確かな学力育成のための実践研究事業                                 〔義務教育課〕
学習意欲を高め、「確かな学力」をはぐくむ授業の創造
 〜個に応じた算数科の指導を通して〜
                   −下関市立岡枝小学校−


   1 学校紹介2 研究内容3 成果と課題
実  践  の  ポ  イ  ン  ト
 個に応じた適切な授業形態を仕組むには、児童の実態把握と教材研究をもとに、授 業形態を選択しなければならない。そのために、学力検査やアンケート等の分析、ま
 た学習内容と授業形態の特質との適合性について研究を深め、実態調査や授業評価を
 くり返し、より効果的な指導の実現をめざす。

 全教員が公開授業を行い、指導案の検討、授業記録、研究協議等を通して授業改善
 に努め指導と評価の一体化をめざす。

 
児童に「学び方」や「学習規律」を身に付けさせるために、発達段階を考慮し、系
 統立った指導に努める。


1 学校の紹介
 本校は、北の華山をはじめ四方を山に囲まれた「小日本」と呼ばれる菊川盆地のほぼ中央に位置している。学校周辺には田園が広がり、初夏の麦と秋の稲穂と、年に2度黄金色に色づく自然豊かな地域である。岡枝地区は昔より「地域の子どもは地域で育てよう」という思いが強く、それは「岡枝教育」という言葉で今日まで脈々と引き継がれている。地域の人々の教育に対する積極的な協力体制のもと、子どもたちは明るく素直で、伸び伸びと成長している。
 平成17年度で開校131年目を迎え、現在児童数138名、特殊学級を含めて7学級の小規模校である。
 本校の学校教育目標「豊かな心と健康な体をもつ児童の育成」のもと、長年継続してきた縦割り班を活用した「ふれあい活動」の推進に努めており、これは岡枝教育の大きな特
色の一つとなっている。
 平成10・11年度は「豊かな心を育む教育実践研究協力校」の指定、12年度には「才能開発実践教育賞」を受賞。さらに、平成12・13・14年度は「幼保・小連携教育」の指定を受け、菊川町の拠点校となった。平成15・16年度は、文部科学省の「総合的な学習の時間」モデル事業地域指定を受け、“小中高の有機的な連携の在り方”について、研究実践を行った。さらに、今年度より3年間「確かな学力育成のための実践研究事業」を受けることになった。

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2 研究内容
(1)研究主題設定について

今まで育んできた子どもたちの豊かな「心」を真の『生きる力』につなげていくためにも、教科学習を充実させ、基礎・基本の力を定着させる必要性を切に感じている。
 児童の実態を把握し、そこから生じる課題を見据え、「確かな学力」の向上を図るための方策について実践研究し、児童一人ひとりの学力の定着・向上をめざしたいと考えている。「確かな学力」について、本校ではいわゆる「読み・書き・計算」に代表される『学習の基礎・基本となる知識や技能』と『自ら学び考える力』であると考えている。すなわち、「知識や技能はもとより、自ら学ぶ意欲・思考力・判断力・集中力・表現力・学び方・自己評価力などの資質や能力まで包含したもの」ととらえている。
 児童の実態として、「確かな学力」の個人差の大きさが挙げられる。この実情を打破し、一人ひとりに基礎的な学力をしっかりと身に付け、意欲的に学ぶ児童を育成したいと願い、研究主題を「学習意欲を高め、『確かな学力』をはぐくむ授業の創造」とした。
 それに加え、算数で実施しているCRTの結果からみても、基礎的・基本的な学力の定着に、もっと力を入れるべきであると考え、事業の初年度である本年度は、算数科を主な研究教科とし「〜個に応じた算数科の指導を通して〜」を副主題とした。

(2)主題解明の方途
   @ 研究の視点
    □ 指導方法の工夫改善   □ 指導力の向上   □ 学び方の確立
   A 研究の全体構想
(3)実践事例
【指導方法の工夫・改善】
 @ 実態把握

 児童、保護者対象のアンケートを実施した結果、グラフ(抜粋)のように、90%以上の児童が“算数が好き”または“どちらかといえば好き”と答え、少人数指導についても肯定的だった。決して算数の学力が高いわけではなく、むしろ全国平均からすると若干低いと思われる。にもかかわらず、算数に興味・関心をもっている児童が多いことは、学習効果も大いに期待できるし、指導する立場からしても前向きな気持ちは大切にしたいと思う。
 また、保護者のアンケート結果も同様だったが、手厳しい意見もあり、今後の実践の参考と同時に、学級に合った学習・授業を想定することが可能になった。

    ◆ あなたは算数が好きですか?

    ◆ 2つのグループに分かれて勉強することをどう思いますか?
 
 A 授業形態(少人数指導
 実態把握から少人数指導の形態も、当初の計画に修正を加え、同時にコース名を「華山(菊川北部の名峰)コース」「こんぞう(校歌にも歌われた裏山)コース」と命名した。
   華山コース…自力解決の力を養うことをめざすグループ
   こんぞうコース…基本に忠実に考え方の確立をめざすグループ
 3年生は、学習規律の定着を重視し、前半はTTを主としてコンピュータ学習を取り入れる形で行い、徐々に児童選択による少人数指導へ移行した。
 4年生は、均等分けをベースに、内容に応じて習熟度別を取り入れる形から、プレテストの結果をふまえ、子どもたち自身がコース選択をする形へ移行した。高学年に向け、子どもたちに自己評価能力を付けさせ、自分に合った学習スタイルを選択する力も付けていきたいという考えからである。
 
高学年は、児童選択による習熟度別を基本として進めてきたが、コース名が決定してからは各コースの学習方法を明確に示し、児童に選択させるように変更した。
【指導力の向上】
@ 授業公開
 指導力の向上には研究授業の実施が不可欠と考え、全員が授業を公開することとした。昨年度までのモデル事業の指定で実施していた町内小・中・高への公開も継続し、今年度は3回実施した。児童の学び及び指導の連続性という点からこの校種間連携は極めて重要で、授業のみならず研究協議にも参加し合いそれぞれの立場から意見交換を行った。今の学習が今後どう変化していくのか、中学校でのつまずきが、小学校のどの内容と関連があるのか等を少しずつ明確にしていくことができた。
A 小中連携事業

 今年度、同校区の中学校が小中連携教育実践研究校となっており、小中学校の相互乗り入れによる連携を図っている。大きなねらいは次の2点である。
・小中一貫指導の年間計画と体系的な指導の在り方

・不登校の未然防止に向けた小中の滑らかな移行

 週1回(2時間)、中学校から英語担当教員が来校し、6年の英語活動や国際理解の学習を小学校教員とTTで指導にあたっている。児童にとっては、本事業担当教員を介して中学校の様子を知ることができ、進学の不安軽減にもなる。また、教師の立場からすると、児童の学びの連続性を支えるための情報を得る機会にもなっている。相互乗り入れといいながら、中学校の授業を補佐するまでにはいたっていない。 
 2月16日(木)に、児童対象の中学校説明会が行われ、その中で、児童が直接中学校1年生の授業を参観する時間が設定された。これが、進学の不安解消になるとともに、子どもたちの自信へとつながっていくことを期待している。

B 自己評価(ふりかえりカード)の活用
 児童自身が自分の理解度を把握し、できたこと・できなかったことを明確にするために、4年生以上で実施している。指導者の立場からすると、児童の理解度を把握した上で、次の授業を組み立てることは、指導力の向上に大きく影響すると思われる。また、カードの項目には、授業に対する「要望」も入れており、児童の意見を授業の流し方や教材教具の提示等に反映させることができ、授業評価・授業改善にもつながっている。
C 指導技術の習得

 教師の指導技術向上のために、指導案検討や研究協議の際、視点を絞って研修を進めるようにしている。
 例)授業…板書、発問、時間配分、一人学びのさせ方、教材提示の仕方 等
   研修…指導案形式、研究協議の仕方、授業記録の仕方、評価方法 等

【学び方の確立】
 学び方の確立を研修の視点として挙げてはいたが、具体的な取組みは明確にしていなかった。研修を進めていく中で、次第に児童にとっての障害となるものも明確になり、いくつかの具体方策も決定した。しかしながら、本年度は、十分な時間がとれず、各学年独自で対応している状態である。
@ 自己評価能力の育成
  ふりかえりカードで自分の理解度を把握させ、自分に合った学習方法を見極める力を 身に付けさせる。
A 岡枝スタイルの確立
  筆算の繰り上がりの表記や割合の関係図の書き方など、特に規定されていない事柄に  ついて、岡枝スタイルを決め、学年に応じて系統立った指導をしていくことで、学びの 連続性を保障する。
B 道具の準備・使い方
  算数の授業研究を進める中で、どのような学習にも対応できるように、常に準備して おきたい道具について、共通理解できた。また、定規やコンパスなどの正しい使い方に ついても、発達段階に応じた系統立った指導の必要性を感じている。
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3 成果と課題
(1)指導方法の工夫改善については、CRT分析や児童保護者へのアンケートで実態把握ができ、方向性や系統立てて実施すべきものも見えてきた。また、少人数指導についても、児童を分けるのではなく、授業の仕方を区別し選択させる方向へと移行しつつある。
(2)指導力の向上については、授業公開の実施に加えて、教材教具の洗い出しを行い、学習環境を整備することで、授業構成の幅も広がり、少しずつではあるが、着実な成果を上げている。
(3)学び方の確立については、年間を通して課題を洗い出すことになったが、本研究の今後の方向性を探るための手がかりがつかめたことは、大きな成果だと感じている。

 次年度の研究については、本年度の成果を踏まえ、発展させるものと継続させるものを見極め、系統立った計画のもとに進めていきたい。明確な数値として、把握しているわけではないが、児童の算数における学力および意識は、確実に上向いていると思われる。しかし、その反面、文章読解力や表現力が十分身に付いていないのは事実である。そういった点を十分に踏まえた上で、副主題及び領域を決定し、具体的な方策を考えていきたい。
◎ 校長からみた指導のポイント                     

○「確かな学力」の育成は、「豊かな心」「健やかな体」とともに、“生きる力”を育む教育につながるという基本理念のもと、研究に当たる。
○ 研究の視点である「指導方法の工夫・改善」「指導力の向上」「学び方の確立」について具体的内容を検討・整理し、見通しをもった実践を展開する。
○ 継続的な学校評価・各種アンケート・CRT・振り返りカード等により、指導結果の収集・分析を行うとともに、指導と評価の一体化をめざした授業改善を図る。
○ 研修の現状や児童の実態について、進んで情報発信し、保護者や地域の理解・協力を得るとともに、各方面からの指導を受けながら研究を推進する。


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