本校は、昨年度「生活科」「総合的な学習の時間」で、問題解決のための話し合い活動の充実をめざして研修に取り組んできた。自分の考えを他者に伝えようと努力し、話し合うことで課題解決に結び付けようとするものの、テレビ世代で育っている子ども達の語彙の少なさや文法表現の未熟さ故に、自分の思いが十分に表現できない様子が多く見られた。また、昨年度から実施している美祢市学力調査の結果からも、自分の思いを表現すること、特に自分の考えを加えながら記述することが苦手である傾向が顕著に見られた。 これらのことから、昨年度の研究主題「自分の思いが生き生きと表現できる児童の育成」を引き継ぐとともに、今年度は表現力を身に付けるための原点である「国語科」を通して研修に取り組むことになった。国語科において、「言葉で伝え合う力」を高めることは、全ての学習の基本となり、全ての学習に関連する。そこで、研究主題を「自分の思いが生き生きと表現できる児童の育成」、サブテーマを「〜国語科を通して、自分の思いを言葉で伝え合う力を高める手立て〜」と設定し、確かな学力育成のための指導方法や指導体制等の工夫・改善に取り組むことにした。 (2)研究の仮説 研究主題に基づき、自分の思いを言葉で伝え合う力を高めるために、 1、深い教材解釈に取り組むこと 2、書く活動を取り入れること 3、言語環境を整えること の3点を手立てとし、次のような仮説を立て検証していく。
研修の全体構想 (3)研究推進の組織 1つめの柱:全学級授業公開による研究授業を通しての授業改善を進める。 2つめの柱:全職員が授業研究部・言語環境部・健康づくり部の3つの部に所属し、研 修を進める。 TOPへ戻る
自分の思いを言葉で伝え合う力を高めるために、書く力を付けていくことを重視し、各学級、授業の中で毎時間書く活動を取り入れ、書く機会を増やすようにした。 例えば、5年生「詩を味わおう」の授業では、イメージを膨らませるための手段として、書く活動を取り入れた。ワークシートに題材である雑巾を見て気付いたことなどの事実をまず記入し、次にそれから広がるイメージを書き、それらを基に短詩を作成した。このように、段階を踏んで詩を書いていくことで、全員の児童がイメージを膨らませて短詩を作ることができた。 また、3年生「まとまりに分けて書こう」(説明書を作ろう)では、説明書を書く際、児童のレベルに応じた3種類のワークシートを用意した。書くことが苦手な児童に対する手立てとして、実際に目玉焼きを作り、体験したことをすぐに説明書に書く活動を行った。これにより、抵抗なく書くことができる喜びを味わうことができた。 (2)少人数・TT指導について 昨年度までの算数科に加え、今年度は3・4・5年生の国語科でも2人体制で取り組んだ。しかし、国語科で少人数指導をすることに対し、どのような指導体制が一番効果をあげるのか、あるいは少人数指導をする際のグループ編成の仕方など、試行錯誤の連続であった。4月当初は、書くことは少人数指導、読み取りはTT指導が効果的との先入観があったが、研究を進めていくうちに、児童の実態や学習内容・学習過程に応じて少人数・TT指導の柔軟な組み合わせを考えていくことが大事だということがわかってきた。 (3)授業評価について 授業を児童にとって「わかる楽しい授業」に改善し、教師の力量を高めるために、教師同士で授業評価を行った。この授業評価カードも回を重ねるごとに変化している。私たちの評価の眼を養うために抽出児をあげ、評価及びその理由を書く項目を付け加えたり、評価項目の再検討をしたりして、より使いやすいものへと改善している。 (4)国語科の6年間を見通した関連図の作成 各学年、1年間の授業内容を横のつながりで考える時に、前学年までにどんな学習内容を理解しているのか、そして次の学年でどんな学習につながっていくのかが大切になってくる。つまり、学年間の縦のつながりをしっかり踏まえておくことが、1時間1時間の授業の仕組み方に大きくかかわってくると考え、関連図を作成している。指導案にもその1部を載せるようにしている。
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アンケートの結果を踏まえ、教育相談の中で、担任が実態に応じて児童にアドバイスをしている。また、生活が乱れがちになる長期休業前には、養護教諭と栄養士が「朝ごはんをしっかり食べる。」「早寝早起きをする。」ことの大切さを、各学級をまわって指導した。少しずつではあるが、保護者・児童ともに健康づくりへの意識が高まりつつある。 このように、言語環境を整えることや健やかな心や体を育成する健康づくりは、学習をするための根本的な基礎だと考える。この土台をしっかり築いた上に学習指導があるという共通理解のもとに、家庭と連携しながら児童の指導にあたっている。 TOPへ戻る
第4学年 国語科学習指導案
1 単元名 登場人物の気持ちを想像して読もう 教材名 「ごんぎつね」 2 単元設定について 本校では、物語文の学習においてはTTが効果的であるという仮説に基づいてTTでの学習に取り組んできた。なお、2学期「一つの花」の学習では、児童一人ひとりの学習をより確かにしたいという考えから、課題別少人数学習に取り組んだ。ここでは、場面の移り変わりや大事な言葉に着目して情景や登場人物の気持ちを読み取り、音読で表現しながら読み深めていくコースと、父親や母親の立場で日記を書くことを通して読み深めていくコースを設定した。コースの選択方法は、児童の学びたい方法を選択させて決めたため、学習後の感想には「音読をして(日記を書いて)人物の気持ちがわかったのでよかった。」と満足している児童が多かった。さらに、少人数で学習に取り組んだことについては、一人ひとりの活動の場が確保できたという理由から「良かった。」と答えた児童がほとんどであった。自分の思いを伝え合う機会が増えたことも、満足感につながっていると思われる。しかし、叙述をもとに想像を膨らませながら心情を読み取ることができる児童がいる一方で、心情のもととなる叙述が見付けられなかったり、心情の読み取りが浅く自分勝手な想像で考えてしまったりする児童も見られ、個々の読み取る力の差が感じられる。 本教材の主人公のごんは、いたずらばかりしていたが、兵十の母の死を通してうなぎをとったことを後悔し、償いを始める。神様の仕業と思われても栗を持っていくほど、兵十へ熱い思いが芽生えているごんとは裏腹に兵十にはその思いが伝わらない。兵十がごんの仕業と気付いたのは、ごんを火縄銃で撃ったあとであり、ぬすっとぎつねという見方が一変する。両者の心が触れたのが、ごんの死の時であることに話の悲しさがある。児童は、ごんの生き生きとした行動の様子から心情に寄り添いながら、読み進んでいくことができる。初発の感想においても、次の日も次の日も栗や松たけを持っていったごんの姿や、神さまの仕業といわれながらもあくる日に栗を持っていくごんの姿が、心に残ったとする児童が多かった。しかし、ここではごんの心情だけではなく、兵十の心情について読み取っていかなくては、死に直面したときになって二人の心が触れた悲しさが理解できない。ごんの気持ちを中心に読み取りながら、常に、兵十の気持ちにもふれながら学習を進めていく必要がある。また、作品中には、登場人物の心情や置かれている状況を暗示する情景描写があり、それをもとに想像を広げていくことができる楽しさもある。学習を通して、物語の世界の美しさ・楽しさ・悲しさを一人ひとりに感じさせていきたい作品である。 そこで指導に当たっては、以下のことに留意して取り組みたい。
3 単元の目標 ◎ 登場人物の人柄や心情を、叙述をもとに想像しながら読み、物語のおもしろさを味わ うことができる。 4 評価規準(◎特に本単元で身に付けさせたい力)
5 他教材等との関連 (読む領域) 6 指導計画(全10時間)
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7 本時案 (第二次 4/6) <☆コース> (1) ねらい いたずらばかりしていたごんが、兵十に同情の気持ちをもち、償いをする ようになる心情の変化を、叙述をもとに読み取ることができる (2) 準 備 ワークシート 振り返りカード (3) 学習過程
(4)評価 ごんが兵十に対して同情の気持ちをもち、償いを始めた心情の変化を読み取ることができたか。 <◇コース> (1)ねらい ごんが兵十にくりやまつたけを届けたときの様子や償おうとする心情を、叙述をもとに読み取ることができる。 (2)準備物 ワークシート 振り返りカード (3)学習過程と教師の支援
(4)評価 ごんがくりやまつたけを持っていったときの償おうとする心情を、叙述をもとに読み取ることができたか。 8 考察 (1)少人数指導について
(2)☆コースの学習の様子
(3)◇コースの学習の様子
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登場人物の心情や場面の様子を想像するといった読む力については、学習前に比べ、「よくできた」「できた」と答えた児童が多かったことから、少人数で学習することで読む力が付いたと児童が感じていることがわかる。しかし、☆コースの「あまりできなかった」の児童に個別に理由を尋ねたところ、そのうちの一人は「友達のペースについていけなかった」という答えだったことから、その児童にとってはよい学習とは言えなかったと言える。 少人数指導をしてどうだったかという問いに対しては、9割の児童が「とてもよかった」「よかった」と答えており、少人数での学習に満足していると言える。「あまりよくなかった」と答えた児童のうち二人は、少人数よりもTT学習のほうが自分に合っていると感じているようである。「6回しか当てられなかった」という児童は、前の2つの項目も「あまりできなかった」「あまり楽しくなかった」と答えており、学習が満足いくものではなかったことがわかる。 <児童の感想>
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