学力向上支援事業                                               〔義務教育課〕
○確かな学びを保障する学力向上支援員の効果的な活用
                      −
防府市立右田中学校−

1 学校紹介2 具体的な活動3 成果と課題4 校長から見た指導のポイント/  
実  践  の  ポ  イ  ン  ト
 学力向上支援員の活用により、よりきめ細かな学習支援・相談を充実させ、生徒の 学習上のつまずきや学習意欲の向上を図る。
 学校現場の学習指導状況の把握等を通して学力向上支援員自身の資質向上を図る。

1 学校の紹介

 本校は山口県防府市の北に位置し、藩政時代には藩校「明倫館」より91年前に設立された郷校「時観園」が創られるなど、伝統的に教育への関心が高い地域であり、現在も地域の学校教育へ寄せる期待は大きなものがある。
 学校目標「人間尊重の精神を基調に、豊かな情操、確かな学力、たくましい心身をもち、社会の変化に主体的に対応できる人間性豊かな生徒の育成」を掲げ、学習指導においては、「わかる授業」と「表現力」の育成をめざして、全校体制で取り組んでいる。 

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2 具体的な活動
(1)各教科における授業補助の現状
 本校では1時間だけではあるが実際の授業に補助として学力向上支援員が入っている。理解の程度の差が広がる中学生にとって、教員より年齢的にもより身近に感じる学力向上支援員は、気楽に質問できる存在として大いに歓迎されていると同時に、学力向上支援員にとっても、教員の授業を間近で見たり、生徒に教えたりできる体験はとても貴重なものだと認識している。
 
@ 数学
 単元「比例と反比例」の2時間目の授業に入ってもらった。生徒にとっては、初めて比例を文字の式を使って表す場面であり、抽象的な内容の学習であることから、生徒の理解の程度に差がつきやすいところである。特に、学力差に対応する個別指導での場面では一人でも多くの手が欲しいところである。学力向上支援員の専攻は数学ではないが、生徒が意欲的に学力向上支援員に尋ねることから、理解に時間がかかる生徒にも何とかわかるように教えようと工夫している姿が垣間見られた。やや一人の生徒にかかりきりになる傾向にあるので、短時間により多くの生徒に支援できるように、支援の内容を精選するようにアドバイスした。生徒にとってはより身近な存在だけに反応はよかった。

A 理科
 1年生の理科の授業に学力向上支援員一人に支援をお願いした。事前に授業の進め方について十分打ち合わせをする時間がなかったので、授業の最初は、どのようにしてよいか戸惑いが感じられた。授業が進むにつれて、理解に時間がかかる生徒を中心に個別指導をしてもらった。このことは生徒にとって、学習内容を理解する上で手助けになったと思われる。より効果的に生徒の支援ができるように、事前に十分打ち合わせをする時間をとることが今後の課題である。
 

(2)放課後の学習相談・支援の現状
 本校生徒の部活動への参加率は98.6%と極めて高く、放課後の時間はほとんどの生徒が部活動に参加している。テスト週間に実施している『学習タイム』の時間や、雨天のために外で活動することができない部活動のメンバーを除いては、図書室での支援の実施はいささか困難な面が見られた。

(3)保健室・相談室での学習支援
 保健室登校をしている生徒は、周囲を極端に気にするため、保健室の中で、1対1で丁寧に指導してもらった。生徒が学習をとても不得意にしていることに対して、自然に受けとめた指導をしてもらったため、生徒も素直に取り組んでいた。保健室登校生徒の中には、学力や人間関係等で悩んでいる生徒もおり、個別の指導が必要なため、学力向上支援員が保健室登校の生徒の指導にかかわるのは、その目的にかない、有効であると感じている。

(4)全校集会での活動
 生徒会が主催する全校集会の際に、学力向上支援員3人に講話をしてもらった。学力向上支援員は教職をめざす大学生であることから、学力向上支援員自身の中学校時代や高等学校での学習状況や学習方法、学習に関する悩みやその克服方法等、生徒の学習に参考になる事項について語ってもらった。また、なぜ現在教職をめざそうとしているのか、将来はどのような夢をもっているか等についても語ってもらった。生徒と年齢の近い学力向上支援員の話をうなずきながら真剣に聞いている生徒の姿が印象的であった。

(5)清掃時の共同作業
 学力向上支援員が生徒と接する機会は、授業や放課後の学習支援の時間に限られてくる。そのため、できるだけ多くの時間生徒と接し、生徒との関係を築くため、支援員たちは積極的に生徒の清掃活動に参加した。机を一緒に運んだり、床を並んで磨いたりすることを通して、生徒と目を合わせ、会話を交わし、意欲的に人間関係を築こうとしていた。この関係を基に放課後の学習指導に臨むことで、より効果的な支援につなげることができた。

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3 成果と課題
(1)成果
@ 生徒について
 [表1]が示すように、授業や放課後で、学力向上支援員の指導を受けた生徒のアンケート結果によると、9割近くの生徒が、自分の学習にとって役に立ったと回答している。
 具体的には[表2]に示す内容の他に、「日頃の授業ではなかなか質問をしづらいが、学力向上支援の先生が入られる授業においては雰囲気も和み、気軽に聞くことができた。また、質問をしたい時に他の生徒を気にせずに、必要な時に聞ける。」等、よさを指摘している意見が多かった。
[表1]
[表2]
A 保護者について
 保護者は、学力向上支援員の活動の様子を見ているわけではないのでなが、生徒の話を聞いて、[表3]が示すように、8割以上の保護者が役に立っていると回答している。
[表3]


(2)課題
 成果で示したように学力向上支援事業の有用性は確認できた。特に現在、開かれた学校が求められている中、様々な人材が学校の中に入り、生徒に多様なかかわりをもつことは極めて有意義であると考える。しかしながら、本校のように部活動参加率が98%以上の状況にあっては、放課後に実施する学習支援への参加者は限られたものになってしまう。放課後の学習支援と部活動をどのように両立するかが大きな課題である。
 次に、学力向上支援員の来校回数、時間帯である。支援員は大学生であることから、来校は授業の空いた時間となる。このため、毎週定期的な来校や本校が希望する時間帯の来校は困難である。場合によっては1か月以上も支援員が全く来校しないという状況も生じた。これではなかなか定着しない。学力向上支援員が定期的に来校できるよう、来校時間、来校回数を考慮して、これを大学の単位認定とする等の方策が必要と考える。
 いずれにしても、今後、様々な角度から生徒の学力向上を図る必要があることから、本事業を2年間実施した成果と課題を踏まえつつ、本校の実態に即した実践を続けていきたいと考えている。

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4 校長から見た指導のポイント
○ 学力向上支援員が授業中のかかわりをもとに、理解不足の補充や深化にせまる指導体制 の工夫をする。
○ 学力向上支援員が「質問に答える」ことを契機にして、「学び方」「学習の仕方」「学 習習慣づくり」等まで、食い込んだ指導の在り方を工夫する。
                            〜学習相談システムの構築〜
○ 学力向上支援員が「生き方」「考え方」等を全校生徒に発表することを通して、学習や  生活上の参考にする。

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