学力向上支援事業                                               〔義務教育課〕
○生徒一人ひとりのつまずきの解消と学習意欲の向上
                      −
防府市立佐波中学校−

1 学校紹介2 研究内容3 成果と課題4 校長から見た指導のポイント/  
実  践  の  ポ  イ  ン  ト
 生徒一人ひとりに応じた学習支援を展開し、つまずきの解消、学習意欲の向上を図る。
 生徒と学力向上支援員の信頼関係を醸成し、生徒の自己肯定感の向上を図る。主体的に学ぶ態度を育成するために、効果的な放課後の時間の運用方法を探り、生徒の基礎学力の向上をめざす。

1 学校の紹介

 本校は防府市の中心部に位置しており、学級数14(内特殊学級2)、生徒数365人、教員数31人の学校規模である。
 学校教育目標に「人間尊重を基盤とした規律と秩序のある学校生活を確立するとともに、基礎学力の定着を図り、自主・自立の気概と共生の精神に満ちた心身ともに健康でたくましく生きる生徒を育成する」を掲げている。
 その中で、学習指導に関する重点目標として「基礎学力の向上」「学習意欲の向上」「きめ細かな指導の充実」「体験的学習の推進」をあげ、具体的には「わかる授業の展開」「少人数指導の充実」「学力向上支援事業による学習ガイダンスの実施」「興味・関心に基づく総合的な学習の時間」に取り組んでいる。
 本校では平成14年度より放課後に学習・進路に関する相談活動や補充的学習(以下学習ガイダンス)を実施し、基礎学力の保障、学習意欲の向上を図るとともに生徒の自己肯定感を高めようとしている。
 平成16、17年度は学力向上支援事業を活用し、山口大学の大学院生、学部生の協力を得てより多くの生徒に対応することとした。


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2 研究内容
(1)支援生徒
 
 学期始めにつまずきをもつ生徒を選出し、本人・保護者の同意のあるものを対象生徒とした。自ら希望する生徒については随時申し出をうけた。

(2)基礎学力の定着および学習意欲の向上をめざす補充的学習の積み重ね
 生徒一人ひとりのつまずきに対応できるように小学校での学習内容を含めた基本的な問題集や参考書を多数用意した。活動終了時には、わかるようになったことがらを確認することで生徒の努力を認めるような声かけをした。多くの生徒はテストの点に成果があらわれ、学習への意欲化につながっている。

(3)学力向上支援員との信頼関係の醸成
 生徒は月に1〜2回の支援、支援員は一度に2〜3人の対応とした。多動傾向、LD傾向の生徒には、可能な限り一対一の対応、また孤立しがちな生徒には固定した支援員の対応を図った。さらに、生徒の個別学習記録用紙を用意し、学習内容等を次の支援員へ申し送るようにした。継続的に来校する支援員と顔なじみになり、「久しぶり」「わかるようになったね」「学力が伸びてきたね」など互いに関係づくりができた。

(4)調査研究の方法
@ 対象学年・生徒
・ 全学年
・ 平日は学級担任や教科担任との共通理解の下に支援生徒を決めて参加を呼びかける。定 期テスト前及び長期休業中は希望生徒の自主参加も可能とした。
・ 支援を受けた生徒 平成17年度(H18.1月末現在)
 述べ人数 1,478名 (含 教員だけによる学習ガイダンス 143名)
 実数    185名 (1年91名、2年35名、3年59名)
 10回以上の支援を受けた生徒実数  53名    
A 開設期間
・ 平成16年7月1日〜平成18年3月30日
・ 運動会、文化祭、総合的な学習の時間発表会等の行事前は休みとした。      
B 開設曜日・時間・場所
・ 平日放課後 16:00〜
・ 長期休業中 10:00〜12:00
・ 図書室
・ 支援員来校日 平成16年度 90日  
         平成17年度(H18.1月末現在) 118日
C 指導教科
・ 数学、英語、国語、理科、社会
D 学力向上支援員人数
・ 平成16年度            
  延べ人数 272名  実数 18名  
・ 平成17年度(H18.1月末現在)
  延べ人数 381名  実数 42名

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3 成果と課題
(1)成果
@ 基礎学力の定着と学習意欲の向上
 当初生徒たちには「成績が悪いから学習ガイダンス」と受け止める向きがあったが、「わかるようになるから、やる気が出るから」と受け止めに変化がみられるようになった。また同程度の学力で、支援を受けた生徒と受けなかった生徒ではテスト結果などで明らかに差が出てきた。
 
A 支援生徒個別事例(軽度発達障害等の傾向がある生徒)
 友人とのトラブルが多く、成績は不振であった。断続的、集中的に支援をし、信頼関係を築くためにできるだけ同じ支援員が対応できるようにした。1年英語から繰り返し学習した結果、単語力がつくとともに学習内容によっては理解が進んだ。テストの得点があがることで自信をもち、苦手な数学にも取り組むようになった。

B 学力向上支援員との信頼関係の醸成
 生徒は支援員と年齢が近いため親しみをもっている。支援員の来校理由も「わかったという生徒を見ると嬉しい」「顔なじみの生徒の成長が楽しみ」としている。

C 保護者の受け止め方
 学力向上支援員との学習は非常に役立っている、今後も是非継続してほしいという声が多い。

D 教職員の受け止め方
 教員は本事業が学力向上のみならず生徒理解に役立ったととらえ、今後も継続したいと考えている。特に、軽度発達障害等の傾向がある生徒への支援は有効であったと受け止めている。
 

(2)課題
・ 家庭との連携・・・家庭での学習習慣の定着を図ること。
・ 特別支援教育コーディネーターとの連携・・・生徒の学力や性格の特徴をとらえ、情報を共有化した上での一貫した指導の在り方を研究すること。
・ 今後、何らかの形で学力向上のための支援を得るための方策をたてること。

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4 校長から見た指導のポイント
 本事業の成果は前述のとおりであるが、本事業が今後の学校教育の方向を先進的に示しているところもあり、本年度限りで終了することについては非常に残念である。全教職員あげて、このような取組みを継続したいと考えており、特に本校において学力差の大きい生徒の実態を考えるとき、進んでいる生徒への対応も必要であると考えている。生徒の実態を把握して学力に応じたきめ細かい指導の方策を今後も考えたい。


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