1 学校紹介 / 2 学校の現状と課題 / 3 不登校生徒の現状と支援
4 スクールカウンセラーの活用・具体的な活動内容 / 5 コーディネーターの役割
6 スクールカウンセラーへの相談件数等 / 7 成果と課題
課題
「スクールカウンセラー活用調査研究事業」の実践事例                 〔学校安全・体育課〕
 スクールカウンセラーの効果的な活用     
−防府市立右田中学校−
実  践  の  ポ  イ  ン  ト
悩みを抱える生徒が、早期に効果的にスクールカウンセラー(以下SC)のカウンセリングを受けることができる学校内の体制づくりとその啓発を行う。
SCとの連携による生徒の問題行動等の早期発見、早期解決のための効果的な支援の方法を研究する。
SCの指導のもと、教職員のカウンセリングに関する資質の向上を図る。
学校に適応しにくい生徒や問題を起こしがちな生徒の指導の在り方、その保護者・家庭への助言や支援の在り方を探る。
SCを通して、小中学校の連携を図る。

1 学校紹介
 
  校区は佐波川の右岸部で、東西約6km、南北約8kmと広い。雄々しい山として知られる右田ヶ岳を間近かに臨む。学校周辺には国道や高速道路が縦断している。また、住宅地と農村の両方を合わせもつ景観がある。
  本校は生徒数450名、学級数18の中規模校(平成17年度)で、県総合医療センターには病弱学級がある。生徒は「誠実」「敬愛」「勤勉」の校訓の下、生徒会活動、部活動に積極的に取り組む姿が見られる。児童養護施設から通学する生徒もいる。
  PTA活動も盛んで、各行事にたいへん協力的である。地域も学校を温かく見守っていただいている。
<右田中学校全景>
<相談室U>

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2 学校の現状と課題

  生徒は、概して明朗快活で素直で純朴である。反面、考え方が幼く自分勝手な行動をとる面もあり、トラブルも絶えない。全体的にきまりや時間にルーズなところも見られる。そこで、平成15年度から、全職員が共通理解し、「時間」「服装」「あいさつ」「掃除」の4項目を柱に重点的に指導してきた。また、平成15年度からSCと連携し、生徒指導上の問題に対応してきている。その結果、徐々に改善し、落ち着いた学校になってきている。
  しかし、集団生活の中で、相手を傷付ける言動をとる生徒、仲間にとけ込めない生徒や自分を上手に表現できない生徒が多く見られる。また、保健室・相談室登校の生徒、不登校生徒の支援の在り方が課題となっている。

 
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3 不登校生徒の現状と支援
  不登校・不登校傾向の生徒は現時点では8名いる。一人ひとりに応じたよりきめ細かな対応を図るために、SCを指導助言者としたケース検討会議やSCの助言を生かした関係諸機関との連携など、具体的な支援を中心に取り組んでいる。
  今年度、SCの勤務は毎週月曜日の予定であったが、休み明けということもあってか不登校傾向の生徒の欠席が多く、カウンセリングを予定していてもなかなか実施できない状態が続いた。そこで、1学期の途中からSCと相談の上で勤務する曜日を変更した。
「各学期の定期教育相談」
  1学期(6月)・・・学級担任による個別相談
  2学期(11月)・・1,2年生 全教員を対象としたリクエスト相談
  3年生 学級担任による個別相談
  3学期(2月)・・・学級担任による個別相談
設定している。また、保健室に心身の不調を訴えて頻繁に来室する生徒については、養護教諭や学級担任と連携を図りながら、カウンセリングを受けるよう積極的に促している。
D 相談室・保健室登校の生徒や教室復帰への支援相談室・保健室登校の生徒へのカウンセリングを実施するとともに、時にはSCに勉強を教えてもらう、腕相撲をするなどの活動を通して、SCとのよりよい関係を築きながら教室復帰へ向けた支援を行っている。
E 特別な支援を必要とする生徒へのカウンセリングと諸検査の実施
  「授業が全く分からないから、教室にいても意味がない」と訴えて不登校傾向になった生徒に対して、SCによるカウンセリングとWISCV(日本文化科学社)の検査を実施し、その判定結果をもとに教員・保護者への支援と今後の方針についての助言を得た。
F 緊急事態発生時における心のケア
  学校生活において、想像もつかない緊急な事態が発生することがある。その時に生徒が受けるショックは、思春期ということも考慮に入れると、相当なものと思われる。
  本校でも、2学期当初に教師の病死という生徒の心に大きな悲しみを与える出来事が起こった。その時、すぐに下記のような生徒の心のケアにあたった。
 ・学級担任による生徒の状況把握と気になる生徒へのカウンセリングの勧め
 ・昼食時及び昼休みの時間を利用してのSCによる生徒観察
(4)小学校との連携

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@ 小学校からの相談
  本校校区内2校の小学校の教育相談担当者に、SC勤務予定日を連絡し、小学校からの相談にも気軽に応じられるよう配慮している。また、「小・中生徒指導三校連絡会」に教育相談担当者も出席して、SCの活用を呼びかけている。
 その結果、小学校からの相談依頼が増え、教員だけでなく、児童本人、保護者に対してのカウンセリングも行った。中には2年連続してカウンセリングを行っている事例もある。
A 小中連絡会への参加
  昨年度から、新入生の入学前に実施する「小中連絡会(情報交換会)」へ、SCも参加し、専門的立場からの助言も得ている。
  今年度の新入学生については、気になる傾向が現れた時には、学級担任と連絡をとって、早めにSCと本人、保護者のカウンセリングを行った。SCが「小中連絡会」に出席していたことが、カウンセリングを行う上に大きく役立ったことは言うまでもない。そのためか、今年度、1年生の不登校、相談室登校は現在のところいない。
  SCの活用で最も重要なのは、コーディネーターとしての学校の教育相談担当者である。
  「カウンセリングを受ける」ということに対して、生徒も保護者も教師も少なからず抵抗があるのが実情である。そこで、コーディネーターである教育相談担当者が、常にアンテナを張って、カウンセリングを必要としている生徒・保護者等が抵抗なくカウンセリングを受けられるように配慮する必要があることから、普段から生徒とふれあうことはもちろん、学級担任、養護教諭、生徒指導主任などと情報交換をしておくことが大切である。
(1)生徒への支援

@ 全校集会で紹介
  希望と不安を抱いて新しい学年を迎えた生徒に対して、全校集会でSCを紹介した。二人のSCが直接生徒に言葉をかけることによって、悩み等が生じた時に相談しやすい雰囲気をつくっている。
A 生徒とのふれあいの場の設定
  昼食時間、SCは学級において、生徒・学級担任と一緒に食事をとりながら、ふれあいを深めている。昼休みに相談が入っていない場合は、そのまま教室で生徒に接している。
B 定期教育相談
  本校では全校生徒を対象とした定期教育相談を毎学期実施している。各学期ともに5日間程度を教育相談週間として充て、悩みやストレスを抱えている生徒の実態を把握している。
  SCは、事前アンケート作成の段階から参画するとともに、生徒が希望すればSCとの相談ができるようにしている。
  また、定期教育相談実施後、気になる生徒に関して情報交換を行い、専門的なカウンセリングが必要と思われる生徒については、SCの相談につなげている。

 
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<生徒とのカウンセリング>
C 悩みを抱えた生徒へのカウンセリング
 生徒が抱えている悩みやストレスを早期に発見し解決に向けて支援するためにSCとのカウンセリングを勧めている。
  相談は教育相談担当者に予約する、直接カウンセラーに予約するなどの方法がある。生徒の相談時間は原則として、昼休みか放課後を充てているが、内容の深刻さや緊急の場合はその限りではない。
  SC勤務予定日を掲示して、生徒がカウンセリングの予約がしやすいよう配慮している。
  その他、教育相談担当者は、生徒のサインをキャッチするため、毎朝保健室に提出される健康観察簿をもとに、生徒の出席状況を把握し、不登校傾向が見られる生徒に対しては、学級担任や保護者の理解を得て、SCとの相談の場を
(2)保護者への支援
@ PTA総会・地区懇談会での紹介
  5月のPTA総会においてSCを紹介し、カウンセリングの積極的な活用を呼びかけている。また、7月の地区懇談会でも紹介し、保護者はもとより地域の方々にも、SCについての理解を深めてもらうよう配慮している。
A 「教育講演会」の開催
  PTA主催で、SCを講師として「思春期の子どもに、親としてどのように向き合っていけばよいか」をテーマに、保護者対象の「教育講演会」を開催した。
B 生徒指導だよりの活用
  生徒指導だよりにSCの勤務日・相談可能時間帯を載せて保護者への啓発に努めている。また、SCの寄稿も依頼している。
C 保護者へのカウンセリング
  子育てや子どもへの接し方などで悩みを抱えている保護者が、SCとのカウンセリングを通して少しでも心が軽くなるよう、学級担任または教育相談担当者が積極的に声をかけてカウンセリングを勧めている。 保護者からの相談は、在籍している生徒の相談はもちろん、他校に通学する兄姉や弟妹に関する相談についても対応するなど、幅広く応じている。保護者の中には一昨年から継続的にカウンセリングを受けていたり、小学生(兄姉が本校に在籍)の子どものことで相談に来校したりするケースもあり、SCの存在が保護者の心の安定につながっている。
「復伝会」
B 『居心地のよい学校』にするための取組み
  生徒指導部では『450人一人ひとりにとって居心地のよい学校にするために』と題して、「いじめ防止強調月間」を毎学期設定している。その取組みの一つとして、各種のアンケート調査や諸検査を実施している。
  SCは全校生徒を対象としたアンケートや調査作成の段階から参画するとともに、その結果をもとに、気になる生徒についての助言を得ている。
1学期(6月〜7月)・・・・Q−U検査・いじめ実態調査
生活委員会アンケート「嫌な気持ちになる言動」
2学期(11月〜12月)・・教育相談事前アンケート
生活委員会アンケート「仲間が喜ぶ言動」
3学期(2月)・・・・・・・いじめ実態調査・教育相談事前アンケート
@ 教職員の資質・カウンセリング技能向上のための校内研修
  SCを指導助言者として、教職員全員を対象とした校内研修会や、不登校生徒のケース検討会議等を開催している。 
A カウンセリング前の「情報交換会」とカウンセリング後の「復伝会」の実施
  カウンセリング前には、できるだけSCと該当の生徒の学級担任との「情報交換会」を設け、カウンセリングがスムーズに行われるよう配慮している。
 また、カウンセリング終了後は、必ずSC、学級担任、教育相談担当者等による「復伝会」を実施している。SCの守秘義務に十分配慮しながらも、できるかぎりの情報の共有化を図ることで教職員との連携がスムーズに運んでいる。                            
(3)教師への支援

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6 スクールカウンセラーへの相談件数等(H17.4〜11)
・SCによる継続的なカウンセリングにより、相談室登校だった生徒が、教室に完全復帰することができた。
・問題を抱えた生徒が、小学校の時にカウンセリングを受けていたことから、SCからの具体的な情報によって、本人・保護者へ適切な対応ができた。
・不登校生徒に関するケース検討会議にSCが参加することによって、本人、保護者へ適切な対応ができた。 
・不登校生徒が、カウンセリングにより保健室登校ができるようになり、さらに諸検査の結果を通して、本人の状況を専門的に分析することができた。今後の対応についても、教師・保護者へ適切な助言が得られた。
・不登校生徒の保護者が、定期的にカウンセリングを受けることで心の安定を保つことができるようになった。
・課題を抱えた生徒に関して、学級担任はSCの様々な情報から本人の内面を把握でき、担任としての支援方法を改善することができた。
・SCを講師とした研修会を実施し、教師の資質向上を図ることができる適切なアドバイスを具体的に得ることができた。
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7 成果と課題
成果
・SCを身近な存在として生徒に紹介し、特定の生徒だけでなく、誰もがいつでも気軽に相談できる体制づくりをめざしてきたが、ふれあいの場をもっと多くするなどさらに工夫する必要がある。
・担任や保護者の希望があり、生徒にSCとのカウンセリングを勧めるが、自己表現の苦手な生徒ほどカウンセリングを拒む傾向にある。そういった生徒に対する対応を、SCの助言を得ながら考えていく必要がある。  
・SCの助言を得ながら、小学校との連携を強化し、不登校の未然防止と不登校生徒の学校復帰のための取組みを続けていきたい。
・学校が保護者に対してSCへの相談を促した場合、断られるケースが数例あった。今後とも、SCに関する正しい理解や啓発がより一層必要であると考えている。