キャリア教育の推進                         〔高校教育課〕

 自分の道は自分で切り拓く 
                         −山口県立宇部西高等学校−

    1 学校紹介2 具体的な活動内容3 成果と課題
実  践  の  ポ  イ  ン  ト
体験的な学習を中心に、事前学習・まとめ・研究発表・意見発表などにより、将来の職業生活で必要とされる態度やコミュニケーション能力を養う。
生涯学習・専門学習への動機付けとなるように、専門性の高い講演・講義を導入する。

1 学校紹介

大正7年に宇部村立宇部実業補習学校として創立、以来造園土木科や園芸科などを中心に農業教育に力を注いできたが、昭和55年に普通科を併設して山口県立宇部西高等学校と校名を変更した。さらに、平成10年にはそれまでの各学科を廃止して総合学科に改編した。平成17年4月現在、各学年5学級で、全校生徒数は601名(男子185名、女子416名)である。
 生徒の進路状況(平成17年度)については、四年制大学27人をはじめ進学が140人、就職は県内を中心に60人となっており、年々進学希望者が増えてきている。伝統ある造園にかかわる進路や、総合学科改編以降希望者が増えてきた福祉にかかわる進路については、就職を中心に進路先が充実している。

宇部西高校

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2 具体的な活動内容    
 本校は総合学科高校であるため、1年次に原則必履修科目の「産業社会と人間」2単位を履修する。総合的な学習の時間は、2年次に「未来探求」として1単位、3年次には「卒業研究」として2単位履修し、3か年を通してキャリア教育を推進している。
 これから紹介する活動内容は、これらの授業の中で主に実施している。

平成17年度 キャリア教育 年間指導計画
1年「産業社会と人間」 2年「未来探求」 3年「卒業研究」
「産業社会と人間」の意義とねらい
自分を見つめよう1(R−CAPテスト)
系列説明1
自分を見つめよう2(自分史)
「未来探求」の意義とねらい
ライフプランの内容再検討
2年次の進路計画作成

「卒業研究」の意義とねらい
調査・研究(→7月)
外部講師講義@

職業の種類とその特徴
勤労・職業の意義と望ましい勤労観
事業所見学に向けて
自分を見つめよう3
系列体験学習1
事業所見学
事業所見学発表会に向けて
進路実現に向けて情報収集1
進路実現に向けて情報収集2

個人面談・調べ学習1



連携講座@



科目選択ガイダンス1
福祉について考える:福祉講演会
事業所見学発表会
系列科目選択について1(系列へ質疑応答)科目選択
系列体験学習2

個人面談・調べ学習2

個人面談・調べ学習3
科目選択の一部修正
夏休み各種調査・体験学習について
連携講座A
連携講座B

連携講座C

外部講師講義A
夏休み各種調査・体験学習について 表現力の養成(小論文) 連携講座D
夏休み各種調査・体験学習クラス別発表会に向けて
夏休み各種調査・体験学習クラス別発表会

夏休み各種調査・体験学習クラス別発表会まとめ
夏休み各種調査・体験学習全体発表会に向けて
夏休み各種調査・体験学習全体発表会
上級学校について(大学・短大・専門学校)
夏休み各種調査・体験学習発表会に向けて
夏休み各種調査・体験学習クラス別発表会






面接指導

調査・研究(→11月)

連携講座E

連携講座F



10 大学・短大・専門学校見学に向けて

科目選択ガイダンス2
大学・短大・専門学校見学
系列科目選択について2(系列へ質疑応答)技能五輪参加・見学
履修計画作成
夏休み各種調査・体験学習発表会まとめ

「卒業研究」の意義とねらい
系列別「卒業研究」説明会
技能五輪参加・見学
進路学習講座
連携講座G


卒業研究中間発表会

技能五輪参加・見学

11 ライフプランについて
ライフプラン講演会
調べ方・発表の仕方
マナー講習

系列別先輩講演会
12 私のライフプラン 「卒業研究」テーマ決定に向けて 卒業研究教科別発表会
ライフプランクラス別発表会に向けて
ライフプランクラス別発表会
「卒業研究」教科別ヒアリング1
卒業研究全体発表会
卒業研究を学んで
ライフプラン全体発表会に向けて
ライフプラン全体発表会の事前指導
ライフプラン全体発表会
「産業社会と人間」を学んで
「卒業研究」教科別ヒアリング2
「卒業研究」教科別ヒアリング3
「卒業研究」テーマ発表会
「未来探求」を学んで
(1)キャリア・アドバイザーの活用

@外部講師講演会1:平成16年5月10日(月)
 本校1年次生全員を対象に、株式会社宇部井筒屋・十川謙司氏より「勤労・職業の意義と望ましい勤労観・職業観」という演題で講演をいただいた。勤労の大切さ・大変さをはじめ、職業人に望まれることを厳しく話していただき、社会に出る心構えについて学習した。

社会の基本はあいさつから

A外部講師講演会2:平成16年6月7日(月)
 本校1年次生全員を対象に、社会福祉法人健寿会高千帆苑・山根峯子氏より「福祉について考える」という演題で講演をいただいた。本校は福祉関係の職種を希望する生徒が多いので、福祉施設の実状や日常の仕事内容・福祉体験実習を行う上での心構えなどについて話していただいた。

B外部講師講演会3:平成16年11月25日(木)
 本校1年次生全員を対象に、株式会社エフエムきらら・井上悟氏より「私の歩んできた道」という演題で講演をいただいた。ライフプラン作成にあたり、自分の夢を実現させるために必要なことや人生の岐路で選択をする際のヒントなどについて話していただいた。

C卒業生講話:平成16年7月13日(火)
 本校3年次生全員を対象に、本校の卒業生のうち一般企業・教員・警察官・保育士・大学などに進学・就職した6人を呼んで講演会を実施した。進路決定にあたって注意したことや、現在の自分の社会生活の様子などについて、パネル・ディスカッション形式で実施した。

Dキャリアセミナー1:平成16年12月3日(金)
 本校教職員を対象に、宇部商工会議所・渡邉輝弘氏より「今ある由縁を考える」という演題で講演をいただいた。学校教育の中で教員が生徒に与える影響力の大きさの話を中心に、宇部市経済の現状などについても話していただいた。

Eキャリアセミナー2:平成17年2月24日(木)
 本校教職員を対象に、山口情報ビジネス専門学校・岡村慎治氏より「面接指導の実際」という演題で講演をいただいた。就職試験や進学試験で実施される面接試験でのポイントなどについて、具体的に実技も交えて話していただいた。

教職員研修会

(2)各種体験学習

@事業所見学:平成16年5月21日(火)
 本校1年次生全員が、県内の事業所10か所を5組に分かれて見学した。食品加工・部品製造・放送サービスなどの事業所で実際に働く姿を見学し、その後、見学先別に報告を行う発表会を実施して情報の共有化を図った。

A福祉体験実習:平成16年6月25日(金)
 本校1年次生全員が、宇部市近辺の老人介護施設9か所に分かれて実習を行った。実習の内容は園によって異なるが、シーツ準備などの施設スタッフの補助、簡単な遊びや会話などの交流、レクリエーションへの参加など、福祉施設の現状を体験してきた。

福祉体験学習での交流

B夏休み体験学習:夏季休業中
 本校1年次生と2年次生の全員が、就業体験やオープンキャンパス参加などに取り組んだ。就職希望者は保育園や造園会社などで就業体験を行い、進学希望者は大学や専門学校などのオープンキャンパスへ参加し、体験後、各クラスで報告発表会を実施した。

C上級学校見学:平成16年10月6日(水)
 本校1年次生全員が、県内の大学3校・短大2校・専門学校6校を、5組に分かれて見学した。本校卒業生の多い学校を選び、学内見学、学校説明及び実際の授業への参加など、上級学校を体験した。

D進路体験学習:平成17年1月24日(月)
 本校2年次生全員が、希望進路別に12班に分かれて体験学習を行った。講座は、研究施設訪問・福祉介護・保育・調理・理美容などで、講義のほかに実習を伴うものが多く、講師を卒業生とした講座も多かった。

      
保育教材を作る

E事業所見学発表会:平成16年6月10日(木)
 本校1年次生全員が、見学した県内の事業所10か所の内容について、各クラスから選出された代表者10人がそれぞれの報告を行った。仕事の内容のみならず、働く人の姿を見て感じたことなど、幅広い発表であった。

F夏季体験学習発表会:平成16年9月27日(月)
 本校1年次生と2年次生の全員が、実施した就業体験やオープンキャンパス参加などについて、全員が各クラスで報告発表会を行った。さらに、1年次生は各クラスから2人ずつ代表者を選出して、1年次生全員の前で全体発表会を行い、情報の共有化を図った。

夏季体験学習発表会

G課題研究発表会:平成17年1月17日(水)
 本校3年次生が学習した「課題研究」の研究成果を、各教科の代表生徒12人によって全校生徒に発表するという全体発表会を実施した。このスタイルは、総合的な学習の時間「卒業研究」に生まれ変わった平成17年度にも、引き続き実施した。

Hライフプラン発表会:平成17年2月17日(木)
 本校1年次生が学習した科目「産業社会と人間」のまとめとして、全員が作成した自分のライフプランについて、各クラスで発表会を行った。さらに、各クラスから2人ずつ代表者を選出して全体発表会を実施し、総合学科高等学校や地元中学校にも案内を出して公開した。

(3)その他

これまでに紹介してきた様々な活動に加えて、平成17年度になって新しく導入した実践がある。これらの一部を次に紹介する。

@近隣高校との連携:平成17年10月31日(月)
 宇部市内の宇部高校・宇部中央高校と連携して、2年次生を対象とした進路学習講座をそれぞれの高校で企画し、同日時に開講することで、どこの高校の講座を受講してもよいという授業を組んだ。自校では受けられない講座を、他校の生徒とともに緊張して受講することができた。

A専門学校との連携:通年
 本校3年次生の総合的な学習の時間を利用し、近隣にある山口情報ビジネス専門学校から講師を呼んで授業を展開していただいた。全体講義3回のほかに、公務員講座・医療事務講座・簿記講座など、自分の進路にかかわる生徒30人が希望して受講した。

Bインターンシップ:夏季休業中
 本校2年次生の就職希望者68人を対象として、県内の事業所30か所で3日〜5日間の就業体験を実施した。販売・製造から福祉・サービスまで、幅広い選択肢の中から自分の希望する就業場所を選び、厳しくかつ貴重な体験を得ることができた。


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3 成果と課題
(1)活動の成果

本校では、総合学科の基幹科目となる「産業社会と人間」という授業を1年次生で履修する。この科目の最終目標はライフプランの作成にあるが、そのために、キャリア・アドバイザーによる講演や各種体験学習が1年次に集中する。ライフプランの作成で生徒の目標設定がしっかりとできれば、活動の成果ありということになる。1年次生全員が、自分のライフプランを作成してクラスで発表会を実施できたことは、それぞれが設定した目標を達成したことであり、評価できると考えている。
 教職員のキャリアセミナーでは、「どれだけしっかりと子どもとかかわることができるか、また、その大切さを再認識できる講演だった」、「キャリア教育を進めることによって地元とのつながりを密接にしていくことが大切であり、一人でも多くの人材を地元に提供することができればと思った」といった感想があった。教職員の意識啓発及び資質向上に非常に有効な研修であったと思う。

ライフプランクラス発表会
(2)今後の課題
 1年次生に集中するキャリア・アドバイザーによる講演や各種体験学習は、2年次に実施している総合的な学習の時間「未来探求」へとつながる。1年次に学んできた知識や取り組む姿勢を、最終的な進路決定までどう継続させるかがこの学習の目的であり、「未来探求」が担う重要性は大きい。3年次には、中盤までに進路決定をしなくてはならないため、効果的なセミナーや体験学習を実施することによって、「未来探求」を成功させることが本校の最大の課題となる。
4 校長から見た指導のポイント
多様な体験学習に取り組むことにより、頭で理解するだけではなく、体と心で感じる学習の場面を作っているが、その場面での一人ひとりの生徒の変化や感動を教員が共有し、生徒の進路につなげていく適切な助言をしていくことが重要である。
外部講師の選定等で悩むことが多いが、教員がアンテナを張り、情報収集に努めることが必要である。また、講師に、生徒の現状、指導の目的や意図を明確に伝え、生徒の実態に即した実のある講演・講義にするとともに、生徒には講演・講義で何を学んでほしいのかをしっかり伝えることが重要である。

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