携を継続していく。そして、いずれはテレビやゲームに頼らない、言葉で伝え合う力を育てるための手立てを考えていきたい。
今後も個に応じた指導の充実を図り、児童一人ひとりの表現力の向上をめざすために、就学前からの働きかけも含めて来年度も更なる研究を深めていきたいと考えている

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◎校長から見た指導のポイント
 効果的な学習形態や指導方法の工夫を、全教職員の共通理解のもとで行う。
 学習プリントの資料を蓄積する。
 学習意欲を高めるための、安心な居場所が保障される学級づくりの支援をする。


 
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